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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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思うぞんぶんネタバレ・引用しています。感想はあくまで私の主観的なものであり、ふだん本を読むときと同じ、一回さあっと読んだ読者としての印象です。

「自分ならどう作るか」ということを考えたくなってしつこく書かせていただいている箇所もあります。長いときはえろう長いのですが、私の誤読であれば書き手さんが「それは違うぞ」と思えるよう具体的に書いてみたつもりです。

2/12
よそさまの感想を読み、
B-04 色替え部分に追記しました。
B-09 色替え部分に追記しました。

わりと推理も見ちゃってます。これはもう独自推理にはなりそうにないなあ。B-00は誰さんであるという党派に一票!的なひとり比例代表選挙を開催する予感。

拍手[0回]


B-01 奪われた空
「>人は空を飛べた。」なんて語り出しが秀逸。「>人がそのように進化していないところを見ると」という箇所だけ「ん?」と引っかかり、読み直しても意味が取れなかったけど、語りのドラマにあふれていてぐいぐい引き込まれた。環境の激変で生き残るのは、それまであまり繁栄の中心ではなかったほんのちょっと異質な突然変異種なのだなあ。人間の体のような物体が落下するとき、地上で「>風切り音」は聞こえるのだろうか。グリセリンを調べると共時性の代表的逸話とありました。グリセリンは「>与太話」であったとしても、「>人が空を飛ぶプロセス」にある種の精神活動が関わっていた証拠として共時性はあの世界の科学者から注目されそうだ。そういえば「飛べない世界」と歴史の一部を共有してることになりますな。「飛べない世界」とのつながりを匂わせる必要があるとも思えないので、精神同調の疑いを示すにはグリセリン以外の言い方をしたほうがよくはないか。私のように調べなければ分からない人も多そうだし。「>未だに人間の世界は完全に追い付いてなかった。」は、何かの単語がいっこ足りない感じ。
もともと「>オマケ的」に空を飛んでいた人類は、飛べなくなっても種として生存できなくなるというほどじゃないのかな。でもそんなに平穏無事に「飛べない世界」に移行できるだろうか。こっちの世界で言うと、携帯電話が作れなくなった世界、くらいだろうか。急にレアメタルが枯渇して電気製品がひと世代分退化しちゃうとか。もっと不便に、電気が使えなくなった世界、くらいになると、文明そのものがひっくり返るような社会変動が起こりそう。「退化」だけでなくそれを補う市場が豊かに繁栄するのかも。携帯がなくなったら⇒個人メッセージ配達屋さんやWikiの代わりに百科事典を調べてくれる便利屋さんが繁盛、とか。などなどあれこれ想像がふくらむ。
環境適応種である主人公は「翼」と「空」にニヤニヤしつつ、余裕の人生を歩む。彼のこの動じない落ち着きぶりが、全編を通じて語りを安定させている感じ。まさに地に足がついて♪

B-02 虹のリドル
優しくしっかり作ってある感じの童話。分かりやすく過不足のない筆はこびで、何が起こっているのか、起ころうとしているのかが、子供にもストレートに伝わるはず。すごいなあ。主人公が乗り越えるべき試練として意地悪で話の通じない感じの悪役が出てくると、途中で逃げちゃう子っていますよね。そういう子にはもってこいかも。ちょっとだけ恐ろしげな森も、びっくりさせるフクロウも、スフィンクスばりの謎をかけてくるペガサスも、話の分かる心優しい隣人。中盤で何か、バカバカしい歌かとんまな旅の友が登場すると、もー子供の心をつかんで離さないと思う。代わりに差しはさまれるのはひばりちゃんが苦労して道のりを踏破する描写で、それも地道な成長過程として好感。虹をつかまえてみせたごほうびもちゃんと役に立つもの(家までタク送♪)で、取り引きに裏切られたりしないホッとできるラスト。読み聞かせの作り声で「めでたしめでたし」と言いたい♪「>おかあさんが止めようとするのも聞かず」出かけてったことへの戒めがない点には何かで少しフォローを入れる必要があるかも。「戒め」はあってほしくないけど^^

B-03 例え夢を諦めても(beyond the empyrean)
絶望していても人生は続く、という話はフックとして引き込まれた。でもあとあとあまり活かされていない感じ。硬質ぽい語りにまぎれて始めは分からなかったが、かなりライトな感覚。パンチを片手で受けつつ決めゼリフを呟いたり、さとるの言動におおげさに反応したりなど、ふたりの関係が深まる見せ場らしき描写が、どれも私には肌が合わなかった。大事な告白のシーン、「>お前の事を目で探している俺がいる事に気が付いた」は、言葉つきが地の文と地続きのように感じる。正宗自身のセリフとして響いて来ない。あまり整理しないでしゃべるとこんな風な、どこかで聞いたようなぎくしゃくした言い方になることはある。でもそういうシドロモドロ的な演出とも思えない。「>この独特の思考からくる毒舌」「>呆れて口が塞がらなかった」「>相変わらずの理論展開」と、さとるへの反応が全編を通じてパターン化していて、正宗がいつからさとるを好きになったのか分からない。最初から好きだったから変化しようがなかったのか。それぞれ別の場所にいた人物同士が関わり、それぞれの胸のうちで関係が変化していく、「告白に至る小説」で読んで楽しいのはそこだ。
さとるの絶望が、小説の始めから終わりまで、そしてその先も不変のものだと決まってしまっているのはなぜだろう。宇宙開発事業では実際に宇宙へ飛び出す人員以外に膨大な地上支援スタッフがいるものだと思う。アタシがサポートしてやっからお前ロケット乗ってくれやというラストじゃだめだったのだろうか。正宗には技術者から宇宙飛行士へという展望が示されて、そこはぽんと抜ける爽快感があった。ソフトクリームとアイスキャンデーには何か意味が?
蛇足。「理論展開」という日本語は普通なのかな?ググると「論理展開」と両方使われているみたい。「論理」は「展開」するけど「理論」は揺るがないよう作られたもののように感じるけどなあ。

B-04 冷たい頬※注意※
「言葉を発する」という言いまわしは私の中ではかなり特殊で、発語という行為だけを切り取ってその一瞬に意味を持たせる、とてもテンションの高い言い方だと思っている。この作品の中では二度使われていて、どちらも少し浮いて見えた。ひとつめの「発する」は「>発された」とあるが、言うなら「発せられた」ではないかしら。ますますもったいありげになるけど。
ところどころ「友人」や「青年」など、人物を普通名詞で呼んで突き放している。しかし描写の内容はどれも一人称視点的なのであまり馴染んでいない気がした。ためしにキッチンの場面での「青年」を「コウヤ」に変えてみるとすっと読める。ルリがコウヤを友人としか思っていないことを強調するためだったら「友人に」などとあってもいいが、他のシーンでは普通名詞で呼ぶ必然性が見えず、読みにくかった。コウヤの視点からもルリが「友人」と表現されるが、コウヤは友人の立場に満足していないのだからちょっとおかしい。
「青年」という表現をコウヤと博士が共有していることにも混乱。「>ベッドに横たわった青年」が博士と呼ばれるまで、博士を中年のように感じていた。それ以前に博士の若さを確認できるのは冒頭の「>研究所に所属していた若い研究者」という一箇所。見落としがち。死の波紋を語る中で「若き天才」などと念押しの形容をしておくか、いっそ年齢にはひと言も触れずに隠し部屋のシーンまで博士を中年と誤読させてはどうだろう。「所属」というと平研究員のひとりのようで、その分野の「>高名な」権威だったらしき(最後の日誌を読むと研究所員は博士ひとりでもあった)博士のイメージとマッチしない。コウヤは「>師事していた博士を亡くし」と言ったりしてルリの忠誠心に色恋の可能性を感じていないらしい。ルリとふたりっきりで仕事をしていた年の近い博士に嫉妬があれば、ルリの生気のなさを「愛する人を失った悲嘆」と看破しそうなものだけど。博士の存在感も、コウヤのルリへの思いもぼやけたまま終わる。
ソラの研究は、心停止して手の施しようがない場合に無傷である脳だけを取り出してロボットに組み込み、命を救うということだろうか。植物状態の反対?身体が致命傷を負ってから脳がだめになるまでどれくらい余裕があるのか知らないが、どの程度画期的でどの程度ネクロマンサー的だったのか、「>彼の功績で助けられる筈だった人々すらも、彼の死に唾棄した」あたりのいきさつがピンと来ない。研究が葬り去られたのに、ルリが研究所に残っていられるのはなぜだろう。資金はどこから。両親の遺産でもつぎ込んでいるのか。「>中央政府の査問委員会」は口を出さないのか。ルリは博士の存在をひた隠しにしているだろうに、コウヤが戻ってきたときどこも施錠していないのはおかしくないか。色んなことの足場が頼りないままなので、殺人の念入りな心理描写では詩のような文章に気持ちが乗っていけなかった。「血の色」という言葉合わせ以外、書き手が名前に託したものが見当たらない。(2/12追記:赤と青は空の色ですねという感想があり、ほへー!博士ったら詩人だなあ。なるほど最後だけ漢字表記になっている「空」については深く考えませんでした。見落とし大変失礼いたしました。)
研究日誌で終わる幕切れには雰囲気があった。「研究を続けるためなら自分の体でも使いたいくらいだ」とか、ルリの狂気によってソラに組み込まれる運命を博士が無邪気になぞるなど、ゾッとさせる仕掛けに使えそう。

B-05 かくして王は
どうなんだろう、むずむず…としながら読んだ。どこかでナイス捕球アンドダブルプレー!みたいなV字回復の一節があったらいいなと。ありました。えぐりこむような鋭角回復、しぱーんと気持ちよく小説の目的地がひらけた。「>あの男は十五年王座にいたが、決して王ではなかった。それは、不当に王座を奪ったことが理由ではない。あの男は盗賊だ。ただ奪うに任せ、国を食い潰した。あの馬は砂漠を越えられない。重すぎる荷は馬を食い潰す。それに気づいて宝を捨てられるのなら、命は助かるだろう。だが、再び沈み行く船にただ胡坐をかいて座っているようならば――」もう丸まま引用です。頭を使えば役立てられる、愚かであればそのせいで死ぬ、というからくりのさじ加減が絶妙そして語り口が珠玉。単語ひとつさえももう動かせない、磨きぬかれて完成している一段だと思う。このからくりにたどりつくまでの長い筋立てに、あと少し読む楽しさがあったら、もう一級品の仕事だと思う。どこをどうやればいいかは知らない。
その後の民衆のなるほどという動きを追ってタイトルにつながり、読み手は気持ちよく送り出してもらえる。「面白かったよおっちゃん」とのれんをめくり、小説の一杯飲み屋をあとにするご満悦な私がいると思ってください。例えがトホホ。

B-06 未だ凍てつく春の中
泉鏡花か漱石か、かっちょいい明治新小説文体に目が慣れた頃に巴が登場、お姫(ひい)さま喋り!とがぜん張り切る。ところがこの明治仕立てがくせもので、一連の春の描写を、うつぎの見せる偽の春でなく、山の春を通りいっぺんでなく描いてみせる作家的試みなのだと思い込んでしまった。読み直すともう一行目「>ふいに色が飛び込んだ。」からして異様な現象を語る一文であったのに、なんと薫り高い早春の描写、とか感心していた私。白と緑の境界線に囲まれた庵の隔絶された春にも、異様さより、遅々として足並みの揃わない雪解けの映像を見ていた。行路が宙に空貴と描き、「>地中深くにありて種を飛ばし、生に宿りて肌を殻とし、春を振りまく」と言ったあと、「なるほどこの春はそういうことか」などと見回して庵の周囲の春要素にもう一度立ち戻ってくれていれば、そこでイメージを修正できたと思う。とはいうものの、あまり親切設計すぎてもつまらないのかもしれない。
偽の春は気温を伴っていない、ということがあまりはっきり語られないのも誤読を誘う一因か。ぼんやりした読み手のためにそういうルールをしつこく伝えておくことは大事だと思う。行路が「寒い」「寒い」と言ってくれているが、葉桜の頃まで暖房が欲しい日もあるというように読め、全く疑念を抱かなかった。「>それともこれが本来の寒さなのか」は、本来の月とは違う「一月上旬並み」と言ったりして例年より寒いことを指すときの「本来」として読める。このへんからモヤモヤし始めてはいたが、巴の母の話題などが始まってすっかり忘れた。

こうなったら自分がどこまで気づかずにいたか検証してみる。
「>庵の小さな垣根を越えると、音もなく雪が止んだ。」は黙殺した。つくづく読み手とは見えている映像に沿わない情報を平気で意識の外に追いやってしまえるものである(なんか文体うつっててすいません)。
「>滴る玉水が垂氷となるのに、縁側にある行路の足下にはもう露草が蕾を綻ばせていた。」は、思わぬところに先回りして訪れている春特有のでたらめさとして読む。
蝉の羽化の場面でようやく「>巴を中心に季節がずれている」とあり、ああ?ああ、ああ!と奇声をあげつつ私が冒頭に走り戻ったと思いねえ。

さて世界観もしっかりとつかみ終え、行路と巴が触れ合うヤマ場に突入。この段の高まりはすごい。「寒い」「寒いのか」「わからない」「わからない」と互いの存在に向ける驚嘆が文面を奔流のように洗い、疾走する。文章の中にも小さい緩急があって、早口でしゃべるだけではない着実な叙述。心理の解説は地の文に任せ、ふたりはきちんと文章になったことを相手に言えずにいるのがいい。「>どうしようもない問いと答えが繰り返されて撥と息だけが上がっていく。」とても冷静なことを言えたもんじゃない高揚がガンガン迫ってくる。ニブい私もどっきどき。
「>ふいに、声がある。巴が目を開けている。」では、行路が抱いている緑の抜け殻とは別の場所で巴の声がしたのかと、また自分勝手な絵を思い浮かべてしまった。「>腕の中で浮(ふっ)と重さがなくなった。」から「>緑が消え」るまでが長いからかも。
凍てつく春にこごえながら、ふたりがあったかい血の通った同士として歩き出すほのぼのとしたラスト。ほのぼの、という単語からもふわっと白い息が立ちそうな情景を作り出すことに成功して、あったかく終わる。「>共に流れてきた椿の赤さに血潮は凍り付いた。」の意味だけは分かりませんでした。

B-07 コバルトブルーの骨
気に入りすぎて、むーん、惜しい、という感じ。ふたりのやり取りにはどうしようもなく好感。現在形終わりの気分がとても合っている。骨ととりあえず呼んでおくけど正体は謎、というあたりの描写もうまい。色も手ざわりもサイズもちゃんと分かる。切羽詰った理由もなく骨の由来について推理し合う流れもキュート。空の骨組み、というひと言から、クジラの死骸かバイキング船の竜骨のような、壮大で神話的で人知の遠く及ばぬ大きなイメージが空いっぱいに広がる。
ただ前段の海についての、「>僕たちは、この目で見たモノしか信じない。」という疑い深い言い方は、柔らかな精神の持ち主であろう彼らにそぐわないように思う。見えている空に対してでさえ「>僕たちの知らないことなんて、きっと沢山ある」と言える彼らが、海は青いと聞き、すぐさま「簡単には信じないぞ」と突っぱねるのは何か意地を張る理由があるように見える。筋立ての都合としては海の可能性を消しておく必要があるけど、作業が性急なような。「海は青」を鵜呑みにしないのはいいが、骨について奔放に想像の翼を広げたときのように、「見た人はみんな青い目だったんだよ!」とか多少ピントはずれなことを言っておくと、パラパラ落ちてくる空の骨組みなんてことを思いつきそうなふたりとイメージがつながるのでは。何が彼ららしくて何がそぐわないか、生まれも育ちも分からず名前すらついていない彼らに、こんなにも確かな存在感を感じさせた力はすごい。
「>僕たちが創り上げた世界」について、平和な情景は描いてあるものの、それがどの程度ファンタジックな土台に立っているのかを強調し忘れている。「土の中に育った空の下にある」ということはよくある地底世界(←地球球面の内側。空もちゃんとある)みたいな見た目?骨を土に埋めて、「>土の中に空が育つんじゃないかな」とくすくす笑うところでは、芽~が出てふくらんで、的なものもよぎった。
子供たちが駆け回る平和そのものの普通の生活を、密かな空想ごっこの向こうに託したくもなるような彼らの現実について、あと少し触れてあるとキレイに小説が閉じるのではとも思うがこのへんはすきずき。

B-08 青空をさがして
これは…多分お話の舞台を組む発想の入り口として、狐の嫁入りなど気象の古い言い回しがあったのだろうけど、ここまで魅力的なキャラ立てに成功してしまったのなら、シメを慌てて気象用語で回収してくれなくてもいっそよかった。河童が世間話をしながら雨をもらいにくるなんて導入部が大成功、もう何の疑問もなく、この妖怪社会の生活がすっと馴染んでくる。「>大人同士の話がある」と親に追っ払われるなんて、子供たちだけの大冒険の始まりに決まってますやんか。ワクワクさせてくれますやんか。雪童子のちっちゃい子描写もいい。「>氷結と氷解が自分でも上手くできない」ことにオンナノコの扱いづらさが愛らしく重ねてある。大好きになりますやんかー。女の子はニガテだと主人公が呟くとき、それは異性としての意識があるという意味で、読み手はやっぱり彼らが結ばれることを期待する。そうは話が流れないことについて何かひとつ納得できる跳躍がほしかった。きれいな川を見せてあげようと一生懸命案内してくれた雪ちゃんは、太陽見たさにあっさり政略結婚を承諾した雨降くんに、小さくハートブレイクしとるんやなかろか。水属性の妖怪が太陽を見たら干上がってしまうというようなブラフを張っておくのもひとつの手か。お狐さまが干上がりそうな雨降くんをすんでのところで救うとかさ。そんなきれいな気持ちが虹になりましたとかさ~。しかし雷獣かわいい。ついでに青天に引っ張り出されるオマケ感が好きだ。「風花」の関連故事が全くないのはなぜ?

B-09 紫に染まる
座って話をしているふたりの人物。どちらについての叙述なのかをはっきりさせるためか、「彼」「少年」「男」という言葉が短いスパンで繰り返される。文中見た目の人口密度ばかり増えてかえって分かりづらかった。「>つぶやきを聞いた男のほうは薄暗い視界の中少年の――といっても年齢的には男とたいして変わらないらしいのだが、童顔のため、少年に見える――横顔を伺って、彼の言動にまたかというように肩をすくめ、」は挿入文に責任はない。文章そのものの構造が単純化してあれば読みやすくできると思う。ここでは「彼の言動に」がひとつ余計かも。「>わざとらしく彼のことをそういった。」も「彼のこと」であると解説を入れる必要はないと思う。
ぽんと置いたまま文末につなぐのを忘れている文節がちらほら見えた。
会話と会話のあいだに動作の説明がはさまっているが、読み手は会話の調子だけで前後をある程度推測できているので二度手間になる。「>「はっ?」イスカの申し出に、思わずレーリィは素っ頓狂な声を上げた。」では「イスカの申し出に、思わず」が不要な説明。伝わらないのではとか恐れずに、どんどん削ったほうが文体の地平が広がると思う。
内容ですが。勇者、魔王などからファンタジーの香りを感じ、「>ゴブリンを素手で倒せちゃう作家さん」で何かが一気に暴露されたという気配だけは分かったのだけど、ピンときませんでした。「>すべてを終わらせ」「>一年に一度だけ訪れる、紫に染まる空」では降参。「恐れずに削れ」とか言った舌の根も乾かぬうちに「もっと情報をください」と懇願する私ですいません。「>ポッケ」というのは大人の服についてるものを指すときに使う単語としてはちょっとどうだろう。
2/12追記:ゲーム世界である、ということが、分かる人には分かる設計になっているのですね!これは「知らないから」で済ませてよい性質の読み不足で、ほっとひと安心。

B-10 君の手、そして始まりの空
前半は遠い思い出をたどるような視点がふたりの絆について語り、後半ではそれぞれが心情を交替で語り、詩物語か朗読劇のような雰囲気が漂う。ラストの二段はグレイとブルーどちらか一方の内心ではなく、ミュージカルなら主役ふたりがデュエットで歌う歌詞のようなものだろうか。ふたり身を寄せ合わなければこごえてしまう寒々とした世界の象徴としてすでに「雪」があるせいか、泣かないグレイの涙を象徴する「雨」も登場すると少し象徴がダブついた感じがした。

B-11 青空の涙※注
入り口は少し読みにくい文章。「>空気に音も伝わぬような透の心の小さな振動」の意味が取れず立ち止まる。文節の順序に改良の余地があるのと、「空気(の中)に」が足りないということでいいのかな。天邪鬼についての謎めいた設定は面白く読んだ。しかし続く場面では透がいちいち研究所の説明をしながら動くせいか、叙述がごたごたしてくる。「>その瞬間に、背中から突風が建物の中に流れ込んだ。透は膝をつき、反射的に吹き飛ばされないように身を硬くした。」は、「瞬間」や「反射的」とあるにしてはいちどきに物事が起こる感じがない。「>研究所は熱い外気をある程度腹を満たすまで吸い込んで、」というとすでに突風のピークが過ぎたのを見ている印象を受けるのに、そのあとで「>やがてそよ風に変わった。」が来る。時間経過がすっと目に流れてこない。「>気を取り直して所内に足を踏み入れ」たあと、「>息が、若干苦しい。」と感じるまでのあいだに「>透は徐々に事態を類推する。」という一文を読ませる必要はないと思う。そのあいだに私の頭の中では事件のスピードが落ちていた。
戦いが始まると一気に時間が流れ出し、テンポよく読めた。はるかと向き合うときに進行方向が安定するというのは何だか透らしかったりして。何でもできる超能力はどんな限定条件がつくかが見せ場なわけで、能力の純化した自分のコピーと戦っているというのは面白かった。理性のたがを苦労して押しのけつつはるかの予測をかわし、裏返し裏返しして一手先を読んだつもりがあっさり返されている無力感。最後はどうしようもない妹に降参して天を仰ぐ。すべての制限を取り払って残るものは純粋な万能で、万能の神はあらゆるものの上位にあり、それは「>誰も計測できない。」という表現が好き。物語の速度を落としてまで紹介する必要があるのかなあと首をかしげていたエリスの好ましげプロフィールが、ここで効いてきてニヤリ。むーんしかし、「>透は絶対あたしを殺すよ。空が青いっていうだけで、親友だって殺したもんね。」の意味が分かりませんでした。「>そのためにあたしが、研究所を炎熱の棺桶にしてあげた」ことが、透は自分を殺すだろうというはるかの予測にどうかかるのだろう。透にはるかを殺すことは不可能と決まっている気がしてた。それははるかの認識であって透的認識としてはまた意味が違うのか。天邪鬼同士の裏読みを裏読んでいたら尻尾を咬み合う蛇を追うようでグルグルしました。同じく分からなくて飛ばした段、「>感情をよぎったエリスへの殺意は~透にはそれを排除する義務がある。」と合わせてよく考えれば分かるのでしょうか。断念。

B-12 Aurora Breakup
元気な作品。男子全開一人称がとことん引っぱる。「>ゴルァ」「>ドーンと体当たり」などのノリに置いていかれたらそれまでだが、元気テンションにちゃんと首尾一貫したところがあり、まとまっている感じ。えらそう。「>白いキャミソールのひらひらがおいでおいで」など描写センスも光る。えらそう。「>二言はありません。ロビ太は男です!」「>絶叫投了宣言ってすげぇ。」が好きでした。合成写真の素材採集という陰謀具合もまさに男子ライフ満開。チューだチューだとはやしたてる外野にキレつつも、自分じゃ勇気が出せないでいる初恋っぷりったらこれも男子炸裂。「>気軽に話せるかわり、友達以上に進まな」かった割りにハルカちゃんはデート服に気合いを入れてくれている。サトルの願いなんか全然見透かしてオーロラドームに誘ってた物分りのよさは、究極のイイオンナと言えるかもしれない。

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