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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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長いです。まずは経緯から。


拍手[7回]


 選挙カーが「苦しい苦しい選挙戦」と嘆き節で訴えた今回の選挙は田舎町には珍しい候補者の多さで、選挙公報は3ページ、6人が落選するという話を聞いた私は「新人に入れる」と決めた。順にネット検索し、話の内容が一番面白かった中西のりあき氏に投票したところ結果は当選。運動員なし街宣車なし、ノボリを立ててランニングするというスタイルに可能性を感じた人は多かったみたい。自分が一票入れた人が当選するの珍しいねーと注目していた。


 ところが後日、町に対し「中西氏は町内に住んでいない」と異議の申し出があったと中西氏のブログで知った。中西氏は町の選挙管理委員会で証拠書類の提出や口頭の意見陳述などを行い、選管による裁定の結果「届け出住所での生活実態がみとめられず、被選挙権がなかった」として氏の当選は無効と決まった。あれよあれよ。


 5月末に町内に居を移している中西氏は日付を計算すれば「3箇月以上町内に住所を有」していることになるのだから、中西氏に被選挙権があるかどうかについては疑問の余地がないように思われる。この住所に宛てられた郵便物も届いている。ガスと水道メーターの検針から「生活実態なし」とされたわけだがメーターの数字で何が分かるというのだろう。当人の居住がなくても別の誰かが水道をジャージャー使えばメーターには現れる。そもそも「生活実態」って何だろう。町内をランニングし、町内で食事をし、町で見た出来事をブログで論じている中西氏の「生活実態」は、他のどこでもない猪名川町を拠点としているように私には思えた。法律の観点からは違うのだろうか。


 そもそも公選法の「3箇月以上住所を有する」に「これこれの生活実態があるべき」という精神はあるのだろうか。「住所を有する」というこの文章には別の解釈や読み方、ガスや水道のメーターを調べなければはっきりしないような裏の意味があるのだろうか。「住所を有する」を別の言い方で表現せよと言われても私には「住所を、持ってること」ぐらいにしかかみ砕けない。「住所を有する」って何だろう。そこでガスを使うこと?


 県に不服を申し立てる予定の中西氏はブログやSNSで反論を続けている。
https://ameblo.jp/bosabosabosabosabosa/entry-12531680142.html
 町選管による決定告示も読むことができた。
https://www.town.inagawa.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/47/R10930ketteishokokuji.pdf
 9ページにわたる文書の2ページ目で、私の一番の疑問「住所を有するとは?」に町選管が明快に答えていた。


【町告示より引用】
1 住所認定についての解釈
 公職選挙法第9条第2項にいう住所とは、民法(明治29年法律第89号)第22条で規定する「各人の生活の本拠をその者の住所とする。」と同義であると解され、また特に「選挙に関しては、住所は一人につき一箇所に限定されているものと解すべきである。」(昭和23年12月18日最高裁判決)とされている。
【引用おわり】


 思い浮かぶのは、政党政治が産声をあげたいにしえよりさかんに行われた、縁もゆかりもない土地で党員を立候補させ、勢力を広げようとする選挙戦略だ。これに一定の歯止めをというのが法文や判例の意図なら私にも理解できる。


 対して中西氏の主張は私の中で鮮明な像を結ばない。転居の経緯や生活拠点が分散している理由など話の筋は通っているが「体裁が整っている」のだとも言える。公的な場での発言として流れが整いつじつまが合っている。嘘ではないが、起こったままでもないという感じ。


 この印象は、異議の申出人である石井氏が主張を語り起こす部分を読んでいても感じた。


 余談だが、中西氏とは別の新人候補者が立候補の準備について綴ったブログに「候補者説明会に行っただけで個人情報を聞かれ、新聞記者もいて、なにもかも調べられるのだなと改めてびびった(大意)」とあった。立候補を迷っている段階でこれだけ注目されるのだから、いざ選挙期間スタートともなれば新人候補のプロフィールは引っくり返して調べられるのだと思う。届け出住所も。


 さらに余談だが、選挙戦をアツくさせたある争点においてこの申出人と中西氏は対立している。現職町議であった申出人石井氏は落選したが、中西氏の当選無効によって対立勢力の別の候補者が繰り上げ当選する。一連の裁定を行った町選管の大部分は、同勢力にくみすると思われる町職員である。余談だけどさ。


 石井氏の主張に話を戻す。


【町告示より引用】
3 申出人の主張の要旨
申出人は、本件選挙が迫るに従い、住民との情報交換の場において、当選人は本町に居住実態がないとの声を多く聞くようになり、
【引用おわり】


 記者か選挙事務所のお手伝いか、プロフィールのチェックを行う人が実際に家を見に出かけ「この、ついこないだまで空き家だったような家で寝起きを?」と感じ、そこから調べていくうちに……という経緯が想像される。しかしまあそこは「要旨」だし、刈り込んだ表現に整えてある。しらんけど。


 現実の出来事はバラバラの断片で起こり、つじつまをとらえにくいのが普通だ。しかし公的な文書は分かりやすくなければならない。私が読んでいるのは後からつじつまを吟味し流れを整えて書かれた文章なのだと意識した途端、中西氏の町内下宿における「世帯主A氏の長男」についての表現が気になり始めた。


およそのあらまし:
(中西氏は5月末に町内A氏宅に間借りし町外から住所を移した。下宿代を払い食事をともにしA氏長男の家庭教師をし、中西氏はこれをもって町内住所での生活実態であると主張する。8月1日、町内別住所へ移転)
(ひとり親のため児童扶養手当の支給を受けているA氏にとって異性の同居人は迷惑な存在で、健康福祉事務局への申し立てを二度やり直すことになった。「晩ごはんを一緒にする」頻度はさまざまに変わり、「中西氏の訪問は長男の家庭教師のため二カ月のうち二回、それぞれ一時間半ほど滞在」「A氏宅での生活実態はない」「町議選出馬のためにと頼まれ深く考えず住民票上同居した」と記載して無事受給)


 文言がこの形になるまでにA氏親子がどれだけプライバシーをえぐられたか、私には想像もつかない。文書には書いてないし。
 中西氏は、今回の異議を申し出た石井氏にすべての立証責任があると主張している。だがこういう立ち入った情報収集を調査の名目で私人にやらせてはいけないし、できるものでもない。


 中西氏や選管によって存在だけを言及される「A氏長男」は、まるで主要人物のつじつま合わせのためにいるモブキャラのようだ。「同居中のおじさんに勉強をみてもらった」という薄いキャラ付けは、大人の都合のそえものでしかない。彼が物語の主人公で家庭教師の話になるなら、進路や伸ばしたい科目などが体に合う服を選ぶように語られるだろう。お下がりで回ってきたぶかぶかのセーターみたいな家庭教師が、彼の学習にどれだけ貢献できたのか。しかしここは彼の勉強の進み具合を気にかける場ではないのだ。文書が終始そう言っていると感じた私は、それぞれの主張について「誰のためのつじつまなのか」を選り分けながら読むようになった。お役所文書の読み方が分かった……。


 生活実態を町内住所に「ありとしたい」人からは、中西氏と長男との関りは大きめに語られる。「なしとしたい」人の話に登場する長男の比重は小さい。たとえば長男と過ごす時間の長さとして「好きなテレビ放送を一緒に観て主題歌を歌う」などの習慣を中西氏が証言したら「ほんと?」と長男に確認しなければならない。長男の証言なしで関り「あり」とできるのが「親がたのんだ家庭教師」という体裁なのではないだろうか。ちなみに同宅にはA氏の父親も同居しているが「中西氏とはほとんど顔を合わせたことがない」と答えている。厄介事に憤慨している語気の中から町がいいとこだけ切り取った感じを割り引いたとしても、「べったりしっかり同居してましたよ」とは読めない。


 素朴な疑問だが、真夏にどこでお風呂入ってたんだろう。掃除がめんどいので専らジムのシャワーで済ますという人もいる。中西氏は町外の旧住所をまだ所有している。新聞が配達され、書籍など記事執筆に必要なものが置いてあり、インターネット環境の整ったそちらで作業をして、そのまま寝ることもあったと中西氏は話す。町は「旧住所の電気ガス水道の使用量その他の証拠提出を求めたが提示はされなかった」そうだ。


 ネット上ではこんなのも見つけた。行政書士試験の過去問ページ
https://www.sak-office.jp/hanrei/gyousei/10


最判昭35.3.22
<裁判要旨>(結論)
公職選挙法9条2項の「住所」は、その人の生活に最も関係の深い生活の中心と解釈するべきで、私生活の住所、仕事上の住所、政治活動の住所を分けて判断するべきではない。
<判決理由>(理由)
公職選挙法と地方自治法で、選挙権の要件に「住所」があるのは、一定期間ひとつの地方公共団体に住所を持つ人に対して、その地方公共団体の政治に参加する権利を与えるためだから。


 中西氏にとって最も関係の深い生活の中心はどこであるかという問いに、町選管は、町外にまだ所有していて住環境も整った旧住所であろうと答える。論拠は古い時代の法文や判例であり、ノマドワークなどが普通になるこれからの時代にそぐわないと反論はできるかもしれない。人がキャンピングカーみたいな家に住むような時代になれば「住所」の社会通念は変わるかもしれない。常識の枠を飛び越えるような中西氏の活動は古い枠組みにおさまりきらないのかもしれない。ただ枠組みは越えすぎると違法になる。裁定の主眼はそこにある気がする。政治的対立はおまけだ。おまけの方が大きいお菓子もあるけど。


 中西氏は、対立勢力が主導する今回の裁定は公正さの点で問題があるとも主張している。ところで氏に一票入れた私などでも裁定の内容にかなりの説得力を感じている。現実味のない話をするが、選管に4人いる民間メンバーのひとりが私だったとしても、今回の裁定には賛成するだろう。


 自分の投票が無効になるという今度の成り行きには混乱させられ、はじめはなかなか受け入れられなかった。気持ちを切り替えられたのは、私が投票した動機は「投票率低いの嫌だな」くらいだったことを思い出したから。目的は果たせてる。候補者選びにかけた期間は2日ほどで、争点についても強い何かがあったわけじゃない。無責任であり体裁は悪いが、本当のことだ。


 不服申し立ての結果が出るまでは町議であることになった中西氏は議員として議会に出ている。その様子はブログで報告され、混沌とした議論やお金の話などに鋭く突っ込んでみせている。誰がどんな思惑でどういうつじつまを掲げているのか? あーこういうことをしてくれるって期待してたんだよー。だが今の私は、中西氏も漏れなくつじつまの奴隷だと知っている。自分の中の偏りを引き戻しながら見ようと思う。


 今回新人として立候補した別の候補者が、落選の弁として「いい経験させてもらいました」とブログに書いている。私も同じで、いままで知らなかった角度から物を見、知ろうとも思わなかった事を調べ、勉強させてもらったのだと思う。代償は私の一票。この授業料が高くついたのかどうか相場を知らないので分からない。


 最後までお読みいただきありがとうございました。つづきます。
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