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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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昨日はピースピット公演「呪いの姫子ちゃん」を観てきました。ここは観劇ブログどころか日々雑記ブログですらないのですが、せっかくブログがあるのでちょっと書いてみました。

公演は終了していますが、いちおう以下はネタバレ注意。

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「必ず行く」と決めている舞台は段々少なくなっているのだけど、ピースピットはまだまだ「必ず」であり、PPに行くと観てみたい劇団が増えるという、演劇魔境のアリジゴクに引き込んでもらえる。作風やスタイルも全然違う劇団からいろんな人が集まっているので、PPでしか観られない顔合わせが楽しい。それぞれ確固たるものを持って集まった役者さんばかりではあるけども、特に声がいい。なんでもない単語も芝居っ気たっぷりに、そしてクサい決めゼリフも地に足をつけてしゃべることができる人が結集して、芝居っ気と決めゼリフにあふれたPPならではの世界を作り上げている。いや、ダンスも立ち廻り(←とび蹴り含む)もハンパじゃないPPは何より身体能力がすごいのだけど、私は声が好き。

三谷恭子さん(呪いの姫子ちゃん)の声はいつも聞いているだけでワクワクできる。世界中の嫌われ者、常にケンカ腰という役なのでセリフはほとんど罵倒語。だけど可愛い娘役でもギラッとトゲを垣間見せる技術が持ち味の役者さんだから、私的にはハマり役。「キライよ」「おしゃべりしましょう」「この、小惑星が!(←本当に小惑星に向けて)などをとことんキュートに、複雑な意味を込めて言える人。世界への呪詛の裏に悲しみを背負った主人公姫子ちゃんは、雨の日だけは雨音にまぎれてこっそり泣くことができる。「わーん」「わーん」と言ってひたすら泣く、というだけのお芝居を、目で耳で存分に楽しませてもらった。あとツインテールもフレアスカートもどんだけ似合うんだと。可愛さ問答無用。

山浦徹さん(メフィストフェレス)。静かに立ってるときは存在にあまりつかみどころがないのに、動けば動くほど、しゃべればしゃべるほど魅力が増す舞台人。さわんじゃねえよ(←自分が手を差しのべておいて!)というセリフで主人公の姫子ちゃんを制してツンデレ確定したメフィストは、バラから生まれた冷酷悪魔なのさ。好きなコに「お前は一ヶ月フロなし」とか命令しちゃうのだ。いや、そういう使命を帯びているだけだけどな。悪魔タマラン。モエすぎて前が見えない。自分の身を犠牲にして散ってしまうときは本当にかぐわしい香りが劇場に立ち込めたのでした。ダンスシーンで悪魔キャラでなく群舞をしてるとぼけた感じがまた素敵。

このダンスが劇中何度か繰り返されるのだけどすっごい可愛くて楽しくて、お祭り度にだんだん泣けてきて困った。年取った。演劇に限らず映画でも小説でも、泣かせどころより幸福有頂天マックスのシーンでぐっとくることが増えました。

一方、坂口修一さん(スタンリー)。上記山浦さんと反対に、そこに立っているだけで、ニッと笑っているだけで、すごい存在感。「なんかやる人だな」という心の準備をお客さんにさせる。そしてその通りなんかやる。気弱なスタンリーは常に前を押さえている男。が、ストーリー終盤でナゾの大変身をし、スーパーパワーを得てみんなを助けに現れる。彼に一体なにが起こったのか、というスピンオフ公演があるそうで、「なんかやるぞ」度は増すばかり。観に行きたいなあ。ムリかなあ。ぶおおおー!と周囲の敵兵をなぎたおすシーンでは本当に当たったら痛そうな重量感があった。

片岡百蔓両さん(ピノ)。末満さんが作品に登場させるたび自身で演じていた赤オーバーオールキャラを、今回継承した勇者。すごく大事なシーンで役名を間違えて呼びかけられ、「どうする」と会場が凍るも「いや、俺ニコじゃないから」と見事な捕球で仕切りなおした足腰の強さは、さすがの勇者でした。常習的なウソつきで、自分のついたウソを本当にしたくて色々バカやってるという役。夢やおとぎ話を本当にしたいという欲望はどんなファンタジーにも付きもので、突き詰めるとあっちの世界に行ったきりになるわけだけど、「夢と現実の境い目をなくす」ということは、決してハッピーエンドではない。「夢と現実の境い目」が分からなければそれを惜しんで愛しむこともできないわけで、PPの切なさというのはそういうところにあると思う。どんなに妄想の世界に没入していても、どこかで「これはつくりごと」「そのうち終わるよ」という装置が働いている。だから「終わらせたくない」と全力を尽くすし、「次のお話を始めよう」と言うんだと思う。ピノのウソがいいのは、たとえうすっぺらなつくりごとでもそれは誰かのためにしてるんだという優しさ、悲しみをすくいあげたいという気持ちがあるからで、PPがこうして毎公演でっかい祭りのようなことをするのも誰かのためだったのかなあと思ったり。特定の人という意味でなく、世のため人のため、という浅く広い概念を抱きしめるようななにか。演劇や、表現ってそういうものなのかな。「柱のかげに熱心な聞き手がいる」、だから客が入ってないステージでも、その架空の客のために弾けと、昔のジャズミュージシャンが言ったそうで、なんとなく思い出した。PPの千秋楽は盛況だったけど!

中野裕貴さん(コウモリ猫)は手持ちパペット。初めはただの解説キャラのようでいて、だんだん深い役割が見えてくる。関わる人みなに呪いをもたらす姫子ちゃんに、心がない縫いぐるみの彼だけが唯一、直接触れることができる。上記ピノの善良さがきっかけになって姫子ちゃんとの和解ができ、登場人物たちが次々抱きしめ合ってダンゴになっていく抱擁シーンがあるのだけど、そこでコウモリ猫が「じゃ、オレも」と言うのが可愛いんだ。パペットが抱擁ダンゴにぱふんと加わる。そのぱふんが可愛いんだ。「じゃ、オレも」が淡々としててまたイイんだ。抱擁ってむずかしい。抱擁でねじふせようとしてないか?と突っ込まれればそれまでで、抱擁するがわにはそれなりの度量というか大きさが必要なのかな。そんな弱気な部分も含めて相手にさらけ出す覚悟が伝われば、抱擁パワーは世界を救う。

赤星マサノリさん(ニコ)は王子。フリルシャツ。たまにパンダ。PPでは以前、女優陣を全員バニーガールにするという男の野望を叶えたことがあったけど、ちゃんと女の野望にも配慮があって嬉しい。えへへ。王子は一目ボレした姫子ちゃんにつきまとっては殴られる毎日。へこたれないM王子。えへへ。盲目であるかわりに匂いで人の感情が分かる彼は、世界に向かって毒を吐き続ける姫子ちゃんの本当の心を見抜く。「ボクには分かる」って最強のロマンチックだけど最強の思い込みでもある。王子でよかった。

宮川サキさん(ヘレナ)は肝っ玉コメディエンヌ。声のカッコよさに深みがあり、張ってても一本調子じゃないので気持ちいい。隣国のブサイク姫の破壊力ったら。脳裏に焼きついた腰フリの映像はきっと呪い。

カッコいいと言えば立花明依さん(白雪姫)。すっぽりと頭巾をかぶった黒衣の尼僧姿なのに、腕がステキにむき出しで期待していた。期待どおりシスター・スノウは仮の姿で、諸肌脱ぎのあとはめちゃめちゃ黒い魔女っぷり。呪いダンサーを引き連れた黒い魔女立ちにうっとり。この人の声も好きでした。

三浦求さん(社長)は一人称「ミー」。自分のことをミーと呼べばみんな某☆新感線の右近さんに似てくるのか、単に三浦さんの声質が似ているのか、タイツを履いてないのが不思議なくらいのフレディっぷり。ミーしゃべりに合わせて踊る秘書たちが楽しかった。

末満健一さん(スニフ)はセクハラ隊長。いや司祭長。あの手この手で世界征服を企むが過ぎ行く時間だけは支配できず、若手とのジェネレーションギャップに悩む。目ばりビシバシの悪そうな顔で赤オーバーオールの純情青年をやっている姿も好きだったけど、ヒゲづらの悪役はかなり似合っていたと思う。オマケゲスト、元祖悪い顔の腹筋善之介さんと並んだところは最強。

休憩ありでオマケもあって、終わったら四時間でした。世代は同じでもジャンルの森が違うようで、ゲーマー小ネタはほとんど分からず。でもそんなの関係ねえ。途中、小惑星について混乱(白雪姫が呼び寄せてるの?姫子に呼び寄せさせてるの?)するも、お話の因果関係を忘れてしまうのは私はよくあることなので。小惑星のナゾなんか「この金棒で、打ち返す」と宣言した姫子の気迫にみんな吹っ飛んだ。あれをもっともらしく言うにはすごい力がいると思う。女の子ボーカルでびしっと決めた音楽もよかった。次はどんな音楽で、どんな世界で、どんなことするんだろう。


11/9追記。
ピースピットがちゃんと演劇かどうか、という点について。大勢の人の目の前で、あれだけの光芒を放ってはかなく消え、終わればあとかたもなくなっている強烈な音と映像たちの、どこが演劇でないというのか。なんつって、ちゃんと演劇を知らないのかもしれない私が言ってみてもどうなんだという話ですが。演劇でなさっぽさ(どんな日本語)を強いてあげれば、流れる風景画像やアップ映像がシーン移動や心理を説明したりしていたところかな。舞台のあの場所に大きなスクリーンがある以上、背景だけじゃなく小道具としても使おうよという感じに私には見えたのだけど。顔アップ画像はスニフの心の声が漏れ聞こえるネタで(素晴らしくハマって!)も使われたので、人によってはシリアスなシーンが侵食されて見えたのかもしれない。FUFUFU。

あと、自分の泣きどころにもうひとつ気がついた。照明が小さく小さくしぼられていく~という暗転に弱い。姫子ちゃんでは何のシーンだったか忘れてしまったのだけど、小惑星をぶち割ってニコと別れたあとだったかなあ。ステージが黒くなっていく直前の五秒間ぐらいで、自分の呼吸が一気にハフハフと怪しくなっていた。あの暗闇は演劇空間でしか味わえない。
11/13追記。
あちこち(P)ブログを読んでいます。小島麻由美というのか~。「SMITH」でも大好きになってTRIBECKERを買いました。BGMじゃなく、こんな風にがっつりと歌世界をステージに食い込ませてくる演劇ってあまり知らない。生涯一度きり観た(決定かい)蜷川幸雄で、劇中イイトコロで酒ヤケした渋い日本語ブルースがガンガン流れ、ギリシャ悲劇なのに!衣装ジュサブローなのに!とインパクトは強烈でした。無垢だった私は「ほへー」「うあー」と猿のような反応しかできんかったけど。今も大抵「うあー」だけど。

こちらのブログで、使用されていた曲の周辺について知る。湖のシーンは曲タイトルを知らなくても、うん「みずうみ」だったわ~とウキウキ。曲とステージとのこのリンク具合からすると、じゃあ休憩中に流れていた「郵便ポストまでカランコロン」は「物販までおサイフ持ってカランコロン」ってことだな(笑) あと、「演劇に縛られてない」って言えばこの気持ちを表現できるのねとスッキリ。

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