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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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まずはドカドカと感想。思うぞんぶんネタバレ・引用しています。感想はあくまで私の主観的なものであり、ふだん本を読むときと同じ、一回さあっと読んだ読者としての印象です。余計なお世話っぽいコメントを乱発していますが、引き込まれた作品にはそれだけ多くのものを要求してしまうわけで(それが余計なお世話)、なにとぞご容赦。

感想を飛ばして推理にいくなら、次の横罫線までずずいとスクロール。

9/28 E-02とE-05感想に追記しています。

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E-01: 空の果てまでこの歌を
宝塚をモチーフにした時代活写もの。この時代背景なら人の生き死にが絡まにゃイカンと決まってるわけじゃないけど、主人公の心を揺さぶるような、彼女にとっての大事件、といったものが起きているはずなのに、ナレーション目線に終始している感じ。

E-02: 虚無の空
不思議な少女に拾われ、ヴァンパイアに捕らわれたと思い込む主人公。誤解が解けて、とても現実的なタネ明かしになるのだけど。それゆえに一層釈然としない読後感がのこる。「僕が不安を抱いたこと、全てに理由があったのだ。」そうかなー。一心不乱に打ち込んで、ミックの存在そのものと化しているはずの研究について、「研究」という以上の説明がないのは、読んでいて頼りない。ローズの病気を診られるってことは医学・薬学系?そこまで徹底的に働き口がなくなるかなー。新薬の特許情報を漏らさないように、よその研究所に就職できなくされてしまった、とか。読者としては、「病気に気づいてやれなかった」「父と学び続ける喜びを、もう感じることができなかった」というメンタル面以外での絶望の理由も欲しい。ところでローズが年をとってない理由はなんだろう。ビルから身投げしたはずのミックがローズのもとに落ちてきた理由は?ローズの保護者はこうして代々拾われているのだったりして。博士は普通に年をとって、亡くなったのかなあ。(追記:ヴァンパイアオチという説がかなり出ていますね!素直にそういうことでよかったのかなあ。病気のことはどういう扱い?ポルフィリン症のヴァンパイア?ヴァンパイアという病?作者さんのあとがきが待たれる^^)

E-03: 煙の向こう側
主人公の悲惨な生い立ちを強調するときの言い回しが、どれもしっくりこない。「…思い起こさせる空になど良い感情を持っているはずがない。」←良い感情を持てと強制されているわけではないはず 「劣悪な環境でないはずがない。」←「狭く暗い坑道」と書くだけで充分伝わる 現状を変えてくれる魔法使い的キャラにせっかく会えても、ふたりの邂逅は別段スパークしない。王子さまはもとからたぶん善人で、これからも善人。まっすぐに清貧を生きてきたティーレも、孤児院でまっすぐな大人になるし。「煙の量は少しずつ減っていき」←生産量が落ちたら、街の景気は悪くならないかな。炭鉱町から労働力が削られるって、大変なことだと思うのだけど。子供の代わりというと、やっぱり出稼ぎ者を使うしかなくなるんじゃ。その後の街は、高学歴化した孤児院の子供たち世代による一大商業都市に生まれ変わった、とかどうだろう。たったひと言で、書き手はいろんな問題点をねじ伏せられるはず。そんなひと言を読者は待っているのだす。えらそう。自分も肝に銘じます。

E-04: 鹿神様の宝箱
からっぽの箱を前に頭を抱える冒頭。おもしろいー。中国説話風文体に、ときどき「獲物のもとへ行ったら」など現代チックな言葉づかいが混じって方向を見失う。「親しさあってゆえのこそ」←?「まるで早雲のただ中に突っ立っているごときの有様になってきた」←単語のどれか刈り込みたい 「頭に不安がもたげてきた」「己を見つめる視線」←己って誰だ鹿じゃないよね など、お話に興味をひかれるだけに、細かい言い回しが気になってモヤモヤ。お土産は、生きものの成長を促進させる魔法でした。数時間で生えたカビと、一夜で満開になった花とを結びつけて、ダンナが「そうだったのか!」とひらめくきっかけが、もう少し前段のなにかとつながっていればなー。鹿神さまに絡んだ伝承や謎かけ歌があったりとか。子宝オチは、そんなにニヤリとできない。以前からラブラブ夫婦だったはずだものー。庭いじりに手がかからないようになって、ヒマになったのでしょうか。ぷぷぷ。

E-05: 幽霊は長月に笑う
自己嫌悪する主人公。ざざっと展開するスピーディーモノローグ。いろんな機会をとらえて毒を吐き自省する、そのときどきの心情に、あまり共感できない。反省するにしても、段階を踏むというよりは、これまでの持論をくるっとひっくりかえす感じ。じっくりじっくり腑に落ちるのなら、悩んだ過程もひっくるめて成長、と捉えることができるけど、これまでの自分のこだわりを全否定するタイプの自己啓発法は、あまり爽やかに読めない。(追記:読み返せば、彼女の吐く前半の毒セリフに私は共感していたのかも。「航路の間違いを気付かぬ振りで乗り切ろうとした挙句沈んでいく船のように」とか好きなのです。あのまま突っ走ってほしかった、とか思う私はきっと修行が足りない) かたくなだった心が溶けるきっかけが、カオのいい(であろう)男子と見詰め合ったことだというのは、ちょっと微笑ましい♪結びの一文には、色々含みがあってイッキに好感。本当にそらみさんだったんでも嬉しいし、こんな冗談をさらっと言う、とてつもなく人を食った男子であっても嬉しい。「空を愛する人なら皆そらみさん」という主人公の結論と、同じことを彼も感じてた、キャ、テレパシー♪なんちて。複雑な表情のままドアノブをつかんで固まってる主人公、という絵が楽しく浮かぶラスト。

D-06: デイエンド
巻き込まれる主人公。「テラフォーミング」と言っても宇宙へ連れ出されるのではなく、それ以上説明もないまま惑星模型製作をさせられる。電子レンジ型転送機(なのか?)があるところを見ると、近未来?パラレル未来?神様ごっこができるキットが売り出されてる未来世界?というわけでもなさそう。着色作業は未来どころかとても現代&平成だし。関西人としては、高利貸しヤクザの関西弁が気になってどうも。目上のボンに向かって「使とってや(つこたってや?)」はないっす。中華ムスメが出てきてやっと、「ああキャラの一環だったか」と理解。中華ムスメがやりとりの中心になったあとは、安心して楽しめました。遺灰を人造ダイヤに、という記事は実際にありましたね~。でも、ダイヤを素手で砕いちゃう時点で、もうリアリティとかはいいんだ。美鈴のセリフは全部シャンプー(あ、それより神楽ちゃん。ググらんと思い出せずトホホ)の声で読みましたってば♪結びの一文で、姉ちゃんが借金したのは異世界ヤクザだった!的な、この異世界召還っぷりへの説明があるかと思いきや、なにもなし。デイエンドというタイトルになにか意味があったり?

E-07: 夜明けの空のその向こうまで
中盤まで、コリャどうすべ…ともじもじしながら読みました^^きれいに着地~。

E-08: リルハの真珠
老人の懊悩を、湖にうつった鏡像として提示する。お話の舞台と登場人物が、がっちり結びついている。

E-09: 1Gの世界
でーーいじーーでーーいじーー(号泣)中盤でいっぺん復帰したりしてホッとさせといて、そこからやっぱりうぁぁぁぁん(私のほうがよっぽど言語ライブラリ接続エラー) ああ、短編を読んだという気がしない。広大な宇宙空間で、1Gという環境がどんなに特殊か。素晴らしい着眼点と、小説的処理でした。「僕は地球へと落ちてゆきながら遠ざかっている。」相手のことはなんだって知っているのに、いつもいつも遠ざけられていて、少しでも求めすぎればたちまち焼きつくされる。この生殺し状態を彼は彼なりに解析して、切ないまでの思慕という感情パターンに結びつけたのでしょうかね。自分の存在が環境にとって余計ものであると認識したときも、彼の自我はなにかの感情を発現したのかな。ミッションクルーたちの笑顔も、感傷も、きちんと受け止められるエモーショナルAI。オリファン、アンタいい仕事したよ。ありがとうオデッセイ、君はいい船だった。いわゆる「覚悟の最期」。人間ではなく人工知能がそうするとき、ドラマはどうしてこうも透明度を増すのか。 

E-10: 至高の空
ダウンヒルっていうと、プランプランの旗を引っかけ倒しながら滑っていくあれでしたっけー。途中にジャンプなんてあったけとか、競技としてのイメージがあやふやでしたが、お話についていくのに支障はなかった。たった一度ムリな滑走をしただけで、次のレースに影響するほど筋肉を痛めつけるスポーツなんだ。空色を表す単語、というのも面白かった。日本語に多いのは、植物由来の色なんでしょうかね。盛り上がりどころであるレースシーンが案外スルスルと終わる。「単純に、今日は人が多いのか、と思った。」という一文で、ユキヤの研ぎ澄まされたテンションが伝わるから、いっそheavenly blueを見たのかどうかは、ゴールまで伏せておいてもいいかも。コーチはきっと、平仮名ばっかりのコーチングメモを書いてくれる人だと思う^^

E-11: 胡蝶の夢
読者としてはバルトの動きを追うのだけども、彼がどういう武人なのかということが、あれだけ分厚い世界設定のどことも絡んでいない気が。陰謀のニオイに敏感な、切れ者の騎士団長って感じでもないし、名家の御曹司で苦労知らず=陰謀に免疫がないってわけでもないよね。部下が「御前では言いませんよ」なんて言って国王を批判しても咎めずにいるから、ガチガチの忠臣ではない。なのに王命を遂行するのに迷いがないのはなぜか。命令は命令、というすれっからしの武人気質か、予想される政情不安にも備えがあるという五大家の自信か。世界設定だけでなく、人物の感情世界にも字数を割いてほしいところ。あと、なんでもない動作や状況を描写するのに、いろんな説明がダブついている気がする。


ここから推理。

E-01  空の果てまでこの歌を■藤村脩さん
 よく書かれるタイプの元気ムスメではないけれど、言葉のはしばしが通じると思う。地の文の「~だろうか」、現在形おわりの出るタイミング、びっくりしたときの「身体を固まらせた」、決め手はやはり「華やかなりし大英帝国」(←タ、タイトルメニューですがのう)。

E-02  虚無の空■サツキシノブさん
 わりと情景描写から入るかた。念を押すセリフが「~?」おわりである、とか。(他にどなたも使ってない語法ってわけじゃないのだ…嘆息)

E-03  煙の向こう側■早瀬千夏さん
 執事ー、執事どこーと涙目で探す。目で見て分かる書きグセは発見できず。推理をかわす作戦あり、との意気込みコメントにすべてを賭ける。

E-04  鹿神様の宝箱■藍咲万寿さん
 中華要素をとりのぞけば、文体はまさしく、と見えたので。

E-05  幽霊は長月に笑う■森崎さん
 「バスルームの悪魔」など短編を読んで。推理を忘れてラブコメをおいしくいただく。美女と野獣に身長差カップルえへへ♪たくさん短編を書かれているので、いろんな試みができるかたかなと。

E-06  デイエンド■鈴埜さん
 ヒント短編を堪能。あれを読んだらもうこれしか。

E-07  夜明けの空のその向こうまで■高村紀和子さん
 真綿でじわじわ責められる文体。モノローグにおいて語り手は出来事を都合よく歪曲し放題である、というからくりを存分に活用されるかた。

E-08  リルハの真珠■宇津木さん
 「彼女が~すれば、彼は~する」という文体と、入隊した息子の任務内容がやけに詳細で。

E-09  1Gの世界■柚希実さん
 いっこも手がかりを採集できず。「いつもと違う部分」あり、とのことでSF担当を押し付けてみました。

E-10  至高の空■上原友里さん
 わからんです。「100時間ほど」という記述をいっこ見つけた、というだけ。時速などの数値にわりと「ほど」がついているので。ファンタジー書きさんですがどうだろう。異人のコーチを「=異世界人」としてFT要素にカウントします。(え~)

E-11  胡蝶の夢■小月静夜さん
 「まだ成人にも満たない」という言い回しが特徴的で。
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