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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。

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大江戸870夜町(16)


「そ、空から舞い降りただと……!」
「何奴!」
 減速パラシュートで着陸した羽ばたき1号は、わめきたてる攘夷志士に囲まれていました。
「おい頭、どうなってる」
「分からん。とにかく坑道へ」
 石を投げて牽制しながら、二人は坑道にたてこもります。
「百姓どもが徒党を組んで……、一揆か! 荘園の小作料が不満か!」
「百姓とは無礼千万!」
「こん身なりはぁ大望果たすまでの変装……」
「しーしー、黙るったい」
 志士たちは訛りもまちまちで、用人頭はますますパニックです。
「百姓でないならいよいよ誰だ!」
「そう言うお前こそ誰だ!」
 そう言うお前こそ誰だって言うお前こそ……、自己紹介に踏み切れない同士、際限のないやり取りが続くのでした。



 桔梗介がやれやれとしゃがみ込み、工藤の持たせたクレンジングで白い地塗りを落としている頃。
 樋口家上屋敷に乗り込んだ斗貴は、頭の固い家臣団に手を焼いていました。
「ですからこれは! 決して兄上を訴追するような内容じゃないんです!」
 真っ赤な顔で訴えても、手配書を囲んだ家臣たちはピンと来ないようです。
「内容も何も、まず意味が分かりませぬ。ドキューンでキュピーン」
「何かのトンチでありましょうか」
「ヒントを願いますぞ、斗貴さま」
「あのその、上さまは絵姿の兄上をお気に召して、お側に召し抱えたいと、キャー」
「先ほどからたびたびお顔を隠されるが、婉曲表現ばかりでは分かりかねますぞ」
 ニャンニャン言う大福親方からニャンニャンと説明を受けた斗貴はニャンニャン色んな想像をしてしまい、婉曲表現しかできないのでした。
「ですからあの、兄上には特別のおはからいが……」
「フン」
 家臣たちは互いに目配せを交わします。
「やはりくさいですな」
「あいまいな罪状で準備をさせず、スピード裁判で片を付けようという腹ですぞ」
「父上の時のように? だけど父上も父上でしたわ」
 斗貴は、下屋敷を切り回すうちに気づいたことが多々ありました。
「蟄居処分で済んだのは有り難いくらいよ。父上ったら参勤交代はフケるし、藩金はチョロまかすし」
「斗貴。もうよい」
 和之進が脇息を押しやります。
「お前はようやってくれているが、あまり分を過ごした口をきくでないぞ」
「ごめんなさい。叔父上」
「何の抗弁もできなかった先代の時のようにはさせぬと言うておるのだ。桔梗介を守りたい気持ちは皆同じ」
「はい」
「こたびこそは十二分に備えをし、道義的潔白を証しだてる。そして、内に隠すものこれ一切なしと! 見事に腹かっさばき!」
「叔父上、切腹しちゃってますけど!」
「そうだが?」
 切腹は武士の誉れなのでした。
「伝説になれ、桔梗介……!」
「なりませんから、ホモの求愛受けたっていっこも伝説生まれませんから、キャー!」
 とうとう直接言ってしまい、斗貴は顔を覆いました。
「つまり三白眼が上さまをヘロヘロに……ジョイスティックで抜き身がニャンニャン……ビーチで樽酒が酒池肉林……」
「なんと」
「衆道のお誘いだったとは」
 迷走するぶっ込み説明とニャンニャン訛りで、破天荒な背景がかえってダイレクトに伝わります。
「さすが、我が藩きっての男色王子」
「工藤のお手ほどきの賜物だなあ」
 思わぬところで工藤の株が上がったりしつつ。
「では本当に、先代殺しごにょごにょ関連の訴追ではないのだな?」
「そうですわ」
「であれば、せっかくのご厚意から逃げ回っているのはますますいかん。不敬の罪で、結局捕縛されることになるだろう」
「ですけど」
「よいから早う桔梗介の行方を教えよ。斗貴、あやつはどこからお前に指示を送ってきたのだ」
 ……吉原から。と思ってまたキャーと顔を赤らめる斗貴でありました。



 一方、江戸城白書院 堀炬燵の間。
 報告待ちの将軍は、炬燵でほっこりしていました。
「クレオちゃん。ワシ、将軍なんかいつでも辞めたろ思てんねん」
「へー」
 クレオは手を黄色くしながらミカンを食べています。
「辞めてどうするネ」
「ショービジネスに向いとる気がすんねん。昔お忍びで大衆演劇やっとってんけど、結構人気者やってんで」
「分かる分かる。割と華あるネ」
「せやろ? 嬉しいなあ。こんなこと相談できるの、クレオちゃんだけや」
 将軍は、三白眼侍・脱衣バージョンのデザイン案を見比べてご満悦です。
「十和古やんの言いなりになっとるだけでは、本当の愛は手に入らんって分かったわ。しょせんは金で作ったハーレムや」
「その三白眼氏も、ハーレムに入れる思てたヨ」
「いーや」
 将軍は唇を噛んで首を振りました。
「彼に無理じいはせえへん。その代わりワシが自由の身になって、どこまででも追っかけるつもりや。どんなに拒否られても、踏まれても、地の果てまで……」
 手の届く美少年に慣れすぎた将軍は、手の届かない茨の道を想像すればするほど燃えてしまう、変態体質になっていたのでした。
「じゃあ、彼氏の身元が判明したらすぐに退位するネ?」
「いや。まだしばらくは働いて、実績を積まんといかんそうや。ポッと出のワシが次期将軍を指名しても、老中どもにハネられて終わりやからな」
「傀儡将軍は気使うネ」
「分かってくれるか。心おきなくシュミをさらけ出せるって素晴らしいなあ」
「何でも相談乗るヨ。あー、ちょっと炬燵でのぼせたネ」
 どっこいしょと立ったクレオは、ミカンの汁でしたためたあぶり出し文書を猛禽ロボの伝書ボックスにセットし、そっと窓から放ったのでした。



 ふたたび樋口家上屋敷。
 斗貴はまだ桔梗介の居所を問い詰められていました。
「だんまりもいい加減にせよ、斗貴」
 和之進がやれやれと立ち上がります。
「お前たち兄妹は、昔から言うことをきかぬ子供であったなあ」
「そうでしたかしら」
「お前たちが共闘したら手に負えぬと、亡き義姉上もこぼしておられた。桔梗介を土蔵に入れて仕置きしても、お前がかんざし一本で開けてしまうのだ」
 斗貴はそっぽを向いています。
「桔梗介を捕える前に、まずはお前を拘束しておかずばなるまいて」
「叔父上?」
 和之進は次の間へ合図を送りました。すり足の近習たちが駆け寄って、斗貴の腕を取ります。
「兄上を、お上に売るおつもりですか!」
「ご公儀は絶対だ。斗貴、お前も武家の娘なら聞き分けよ」
 広間を連れ出されながら、斗貴は必死に振り返りました。
「そんなにお上が怖いのですか! 穏健派とか言ってるけど、ただの腰抜けなんじゃないかしら!」
「待て」
 引き戻されて、斗貴は身をすくめます。
 ゆっくりと近づいた和之進の手が、かんざしを抜き取っていきました。

第17話につづく!)

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