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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。


大江戸870夜町(15)


 羽ばたき1号が検問を越えた頃。
 徒歩グループはまだ市中にいました。
「かかりますね」
 工藤は、やきもきと行列を見回しました。
「こんなところで足止めを食っているヒマはないのに」
 タンデムで逃亡されては困ると言って、華宮院のお頭がバックシートを譲らず、工藤は涙を飲んで徒歩組に回っています。
「市境検問は念入りっスからねー」
 行列はなかなか進みません。樋口屋敷に大福親方を置いたのち吉原の伝言を見て合流した雅だけでなく、シャワーを浴びてゆっくり着替えた劉までが追いつきました。
「あんたたち、まだこんなとこにいたの?」
 地下プロレス優勝の威圧感で、劉は悠々と割り込みます。
「侍風吹かせるとかして、順番譲ってもらいなさいよ」
「樋口みたいな小家の名を出したって、誰もビビらないよー」
「残念ながら吉澤さまの仰る通りです。劉さん、ちょっと先頭の方と交渉してみていただけませんか」
「やーよ、割り込みなんか」
「たった今なさったばかりですが」
「あら、たまたま親切な人が譲ってくれたのよ。ねーえ」
 後ろの数人は揃ってうなずきましたが、皆ガクブルの笑顔です。
「生傷まみれの大男にはどなたも親切です」
「やだ、猫傷よコレ!」
「偉い人用のゲートは全開よー。通っちゃう?」
 陽光太夫はのんきに言いましたが。
「太夫、あなたはお帰りいただけますか」
「なんでー!」
「ちょうど雅さんも来ましたし。店外営業から戻ったフリで」
「また送迎係かよ」
「将軍不敬犯の手配状が生きていたら、困ったことになりますので」
 くのいち装束の太夫は、全くのナチュラルメイクです。
「待って待って、すぐ塗る!」
 太夫はしゃがんでメイク道具をぶちまけました。
「口元のホクロ隠すぐらいじゃ足りないわよ。素直に帰りなさいな」
「チョー化けるから待ってー。赤じゅうたんで顔パスされちゃうくらいのセレブ風にするからー」
「まぶたに目描くのやめなさい」
 そこへ、たくさんのお供を連れた駕籠が現れました。当然のように偉い人ゲートへ向かいます。
「豪勢だわあ。あれくらいじゃなきゃ脇道は通らせてもらえないわよ。あら、こっち来る?」
 駕籠は行列の近くへそっと下ろされ、覗き小窓が開けられます。
「もうし、そこの細目のお兄はん」
「僕ですか?」
「お兄はん、お城で働いてみる気おへん?」
「あっ、十和古局よ。今の大奥を取り仕切ってる最高権力者よ」
 劉は興奮して足踏みします。
「ちょっと吉澤さま、駕籠のぞいてきてよ。十和古局のファッションチェックなら雑誌の売り上げ倍増だわ」
 ワーキャー言われ慣れている十和古局は、乗り込み扉を大きく開けさせました。
「吉澤はん。ものすごタイプやわあ、華奢で控えめやけど奔放でいながら品もあって」
「条件が厳しいんですね」
 猫かぶりモードで膝まづいた吉澤に、十和古が手をかけます。
「見た目よりガッチリしておいやすこと。いちおう警護衆どすからそこそこ腕力も必要どすのんえ」
「腕も腰も、丈夫です」
「うふふ。ほな採用」
「じゃあさ……」
 吉澤はスルリと十和古の手を取りました。
「僕の身分はもうお城勤めってことになりますか?」
「ま、働きもん。ほたらこのままお城へ参りましょ」
「おっけ。おーい、この人たちを通してやれー」
 お城勤めはそこらの同心より階級が上なので、調べ人はしぶしぶ工藤たちを通しました。
「吉澤さま……、何とお礼を申せばよいか」
「いいですよー。僕がしたくてしたことだから」
 工藤はぐっと拳を握ります。
「助け船らしさは毛ほども見せず……、この工藤、感服いたしました」
「やめろってば。本能に従ったまでさ」
「本能?」
 吉澤は含み笑いを隠せません。
「タイプよとか言われて後宮に手引きされるなんて官能小説みたいなこと、ほんとにあるんだねえ。やっぱり日頃の行いがいいから」
「京ことばで分かりにくかったかな……」
 そのタイプって確かホモ将軍のタイプだったよなーとたとえ心で思っても、口には出さない工藤でありました。



 一方、お山の中の華宮院では。
 日が落ちるのを待ち切れなかったキースが、行商姿で寺の門を叩きます。
「よう」
「……」
「俺のベイビーはどうしてる?」
「お元気ですよ。そろそろ離乳食です」
「ある意味赤ん坊より手がかかる方のベイビーは?」
 軽口には乗らず、尼僧はツンとして主の居室へ取り次ぎました。
「キース!」
 華が慌ただしく出迎えます。
「ちょっと事情が変わったの。樋口桔梗介の口を封じるまで、寺には近寄らないで」
「でも俺、言われた通り攘夷志士を集めてきたんだぜ」
「……何ですって?」
「倒幕派。幕府を倒すんだろ?」
「私たち、幕府の寺社禄で生活してるのに?」
「ああ?」
 夫婦はじっと見つめ合いました。
「えっと華、山はもううんざりーとか、言ってたじゃん?」
「ええ。都会っ子だもの」
「幕府の監視マジうざい死ねばいいのにーとかも、言ってたじゃん?」
「だからってぶっつぶせって意味じゃないわよ」
「アレレ」
 キースは懐から手紙を取り出します。
「俺たち親子がコソコソせずに暮らせる世の中にしてっていう、壮大にしてカワイーおねだりなのかと……」
「私、賭博の因縁をどうにか洗い出せないかしらって頼んだんだけど?」
 華の父親、先代将軍は博打好きで、賭博を全面合法化しました。
 誰でも大っぴらに博打が打てるようになったおかげでヤクザ主催の怖い賭場は一気に寂れ、それを恨んだ街道博徒が暗殺に動いたと読んだ華でしたが、キースは仲介の伊賀者のことしか知らないのでした。
 キースは手紙を取り出し、文面を指でなぞっています。
「でもだって、とーばく。えコレ、とばく?」
「もう、漢字は苦手って言うからオール平仮名にしてあげたのに!」
「毛筆むずい。てか華ってクセ字?」
「で、攘夷志士はどこにいるの」
 字ヘタがバレないうちにと華は話題を変え、キースは背後の山を指しました。
「石の採掘場に潜んでもらってる。穴だらけでちょうどいいから」
「仕方ないわね。何とか穏便に解散してもらって」
「できるかなあ」



 その頃、羽ばたき1号はお山を目指して飛んでいました。
 桔梗介がフォワードから呼びかけます。
「おい、着陸はどうする」
「しりこ」
 用人頭はペダルを漕ぎながら答えたので、第一声を噛みました。
「あー、シリカ玉の採掘場なら十分なスペースがある。我らの普段の仕事場だ。常夜灯を目印に着陸できるだろう」
「武人の身で石掘りとは、あんたも苦労してるな」
「言わんでくれ。おお、あそこだ。見えるか」
「ずいぶん賑わってるな」
「今日は全員召集だから、採掘は休みのはずだが……」
 こうして、羽ばたき1号は攘夷志士たちのど真ん中に着陸したのでした。

第16話につづく!)

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