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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。
 



大江戸870夜町(20)


「……叔父貴は誘いに乗っただろうか」
「恐らく」
 ようやく再会した桔梗介と工藤は、華宮院の僧坊に落ち着いていました。
「樋口さん。キースを雇った伊賀者のことだけど」
 スパンと襖を開けた華は、すぐさまきびすを返しました。
「おい、何だ」
「後にするわね」
「ご門跡、どうぞご遠慮なく」
「だっ、だってイイトコみたいだから」
 諸肌脱ぎの桔梗介に、袖をまくった工藤が手をかけています。
「誤解です。変装した時の白塗りが背中の方までいっていて、クレンジングを」
「あ、あらそう。やあね」
「あらそうじゃないわよー」
 天井板をガタガタとはずし、顔を出したのは陽光太夫でした。
「せっかく二人っきりにしといたのにー。おっぱじまるならこっからでしょうがー」
「……何の殺気も感じませんでした。さすがは忍び」
「発してるのは殺気じゃなくて邪気だからー」
 とんぼを切って飛び降りたところに、華が駆け寄ります。
「ちょうどよかった。あなた伊賀の人なのですってね。暗殺依頼のいきさつについて、詳しいことをご存知かしら」
「ちょうど私も聞きたかったんだけど。前将軍の一の姫であるあなたが、どうして暗殺犯と一緒になったわけ? 一体どんなロマンスが?」
「……劉さんはなぜ床下に?」
 工藤がのぞくと、劉がホコリまみれで現れます。
「ジャーナリズム精神よ。武士道と衆道のボーダーラインを探して」
「のぞきと取材のボーダーラインも探してください」



 朝寝が嬉しいハルと雅は、広間の布団で寝ています。
 これ以上盗み聞きされたくない桔梗介たちは、建て付けが丈夫な華の私室へ移動しました。
「重要な取引のことはあんまり知らないわー。私下っ端だったから。ほんとは小判にも近づいちゃいけなかったんだけど、金の匂いに抵抗できなくて」
「そう」
 なぜか桔梗介にんーんー話しかける息子をあやしながら、華は考えました。
「そういえば、伊賀者って普段何をしてるの? 直属の隠密とは聞くけど、お城じゃひとりも見かけなかったわ。まあ隠密だから、ちょくちょく見かけるものでもないんでしょうけど」
「忍びは現地集合だからあんまりお城には行かないわよー。お呼びがかからない時は、カジュアルにどこの依頼でも受けてたわ。一番のお得意は、街道博徒かなー」
「街道博徒!」
 賭博の因縁がつながって、華は息を飲みます。
「天井裏や床下からイカサマを見張るの。たまに手札を教えたりー」
「なるほどね」
 劉が目を閉じて集中します。
「伊賀者としちゃ、お得意様だから博徒連の依頼は受けたけど、将軍暗殺という依頼内容に抵抗があって、実行犯だけ外部から連れてきたんだわ」
「へー」
 陽光太夫は完全にひとごとです。
「華さんは、パパ将軍の仇討ちをするのー?」
「そのつもりだったわ。幕府内部の人間が糸を引いていたらね。でもヤクザの親分連合はちょっと」
「あら、キースさんならどんな手強い相手でもぶち殺してくれそうじゃない?」
「それはダメ」
 華はきっぱりと首を振りました。
「殺し屋が匿名依頼主を探すってだけでも業界のタブーなのよ。反転攻撃なんてさせられないわ」
「では黒幕が政敵の誰かだったら、ご自分でお相手なさるおつもりだったのですか」
「そうよ。太った幕臣の一人や二人、あれ一本で」
 壁には立派な長刀が掛かっています。
「暗殺みたいな反則使った奴がのうのうとお城にいるなんて、ハラ立つじゃない。私は山ごもりだってのに」
「へー。ヤクザ屋さんならハラ立たないんだー?」
「何かもういいわ。遠すぎて」
 華はすっきりした表情で赤ん坊を揺すりました。



 その頃。
「ダメっス~、海老ちゃんにイルカちゃん」
「くそ、放せ」
 雅はザコ寝布団でハルに抱きつかれていました。
「紅鯛ちゃんにサバ子ちゃん、ウツボ姉さん」
 海の生き物シリーズは、花札屋遊女の源氏名です。
「釣れないっス、魚だけに~。小鶴ちゃんつばめちゃんアヒルちゃん。鳥さんシリーズも可愛いっス~」
「マメな奴だぜ。きっちり人気番付順だ」
「じゃ、カップ順でいくっス~。小さい方から天音ちゃん鷺菜ちゃん」
「トップバッターかよ」
 雅はハルを布団巻きにして表へ出ました。きりりと澄んだ朝の空気を吸い込みます。
「天音、もうすぐ戻るぜ……ってコレ、何がどう決着すりゃ帰れんだっけ?」
 桔梗介が逃げ切るまでと思っていた雅ですが、樋口主従はお山から地方へ高飛びする様子もありません。
「まさか本気で幕府を相手取ろうってんじゃ……あれ。天音を預けてる以上、俺もこっち側だ。俺も攘夷志士なのか? うそーん」
 いたって平凡な人生を送ってきた雅は、急に攘夷とか言われても、漢字がモヤモヤしてしまうのでした。



 その頃、斗貴と親方は吉原にいました。
「お客のことはしゃべれねえんで」
 花札屋の下男と押し問答の末、ハル担当の団体客が、コスプレコースを選んだと分かります。
「そのまま店外へ……。これ以上は手がかりがないようね」
「諦めるのかニャ」
「逃げ続けてるってことに望みを持ちましょう。それより、ここにはもうひとつ用事があるの」
 斗貴はまっすぐ帳場に上がりました。
「天音さんの年季証文を買いたいのですけど」
「おや、身請けしていただけるんで? まーご奇特な」
「斗貴嬢さん……!」
 ヘたり込む親方に、斗貴はにっこり笑いました。
「私を土蔵から出すために体を張ってくれたのよ。この恩を忘れたら武家の名折れだわ」
「美談でございますことねえ。しめて二十一両になりますよ」
「ニャニャ、二十一両? 抱え金は二十両のはずじゃ」
「あらお父さん。天音は足抜けを謀りましてね。樋口ってお武家が保護してくださってるって、今連絡があったんですよ」
 斗貴はぐっと両手を握りました。
「報奨金の分はこっちへ上乗せされるんだわ。全く、女の子を働かせて小遣いをせしめようなんて、武士の風上にも置けない……」
 遣り手婆と店主が寄って、またたく間に証文が整います。
「さ、こちら。即金で願えますかね」
「いいえ」
 斗貴はにっこりと首を振りました。
「私もそんなお金は持っていませんの」
「ああん? お嬢さま、難しい謎かけは御免でございますよ」
「簡単な商いですわ。私を売りに出してくださいな」

第21話へつづく!)
 

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