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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。


大江戸870夜町(17)


 一方、とっぷり暮れた採掘場。
 わあわあやかましい両陣営に、華宮院の紋入り提灯が割って入りました。
「おーい、どっちもストップストップー」
 提灯持ちのキースの後に、華が続きます。
「こんばんは皆さん。盛り上がってるわね」
「ご門跡、これは一体!」
「キースどん、約束は!」
 クレームいっぱいの面々がぴょこぴょこと顔を出し、華は舌打ちしながら見回しました。
「ええと、志士の皆さんにはキースからお話があります。それでお前はどうしてここにいるの。樋口の嫡男は殺ったの?」
「それが」
 用人頭は膝まづいて長い報告に入り、桔梗介は気まずい感じで志士たちの列に加わりました。
「おまさん。手配中の三白眼でねっか?」
 ひとりが懐から人相書を出します。脱藩浪士である志士たちは、検問の動きを常にチェックしているのでした。
「おいたちと同じお尋ね者じゃったか」
「まあ、そうだ」
「空なぞ飛んで、大がかりな逃亡やのう」
「まあ、そうだ」
 探り探り意気投合した桔梗介は、彼ら攘夷派連合が、エゲレスの協力を取り付けるつもりだと打ち明けられたのでした。
「外国支配を打ち払おうというのが攘夷だろう。異人なんかと手を組んでいいのか」
「攘夷の前にまずは倒幕だで」
「弱腰の幕府に任せておっては、列強にええようにされるばかり」
「ここはええのう。江戸が一望のもとに見渡せる」
 男たちは居座る気マンマンです。
「どうしてこう極端な話になってるのよ」
 呆れ返る華に、キースはガイジンジェスチャーで両手を広げてみせました。
「読めない手紙をもらったら、行間を読むしかないじゃないか。エゲレス人の俺に頼むんだから、外交筋を当たれってことだと思うじゃないか」
「当たってもらいたかったのは賭場を仕切る暗黒街の線よ。あなた殺し屋でしょ」
「すげー頑張って根回ししたんだぜ。殺し屋なのに……」
 キースはしょんぼりしながら進み出ました。
「あー諸君。せっかく来てもらったが、華宮院を倒幕の拠点にするという話は一旦白紙だ」
「何ー?」
「今日のところは山を下りてくれ。いや、エゲレス公使には必ず紹介するから」
 志士たちは黙っていません。
「きしゃん、この期に及んで言を左右に」
「公使にコネがあるいう話も怪しいもんぜよ」
「あ、そこはほんとだから。公使の名刺もらってるから」
 キースは懐から印籠を取り出しました。
「名刺入れにちょうどよかったなあ、これ」
 トリプルハートがぴかりと反射します。
 志士たちは息を飲みました。
「それは葵の……!」
「こやつ、幕府の犬じゃ!」
「え、違うぞ。ほら名刺」
 名刺を見せてるつもりのキースはぐいぐい印籠を差し出して、男たちは後ずさります。動揺する視野でブレまくるトリプルハートは、やっぱり葵の御紋に見えました。
「せからしか、だまされたったい!」
「援助話でわしらを集め、一網打尽にしようとは」
「おーい、聞けー」
 抜刀していく志士たちを説得する気も失せ、キースは華を背にして銃を抜きました。



「拳銃は当たらんちゅう噂じゃ」
「一斉にかかるぜよ」
 一触即発の中間地点に、棒立ちの桔梗介がいます。
「どけ樋口。色々つかんでるらしいから殺さずにおいてやる」
「何だとーう。仕方ない、条件を飲もうじゃないかキース君」
「? どういうボケだか分からんぞ」
 キースが狙いをつけかねている間にも、桔梗介は両手を振り回しました。
「うわあ、何でも言うとおりにするから、人質を放すんだキース君」
「人質なんてないぞ」
「樋口さんとやら、下がっとってくれんか」
「状況を勘違いしとられるようじゃ」
 桔梗介はかまわず最前線を歩き回りました。
「その女は幕府要人の血筋だ。その銃殺死体を倒幕派のしわざに見せかけようなんて、お前はどこまで卑劣な奴なんだキース君」
 長い説明の間に、華とキースはそーっと入れ替わります。
「わっはっは。こいつを殺して幕府への挑戦状っぽくしてやろうか。死体の眉毛をマジックでつなげてやろうか!」
「きゃー、助けてー」
 行間の読めないキースなので、台詞は華の口立てですが、棒読み台詞も地方出身者たちにはかえって聞き取りやすいようでした。
「くそっ、わしらに女殺しの汚名を着せようてか」
「銃殺死体で真っ先に疑われるんは、拳銃を携帯しとる坂本さん……」
 志士たちの戦意が揺らぎ始めた頃。
「行け。ここは任せろ」
 桔梗介は背中越しに囁きました。
「あれは連発銃だ。一斉にかかっても半数近く殺られるだろう。大事を前に兵力を削ってる場合か」
「む」
「ここは俺が食い止める」
「樋口さん、あんた……」
「どうやら俺も、志ってやつに感化されたらしーヤ」
 桔梗介はぎくしゃくとイイ奴スマイルを作りました。
「安心しろ。あいつが女を殺しても、俺が必ず生き延びて、マジックでキースって書いといてやる。ふぁカモトさんのしわざになんぞさせるものか」
「坂本さんを知っちゅうがか」
「はカモトさんは俺の英雄だ。さカモトさん。ちゃカモトさん」
 どれか当たってるはずなので、桔梗介は話を進めます。
「キースの役目は恐らくあんたらの足止めだろう。俺は上空から見たんだが、谷へ下る道に誘導灯がついていた。捕り方はそっちから来るはずだ、尾根側へ逃げろ」
「さすが」
「空飛ぶお尋ね者は無敵じゃ」
「一番ヤバい手配犯は二人まで、羽ばたき1号を使うといい。離陸は助走が肝心だ。何人かで押してやれ」
「分かった」
「おまはんも立派な志士じゃ」
「この恩は忘れんきに!」
 志士たちは、涙を拭って走り去ったのでした。



 華はほっと息をつきました。
「助かったわ。感動屋さん揃いで」
「助かったわ樋口さん、ですよご門跡」
 用人頭がやきもきと間に入ります。
「すまぬ樋口どの。人に頭は下げぬお方なのだ」
「期待してないさ。ようキース君。その節は」
 桔梗介は妙なテンションのままちゃきっと指を立て、キースはうさんくさげに睨みました。
「その節って何だ。俺は行間を読むのが苦手だぞ」
「うちの親父を殺してもらって」
「事故だ」
「そうだったな」
「暗闇で、ちょっと余裕がなかったし」
「キース君、さっきはもっと余裕がなくて、全員殺す気だったろう」
「華の安全が最優先だ」
「いやだ。あの人数の死体の山なんて、後の始末が大変よ」
 愛が空回るキースは、桔梗介に当たるしかありません。
「お前いつからそんなしゃべるキャラんなった、樋口」
「必要な時だけさ。親の仇を目の前にした時とかな」
「俺、迷惑料を払ったろ」
「そうだった。律儀な男だ、感心感心」
「何だよ……」
「律儀なお前は、こうして窮地を救われた恩返しをしたいだろうな」
「……」
「恩返しをしたいだろうな」
 二度言えばキースでも行間を察します。
「分かったよ。何でも望みを言ってくれ」
「お前、エゲレス公使に顔がきくというのは本当か」

第18話へつづく!)

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