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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。
 


大江戸870夜町(19)


 人みな眠る江戸の夜。
 こんな時間に出歩いているのは、大抵カタギではありません。
 酔っぱらいやヤクザ者や酔っぱらったヤクザ者が、つぎつぎ斗貴に絡んできます。
 そのつど大福親方がシャーフー言って追っぱらうのですが、病身の親方はさすがに息が切れてきました。
「おいらもう歩けねえニャ。先行っとくれ」
「船にしましょう。運河が近いわ」
 斗貴は、親方を支えながら船着き場へ向かいました。
「変わった駆け落ち者だなあ。面倒は困るんだが」
 不審げな船頭は割増料金を要求してきます。
 乏しい小遣いをあるだけ渡した斗貴は、髷からピッキング棒を抜きました。
「あとはこれくらいしか」
「かんざしかい。べっこうか銀か……、鉄? 身なりに合わねェ野暮な趣味してんな」
「舶来品ですよ。兄上が土蔵に入れられた時、道で泣いてた私に、通りすがりのジョン万次郎さんがくれたんです」
「アメリカ土産かい」
「向こうでは先住民に間違えられることが多くて、投獄されてはこれで華麗にプリズンブレイクしたとか」
「えーとつまり?」
「錠前開けができるんです」
「い、いらねえよ、そんな盗っ人まがいの」
「おーい、今盗っ人とか言ったか」
 通りから声をかけたのは、提灯を提げた番所役でした。
「や、こりゃ清十郎の兄ぃ」
 船頭は急にペコペコします。
「怪しい娘がおりやして、ちょうどご番所に届けようとしてましたんで」
「ひどいわ、あるだけ巻き上げたじゃないの。この人の懐をあらためてみてくださいな」
 これこれこうと説明した通りの財布が出てきて、清十郎は船頭を締め上げました。
「この野郎、どういう了見だ。夜間料金ったってボリすぎだろう」
「そんなぁ、いつものお目こぼしの範疇ですぜ。取り分もきちんと折半」
「うほんげほん、お前でまかせ言ってんじゃねえぞー」
 いいとこ見せたい清十郎ですが、斗貴の目はごまかせません。
「まあ。権威をかさに着て、いつもこんなことを?」
「いやお嬢さん、不審者を片っ端から捕まえてたらキリがねえんで。ある程度金を持った奴なら不逞の輩とは違うだろ。そのへんは各番所の裁量だから」
「私のことも、ご裁量で見逃してやろうとおっしゃるの?」
「まあホラ。船が入り用なんだよな? 俺が船漕いで送ってってやろうか」
「特別扱いは結構です。私が不審者で、船頭さんが不当料金業者。きちんと手続きしてくださいな」
 頑固な斗貴は、自分から番所に向かったのでした。



 船頭は口頭で指導を受け、身元について黙秘を通した斗貴と親方は、留置場にぶち込まれました。
「さ、私の分もお布団重ねてください」
「ニャア。斗貴嬢さん、おいらの体を気遣ってわざと番所に?」
「夜の間はどう動いても止められるわ。朝一番に出ましょう。こんな錠前チョチョイで開けられます」
「ニャニャ、しーしー」
 斗貴が格子から手を引っ込めたと同時に、清十郎が顔を出しました。
「寒くねえか。俺の綿入れだが使うかい」
「まあ、ありがとう」
「すんなり身元をしゃべっちまえよ。朝んなりゃあんたの親が届けを出して、それが照会に上がって来んだからよ」
「そうですわね」
「どうせ叱られるなら番所沙汰じゃねえ方がいいだろ。今のうちなら俺が送ってって、あんたが急病で倒れてただの適当に言い繕ってやるぜ」
「……」
「そういうのは嫌なんだったな。真面目すぎんのも疲れねえかい」
「……」
「自己紹介したっけか。俺、清十郎ってんだ。名の通り清い人間になるのもいいかって、あんたを見てて思っ」
「くー、くかー」
「……肝の太いお嬢さんだぜ」
 翌朝、空っぽの留置場に立ち尽くした清十郎は、朝日に向かって「俺のばか」と呟いたのでした。



 始業の早い樋口家上屋敷。
 斗貴は反省したかなと、和之進が土蔵へ向かおうとしていた矢先。
「殿! 殿!」
「何事だ、騒々しい」
 近習はアワアワと表を指さしました。
「門前に異人が参っておりまして、エゲレス公使館から来たと申しております」
「コチラ、ミスタ・ヲーケンですヨ」
 通訳が提示した身分証には確かに「公使館 臨時職員」とあり、門前払いはしにくい感じです。
「何だか知らんが、お通ししろ」
「チョ武家屋敷まじクール、ワびてネ? サびてネ?」
 はしゃぐ通訳は俗語ばかりが流暢です。臨時雇いのキースに、公用の通訳は付かないのでした。
「ウッソブーツ脱ぐと思ってナカッター、ダサい靴下履いてきちゃったんデスケドー」
「あのう、何でしたらお靴のままで」
「エゲレスジョークですヨ。ツカミはオッケー」
「 ....It's not O.K, idiot.(オッケーじゃねえ阿呆)」
 キースは自分でしゃべりたいのをぐっとこらえ、英語で本題を切り出します。
 フンフンと耳を傾けた通訳は、ひとつ咳払いをしました。
「サーテ、オメデトゴザマース樋口さん!」
「はい?」
「これからの倒幕運動は、エゲレスが全面的に支援しマスヨ。臨時職員の臨時根回しデ、攘夷派が続々と集結中。日本の夜明けは近いワネ!」
「倒幕運動」
「どういう言いがかりでござるか」
 通訳は手配書を取り出します。
「聞いたこともないようなトンデモ罪状で訴追されとるこの人。お宅の嫡男でよろしかったデスカ」
「ええ、まあ」
「一体どうやってそのことを」
「それはマア置いトイテ。ひどい話ヨネエ。濡れ衣ヨネエ。幕府の横暴に苦しんでいるノネエ」
 ことさらに気の毒がられ、家臣たちはひそひそと囁き合いました。
「現状への不満をあおろうとしているな」
「これは、寝返り工作の常套手段ですぞ」
「殿。ご油断めさるな」
「あー、ヲーケンどのとやら。これはホモの求愛でござる」
 ぴしゃりとやっつけた和之進でしたが。
「ナーント、君主がおおっぴらに男色を喧伝するダッテ。野蛮きわまりない政権デスヨ。即刻滅びてもらいマショウ」
「いかん、キリシタンには逆効果だった」
 侍たちの困惑をよそに、キースは長文をまくしたてます。通訳はにんまり笑いました。
「見たトコロ、ご嫡男は逃げ回ってマスネ」
「ああ。我らも早々に出頭させるつもりでおる」
「しかし、手配書が回された時点で“あっコレうちの甥です”と手を挙げたりはなさらなかったようデ」
「いや、最初はちょっとパニくって。別件のごにょごにょ容疑なのかと」
「すでに手配から一昼夜。コレ藩ぐるみで隠し立てしとるみたいに見えるけど大丈夫カナー、どうカナー」
「……それは脅しと受け取ってよろしいか」
「早く言えばそうデスワ。ちょっとした条件飲むナラ、全然黙っといてあげマスヨ」
「条件とは?」
「集結しすぎた脱藩浪士が江戸での拠点に困っとりマス。樋口サンとこで受け入れてくだサイ」
 結局は倒幕参加のお誘いになり、家臣たちは頭を抱えました。
「いけません、殿」
「ようやく藩政が落ち着きを取り戻したばかり」
「しかし見たか。人相書きひとつでこうもあっさり身元を突き止めて来た。地の利のない異国の地で、何たる諜報力」
「確かに、とても太刀打ちできそうにありませぬ」
「今や江戸は列強の手中にあるも同然」
「皆の者、これは小家の我らが打って出る好機と考えよ」
「では殿」
「この大船、乗るぞ」
 かくして、和之進とキースはがっちりシェイクハンドを交わしたのでした。
「メデターイ。やっぱ一国の大名を味方にできるのは大きいネ。脱藩浪士の寄せ集めデハ、本国へのプレゼンもしにくかっタヨ」
「ご期待に添えるかどうか。我ら穏健派なもので」
「またまたご謙ソーン」



「それじゃあ今日はこのへんデ。ステイチューンブリティッシュFMバイバ~イ」
 お調子よく屋敷を辞した通訳は途端に真顔になり、懐からミカンくさい文書を取り出しました。
「Let's see ....」
 香ばしいあぶり出しは、大英博物館エジプト部門からスカウトされた潜入工作員、クレオの報告書です。
「既出の情報との矛盾はないようだな。いいだろう。ツカミはオッケー、ネタもオッケーなんちて」
 通訳は情報精査担当のエージェントで、ぶっつけ本番の売りネタ審査を終えたキースは、ほっと安堵の息をついたのでした。

第20話につづく!)
 

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