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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。


大江戸870夜町(10)


「大変なことになった」
 お城で謁見を終えた和之進は、すっかり泡を食っていました。
「桔梗介が、桔梗介が」
 大量に複写されたクレオのスケッチが、諸侯に回されたのです。
「なぜこうもいきなり手が回るのだ。それも人相書きだけが」
 暴れん坊将軍の恋人探しという詳細までは知らされなかった和之進は、急ぎ使者を走らせました。
「お上の手配だと?」
「どこから何が漏れたのです。罪状は」
 てきぱきと支度する桔梗介と工藤に、使者は首を振るばかりです。
「とにかく上屋敷へ。我らがお守りします」
 ぴたりと駕籠が横付けされましたが。
「いや。俺が上屋敷で捕まっては、樋口家全体に類が及ぶ」
「ですが」
「ご心配なく。こういう時のために確保している場所がありますから」
「いえあの、お逃げいただいては困るんです」
 屈強な駕籠かきを従えて、使者は立ちはだかりました。
「先代殺しについて、樋口家としての正当な言い分をこれから皆でまとめようと、殿の仰せです」
「だから俺は殺っとらんと言っとるだろう」
「そういう抵抗は心証を悪くします。どうか武士らしく、上屋敷でお縄を」
「失礼」
 タックルで町家を出た二人は、入り組んだ裏路地を抜け、緊急時の隠れ家にやってきました。
 コツを知らねば動かせない板戸をスルリと開けた工藤は、半裸の女と顔をつき合わせていました。
「キャッ!」
 女は着物を抱えて次の間に逃げ込みます。
「嫌だなあ。ノックぐらいしてくださいよー」
「よ、吉澤さま?」
 ばたばたと身支度した女は、吉澤に送られて帰っていきました。
「一体ここで何を……」
「あー、裸エプロンの機能性について有志による研究会を」
「ひとのアジトをそういうことに使わないでください」
「いいじゃん。滅多に使わないんだからさー」
「今がその滅多です」
「何。とうとう二人で駆け落ち?」
「そんなようなものだ」
「若……」
 吉澤の情報網をあまさず利用するために、工藤はぐっとこらえます。
 桔梗介はどっかと座り、尻に当たったお道具を吉澤に投げました。
「樋口家と、お上そのものからも追われている。こういう場合お前ならどうする」
「そうだなー。ちょっとでも味方を増やす」
「ですからその方法は」
「困ってるところを助ければ、人は大抵恩義に感じるよ」
「困ってる方をどうやって見つけるんです」
「今ちょうど壁の向こうのバーに雑誌編集者が監禁されてるんだけど、その人助けたら協力してもらえるんじゃないかなー♪」
 桔梗介たちの隠れ家は、“紅牡蠣亭”のま裏にあったのでした。



「そういうわけで、声だけはツーツーなんですよ、ここ♪」
「何がそういうわけでよ」
 晴れて壁越しの会見を果たしたレッドオイスターズでありました。
 劉は通気口に向かって怒鳴ります。
「私がここへ放り込まれてから、ずっと知らん顔でいたわけ? 声を抑えてやーらしいこと続けてたなんて、あーやだ」
「さるぐつわはただの初期装備ですよー」
「あんたの情報がグダグダだった理由が分かったわ。そこで通気口越しの会話をテキトーに聞き取っただけなのね」
「あはは、バレたか」
「ということは、頻繁にこちらをご利用だったのですね」
「あはは、バレたか」
「すでに秘密の隠れ家ではない気が」
 工藤は頭を抱えています。
「大丈夫大丈夫。みんな人妻だから、ここのことは絶対に漏らしませんよー」
「女性は複数いるんですね」
「大丈夫大丈夫。それぞれ弱みも握ってるから」
 吉澤は思い出し笑いながら通気口を調べ、桔梗介に向かって片手を出しました。
「じゃ、その首に掛けてるお守りをください」
「何だと?」
「肌身離さず持ってる書き付けをお預かりしますって言ってるの」
「なぜそれを」
「妹さんが初めての手習いで書いた、あにうえだいすきってやつを早くこちらへ」
「分かっ、分かったから」
 お守りを持って下屋敷を訪ねた吉澤は、斗貴の承諾のもと、大工の福助親方を連れて戻ったのでした。



「じゃあ、そっちへ渡しますよー♪」
「はいっスー」
「ニャア」
 白猫が顔を出し、ハルは通気口にぺこりと頭を下げました。
「えと大福親方、初めましてっス」
 白猫は馬鹿にしたようにオッドアイを細め、すとんと床に降り立ちます。
「ニャア」
「ニャア」
 トラじまやサビ柄があとからあとから湧いてきて、劉とハルは増えていく猫たちの気を散らさないよう、じっと身をすくめました。
「ふわー猫まみれっスー」
「あんたさあ、どうして猫が親方だと思ったわけ」
「だって、話の流れでつい。ニャアニャア言う親方はもう猫に変身とかできるのかなって」
「万能ファンタジーにもほどがあるわよ」
 ちゃんと人間だった大福親方は、猫ならもぐりこまずにはいられない猫ドアを、隠れ家の外壁に取り付けたのでした。
 シャカシャカ袋のトンネル付き階段を通気口につないだので、紅牡蠣亭には狭いとこ好きの猫がどんどん送り込まれていきます。
「ちょっと、そろそろ足の踏み場がないわよ」
「我慢してください。猫サイズの通気口から男二人が逃げ出すなんて不可能なんだ。攪乱作戦しかないんですよー」
「シャーッ」
 あちこちで猫同士の小競り合いが始まっています。抜け毛がモヤモヤと宙を舞い、鼻をひくつかせたハルと劉が身をよじり、くしゃみをタメにタメて、
「びえっくしょーーい!」
 怒号を合図に、猫たちの野生が爆発しました。
 どんがらがっしゃんバリバリぶにゃー!
「何だ何だ!」
「出入りか!」
「地下だ!」
 駆けつけた従業員が倉庫の扉を開けると、ケンカ最高潮の猫たちが雪崩を打ってあふれ出します。
「うわーー!」
「いててててー!」
「引っかかれまくりよー!」
「おかげで縄が切れたっスー!」
 逃げまどう従業員たちに紛れ、劉とハルは暴力バーを脱出したのでした。

第11話へつづく!)

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