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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これは「870R」(サイトは18歳以上推奨)からの二次創作であり、「王さまとブヨピヨ」の続編です。


第一話はこちら


おこさまのよみものでは ありません。


サミー・エバーパインの逆襲(5)


 ナナメ立ちしたフューナリーは、芝居がかって片手を差し伸べました。
「クリクリ坊主め。何だ、カッコつけて」
「お聞きなさい、明けの明星の将軍。時を出し抜けるなどと思い上がった愚かな天使よ」
「失礼な。誰が愚かで陰険で83Cカップしか愛せない変態天使だ」
「……!」
「クドージンさん、耐えてくださいっス。弟に任せてみて」
「時空の因果に背き、時を出し抜くというのがどういうことか、あなたは本気で考えたことがありますか」
「フン、僕はいつだって本気汁さ」
「聞きなさいったら。時を待ち伏せするには、時の誕生を捕まえる必要がありますね。時の始まり、時の中の時、ビッグバン当初の輻射が漂っている場所があるとしたら、一体どこでしょう?」
 クイズ形式にされると、王は答えずにいられません。
「ピンポン!」
「はいヨシザワス王」
「最も古い過去は最も遠方にあるからー、宇宙の果て?」
「正解」
「やった!」
「宇宙の果て。その向こうに行って初めて、時を凌駕したことになります。ところで膨張宇宙の果ては時が経つほどに遠ざかっていきますが、あなたは四大元素の主、物質世界の総体だ。あなたの宇宙は常に、光の届く範囲が限界です。その先に何があろうが、あなたは認識すらできないんですよ。光速を越えられないあなたは、どれだけ時間をかけても追いつけない場所に行こうとしてるんだ。お分かりですか」
「わあ、本当だ」
 理屈好きな王は素直に感動し、トキは掛け値なしの敬服を見て取りました。
「素晴らしいわ! もう約束できるわね? 二度とトキに逆らわないって」
「はあ?」
 いまいち飲み込めてない王に、じたばたとブロックサインが送られます。作戦名、土下座。
「あ! えーと、はい神さま。身に沁みました。僕みたいに愚かでネクラで胃弱なヤクザに、世界征服なんてどだい無理だったんですね」
「よく言えました!」
 トキは嬉しそうに両手を打ち合わせます。
「あなたがひっくり返した魔導原理も、元に戻してくれるわね?」
「え? えと、もちろんです。でも、神さまがご自分でやるんじゃないの? さっきのコスプレ解呪みたいに」
「んー、あなたの発想って突飛すぎて、呪文の暗号化ルールが読みとれないのよね」
「ああー、そうそう。僕はありがちとは対極の男ですからね。キングオブ有り難いとは僕のことです」
「ねえトキちゃん。それは、魔法を使うこと自体は禁じられてないってこと?」
「もちろんです」
 トキはにっこり笑いました。
「魔法も因果律の一部だもの。リューさん、あなたの術者ポリシーは大変よろしい。私利私欲に走らないし、おかしな大義に熱を上げることもないし、ほどほどで身の程を知ってて、とってもありがちよ」
「それはどうも……。褒められた気がしないけど」
「ありがちって、有り難いより大事なことよ。宇宙がいちいちアナーキーだったら、落ち着いて恋もできないでしょう。あら? ちょうど誰かが恋の炎を燃やしてる」
 トキの耳には、あらゆる魔法反応の波動がキャッチされるのです。恋の魔法もそのひとつでした。


 転送水路に入らなかったベンテーン卿は、都を目指して飛んでいました。大気の摩擦で火種がゴウゴウと燃えています。
『急ぐんや。都の住人がキーワードを言うてしまう前に、ブヨピヨ紋を焦がしてしまわんと。助けられるのはワシだけなんや』
 眼下の川幅が広がり始め、卿は一気に高度を下げます。
『ワシの子猫ちゃーん! 今おデコにチューしたるー!』
 岸で虫を追いかけていた黒猫は、恐怖で目を見開きました。きりもみしながら落ちてきた火球の中心には小鼻をふくらませた男の顔が―――
「ブニャーーー!」
「どしたニャ、黒坊!」
 のた打ち回る黒猫を抱き止めた船長は、プスプスと煙を上げる額のヤケドに慌て、子猫をザブンと川水に浸けました。
 火種はジュッと音を立てて消えました。


「じゃ、帰ります。薄着のみなさんは風邪ひかないようにねー」
 唐突だな! と突っ込むヒマもなく皆が固まっているあいだに、トキはてくてく歩いて行ってしまいました。
「……僕、助かったのかな?」
「多分……」
「か、神さまを言いくるめちゃった……」
 どは~と息を吐き、一同はその場にヘたり込みました。
「きっと神さまのスケールから見て収支が合ってれば、細かいことは別にいいのね」
「そうヨ。私ら神さま視点からすると、シッポのあるなしどうでもいいネ。肝心なのは猫シッポ / 犬シッポのオプション判断ヨ」
「俺のは皮膚シッポっスけど」
「……ちょっと販促ターゲット難しいヨ」
「にしてもあんたの弟、即興であれだけの演説をよくやったわ」
 ほっこりと正座していたフューナリーは、坊主頭をぽりぽり掻きました。
「即興じゃないですよ。あれは新作のプロット。資料でそっち系のを読んでたからつい」
「そっかーお前、とうとう真面目なものを書く気になったんだな」
 全裸のニッシーナがお兄ちゃんの顔で言いましたが、フューナリーは首を振りました。
「違うよにいちゃん。次は官能物理学ファンタジー。『双子と3Pパラドックス! ~ブチ込め☆光速シャトル』、みんな買ってね~」


 ありがちに時は移り、場面は森のきこり小屋。なぜかトンテンカンと槌打つ音が賑やかです。
「よお、こりゃ一体何だ」
 サミーは羽ばたきながら草地を見渡しました。
 リューやニッシーナ兄弟、そしてヨーコリーナたち王宮職員が、それぞれ大工仕事に取り組んでいます。
「木を隠すなら森、オカルトを隠すならオカルトよ。トキちゃんのありがち理論に従えばね」
 きこり小屋の騒動を何とかするという約束を、最終章で都合よく思い出したリューたちは、ここを一大展示スペースにしようとやって来たのでした。
 でかでかと掲げられた看板には、おどろおどろしい書体で、『サミー・エバーパインの逆襲』と刻まれています。
「冥府から舞い戻ったきこりが、悪霊となってさまよってるって設定よ」
 がおーと両手をふりたてた木彫人形が一体完成しており、アマネリアが無精ひげを描き込んでいます。
「どれもえらく雑なんだが」
「だからいいのよ。この素人仕上げなら、田舎の展示博物館みたいにすぐさびれるわ。お土産コーナーもあるのよ。はい、カタログ草案」
 サミー饅頭、悪霊ペナント、きこり木刀などダサ土産の粋を極めたラインナップは、コアなマニアが引くこと必至です。
「細かいグッズは大フック船長に発注しようかしら。アマネリア、頼んでくれる?」
「いいよ! サンプル品いっぱいもらおうっと♪」
「あとゴーストとゾンビを二つ三つ作ってと。電飾たっぷりにしてあんたたちのキラキラをカムフラして」
「それも外注したらどうだ。女神の工房とかに。黒猫の抜け毛を梳き込んだら瞳孔の深みすげーって張り切ってたろ」
「あんなの、出来がよすぎて人気出ちゃうでしょ。人海戦術でやっつけてくしかないの。魔法さえ使えたらラクできるんだけどねえ。あら?」
 リューはのこぎりを見つめて考え込みました。
「考えたら、クドージンの魔法はバグらないのよね。戦ったときも、発破の狙いは正確だった……」


 ハシゴを上って、ヨーコリーナが顔を出しました。
「くどりん、また指切ったの。なめてー」
「ヨーコリーナさん、だから軍手をはめてくださいと何度も」
 クドージンは、電飾用の発電機を配線するため屋根にいました。
 ばす! ばす! ばす!
 ガス圧式釘打ちの要領で、ミニ発破を打ち込んでいきます。
「ちょっとどきなさいヨーコリーナ」
「やん、リューぽんが太もも叩いた、骨折ーなめてー」
「引きずり下ろすわよ」
 ヨーコリーナはひゅっと姿を消し、代わりにリューが上がって来ました。
 ばす! ばす! ばす!
「クドージ……、魔法……」
「リューさん。すみません、今何と?」
 クドージンは発破の手を休め、リューはハシゴから屋根に足をかけました。
「思いついたの。あんたの魔法は天使将軍直伝でしょ。成分分析すれば、世界の魔導原理をぐちゃぐちゃにしたバグの暗号化ルールが分かるはずなのよ。調べさせてもらえるかしら」
「はあ、ええと」
「キスさせろって言ってんの」
「い、嫌です……!」
「私だって好きでやるんじゃないわよ」
「むにゃむにゃ、嫌がっても体は正直……、はっ」
 デッキチェアに寝そべったヨシザワス王がサングラスを上げます。
「今誰か“嫌”とか“好き者”とか言った?」
「王さま、ちょっとドSスイッチ入れて手伝ってちょうだい」
 クドージンはひらりと屋根から飛び降りました。
「裏へ行ったわ! 手の空いてる人協力して!」
「ふぉっふぉっふぉ、カニばさみじゃ~」
「リューぽんの次、私だからー」
「にゃーにゃー」
 エリザベスカラーをバタつかせて、黒猫も駆け回ります。額には大きな絆創膏がありました。
 文字通り愛の炎に殉じたベンテーン卿の献身には誰もが涙しましたが、残されたヤケドの痕は、そっと絆創膏で隠されました。
 ベンテーン卿は、猫の額に自分自身の証を魚拓方式で焼き付けたのでした。大フック船長によると、最後の言葉は『チン拓ならぬベン拓や~!』だったとか。
「アマネリアさん!」
 逃げ回るクドージンは、いつの間にか黒猫を抱えています。
「ちょっとお願いします、踏まれてしまう!」
 弁当のカゴに猫を収めてクドージンは走り去り、アマネリアがフタのリボンをしっかり結びました。
「心配症だなー、クドージンさん」
「おかげで、小屋の設備の充実ぶりったらないがな」
 まだまだブヨピヨ人気の冷めない都を避け、黒猫はきこり小屋で飼われることになったのでした。
 ふかふか猫ベッドに全自動猫トイレ、空調完備されたひと部屋丸ごとを割いて猫タワーが作り付けられ、エロ本を収納した浴室戸棚が壁で塞がれたので、サミーはひと安心です。
「だからサミーはクドージンさんの味方なの?」
「んな、何がだ」
「クドージンさんを捕まえるの手伝わないじゃない。魔法がデバッグされれば人間に戻してもらえるんでしょ? 何も小屋のリフォームしてもらった恩があるからって」
「あー。まあ俺は、この姿も気に入ってきたからな」
 サミーはむきだしの腿をパンとはたきました。
「トキ神がさ、みんなの変身をただのコスプレにしたとき、俺だけはこのままだったろ。きっともう俺にとっちゃこれが本来の姿なんだよ。俺は俺のまま、お前はお前のままで、ぼふ」
 アマネリアが体当たりで抱きつきます。
「あのねサミー! あのね!」
「脱ぐな」
「違うよ! これ……」
 アマネリアは衣の下から薄い金属片を取り出しました。
「ずっと渡せなかったの。エルフ市民の認識票」
「へえー、立派なもんだ。読めねえが」
 細かく印字されたルーン文字を、アマネリアがひとつひとつ指さします。
「これが更新期限、これが社会保障番号、文化施設も利用できるよ。これがDVDのレンタル番号、複眼効果でぶっ飛ぼうね♪」
「だから、ねえって複眼」
「現住所:エバーパイン森きこり小屋、身分:アマネリア・セト所有のペット」
「ペッ」
「ごめんね。私が若年だから、同居者項目これしかなくて」
「……まあいいさ。しかしこいつと同類か」
 カゴの隙間から黒い足が出て、懸命にリボンをまさぐっています。むにっと突き出た爪が、はずみで結び目にひっかかりました。
「やべえ、うおっと」
 フタを跳ね上げた黒猫は、キラキラサミーには目もくれず、木立の向こうへまっしぐらに駆けて行きました。
「クドージンが心配なんだなあ。もう何の能力もねえのに」
「すごいね。魔法だね」
 アマネリアはうっとりと言いました。
「思ったんだー。私たちの愛の魔法がちゃんと波動を響かせられるように、トキちゃんは時空を整えてるのかなって」
「シメに入ってんじゃねえよ。パンパンうるっせーのに」
 追いつめられたクドージンが威嚇発砲しています。
「将軍あとで遊びますから、じゃれないでください、うわ!」
 ずざーとこける音がして、捕獲部隊が色めき立ちました。
「囲むんじゃ!」
「印形を組ませるな!」
「クドージンさんごめんっス!」
「観念なさい。ふっふっふ」
「やめてください、リューさー……!!!」
 めちゃくちゃ長いキッスの魔法が発動し、時空はイヤそうに身震いしましたとさ。
 めでたしめでたし。


お付き合いありがとうございました!

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