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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これは「870R」(サイトは18歳以上推奨)からの二次創作であり、「王さまとブヨピヨ」の続編です。


第一話はこちら


おこさまのよみものでは ありません。
 


サミー・エバーパインの逆襲(2)


 朝が来て、小鳥がチュンチュン鳴き、アマネリアは大きく伸びをしました。
「すっごく気持ちよかったね、サミー」
「あ、ああ」
 二人は昨夜、黒猫のお腹でホカホカと眠ったのでした。
「だがこいつ、ここにいたらまた騒ぎになるぞ」
「オカルトスポットに黒猫じゃ、お誂え向きすぎるもんね。しょうがない、実家連れてこっと」
 妖精年齢で言えばまだまだロリータなアマネリアは、親元を離れる条件として、毎日両親と面会していました。
 黒猫を連れて出かけると、サミー出禁区域との境界で、妖精の夫婦が待っています。
「母さん、アマネリアがまた動物を連れてきたよ」
「ま。嫌になってもお母さんは世話しませんからね。ちゃんとサミーに餌はやってる?」
「……やっぱ俺もペット扱いなんですね」
 サミーは棒立ちのままガシガシとグルーミングされました。手櫛の仕上げに、母親はエチケットパウダーを取り出し、たっぷりと振りかけます。
「ばっちいものは隠しましょうねー」
「あっ、やべ」
「んなー♪」
 キラキラ目がけて猫ぱんちが繰り出され、サミーは声も出せずにうずくまりました。
「めっ、めっ。このやんちゃ猫じゃ、サミーと一緒には飼えないわねえ」
「そうなの」
 アマネリアはここぞと説得にかかります。
「きこり小屋なら広いから飼えると思うの。あのへんが片づくまで預かって、お願い」
「んー。黒猫ねえ」
「不吉じゃないよ、いいこだよ、ちゃんと可愛がるからー!」
「いかんいかん。イエネコは所詮、森の生き物じゃないんだ」
「お父さんの言う通りよ。森のきこりなら、ギリ保護動物の範疇だけどね」
「そいつはよかったです……」
「ちぇー。そうだ、大フック船長に頼んでみる!」
 大フック船長は、森を流れる川を船で行き来する白猫でした。卑しい海賊だった本家より偉大な船乗りという意味であって、決して大福の語呂合わせではありません。
「船長~♪元気にしてた?」
 アマネリアが胸元をわしゃわしゃすると、船長は盛大に喉を鳴らしました。
「アマ姉ェ、いつ見ても可愛いニャー」
「船長こそー」
「アマ姉ェのほうがー」
「あまねえ?」
「猫は年功序列が厳格なの。私のほうがちょっとお姉さんだから」
「百年単位でな」
「ニャニャ、こちらは」
 船長はサミーを見るなり、もぞもぞと身を低くしました。
「お初にお目にかかるニャ。当方おこがましくも大フック船長を名乗る若輩者、何卒よしニャにウニャウニャ」
「そうへりくだるなよ。普通でいいんだぜ」
 ふわふわの頭を触ってサミーはご機嫌です。船長はフンフンと鼻を動かしました。
「そんニャ失礼はできニャいニャ。こののっぴきニャらニャい加齢臭、すでに長老待遇クラスニャ」
「悪かったな」
「今日はお願いがあって来たの。しばらくこの子を預かってもらえないかな」
 そう言ってアマネリアが黒猫を押し出すと、船長はオッドアイをきゅうっと細めました。
「子供にしちゃ、ちょっと目つき悪くニャいかー」
「そう言わないで。お願い船長」
「アマ姉ェにお願いされたら断れニャーい」
 女好きの船長はゴロロンと身をくねらせ、合財袋から細いチェーンを取り出しました。
「ドワーフ細工の銀鎖ニャ。切り端だけどよかったら」
「いいの?」
「アマ姉ェの細い足ニャらアンクレットにできるニャ」
「ありがとー♪船長は雑貨商なんだよ」
 アマネリアがさっそく鎖を付けてみせ、船長はニャーンと鳴きました。
「足フェチかよ」
「こ、この魅力にニャにも感じニャいとは。そんニャ長老には精力剤の試供品ニャ」
「ありがとー♪」
「もらってんじゃねえ」
「ガンコなイ○ポにはアダルトグッヅニャ。マンネリ打破にどうニャー」
「そんなのまであんのか」
「妖精向けDVDは、複眼効果で飛び出すニャ」
「ねえよ複眼」




 その頃。
「飛び出す馬並みバナナパフェどーーん!」
 仮王宮では、今日もヨシザワス王のステージが、目一杯下品に幕を降ろしていました。
「疲れたー。王さまの下ネタうんざりー」
 ヨーコリーナはよろよろと控え室に入りました。置きっぱなしのクドージン人形の膝にどすんと座ると、人形の腕がふわりと回されます。
「ヨーコリーナさん」
「きゃあ」
 ヨーコリーナは黒衣のクドージンに羽交い締めにされていました。
「久々に充電してもらったの? 新刊は切り裂きジャックか。節操のない作風ー」
 ヨーコリーナは喉に突きつけられたナイフを押しのけてビクリとします。
「イッタ! ナイフ本物? 危ないなー」
「残念ながら私も本物です。すみませんが、言う通りにしてもらいますよ」
 ヨーコリーナの手を取ったクドージンは、傷口から膨れ上がる血の玉をぺろりとなめました。




 クドージンに押されて歩きながら、ヨーコリーナはキョロキョロと見回しました。
「くどりん、こっちへ行くと会堂よ」
「そうですね」
「困るー。個室に連れ込んでくれなきゃ」
「お願いですから黙ってください」
 会堂にはたくさんの人がいましたが、これ見よがしに突きつけたナイフにも、「あー今日はそういうプレイね」という空気で誰も反応しません。
「仕方ない」
 クドージンは、鋭い身振りで壁を指さしました。
 どぱん!
 壁の装飾が砕け、人々が振り返ります。
「何事だ!」
「ヨーコリーナさん、人形で危ないことしちゃダメっス」
「違うー、これくどりん。本物」
「あら久しぶりじゃない。どうしてた?」
「問答無用、参ります」
 どぱぱぱぱ!
 クドージンの指先から衝撃波が連射され、リューは身をひねって逃れました。
「ちょっとちょっと!」
「恨む相手が違うだろうクドージン! 僕はいつでも相手になるぞ!」
「ったく王さま、椅子の下で言っても説得力ゼロよ」
 リューはジグザグに壁を駆け上がり、誰もいないステージに飛び移りました。
「何だか知らないけど、こっちも行くわよ!」
「うあっ!」
 クドージンのナイフが見えない力にもぎ取られ、空中でバナナになってくるりと向きを変えます。
「バグるならバグれっての」
 矢のように放たれたバナナの皮が剥け、中から邪悪な顔の白鳥が現れると、クドージン目がけて一直線に飛んでいき、
 ぱーん!
「やるじゃない」
 パラパラと破片が落ちる中、クドージンが印形にした片手を掲げていました。
「私の攻撃を正面から防ぐなんて」
「まだまだ初歩ですが」
「ヨーコリーナ! ナイフ排除してやったんだからどきなさいよ! 重攻撃が当てらんないでしょ!」
「んー今ちょっと、いい感じ」
 うっとりとしがみつくヨーコリーナが盾になり、クドージンは新たな魔弾を繰り出します。
 ぱぱぱぱぱ!
 リューは華麗な宙転で大きく円弧状に逃げ、大回廊の柱の陰に飛び込みました。身を低くし、首から下げた護符を引きちぎります。
「さすが天使将軍直伝ね。でも攻撃がちょっとワンパターン、よ!」
 リューが護符を投げつけると、逃げながら敷設したトラップが発動しました。床からショッキングピンクの茨が次々とそびえ立ち、クドージンを取り囲みます。
「はっ!」
 クドージンはヨーコリーナを抱えて跳躍しました。目指すのは、頭上で包囲が閉じられる寸前の丸い隙間です。
「かかったわね」
 クドージンの真下でリューの護符がドロリと溶け、巨神兵の顔面になりました。
 んがっと開いた口の中でビームが収束し、狙いをショッキングピンクのアイリスに固定します。
 飛んで火に入るクドージンが、照準の中央に現れました。
「放てい!」
 リューが叫ぶと同時にクドージンはありったけの連射弾を撃ち、反動で辛くも光跡を逃れましたが、マントの端をかすめていったのは、無害な非熱ビームでした。
「あ、だまされました」
 体勢を立て直せず落下していくクドージンとヨーコリーナを、銀色のトゲがキャッチします。
「展開がよく分からないっスー!」
 茨のトラップがしゅるしゅるとほどけ、しんとした会堂に、四肢を固定されたクドージンが残されました。
「さすがに手数では負けますね。私が使えるのは、簡単な発破と治癒魔法だけなんですよ」
「あー、だからさっきなめてくれたとこ治ったんだ」
「さあ、ヨーコリーナを放しなさい。でないとメタル茨に電気流すわよ。じゃなくて、ヨーコリーナ離れなさい! あんたごと黒コゲにするわよ!」
「やーん」
 茨が伸びてきてヨーコリーナの襟首をつかみ、無理矢理引きはがします。
「さ、白状なさい。何を企んでるの?」
「すみません。時間稼ぎに利用させてもらいました。芸術的なまでに複雑な攻撃魔法の発動を嗅ぎつけて、ここへ追っ手がやってきます。その間に私はやることがある」
「追っ手っていうと」
「もちろん天界からのです」
「あんたねー」
「私の人形を広場に出して、敵を引きつけてください。リューさんなら持ちこたえられると信じていますよ」
「やーらしく自尊心くすぐってくれること。バグ魔法全開で行くわよ、みんな覚悟して!」
 リューは飛び出して行き、クドージンは茨から解放されました。
「くどりん!」
「申し訳ありませんでした、ヨーコリーナさん。行く前にひとつだけ……」
「いいわよ♪んー」
「ち、違います。会堂に集まる人の噂話に、流星関連の異変がありませんでしたか?」
「ぶー、とことん利用する男ー。そういうとこ好きだけど♪そうね。先週、夜明けの金星から星が流れて、エバーパインの森に火柱が上がったらしいわ」
「やはり、あの森で間違いはないのに……」
 クドージンは乱れた髪をぐしゃぐしゃとかき上げます。
「黒猫の情報はどうですか? 目つきが悪くていたずら者で、額にブヨピヨそっくりの斑紋がある」
「迷い猫ー? たくさんありすぎてちょっと」
「そうですか。ではこれで。馬をお借りします!」
「森まで魔法で飛ばしてもらったらー」
「魔法臭跡が付くのはマズいので!」
「あっそ。いってらっしゃーい、って聞いてやしない。キスひとつ貸しだからねバカー」




「貸し借りニャしの現金払い。えー、いらんかねー」
 大フック船長は森から川を下り、都に来ていました。川べりで都の野良猫たちが出迎えます。
「ブニャー、高山マタタビ入荷したか?」
「乾燥ネズミひとカゴ、買い取り頼むニャー」
「順番順番、ちょっと待つニャ」
 小売りも仲買いも兼業なので、船長は大忙しです。
「この黒いの、船長の子かニャー? 商品で遊んでるニャよ」
「ちょっと預かってる子ニャ。こらっ! それはお前のおもちゃじゃニャくて、ゾンビ向けのおもちゃ。どんな死体もマグロも感じまくりニャ」
 うにうに動くバイブを取り上げられ、黒猫は夢中で追いかけます。
「あはは、転ぶニャよー」
「育ちのよさそうニャ毛並みニャ。目つき悪いけど」
「額に面白い模様があるニャア」
「これってアレに似てニャいか……ホラ、この前都に現れた怪物」
「ブヨッピ?」
「違うニャ、ブヨブヨーン」
「確かピヨリーニャ」
 三日で恩を忘れる猫ですから、人間たちのあいだで騒ぎになった怪物の呼び名など、誰も思い出せないのでした。




「そっか、ブヨピヨ!」
 アマネリアは豆球の出る勢いで答えました。
 クドージンが頭を抱えます。
「どうして思い出せないんです……。あんな大事件だったのに」
「ごめんなさい。恋するエルフは忘れっぽいのー」
 とりあえずきこり小屋に急行したクドージンは、ベッドの下にエロ本があるないでモメているアマネリアたちを見つけていました。
「あの斑紋を見てひと言『ブヨピヨ』と呼びかけてくださっていれば、猫かぶりの術が解けて、将軍は待ち伏せ魔陣の準備にかかれたんですよ」
「あの子、例の悪魔さんだったのー?」
「そんなすげえ奴には見えなかったがなあ」
「追っ手の目を欺くために、能力を反転させたんです。四大元素を自在に操る将軍も、今や無力な子猫にすぎない」
 クドージンはきょろきょろと見回しました。
「で、猫はどこです?」
「雑貨商の川船に預けてるの。今頃は都かな?」
「都?! 私は追っ手をそこへ引きつけてしまったんですよ!」
 青くなって馬に戻るクドージンを、妖精カップルが追いかけます。
「よお、将軍がちょうど都にいるなら、都で迎え打てばいいんじゃないか?」
「都の人なら、すぐにブヨピヨだーって言ってくれそうよ」
「いや、準備もなくいきなり出会ったのでは待ち伏せの意味がない……、くそっ!」
 クドージンが力任せに蹴りつけたあぶみが、カシンと火花を散らしたそのとき。
『う……う……』
「何だ? うめき声か?」
「これ、愛の鬼火さんの声よ」
 恋愛絡みだとアマネリアの記憶も正確です。
『うー、うー』
 馬を駆るクドージンの足元に、ピチパチと火花が集まっています。
「うー?」
「何か伝えたいのかな? 新しい愛の格言かな♪」
『うーうう、うらめしやーー! この幸せもんがーおんどらワレコラーー!』
 ガラの悪い怒号に馬が棹立ちになりました。
「どうどう!」
『どうどうやあるかー! あの方と、はいしどうどうしたんか! お馬さんごっこかーー!』
 まるで蜂の大群のように火の粉が吹き荒れます。
「鬼火さん、落ち着いて!」
『これが落ち着いておられるかいな、お嬢ちゃんー!』
 鬼火はボタボタと火の粉を垂らし、どうやら泣いているようです。
「あ、熱い!」
 たまらずにクドージンが発破魔法を打ち、かえって火炎が大きくなりました。
『こしゃくな! あの方と同じ匂いの魔法なんぞ出しおってー! ああ、たまらんわ、スーハー』
「そうだ」
 クドージンは懐から煙草をひとつかみ取り出しました。
『あの方のお煙草やんけ! 自慢か! 食後の一服、目覚めの一服、おはようからお休みまでいつなりとお申し付け下さいてなもんか! こんなもんはなー、じゅー』
 鬼火は煙草の先にくっつき、やっと大人しくなったのでした。


第三話へつづく!)
 

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