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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
作者さまの心情を切り捨てることがあるかもしれません。
でも小説を切り捨てることはしないと誓います。
納得行くまで向き合います。
あくまで私の納得なので、小説のためになるかどうか、誤読がないかどうかは分かりません。


9/3
小説との対話と言うにしてもなれなれしすぎる一文を削除しました(C08)。いまさらですが、テンションを制御するよう努めます。

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C01  天つ虫といとしき亡き月の王 注

怪しい反復による盛り上げ。繭だぞ繭だぞと囁かれ続け、見事にぐるぐる巻きにされている。

それだけに語りの練度は重要。「>うめき声ともつかぬ声」が近い形で二度使われるだけで「あー」と思う。

クライマックス、エソラの使者である「>男」と巨大繭の「>男が一人すっぽりと入るぐらいの大きさ」、次の行ですぐ「>男の体」と続き、エソラの男が繭に入れられるイメージが誤作動してしまった。

読後感は薄め。登場人物が二人とも消えて(←王の娘も自分を失っている)しまったあと、小説はどんな地平に立っているのか。何か語りとしての工夫があれば。なよやか系の丁寧語りを、娘と地の文が共有している。語りの立場が互いに食い合っている構図を、ラストの余韻として大きく回収してくれたらゾゾッとできたかも。どうやればいいかはしらない。

C02  踊り子と王様

道楽王ですべてを受けるラストがコノミ。何様?オウサマ。うふっ。

頻発する誤字の一部かどうか、独特な舌足らず。「>その頭の悪い上に不敬な呼び名を通されるようになるとは、」は「呼び名で」かな。 「>近隣国と違い、ほとんど奴隷も庶民とそう変わらぬ目で見られるパレニアと言えど、」さして重要な情報ではないのに、よーく読まないと入ってこない。

「>無表情ながら相好を崩したつもり」
結局引かれた、というギャップで受けるために、もっとすぱーんと切れよい前フリが欲しい。

笑う表現の「>うっそりと」は、私は若い娘に使ったことなかった。礼儀だけは通しますよ、と腹に一物あるおっさんのイメージ強し。

ストーリーラインが一本きりで少し退屈。その分描写で楽しみたいが、設定の枠を逸脱しない二人のやり取りは、した手のオーガスト&達観ラスティマ以上には関係進展させぬぞ、と早い段階で宣言してしまってる。「>あからさまに」「>たかだか」「>ありえない」「>はっきり言って」などオーガストに向けられる強調語も一本調子感を増すような。枝を払って視界を開いてくれれば、「>公務も今までそれ関連しかやってこなかったのだから、これまた裏目に出た感じにまずい。」などの楽しいジャブが効く気がする。

そうやってもし格差カップルの幸福をくっきり描き出されてしまったら、サクサクと歴史書の叙述に片づくラストは読後感としてやりきれないかも。冒頭、小説は「>まさに小夜鳴鳥の歌声と何ら変わらぬ美しい声で彼女はいささかも」と、必要と思えない飾りでラスティマの生命力を盛大にことほいだ。消えた命を惜しみ、遺恨を乗り越える人への叙述に同じテンションが欲しい。


C03  瓶詰め

語尾に「>であった。」多数。子供の夏休みを語るには意味不明な堅さ。

「>うなずきながらふたを開ける。」
カメラが手元に寄っていくような現在形で、ほのぼのしてるはずなのに妙に緊迫する。「>あ、結構おいしい。ありがと」飴ふぜいの味にはそれほど期待してなかったのだな、と深読みするも、何事もなく場面が終わって拍子抜け。

にしても地の文が気になる。突き放した堅い客観が、前ぶれなく悠人主観に密着する。間合いによっては文体の勢いになるのかもしれないけど、「>確か、なにかの景品をもらったのだったと思う。」「>今ごろ興奮しながら空を見上げていただろうに。」など、何かいっこ言い足りないせいで、地の文が悠人になって感慨を述べているように聞こえた。

地の文が知っていることを当然悠人も知っている、という流れも不満。このキャラは周辺事情にどこまで通じているのか、という線引きが三人称の味だと思うので。というより悠人が知っている以上のことを、この地の文は知らない。客観で書く面白さの幅が狭まっている感じ。

「>彼がいるならすぐにふたりで遊びにでかけられるのに。」
登場人物を三人称で呼ぶ地の文と、悠人の語尾がいよいよ合体。このへんを厳しく分離させておけば、呪いのドリルの「>恐ろしいものがこの世にはあったものである。」「>インプット」などがきらっとしたと思う。

両親を「父、母」と呼び続ける地の文のおかしさももっと際立ったはず。「彼の」を付けずに「父」と言うと、「自分の」というニュアンスが生まれる。距離を保って悠人を語るいたずらっぽい地の文が言うなら「父親」になると思う。


C04  首長竜、旅に出る

私以上にひらがなまみれ。夢と理屈のはざまの夢、みたいな。倫理や物理法則が分からないので、そこで起こる事件にあまりハラハラできなかった。テノチーと言うのを聞かれることは恥ずかしい、とか。へーそうなんだ、と。

選べない主人公の自責のくだりになると、理屈が普通に「こっち側」と地続きになり、夢成分は忘れてねと急に言われて戸惑った。

「恐竜本来の色は分かっていない」というネタを、「恐竜には自分の色が分からない」と読み換える文学的すり替えがすき。

不思議なアレコレは彼女の自意識が見ている美術室の幻なのだろうか。だとしたら、カサイ先生のうれしい助言もせんぱいの言葉への驚きも自作自演みたいで、わたしを診断してあげるのもわたし、わたしを認めてあげるのもわたし、そんなオレオレいやだ。せんぱい・先生が主人公と切り離された他者であることがはっきりしたうえで、「共感よかったね」と思いたい。でないならすべてはフシギのまま、もっと遠いところへ着地してほしい。言葉の上の理屈が主人公の悩みをほどいてくれたわけだけど、それを首長竜の色の奔流として形にするために不思議世界があった、ような読後感。

軽めのやり取りはエンジンがかかりそうになると決まって冗長描写に引き止められる。「>とってつけたような物言いに、せんぱいはたちまち呆れかえった。わたしはみっともなく言いつのる。」のとことか。セリフの空気ですでにこの感じは出てるのになあ。

C05  白魔道の街で

自分の資質が周囲の期待と違うことに悩み、でもその資質を活かす手段に気づき、明日が開ける、という骨組みは分かった。セリフ・地の文が入り混じる叙述も、シーンの動きを作っている。でもその背後に、大きなモヤモヤが常にある。

「>どんな大怪我でも一瞬で治せる者、どんな攻撃でも防げる結界を張れる者、どんな魔物でも半永久的に封印できる者がわんさかいる。」
たてとほこ、みたいな。魔物となわばりを分け合うことになった歴史から見て、「どんなものも」パワーは万能でないことが読者には早くから分かってる。でもそのへん無視してお話は進む。「>白魔道師は、魔物が入ってこないよう結界を張ることはできても、」と回収が始まっても「うん知ってたよ」と思う。

「>攻撃しか行えない黒魔道と違い、」
白魔道と黒魔道はイーブンな対立項のはずなので、「しか」を使うとこじゃないと思う。

「>ステファンの顔が歪んだ。堪えようとしても抑えきれなかった。」
感情があふれる大事なシーン。「ステファンの顔が見えてる客観」と「堪えようとしてるステファン自身」がこの短いスパンで入れ替わり、興がそがれた。

全くの不慮の事故でそこまで自分を責めなくても。神官長だから治せるし。という意地悪な視線を、「調子に乗った」「魔法の性質を忘れていた」という深い部分で補完する。調子に乗ったということは、「忌み嫌われた俺の黒魔道が街を救ってる」という手応えが当時すでにあったはずで、怪我人を出したとしても「こういうときに白魔道のサポートが必要なんだ」という気づきにつながりそうなもの。どうして何年もこじれなきゃならなかったのか、のほほん勇者の登場に救われる必要があった、という都合しか私には見えないままお話は終わった。


C06  モノクロ

内心のつぶやきでできている世界。何それ。何なの。と出来事の分からなさをつぶやくことが、一人称の原動力になっている。にしても、物を分かってなさすぎる無鉄砲な教会襲撃。ピーンチ!と思えないから救いの神登場にも盛り上がれない。「>近衛が襲われたってことは、相当良くない状況だからね」で周辺地図をひとなでしてく呼吸がすき。


C07  色彩認証

こまごました日常が「小説家志望……」というつぶやきで満たされている導入部。「~なの」という語尾はリズム作りで?と首をかしげつつ、何を見ても小説のことを考えてしまう主人公に共感。突然出てきた言語学概論が、モノカキ資質の感受性テストに着地する。「痛い赤」ナルホドー。ナルホドの出てくる順番が読む方向に沿っていて心地よい。

「>がらくた堂の店主がさぞ可笑しそうに笑う。そして、立ち上がりワザとらしく腰を折って」
響きがヘンな日本語。店主に肉づけしたいんだなということだけ分かる。コーヒーまずい・笑い上戸など店主の存在感を増量させた割に、彼の役割は人形との仲介で終わる。だったらもっとペラペラな人でもいいような。主要キャラとして使うのであれば、テスト中の応援態度をもっと興奮させちゃうとか、何かの爪痕がほしい。

自然言語処理支援プログラムが「>悲しそう」だったりすることに対して主人公は何の疑問も持たないが、「人工知能はどこまで人間に近づけるか」という大ネタをすっとばされるのは物足りない。

そりゃゲノムが解読されたからって生物を造れるわけじゃない。しかしヒトの記憶と語彙形成をめぐる感受性のからくりを熟知している以上に、あやは個性の判定者でもある。

意識というものの実測方法まで知っているらしいこの機械人形は、すでに自我まで獲得しているのではあるまいか、というこれはもう、SFにもホラーにも科学魔法モノにも行ける上質なネタソース。図書館不要の豊かな資料庫。ほしーよ(違

スパコンに繋がってるというギミックが宙ぶらりんな気はする。大容量ネタ帳はそりゃ頼もしいけど、大勢の人にモニターされてる感じが拭えない。


C08  グッバイ・ロンリー


(一行削除)


怜平が恋に懲りたらしいバックボーンが立体として見えないので、終始「へー」という感じ。

自分を失くすくらい惚れたというのは分かったが、自分が無色透明だって気づいた時のショックが具体的にほしい。透明な自分は見えないから、周りのものがよっぽど歪んでからしか気づけない。ダークマターの存在を重力レンズで間接的に観測するように。

顔を潰すだの物騒な口説き文句を、実際にやってしまった過去があるとか?今のとこ低体温イケメンのギャップ狙い手口とも取れるので印象が薄い。

「>何もなかったことにはされたくないのだ。」
つまりプライドが高いのだ。誰かにそう言われる怜平が見たい。

三人称彼主観で引っかかるのが、彼発信ではない情報として、他人がよってたかって彼を「悪い男じゃない」と言ってくれるところ。そんな三人称ってズルい。もしくは何も見えてない。

一定以上熱することのない怜平は一緒にいてツマラナイ男で、自分から交際をやめたくなった女たちが、罪悪感からいい評判を立ててくれてる。というお話なら、がぜんそそられるのだった。悪食。

「>よし、かわいいものだな。何かかわいいものが欲しいんだな」
ミサコ先輩の造形はチャーミング。そんな男はやめなさい、と言いたくなるほどに。気になるアイツに誕生日プレゼントとかあげてみよう。程度の好意で、男はみるみる増長する。「>じゃあ、どうしてこんなことしたんです。」誘っておいてあなたのせいですよ、と言わんばかりのスイッチの入りようは、確かに恋愛ヘタそうだ。


C09  赤い鞄

「>正直、彼の言っていることに興味が持てなくなり、」という主観の立て方がリアル。「>私たちも会社という空間を共有し、その中で膨大に余った時間を、連れ立って」などフムフムと読ませる世間話で気をそらせ、煙幕も有効。事件ものか猟奇ホラーか替え玉ミステリかやっぱホラーか、と速いテンポで揺さぶられる。

暗い部屋。赤い鞄。終幕は悪夢構造の中で要素が浮遊して見えた。浮遊を楽しむ小説と言うにはかっちりタイプの悪夢。携帯電話のいさかいは。小旅行の謎は。私にとっては着地が決まり切らず。


C10  SIKI


えっへっへ。えっへっへ。顔が笑っちゃう。遠いシャワーの音がさーさー聞こえ、深夜の雰囲気にあっと言う間に引き込まれたら、もう夏の日中。怪しげなマザコン少年の偽装を脱ぎ去って、少女が現れる。芸術家のおじさまとの距離感が芸術的。「>冷たいお茶が一杯、歩いてこないかな」「>水滴で畳に青い染みができるのが見えて、ぼくは少し眉をひそめた。」シーンで起きていることを読むだけで、彼らの関係や歴史を全部わからせてくれる。読むことの至福。読め、さあただ読めと差し出されるものに、身をゆだねてうっとり。陽炎立つ街路で昏倒すれば、大きな腕にふかぶかと受け止められる。安心。箱入りお嬢さまの世界は狭く、閉じているけど、その泉はとても澄んでいて深い。

「>時々その事を勘違いなさって、噂する方がいらっしゃるのですわ」
読ませどころ。実は先生の「言い分もっともな感じ」が的確なので、微笑んでねじ伏せる色がぐんと女を上げる。イヨオッ!と声をかけたくなる気持ちよさ。先生と一緒に口をパクパク!叔父姪婚ってことじゃなく、「相手は許婚」と先生にだけ言ったってことかな。

愛こそすべてな女子高生に、愛のエキスパート色かあさんが秘密の答えをそっと明かして終幕。小説で「あの人ほんとはこういう人よ……」と言う資格のある人は、相関図の中で数少ない。色が言うなら異論はないさ!


C11  オレンジの君

何か行動を始めるまでがとんでもなく長い。知らない人の日常ブログを見かけたときみたいに目が滑った。

彼が「いい人」と言えばその人は決定的にいい人みたい。彼の主観が三人称を支配しすぎていて違和感。知らぬ間にモテていて告白されるお話でそれをやったら、驚きも何もないと思う。

C12  色とりどりの世界

色覚が鋭敏になる吸入薬は、ヤバい方面を連想させつつ面白い設定。

「>多くの人が色を失っているこの世界で、たくさんの色を描く絵をきちんと評価してもらうことがどれほど難しいことか」
彩師が生業として成り立ち、彩色香が高値で取引されている現状とは、少し矛盾するような。彩色香を買える者だけが楽しめる多色づかいの絵は、ステータスシンボルとして富裕層に高く売れそうに思う。

色が一色ずつの色覚として瓶詰めにされるのもハテナ。グラデーションを細かく分け始めたらどこまでだって名前を付けられるけど、「見える」ってそういうことじゃないと思う。もしくは「そういうことなのだ!」と納得させてほしい。現実の色覚異常を引き合いに出したくなるのは、このファンタジー世界独自の調理がなされた色解釈を見せてもらえてないからだと思う。設定上のモヤモヤにつまづいてしまったので、お話の咀嚼ができずに終わる。

もう少し奥歯に物の挟まったような日本語なら、うまく言い抜けつつドラマを仕立てることができるかもしれない。なにごともこうはっきり叙述してあると、私のような読者は理屈ばっかり気にして小説に没入するってことを忘れるから。

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