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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。
 


大江戸870夜町(25)


 吉原がジャンケン対決に沸いている頃。
 エゲレス公使館に、密書を抱えた猛禽ロボが飛来しました。
 あぶり出しをあぶるエージェントの顔色が変わります。
「公使閣下、エド城で革命です!」
「何だと?」
「本丸は、すでに革命側の手に落ちた模様です」
「樋口家が先走ったのか?」
「いえ、一介のお側用人による単独決起とあります」
「聞いていた倒幕シナリオと違うぞ……!」
 公使がパニくる間にも、カラスロボ、燕ロボと続報が届きます。
「用人は素手でショーグンを襲撃。タイプってお前のタイプかよー! と謎のスローガンを叫んだそうです」
「殺害したのか」
「いいえ。ボコったショーグンをまたいで去ったのち、オーオク女子部へ居座ったそうです」
「後継決定権までも掌握したというアピールだ。練り込んだシナリオを持った勢力のようだな」
「こちらも方針を練り直す必要がありますね」
 トップのすげ替わった政権は、外交態度をどうひるがえすか分かりません。
 駐在員の安全を考慮して、エゲレスのみならず外国船は、こぞって日本から出ていったのでした。



「急展開だったわねえ」
「えーそうかな♪」
 吉澤は仮面のような猫かぶりスマイルです。
 劉は舌打ちしてホワイトボードに向き直りました。
 ここは劉のオフィス、「お江戸の歩き方」編集部です。
 朝寝を襲われた吉澤がホモ将軍を半殺しの目に合わせてから、勘違いのクーデター報道に外国勢は緊急出国したわけですが、吉澤が大奥を食い散らかしているあいだに、
「それでー、新生日本の代表者はどなたになりました?」
 と恐る恐るの問い合わせがあり、
「へえ、うっとこの八千菊丸どすけど」
 と十和古局が勝手に出しちゃった声明を誰も訂正しないもんだから、なんとなーく倒幕が成立した流れのまま、横から出てきた八千菊丸が手柄総取りで帝を江戸にお連れして、元号も明治と改まり、成り行きでスタートした新時代が、何とか軌道に乗って今に至る……
「ってわけね。ひー」
 予備校講師より速く、劉はホワイトボードに書き殴っていきました。
「何なの、このムチャ展開」
「まあまあ。大政奉還ってことで♪」
「もっと色々あってから終わるんじゃなかったの、徳川の世って」
「まあまあ。日本史がラクになって助かるってことで♪」
 吉澤は情報屋としての契約期間が残っているというので劉に首根っこを捕まえられ、独占インタビューに応じています。
「聞きたいことはたくさんあるけど、まずは」
 キュキュキュ、と「徳川 豊茂家」に二重線が引かれました。クーデターに倒れた、徳川のラストショーグンです。
「コイツはどこへ消えちゃったのよ。公式には出奔としか発表がないけど」
「旅芸人の一座を組んで全国興行に出たんですよー。江戸じゅうを検問しても見つからなかった、愛しの三白眼侍を探してね」
「んまあ、将軍の地位をなげうって。相当なご執心なのね」
「尋ね人はスタート地点にいるんだから、こりゃ一生会えませんねー♪」
 江戸市と改称された首府では行政も一新され、華宮院で知り合った攘夷志士が出世していました。
「あんときの樋口さんかー!」
 感動の再会を果たした桔梗介は、返してもらった羽ばたき1号で自転車通勤(一部空路)する、いっぱしの政府職員になっています。職場は元の江戸城です。
「では地方に偽の三白眼侍出没情報をバラまけば、さらに足は遠のきますね」
「アンタも性格悪いわねえ」
 同じく役所づとめで洋装の工藤は、ホワイトボードを書き写しながら難しい顔で首を振りました。
「あまり大っぴらな妄執を政府職員に向けられては、反政府運動の契機にもなりかねませんから」
「いい加減に陰謀スイッチは切ったらどうなの。幕末の動乱は過ぎ去ったのよ」
「劉さん、まだまだ世間は不穏ですよ。どこかの誰かがやりかけの武力革命を丸投げして自宅に帰ってしまったものだから、自分にもチャンスがあるんじゃないかと夢広がる輩が後を絶たず」
「頼もしいことじゃないかー♪僕ももっかい政府転覆して、好きな年号に変えますよ。明治なんてダサすぎ。人妻元年とかどうかな。緊縛元年とか」
「私がクーデター起こすわ」
「陰謀スイッチと言えば、劉さん」
 お茶を並べているのは冬成です。
「あの陰謀はどうなったんでしょう。キースさんを雇って、華さんの父上である将軍を暗殺させた黒幕は一体」
「懐かしい話ね」
「そうだな」
「だーあ」
 華もキースも混血の赤ん坊を連れてどこでも出歩けるようになっており、狭い編集部にはなんやかんやで関係者がゾロゾロいました。
「今さら気にもならんが」と桔梗介。
「ヤクザ連合の報復だったってことに落ち着いたでしょー?」と陽光太夫。
「いや、実は十和古局が糸引いてたんじゃないんスか」とハル。
「だよな。その後の一人勝ちっぷりからしても」と雅。
 倒幕の陰の立役者である吉澤がとうとう泥を吐く、もといインタビューを受けるというので、皆こぞって見物に来ているのでした。
「ホウホウ、新事実どっさりネ」
 浅黒い肌の女もいます。
「こちらはどなた」
「クレオさんですよー♪大混乱の江戸城で、唯一外国との通信窓口になってくれてたんです」
「京ことば分かりづらくて、十和古には自分で通信文書いてもらったネ。それをみみずくソフトが超訳」
「あんたか。トンデモ声明がまかりとおっちまった原因は」
「総員退避命令で出国なさらなかったのですか?」
「日光東照宮の彫刻にハマったネ。陽明門を完コピするまでは帰国しないヨ」
 わあわあうるさい中、劉は目を閉じて精神を集中させました。
「十和古局……確かにそうね。文句言う奴は先の将軍みたいにぶっ殺すわよっていう言外の脅しが効いたからこそ、クーデター直後のゴタゴタをああもすんなり掌握できたんでしょうし」
「いや、疑心暗鬼の幕僚が勝手にビビッただけだろう。威嚇のために、十和古局がやってもいない将軍暗殺を利用することは大いにあり得る」
「あーなるほど」
「だから、やっぱり本ボシはヤクザ連合なんでしょー?」
「それも怪しくなってきてるのよね」
 華はじっと宙をにらんでいます。
「考えたら、ヤクザは匿名の報復なんかしないのよ。タマ取ったのがどこの誰かを広く世間に知らせるものだわ。そのための報復だもの」
「将軍とったどーって声明なんか、誰も出してねえもんなあ」
「じゃあやっぱり」
「振り出しに戻ったわね」
「真実は闇の中か……」
「そういえば、お宅んとこの陰謀はどうなったの? 樋口さん」
 四民平等の世なので、劉はドキドキしながらのさん付けです。
「叔父さんとの確執はその後?」
「ああ。片が付いた」
「片付けたってまさか叔父さんを」
「殺っとらん」
 混乱の中でエゲレス公使との音信は途絶え、せっかくの英断がカラ振った和之進はすっかり人望を失って、大名から横滑りの県知事として静かに暮らしています。小県なのでいずれ大きいところに吸収合併されるでしょう。
「新政府でのポストを回してやれば、旧叔父派もみんな若さまに付きそうね」
「フン、おべっか使いに訪ねてくる奴がうるさくてかなわん」
「樋口家もすっかりご大家ねえ」
「そうだ。まだきちんとお礼を申し上げていなかった」
 工藤は武家の作法で拳をつき、腰から頭を下げました。
「太夫、あの折は助太刀をありがとうございました。酒豪対決が盛り上がったおかげで、樋口家の名が出ずに済みました」
「あー、ジャンケンカッパ飲み? まあチョロい相手だったわー」
 水で割っていない原酒ではいくらももたず、ウツボ姉さんはドウと前のめりに倒れたのでした。
「いいんだ……、最初の酒が薄めてあったのも、分かってたよ」
「ウツボさん!」
「あたしを勝たせようって店側の演出だと思ってた……しょうもない女だね」
「そんなことないわ! 体を張ってお江戸を盛り上げたんでしょ、あなた立派よ!」
 ぐったりしたウツボ姉さんを斗貴が抱き起こして江戸っ子は拍手喝采、賭けに買った者が大盤振る舞いの酒宴を張って、一大酒豪対決は熱狂のうちに幕を閉じたのでした。
「危ないとこだったわよ。あれだけの賭けが流れたら、熱しやすい江戸っ子は打ち壊しどころじゃすまなかったわ」
「うふ、私のおかげよねー」
「あんたは美味しく酒飲んだだけでしょ」
「お礼はないのー?」
「礼なら言った。今。工藤が」
 桔梗介は省エネのカタコト返答です。
「ぶー。ひとには行為で恩義に報いさせるくせにー」
「そーだぞー。礼言った以上責任取れー♪」
「お前に任せる。工藤」
「は。私にできることでしたら」
「体ひとつでできることよー」
「週末なら体が空いております。お役所づとめですから」
「ホントに? 休憩じゃなくてよ。泊まりでよ」
「たっぷりコースで結構です」
 工藤は覚悟を決めたように内ポケットを確かめました。
「軍資金もありますし」
「やん、お金なんか取らないわよ! くれるっていうならもらうけどー」
「ちょちょ太夫」
 ハルが有頂天の太夫に取りすがります。
「ダメダメ、売りはダメっス~」
「自由恋愛よ。ちょっと金銭が介在するだけー」
「だから、金銭授受が発生しちゃダメっス。うちとの契約違反っス」
「何それー?」
 ハルはごそごそと懐を探り、契約書の控えを取り出しました。
「契約要旨の第三項っス。甲は乙に対し専属的なタレント業務を行い、その条件として左記の取り決めを……」
「んあふ」
 長文を聞くと瞬時に眠気に襲われる太夫は目をショボつかせます。
「何が自演乙って」
「違うっスよ。太夫は仁科酒造の専属っスから、勝手にタレント活動しちゃダメってことっス。無銭飲食の借金を完済するまでは、うちの方針で活動してもらうっス。枕営業なんか絶対ダメ!」
「あーなんか、ハイ」
 びしっと書面を突きつけられ、太夫の返事は棒読みです。
 工藤はいそいそと財布をしまいました。
「残念ですね。指名ノルマのお手伝いならいくらでもしたのですが」
「いや、お金はナシでもいいんだけどー。フツーにヤるだけでー」
「いえいえ、それではお礼になりませんから」
「私がいいって言ってるのー」
「いえいえ、こちらの気が済みませんので」
 劉がそっと太夫をつつきます。
「気づきなさいって。やんわり断られてんのよ」
「ではでは、またの機会に」
「いつよそれー。機会ならいくらでもあったじゃん。布団部屋じゃ全力で拒否られたしー」
「あの時は持ち合わせが。逃亡資金を確保しておくため、常に切り詰めていたものですから。今ならたっぷりコースでもお支払いできるのに、残念だ」
「アンタ、どうしても金を払いたいのね」
「金銭ずくの関係が、一番厄介が少ないので」
「難儀な男だこと」
「公娼吉原は公的機関だけあって料金システムが明朗でした。コースによっては割高ですがそれも安心料のうち」
「あら、詳しいじゃない」
「帳簿を見たもので」
「じゃー吉原ならいいのね。諦めないわー」
 陽光太夫は拳を握りしめています。
「待ってて。ここ完済したら転職するからー」
「あら、吉原はもうないわよ。遊女の年季契約がなくなったんだから」
 あっちゃこっちゃしまくる政権委譲期の混乱を最小限に抑えるため、ほとんどの政策はそのまま引き継がれています。遊女契約の撤廃も、賭博取り締まりの復活も、公式の謁見で許可されたものである以上、スムーズに施行されました。
「吉原跡地じゃ、あのご隠居が飲食業を始めるそうよ」
「あ、ヘソ出ししゃぶしゃぶっスよね。仁科酒造にもイベント協賛の打診が来てるっス。ヘソ出しユニフォームのお披露目イベント」
「うちでも特集組むわ。開店前からすごい評判よねえ」
「わ、ウェイトレス名鑑。見せてくださいっス~」
「レベル高いコばっかりよ」
「パートの人妻いるかなー♪」
 はなまる屋のプレス向け資料は男子に引っ張りだこです。
「元人気遊女もけっこういるぜ。じいさん、抜け目なくヘッドハントしたな」
「花札屋をまるっと買収したからはなまる屋だそうよ」
「ウェイトレスって、直球の娼婦よりこう、アプローチ次第でお得なことになりそうでイイんスよねー」
「安全志向の公務員に、この醍醐味は分からないだろうねー♪」
「もーおじいちゃんのばか。商売女ならくどりんとヤれたのにー」
「太夫、私の評判が最低です」
 商売女でないならヤらずに済むことになったようで、ひとまず胸をなで下ろす工藤でありました。

第26話につづく!)

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