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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。


大江戸870夜町(7)


 同日、吉原の遅い朝。
 朝湯を浴びた遊女たちは、髪もほどいてゆったり過ごします。
 イベント大盛況の陽光太夫も、花札屋に連泊中でした。
「おはよー。おじさん調子どう、のぞき穴の仕込みー」
「んなな」
 慌てた雅は、竹筒製の潜望鏡パーツをドガチャカと隠しました。
「いよおー太夫。これは建て付けをちょっと修理で」
「言い訳散らかりすぎー。修理仕事なら堂々と道具箱運ぶはずでしょ。着物の下でゴツンゴツン音させてたら、内緒の仕込みか鋼の股間ー」
「くそ、耳のいいこったぜ」
 雅はやりかけの細工を置きました。
「うふふ」
 太夫は張り出し窓にのびのびと座りました。壁に沿って、焦がし色の竹筒が続いています。
「うまいこと窓枠に紛らせたわね。へー、凹面鏡反射で遠くもハッキリ見えるんだ。よくできてるー」
 見習いかむろの姿がないので店は朝から大騒ぎ、誰にも見られず煙のように消えたのでなければ残るは身投げというわけで、誰もが水路の捜索に出払っており、太夫はお構いなしの大声です。
「この“こいこいの間”って、どんちゃん騒ぎのド宴会ルームでしょ。デバガメならもっとしっぽり系のお寝間にすればーヘンタイー」
「ヘンタ、そういうんじゃねえんだって」
「考えたらおじさん、天音のことしょっちゅうチラ見てたわね。かどわかしたんなら早めに白状なさいよヘンタイー」
「違えよ」
「懐にたんまり持ってるわね。寄こしなさいヘンタイー」
「ヘンタイ関係ねえだろ。カツアゲされてたまるか」
「薄給下男の懐で、拍子木がチョンチョン鳴るのはおかしいって言ってんの」
 お出し、と太夫は片手をヒラヒラさせます。
「そこまで聞き分けんのか、全くすげえな。ほらよ拍子木」
 雅は懐から銭の束をひっぱり出しました。
 縄に通したひと束が百文、それが二本そろった二百文は、形から拍子木と呼ばれます。
「どれどれ。オッサンくさー、ひと晩抱いて寝たわね。もらったのはゆうべか。縄の結び方は武家風だわ。ゆうべの客で武家っていうと、お接待無用の“手四の間”にいた三人組……。おじさん、樋口家に雇われたわね」
「そうです俺が犯人です、とか言いそうになるぜ。あんた、一体なにもんだ」
「お金大好きっ子よ」
「ちぇ、その銭ぁやるさ」
「わーい、口止め料もらったー」
「口止め料?」
 陽光太夫は匂い袋を取り出し、銭束をポンポン叩きます。
「加齢臭とんでけとんでけ~」
「おい、本当にこのこと黙っててくれるのか。あんたにとっちゃはした金だろ」
「のぞきは興味ないからいいわー。天井滑車で客の財布釣るとかお膳一品チョロまかすとかなら、一枚噛もうと思ってたけど」
「貧乏くせえ発想だな」
「おじさんのイメージから言ってんの。わーい二百文。お昼何食べよかなー」
「くそ、セレブ飯一食分かよ。旅支度で物入りだってのに」
「なあに、旅行?」
 このタイミングで旅に出るなら相手は行方知れずの天音かもしれない、などのロマンチックな連想はあまり働かない、お金大好きっ子でありました。

 

 日は高く、正午を過ぎて。
「えーと“紅牡蠣亭”レッドオイスター、ここっスね」
 ハルは下町の繁華街に来ていました。同伴デートの段取りも太鼓持ちの仕事です。
「こんちはっスー」
 薄暗い店内をのぞくと、カウンターの奥に用心棒も兼ねていそうなバーテンダーがいます。
「こちらに、遠山の金さんがお立ち寄りになるって聞いたんスけど」
「てめえ、そいつをどこで聞いた」
 開口一番スゴまれたって、華麗にいなすのが太鼓持ちです。
「うんうん、そりゃーお忍びっスよね。でもひとり飲みのお邪魔はしないっス。ちょいと余興で、コスプレ太夫と個室でおしゃべりいかがスかーってお伝え願えれば」
「女を世話しようってのか」
「いえ、女はウチのお客さんについてるキャンギャルなんスけどね。同伴デートで。あ、個室のグレード確認させてもらっていいスか。大事なお得意なんで」
「よく分からんが、来な」
 用心棒はカウンターを跳ね上げ、ハルを個室用ロビーへ案内しました。
「さすが、入れ墨しょったお奉行さまが行きつけにするだけあるなー。越智屋のご隠居にはちょっとハードすぎるかも」
 ハルはチラチラ見回しながら考えました。すれ違う従業員は、もれなく物騒オーラをまとっています。
「あの、俺やっぱ帰るっス」
「どうした急に」
「だって、いかにもこのまま監禁されそうな地下倉庫に来ちゃったし」
「せっかくだから監禁されていけよ」
 ハルは襟首をつかみ上げられ、びたーんと壁に叩きつけられました。
「いっテテ……やっぱり~」
「何を探ってる。どこのもんだ」
「会いたいだけっス~、遠山の金さんに」
「何の用があるってんだ、富山のキースさんに」
「お客さんがファンなんスよ~。てか、今アクセントおかしかったっスよね」
 用心棒は頭を使うタイプではないらしく、縛って所持品をあらためるお決まりの手順をこなせば満足したようです。
「上の判断をあおぐから待ってろ。先客と仲良くな」
「先客?」
 見回すと、同じように縛りあげられた赤い髪の男がいます。
「そちらさんも、金さんに会いに来たんスか?」
「どうやらうちのガイドブックが迷惑かけたようね。公式プロフィールをよく見たら、金さんは下戸でバリバリの甘党だったの。もう出版しちゃったし慌てて訂正のお詫びに来たらこのザマよ」
「“お江戸の歩き方”の雑誌社って、冬成がバイトしてる?!」
「冬成って、あら」
 後に「レッドオイスターの邂逅」として知られるようになるかどうかはまだ分からない、偶然の出会いでありました。
「へえー、あんたが噂の太鼓持ち兄ちゃん。いつも自慢話を聞かされてるわよ」
「わあー、あなたが弟の悪夢の元凶。こないだ泊まりに来たとき“デカい……あんなデカいものがこの世に”ってうなされてたっス」
「ちょっと着替えを見られたのよ」
 挨拶が済んだところで、後ろ手同士背中合わせになり、とりあえず縄をほどく努力をしてみることになりました。
「にしても、ひと言であんな反応になるなんて、シャレにならないところに触れちゃったようね」
「金さんって、何かヤバいキーワードだったんスかねー」
 周囲にはごたごたと薬種箱が積んであり、北国街道の通関札と牡蠣エキスのラベルが貼られています。
「イチ押しメニューの肝臓いたわりカクテルっスね。オイスターエキス入りだったのか。街道経由で仕入れてるのかな」
「ふーむ」
 劉は静かに目を閉じ、精神を集中させました。
「日本海側から牡蠣エキスの薬売りに化けて江戸に入った殺し屋がいて、富山のキースさんと呼ばれてる。要するにこういうことね」
「あのう、要しすぎっス。おいてけぼりっス」
「点と点を線でつないでこそジャーナリストよ。ああいうゴロツキがボスもいないとこで人をさん付けする場合、相手は大抵プロの始末人だわ」
「金さんは? 江戸町奉行は?」
「ここの従業員は地方出身が多いみたいなの。とやまととーやまでアクセントがまちまちな上、キースの“ス”と、さん付けの“さ”がリエゾンして」
「で、とーやまのきーっさん……、えーと?」
「壮絶な聞き間違いってことよ。全くひどいデタラメつかませてくれたわ、あの情報屋~!」

 

「はーくしょん!」
 ぶるると身震いした吉澤は、ごそごそと上着を羽織りました。
「さすがに寒いなー裸エプロン」

第8話へつづく!)

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