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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


はなまるファンとふざけたおとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全16話。第1話はこちら


冷酷王のスピーチ(14)
「ソラ、とっとと食べるネー!」
 オリエンタルな顔立ちの給仕係が、カレーをドカドカよそって回ります。
「ぴち、ハネが飛んだっスー」
「雑すぎるわよ、お嬢さん。自分の国の食文化でしょう」
「私べつにカレー圏出身じゃないネ。中東系の見た目は飲食バイトに説得力出るってだけヨ」
「あらそう。まあ見た目は大事よね」
 エプロン男の制止を誰も聞かないので、カレーはおいしく完食され、みんな満腹になりました。
「食うなと言ったのに……」
「ふー」
 夕方の台所、くつくつ煮えるおナベ、何もかも大丈夫という気分が、獄舎に満ちあふれます。
 エプロン男にとっては苦手な香りで、手近な布で口元を覆うしかないのでした。
「そ、そうやると下が丸出しっスけど!」
「あんたも食べて落ち着きなさい。まともな服装感覚が戻ってくるわよ」
「…………巧妙なやり口だ。現実に違和を感じる人間を一カ所に集め、食餌とアロマテラピーによる意識操作を繰り返せばそのうち……」
「何だか、小さいことが気にならなくなってきたなあ」
「何を不安に感じてたのかしら」
「物事は見た目どおり。それ以上でもそれ以下でもないわい」
 人々は落ち着いて食器を片づけながら、現実との折り合いをつけ始めました。
「夢は夢」
「悪魔は悪魔」
「全裸女子はエロス」
「巨人は恐怖刺激」
「たまに夢で楽しめばいいのさ」
「そうとも。エルフはエルフ」
「…………俺は、だまされねえぞ」
 バシンとスプーンを置いた木こりは、確かにカレーを完食しています。
「アーこのおっさん厄介ネ。何杯食わせても、キモドリームが落ちないヨ」
「記憶を勝手に洗い落とされてたまるか。手塩にかけた森を、空を飛んだ日を、一緒に見た月を……」
「ニャアニャア」
 まぶしい光がキラキラして、白猫がバンザイで立ち上がります。
「船長、お前にも見えるよな、な!」
 半泣きの木こりは、にゃんこを抱きしめようとしてバリッと引っかかれました。
「西日追いかけて遊ぼうとしてるんでしょ。ちょっかい出さないの」
「いてえよ。く…………あ、うん分かってる。傷はすぐ洗うんだろ」
 木こりは猫じゃない何かと会話しているようで、見た目には百パー可哀想なおじさんです。
 誰もがそっと目をそらしましたが、エプロン男は違いました。
「見上げたメンタルだ。この時間回廊に惑わされないとは」
「何の話よ」
「気づかないのか。俺たちはずっと『明日は異端審問で、そのあと処刑』という一日に閉じ込められている」
「またまた、夢物語を~」
「木こりの髪とひげが伸びているのはなぜだ。この男の固有時間が経過し続けているからではないのか」
「確かに。みんな同じ日に投獄されたはずよね……」
「もともと無精なのかも知れないぞ。こいつの髪がこざっぱりしてたって覚えがある奴は?」
 ずけずけした声にエプロン男は三白眼で見回し、ヨシザワス王はサド目で切り返しました。
「反証しようってんじゃない。あんたの説に乗ってみたいんだ。そのための確証がほしい」
「残念。地味木こりの地味な髪型、だれの印象にも残ってないネ~」
 給仕係は、笑いをこらえながら食器を重ねて回るのでした。



「カレー、うまそうすぎて食っちゃった。この後はどうなる」
「夜が来て寝たらリセットだ。明日、またあの審問官に調書を取られているだろう」
「SFちっくねえ」
「僕、時間ループものは嫌いじゃないです」
 ひとまず手を組むことになったヨシザワス王とエプロン男は、離れた房のあっちとこっち、密談というには大っぴらで、誰もが食後の娯楽代わりに耳を傾けるのでした。
「王のホラも、何度か話すうちにネタがこなれていく。つじつまの破たんが許容範囲内に収まれば、俺たちの時間はまた動き始めるはずだ。多分な」
「あら、あんたにも確証はないのね」
「俺には俺の確証がある。毎日がカレー地獄という確証が……うっぷ」
 男はエプロンに顔をうずめます。
「いちいちめくって見せないでっス~」
「で、時間ループから解放されても、そこは誰かによって修正された現実ってわけか」
「ずいぶんつまらなそうじゃのう」
「私語は慎めー!」
 とりつくしまもなさそうな看守が来て、ガンガン鉄格子をどやしつけます。
「時間がどうも何も、明日が来ればお前たちは処刑だ! 時間がループしてくれるなら逆にありがたいだろうが!」
「確かにそうだ」
「どうか明日が来ませんようにと、神に祈って眠りにつく者もいるだろう。そういう自己暗示が意識操作のキモなんだ。何とか揺さぶりをかけられないか……」
「黙れというのに! 不服従のペナルティだ、今日は早めに消灯ー!」
 バンと照明が落ち、獄舎は闇に包まれました。



 ひとすじの光もない暗闇。
 自分の鼻先はこのへんだという感覚がゆっくりと溶け。
 自分が自分だという確信が失われはじめると。
 主観にもとづく経験や、時間の矢による因果は崩れ去り。
 バラバラになった事象は互いに離れながら、無限に薄まっていった。
 現実の宇宙とは違う、広大などこかへ向かって。



 認識のスケールをぶち抜いてたどり着くそこは、起こりうるすべての可能性があらゆる方向に展開する、可能性世界の集合体と言えた。
 どんな世界も存在しうる。
 剣と魔法の世界でも、ロボと銀河連邦の世界でも、巨人と立体機動の世界でも、……以下略。
 巨樹が細い枝葉へと分かれるように、ある部分を拡大しても拡大しても、より小さな自己相似形が現れ続けるフラクタルな連続体は、それぞれの可能性が、それぞれに独立した宇宙として、それぞれに枝葉を広げていたが。
「それぞれ~♪」
 常人なら頭がパンクしかねない可能性情報のスーパーツリー構造を、楽々と行き来する女がいた。



「お買い物~は楽しいなー♪」
 可能性の枝から枝へ、目移りしながら歩く様子はさながらスーパーの買い物客。
 腕にはカゴをさげており、折った枝がポンポン放り込まれる。
「あーコレ、リューぽんが服装倒錯してる世界だって~。尼僧服。おネエだからってシスターかよ、ぷくく~♪」
 身を乗り出し、またひと枝をポキンと折ると。
「こっちは宇宙天女ネリアと英雄サミーのヒロイックファンタジーか。いらなーい」
「おわ、捨てるな……!」
 固い寝床でうなされながら、サミーは必死にもがきました。
 獄舎は相変わらず真っ暗です。
「あんた、ほんと買い物好きねえ……」
「欲しいなら買うてやろうかのう……」
「揚げ足取らないでくださいよ……」
「巨乳っス~……」
 ヨーコリーナに関する記憶が何となく再統合されますが、役に立たない断片ばかりです。
「ち、しょせん夢か……」
 寝つきの悪いエプロン男は、暗闇の中で目を凝らしました。
「おい、起きてるだろうな」
「起きてるよ」
 ヨシザワス王だって普通に不眠です。
「このひっちゃかめっちゃかの中でスコンと眠れるこいつらがおかしいんだ」
「夢の中で最小単位まで分解されたら最後、別のつじつまに再統合される。もってかれるなよ」
「……目を閉じてるのか開いてるのかはっきりしない。暗すぎて何かがチラチラするような」
「いや、何かあるぞ。光ってる」
「どこどこ」
 光が照らすのは物質ばかりではありません。
 それは人間の意識。
 光は意識に届くのです。
「…………そうだよ。光を見ようと意識して……」
 小さな小さな声がしました。
「聞こえる? 妖精を信じるおともだち……、みんなの力が必要なの……」
「おっおっ俺は信じるぜ! さあみんな、拍手しよう!」
「うるっさいわねえ、静かに寝なさい」
「○ィズニーアニメの見すぎっスよ~」
 パン! ……パン! ……パン!
 静寂の後のブラボーみたいなしっかりした拍手を送っているのは、誰あろうエプロン男でしたが。
「うう、あんたか。嬉しいぜありがとうよ!」
 どうして木こりに男が見えるかと言うと、まばゆいエルフが闇を切り裂き、そこらを飛び回っているからでした。

第15話へつづく!)

~念のため補完~
ピーターパンでティンカーベルの力が弱まったとき、ネバーランドの夢を見ている世界中の子供に拍手を求めます。
オイラに元気を分けてくれ
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