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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


はなまるファンとふざけたおとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全16話。第1話はこちら


冷酷王のスピーチ(13)
「――――――それでね、巨人のハラの中でなお邪悪なパワーを発信しつづけたヨシザワス王は、とうとう最強の大魔王、電力王となったわけですよ」
「ほほう」
「体は死んだのに心は生きてるホモ野郎と、体はピチピチで心は死んでるゾンビども。反対向きの伝導体がひとつづきの端子でつながれば、それは立派な電池ですから」
「ほうほう」
「つまりは半永久的な生体電池です。女神パトラの陥没孔に巨人を電力ごとプールすれば、夢のスマートエネルギーの完成ですよ。それでやっとほも野郎の妄執を止められたってわけ。破壊も殺処分もできないなら封印するしかないんです。ホラ、太古の昔に悪魔を封印した例の方法ですよ。ブヨピヨッとね」
「ほうほうほう、ほうぁふ!」
 相づちの続きがあくびになっちゃったのは、泣く子も黙る異端審問官、キース・ウォルケヌスです。
「で? 二度寝の夢の話はそれで終わりか。ホラ吹き王」
 ヨシザワス王はしょんぼり肩をすくめました。
「信じる信じないは自由ですよ。それより、もっとかっこいい呼称つけてもらえませんか」
「命名したのは俺じゃない、教皇庁のデータ管理部だ。さて、調書インデックス名:ホラ吹き王。お前のホラはほとほとつじつまが合っていないな」
「そうですか?」
「普通もうちょっと整合性とか気を付けるぞ。そもそもなぜ、自分の回想シーンを“王さまは巨人に食われましたとさ”でシメる。あと、ちょいちょい出てくる男色傾向は何だ」
「そんなのありましたっけ」
「調書の各所で“ほも野郎”とののしっているが?」
「そうでした。えーと確か、生理的にムリな感じの人外で、ゴリゴリに病み腐れた忌むべき存在……あれれ、これがヨシザワス王、つまり僕……? あれ……?」
 やれやれと立ち上がったキースは、気の毒そうに王をながめました。
「すっかり理性がぶっ壊れたな。異端審問の容疑者は大抵こうだが」
 書類をかき集め、看守に合図します。
「じゃ、明日の審問では素直に異端の罪を認めろよ。痛くないように処刑してやるから」
 がしゃーんと扉が閉められ、ヨシザワス王は鉄格子にへばりつきました。
「僕はまともですよ。少なくとも隣の奴よりは!」
「あいつはモノホンだ」
 王の隣にぶちこまれているのは、エルフが見えちゃうあまり自分もおっさんエルフになって幸せに暮らしていたと主張する木こりです。
「見えねえ奴に何が分かる…………なあ、船長」
「ニャア」
 木こりは髪もひげも伸び放題、もじゃ毛を利用して白い猫をじゃらしています。
 あまりにも可哀想な思い出話ばかりする木こりは、特別にペットの飼育を許可されているのでした。



「しっかしまあ、ごっそり詰め込んだもんだ」
 キースは長い歩廊を見わたします。
「異端審問の歴史に残る大量起訴だぞ。こりゃ手続きが大変だぜ……」
 ずらりと並んだ個別房は、多種多様な異端容疑者でいっぱいでした。
「蒸したてホカホカの巨人が~」
「全裸のティーン女子~」
 王宮広場で一網打尽にされた市民らは口ぐちに幻覚を口走っており、さながらサイコパスの見本市です。
「悪魔が来たりてバグパイプ~」
「なあなあフューナリー、俺のシッポって、ウロコ系だっけ? ヒト肌系だっけ?」
「兄ちゃん、お尻しまって。風邪ひくから~」
「ハル、あんたに元々シッポなんてないわよ。それより私って、デスノートを管理する死神じゃなかった?」
「おや、お前さんはリューさんじゃったかのう。リュークさんじゃったかのう。年のせいか人の名前があやふやで……」
「くそっ、何だってこうあっちもこっちも夢オチみたいになってるんだ」
 ヨシザワス王が鉄格子を蹴りつけると。
「王さま、落ち着いて」
 かすかな声がして、王は素早く見回しました。声の主は見当たりません。
「ぶっ壊れたのはトキちゃんなの。目で見たものと理性のつじつまを合わせられなくなって、自分で自分を夢オチにしちゃったのよ……」
「消えろ幻聴、僕はまともだぞ。ホモでもないし!」
「うるさい、ホラ吹き王」
「よくも我らの革命を台無しにしてくれたな」
 比較的まともに見える一団は、あとちょっとで政権を奪取できたはずの貴族たちです。
 彼らの容疑は、バチカンの名をかたるニセモノに加担した詐欺容疑でした。
「おかしいとは思ってたんだ。なんたって発音が……なあ」
「ずっとPA、パチカンって聞こえてたもんなあ」
 ツルカメッシュ王に戴冠をほどこした悪い顔の異端審問官は、バチカンのパチもん、パチカンからの使者だったのでした。
 名乗るタイミングでいつも雷が鳴り、「バ」なのか「パ」なのか誰も聞き直さなかったわけですが、あとから馬車で来た方も、泥ハネを拭いてよく見ると紋章は天国の鍵ではなく天国の耳かきで、結局どっちもニセモノでした。
「せっかくの革命をグダグダっとさせないためにも、権威母体の真偽はいったん置いといただけなのに」
「そのあと本当に本物の教皇騎士団が乗り込んでくるとは……」
「ありゃ絶対どっかで様子を見てたぜ」
「ずりーよな」
 落雷の審問官と泥馬車の枢機卿、両パチもんたちは、ヨシザワス王権の弱体化につけこんで国家宗教への参入をくわだてたわけですが、彼らを遠巻きに泳がせ、介入のチャンスをうかがっていたのが教皇庁でした。
「まったく、一枚上手とはこのことだ」
「完敗だわい……あ、お待ちを審問官さま、すんませんした、すんませんしたーっ!」
 パチもんたちはずうずうしく平謝りに転じています。
「われわれ新興勢力なもんで、つい教皇のご威光をお借りしちゃいましたけど、それはそれは反省してるんですよ~」
「ん」
 キースはそっけなく調書を見比べます。
「じゃ、悪魔はお前らで決まりな。世界の終わりに神の名をかたる奴はシナリオ的にも悪魔と相場が決まってる」
「そそんな、どうか、どうか~!」
「悪魔教団が革命にテコ入れし人心を騒乱。ホラ吹き王ヨシザワスはイリュージョンを駆使して自らを大魔王に仕立て上げ、物忘れ激しいツルカメッシュ王は統治能力に疑問あり……よし、この線でいけそうだ」
「王領をまるっと教皇領化する気だな。畜生……」
「おじーちゃんは隠居させてあげてねー」
 まとわりつくヨーコリーナをしっしと払い、キースはスタスタ歩き続けます。
「っておい、その女だれだ。何でそっち側を歩いてる」
 ヨーコリーナは普通に鉄格子の外にいるのでした。
「私の姿は見えないことになってるのよ~」
「魔法か、魔法の力なのか」
「間者の力よ。異端審問で有罪になった女がいてさー、日が悪いとか雨降りそうとか訳分からない理由で火あぶりの執行がズルズル延期になってるけど、あれってどうしてかなーってつぶやいたら、こちらの審問官さまは私のこと見えないフリしてくれることになったの」
「単に脅迫が成功したのね」
「おねーさん、その情報くわしく教えてくださいっス!」
「女の名前はハンナちゃん。魔女として髪を切られたようなショートボブで、修道院預かりということはおそらく妊婦、産まれてくるのはきっとお父さんにそっくりな」
「わーわー、悪魔はみんなの心の中にいるぞ。その正体は……お前だ―――!」
 むりくりな怪談オチでどーんと指をさされたヨーコリーナは、めんどくさそうにそっぽを向きます。
「分かった分かった。黙ってるわよ。みんな私のことまで忘れちゃってるんだもん、ゴシップをリークしてもつまんない~」
「ああ、行っちゃうっス……おねーさーん」
 ヨーコリーナは見ないフリのキースに追い立てられながら、石壁の角を曲がって行ってしまいました。
 納得いかないのはヨシザワス王です。
「てんでおかしい。あの女だれだ。僕は巨人に食われ、同時にそれを見物していたと……? 理屈に合わないことが多すぎる。幻聴はするし……」
「そんなことより、食事の時間っス」
 ハルが嬉しそうに鼻をひくひくさせ、大鍋を下げた看守がやってきました。
「わあい、カレーだ」
「ココ、ムショめしにしてはレベル高いわよね」
「この香り……嫌なことすべて忘れられるのう」
「――――――そういうわけか。おい、そのカレーを食べるな」
 つぶやいたのは、ずっと奥で気配を消していた裸エプロンの男でした。

第14話へつづく!)
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