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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「王さまとブヨピヨ」「サミー・エバーパインの逆襲」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。


全8話。傾向はあれやらこれやら、色んなジャンルの味噌煮込みカオスです。でも笑える程度ですよ。(笑えなかったらすみません)(病気ですみません^^)


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騎士ハルミオンと十二の試練(1)

 ヨシザワス王の宮廷に仕える騎士、ハルミオン・ニッシーナは、領地を持たない一代貴族です。
 気のいい若者でそこそこモテるのですが、世襲爵位とお城を持ってるおじさんに女の子を根こそぎ持ってかれたパーティで、ハルは夜空に誓いました。
「俺、がんばって出世するっス!」
 宮廷での地位が上がれば、王さまから相応の知行地がもらえるはずです。
「お、ヤル気だねー♪小賢しいなぞなぞで僕に楯ついた過去は忘れてあげるよ」
 忘れるつもりが全くなさそうな口調は気になるものの、手始めに都の市場の巡回警備をおおせつかったハルは、意気揚々と出かけていきました。




「すごい人出っスねー」
「宮殿再建事業で、景気がよくなったものね」
 思い切り女連れなのは、彼なりに考えた「デートのふりして一般人に紛れる」作戦です。
 もちろん「仕事と同時にデートも消化、俺って頭いいっスー」作戦も兼ねています。
「ねえねえハルくん、この耳飾り可愛い」
「あ、似合うっスよー。すいませんこれ下さい」
「いいの?」
「へへ。騎士コスでパーティのサクラやるバイト代入って、リッチっスから」
 ガラス玉の耳飾りを買い、付けてあげるっス・やだくすぐったい、とキャッキャしているところへ、路地から出てきた誰かがドンとぶつかりました。
「わ!」
 石畳に落っこちた耳飾りを、女ものの靴が踏みつけます。
「っん、往来でイチャついてんじゃないわよ。あん割れたぁ」
 フードをかぶった女は色っぽくため息をつき、爪先をトントンしてガラスの破片を払い落としました。
「ちょっと、そのまま行く気? 弁償してくれるんでしょうね」
 ハルの彼女が追いすがると、女のフードが後ろへずれ、不機嫌そうな顔が現れます。
「悪いけど、今は小銭を持ってなくて」
「っそ、それどういう意味よ」
「安物って意味だけど」
「キー! ハルくん、この女職質して!」
「まあまあ。また別の買ってあげるっスよ」
「もう、すごい美人だからって見逃す気?」
「しょうがないっス、すごい美人だし」
 ホメられてうふふと笑った女は、くるんと手首を返して何かを取り出しました。
「代わりの耳飾りをあげるってことでどうお。私のだけど」
「あらハルくん、これガラスじゃないわよ、いい宝石(いし)よ」
「じゃ、どうぞ」
 がっつくハルカノの手をかわし、女はハルにすり寄りました。
「あ、あの困るっス、そんなピタッと」
「心正しき騎士よ。知恵と勇気を示すなら、栄達の道は開かれよう……」
 低く囁く耳元に、ちりっと痛みが走り。
「いてて! 穴開けてくれなくていいっスよーもー」
 片耳に石の存在を感じながら涙目で見回したときには、女の姿は消えていました。




「リューさーん、ピアス穴消毒してくださいっスー」
 魔法使いのリューが出しているハーブ薬局が市場のはずれにあり、ハルは耳を押さえて駆け込みました。
「なあに、いきなり」
「あと、金具のはずし方も見てもらえるっスか。女の子にプレゼントしたいんスけど取れなくて」
「アンタこれ、呪われてるわよ」
 リューはばっちいものを見るように身を引き、ハルに鏡を二枚渡しました。
「合わせ鏡で見てごらん。屈折が無効化するから」
「こうっスか。うわあ!」
 鏡像をさらに反転させた正虚像の世界では、むちむち動く小さなネズミが、ハルの耳にかぷーんとかじりついていました。
「ひええ、取って取ってっス~」
 しかし直接見えているのは、赤い目のネズミをかたどった普通のアクセサリーです。
「よくできた目くらましね。どこでこんなややこしい呪いをもらってきたの」
「市場でフェロモン美人にぶつかっただけっスよー。心正しいハンサムとか言ってくれて、感じのいい人だったのに」
「魔女にでも気に入られたのかしら。アンタを独占するために、周りから女を追い払うつもりかも」
「そういえば、急に彼女がネズミくさーいペットショップくさーいって帰っちゃったっス」
「ったく大事なナンパ要員がこれじゃ、このさき勝率落ちるじゃないのよ……」
 リューはイライラと魔法書をめくります。
「モノは単なるネズミなのよね。とりあえずネズミ退治でもしてみましょ」
 そのへんの猫を連れて来てみましたが、おっとりした都会猫は呪いの気配に警戒し、近づいてもくれません。
「猫に細かい事情を説明できればいいんだけど……、あ!」




「アマ姉ェのトモダチに頼まれたら断れニャいニャ。ブシャーッ!」
 大フック船長が盛大に威嚇してくれたおかげで、ネズミはぴゅーっと逃げていきましたが、ハルはどたっと倒れ込みました。
「どおお! 重いっス!」
 半身を引きずって川まで行き、合わせ鏡で水面をのぞくと。
「なんじゃこりゃー!」
 鏡の中では、子牛がハルの耳をはむはむしていました。
「近くに牧場あったわよね」
 借りてきた牧羊犬を犬笛でわんわん吠えさせると、子牛はモーって言いながら牛舎に帰っていきました。
「嫌な予感がするわ……どう? まだ耳は重い?」
 ハルはしょんぼりうなずきます。
「耳って言うか、体のこっち半分がずっしりと」
 恐る恐る鏡を合わせると、立派な虎がすっくと立ってハルの肩に前足を乗せています。
「と、虎っ……!」
「走るのよ!」
 リューはハルの腕をつかんで走りました。
「めちゃくちゃ野獣な呼吸音が追って来るっス~!」
「あのハワイアンカフェに入るわよ!」
 二人は屋外席のヤシの木の周りを日が暮れるまでぐるぐる走り、虎はめでたくバターになりました。
「何が何だかっス、ぜーはー」
 大量のバターはリューが凝固魔法で箱詰めし、騒いだお詫びとしてカフェに渡します。
「さーて、鼠・牛と来て虎。これは十二支ね」
「じゅうにし?」
「動物を1ダース並べた東洋の呪文よ。年末年始にしか用がないレア呪文で、ねーうしとらうーたつみー、あとは苦手」
「じゃあ順番に出てくるのを追っぱらってけばいいんスね。うへー、十二頭ぶんか」
「そう簡単にはいかないと思うわ……」
 虎が済んだ以上、次の次にどえらい怪物がいます。
「ド、ドラゴンー?!」
「至近距離に出現するのが厄介ねえ。頭から食べられるか、火炎でこんがり焼かれるか、こんがり焼かれて食べられるか」
「どうしたって食べられるっス!」
「今は“うー”で兎だから、害がないっちゃないようね。あら?」
 念のためにと確かめた合わせ鏡には、耳と尻尾のあるピタピタ衣装の女がいました。
「兎だからってバニーガール……やれやれ」
「あなたは! 市場で会ったお姉さん!」
「ハーイ、騎士さま」


第2話につづく!)

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