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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)
他のHANA-MARU二次小説はこちらから。
全3話。第1話はこちら。
エセ童話ゆえにこころのひろい おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
わらしべしょちょうじゃ(3)
誰もいなくなった埠頭に、バスのヘッドライトだけが煌々と灯っています。
「さて……やっとふたりっきりになれたなあ、子猫ちゃん?」
ひとり残った弁天は、光の中にゆらりと立ち上がりました。
「手ひどく足蹴にされてから、寝ても覚めても考えるんはキミのことや。罪な王子さまやで」
瞳孔を糸のように細めたしょちょねこに、逆光の影が、鈍器をぱしぱしさせながら近づきます。
「歌舞伎町でバスにハコ乗りしとる姿を見かけたときは、ワシもとうとう幻覚キたかな思たけど、とりあえず一番太いバイブだけ持ってラブワゴンに飛び乗ったんや」
猫派ではない弁天は、しょちょねこの「猫好きあつまれ! 猫派ーメルンの術」にかかったわけではないようです。
「どうやらカップル成立はワシらだけのようやな。バスタオルいっちょでヤる気マンマンの女もおったけど、愛はがっついたらいかん……ってこのバス何や、轢く気マンマンやんけ!」
無人のバスはゆらゆらとケツを振り、逃げる弁天を追いかけます。
ジジジッと火花散る静電気体質であるじじねこは、ハイブリッドバスの給電コイルからステアリングを乗っ取るくらい朝飯前なのでした。
「悪いが口封じさせてもらうぞい。プリンスの猫偽装を見破られたからにはのう」
「猫ぉ? ワシには初めて会うた時から、キラキラの半裸青年が上目遣いで指噛んどるようにしか見えてへんで」
「……特殊な視覚異常のかたじゃったかのう」
「愛は色盲や」
じじねこはポーンと「降ります」ボタンを鳴らしました。
「ということはしょちょねこよ。お前さんは禁忌を破ってはおらんぞ。何と何と、うまいこと正体を明かさずに魔法を使ったもんじゃ」
ほめられて嬉しいしょちょねこは、えっへん☆とヒゲを動かします。
「一体何の話や。愛こそ魔法やで」
弁天のような事例は存在ごと無視することにして、しょちょねこは引き続き人間界で暮らせることになりました。
「おーいしょちょねこよ、人間界に来とる目的を忘れるでないぞー」
「♪」
人間界に潜伏中の大悪党を探すのは、工藤のごはんを食べてからだっていいのです。八千菊仕込みのおだしのきいた猫まんまを思い浮かべながら、しょちょねこは走っておうちに帰りましたとさ。
めでたしめでたし。
その頃、劉と吉澤は急いでアジトを片づけていました。
「このダンボールとあっちのファイルボックスね。それだけあれば、またどこでも商売始められますよー」
ソファに寝そべった吉澤は力仕事を指示するばかりです。劉はバタバタと働きながら冷や汗をぬぐいました。
「とんでもない人数に始末現場を目撃されてしまったわ。どうしよう、逃げきれるかしら。えーい」
テンパった劉はバリカンをつかみ、目立つトサカを一気に刈り込みました。
「あら、何だかすごい解放感……、私何でこんなヤツの言いなりになってたのかしら」
トサカがなくなると、吉澤の「卵が先か鶏が先かチキチキ・奴隷になーれの術」は効きません。
劉は晴れ晴れとして出て行き、吉澤は薄目を開けて舌打ちしました。
「あーあ。ま、しもべならまたいくらでも作れますしねー」
魔界の磁極を「SとN」から「SとM」にして逃げた大悪党は、「スレイブ&マスター・よいこは黙って猫かぶりの術」を駆使して逃走中なのでした。
「次はどいつを籠絡しようかなー。あの工藤って奴はおちょくりやすそうだったな♪」
またも工藤に危険がせまっています。がんばれしょちょねこ! 今度はブヨピヨに気を取られちゃいけないよ!
おしまい。