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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
勝手な一読者の私と、小説との対話です。
要約するという能がなく、心の針が振れたところとその理由をぜんぶ書くというアホな方法をとっています。
作者さまが「それ違うし」と思えるよう、具体的に書いてみたつもりです。
作中からの引用を「>」としています。

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F06 イ●カに●った●年

イカー! イカ焼きがあの食堂の名物になるかも。偽装を解いたエイリアンはいつも全裸だ。いやフルボディでイカ型の気密服もありそう。エンドマーク(笑)にマジレスではあるけど、「海に眠るお宝」と「空から来た異界人」と「草の根現地調査」がバラバラに並んでかみ合わない印象。宝石の噂が広まったとしても「海を探せ」とはならないような。カイトの身元はすんなり信じてもらえたようだけど、どんな証拠を見せたんだろう。現地住民へのお土産だから百均グッズレベルでもよさそうな先進知識は、どの程度驚異的でどの程度コドモだましだったのか。青い光が差す先を「ラピュタの方向だ」とココみたいな庶民も知ってるということは、宇宙船の飛来は広く目撃されていた? お宝あるんじゃね情報だけでなく神の降臨とか終末論とかが巻き起こっていても楽しい。


F07 光の真実

>究極の目的は知識の追求

目的を追いかけるのが「追求」なのでは。追いかけるべき対象が「目的」なのだし。その堂々巡りの行為は、ゴールにたどり着くことがあるのか。「ゴールはないのだ」という結論にたどり着くにしたって、そこを目的とするのはおかしいような。

>せ、精霊とは物体に意志と力が宿った『物』と考えます。

「>物体に」を削ったらすんなり読めた。以降も弟子くんと彼の迷いを反映してる地の文の、読みくだしづらい日本語がつづく。対する老魔術師がスッキリ整地してくれるかと期待したけど、

>師匠である老魔術師の顔を盗み見て(おそらく)変化が無いのを
>あごひげをゆっくりとしごきだす。何をまでは分からないが、思考にふけっているようだ。

など、文章的に老先生のいる場所が弟子くんに近い。ぴったりくっついて並んだ二人は主に顔パーツで描写され、アップが連続するマンガのような、混み合ったコマ割り感。

教室移動ののち、老先生もすべての答えを知ってるわけじゃないという、まっとうな科学的結論にたどり着くラスト。弱まった光を見ようとして、弟子くんは手元を照らそうとした? 光で光を見ようとする無茶問答にハテナ。

>いろいろ性質やなんやらを説明できるが、じゃあ「何か」と言われると、その真理までは到底たどり着いていない。

「光」本人を召喚できてる老先生が言うのだからますます納得。真理への道は遠い。スイッチを切ったりするわけではないらしい光氏が、袖にもぐればすっかり消灯されてしまうとは、先生は一体どんな黒体ローブを着てるんだろう。


F08 ねがはくは花のもとにて...

宇宙のトレジャーハンター。相棒はかわいい人型航行システム。冒険野郎の独白にぐぐっと引き付けられて読んでると、忘れた頃に「Aは」という主語に突き放される。三人称の地の文に、

>買い替えるわけがない。それは整備工もよく分かっているだろうに。
>その持ち主が今まさに横を通りすぎたことなど夢にも思わないだろう。誰になんと言われようとあのシップを手放すつもりはない。

など、セリフ寸前の独白が挿入されるとき、両者の色合いに差があれば読んでいてリズムの切り替えになるけど、独白体じゃない地の文も、常にAの視点から物を言うことをやめない。気になるのが

>AIは間違いなどなにもなかったかのように報告してくる。

このあたり。「>くる」さえなければ、AIの態度についての客観描写と読める。でもここではイラッとしてるAが「~報告してきやがるぜ」と独白してるようにも読める。独白と読んだっていいけど、すぐ「>Aの指がコンソールをせわしなく踊り、」とカメラが客観に退き、他にちゃんと話し言葉の顔をした「>この前整備したばっかりだってのに!」などもあって、読み手が文章を着地させきれずにいるうちにお話が進んでしまう印象。動き満載の見せ場ではあるけど、読んでる足場が固定されないとシップの揺れも感じられないような。

>開発元も倒産し工場も閉鎖されサポートも終了

旧型をだましだまし使う機械マニア。付き合い長い家電には私もつい「がんばれ」とか言ってしまう。頼んでないコーヒーも美味しく飲むことにするキャプテンは、ずっとこういうひとりごとで過ごしてるんだなあと、寂しい背中をポンしてやりたくなる。

回想になり、妻との思い出が語られる。三人称だろうが独白文だろうが「妻」がずっと「妻」と呼ばれる感じにモヤモヤ。「>妻がコンソールをいじりながらうんうん唸っていた。」から「>なかなかシュールだ。」までは回想シーンの映像という距離感。ブリッジへと案内された読み手は、すんなりAの内心に入っていける。でも、

>しかし心配をよそに妻は「あと少しだから!」と瞳を輝かせている。

読んでる私はAが見ている光景をAの頭の中から見ているつもりだったのに、呼称だけが一本調子に「妻」と呼び続ける違和感。せっかく引きつけられた内観ビジョンが焦点を失い、乱視の視界みたいにぶわーとボヤけた。妻のことは「>善は急げとばかりに端末に向かって」のようにセリフへのリアクションとして主語なしに描写するか、たまに「彼女」と呼んだっていいのでは。このシーンもう一人の「彼女」であるAIは、名前がないけど人格もまだないのだし、混乱はないはず。

>突然振られて戸惑うAに、いたずらっ子のような笑みを浮かべた妻が操作端末をよこしてくる。

「くる」という末尾でA視点として終わっている文の入り口は「突然振られて戸惑うA」であり、誰がどこから何を見てるのか、受信アンテナを文章ごとに調整しなおして読む感じ。

>……なにかとても懐かしい夢を見ていた気がする。再び眠りたがる目を強引にこじあけて、Aはサイドテーブルに飾った写真へ視線を投げた。

三人称に独白が混ざってるから文句をつけてるわけじゃないと、読みながら理解したのがここ。「夢か」とひとり呟き、ひとつ動作があり、室内の描写に移るという視点移動にすんなり引き込まれる。

>たかが人工知能にと笑う人間もいるだろう。
>当然の感情ではないだろうか。
>だが、Aも分かっている。

これまでの地の文がA視点から物を言いすぎたせいで、シメであるここがA自身の言い訳のように響いた。全く立場の違う誰かが肩を持つから励ましになるのでは。もしくはきっぱり「オレ」の言い分として語らせてしまうとか。

>「行けるところまで一緒に行こうじゃないか」

絶対大丈夫だよとか救ってやるぜとか、できない約束をしない男気あふれるラスト。


F09 虹色クジャクと北の森

マジックマッシュルームの夢。鳥人(not笑い飯)が行く冬の森。メルヘン導入でもらい煙草というギャップにヤられる。設定がズラズラ並んでも、後の事件に関係してきそうな切迫感がなく、読みながらのびのび息ができる透き間具合は、童話口調の効用か。体言止め静物描写のリズムか。鳥っぽい彼とヒトっぽい彼はなんか友だち、それだけでいい。マッチをカラカラの句読点がシーンを切り、定型詩みたいなスタイルが整う。ふんわりカワイイだけじゃふんわりカワイくならんのだ。勉強。

>ラークとタイチは、おたがいなにもしゃべらずに、じっとリククラゲが焼けるのだけを待っていました。

語りが優しく見守る無の時間。無であるナニカを描写するって難しいと思うんだけど、「>ハーブの香りがするため息を、ふうとひとはき。」とか、ほとんど空気のキノコとか、手でさわれない、これと規定できない、あとから思い出すこともできそうにないただの「無」が、たくさん詰まっていてうっとり。装飾羽根ばっかで生産的なことをしなさそうなラークが「>その間、足で器用に雪を集め固めて即席の椅子を作」ったり、確実に地固めされてそこにある「無」の時間。あと何か小さくてもいいから事件が起こり、小さく解決なんかしたら、この森にキャンプ張って一緒に夜を明かしたくなる。大がかりな目的はなく、ウダウダするのがひたすら楽しい「水曜どうでしょう」みたい。人物の声を近くに感じる。

>「うはははっ。俺ちょっと飛んでくる」

はいはい。行っといで。

せっかく狩ったキノコが空いっぱいに逃げて行き、あーあと「無」に帰した一日の、かけがえのない有為の欠片。絵柄でなく精神性として連想するのはムーミン谷と、アタゴオルのヒデヨシ君。あとどうしても言っちゃうメメクラゲ。


F10 聖泉鏡

少年少女入り乱れる三人称。主人公の愚痴ベースで進む語りに、乱暴に「兼人は」と自分の姿がフレームインする。読みながら「これ誰だっけ、ああオレか」とピントを合わせ直す作業がつづき、物語が細切れになっていく感じ。

>この存在は、清二には視えない。

地の文が設定について言い訳してるのだろうか。「視えない」に「らしい」を付けるだけでも「兼人が得た観察結果」だと言えるはず。「>この存在と一緒になって兼人を焚き付けそうだ。」となると、兼人視点の愚痴に三人称で兼人が登場する。愚痴にも乗っていけないし、客観事実とも思えない。何でもお見通しで霊視力も共有し、心を読み合うソウルメイトのように描かれた清二に、兼人を揺るがす大事件な真埜の存在は読み取れないんだって。兼人の心の動揺としてさえ。そうなんだ。と思うしかない。お話全体に興味がなくなっていくような。

>弓を手にする姿は、清二に負けない男ぶりだ。

美醜を判断できる主観を持つ誰かのような言い方。三人称の立ち位置が分からない。「負けない男ぶりだと人には言われる」「自分でそう思う」など言い方は他にあると思う。

>清二がちらりとだけ見てきたのを、兼人自身は気づかなかった。

見せたくないとこだけ急に目隠ししたような地の文を、「こう読んでね」という読解ガイドだと思えば、気づかなかったんだって。そうなんだ。と思えるけども。私の好きな小説の読み方ではなく、以降の悪霊退治も、凝った設定とその解釈も、「そうなんだ」で終わった感じ。


F11 空の歌を捧げる歌姫の最後

宗教儀式であれ音響効果であれ、人間側のアクションでしか夜を追い出せないってすごい。しかもひとつの町だけ。もはや現実宇宙の天体上にある場所とは思えない。異次元の魔界みたいな感じか。にしてはコンテスト、ワンピース、大学など親しみのある現代語感。「>他の町」も何だか平べったい言い方で、物語の広がりを邪魔する感じ。

私が辛抱するおかげでみんな幸せという地獄。ワンピースに釣られ、報奨金に釣られ、引き換えに身の自由を売った自覚だけがある地獄。好きでやってた歌も義務の中で色あせ、読書の世界も自力で楽しみを見つけるまではいかなかった。宗教家が勧める本だし、まあつまらないだろうな。手厚い終身契約は押し貸しの借金であり遊女の巨額の支度金であり、「置かれた場所で咲きなさい」とか言われたらもう死ぬ自由しかない地獄。

この地獄を支えているのは、「なぜ彼女なのか」に意味をもたらす情報が与えられない、という一点だと思う。それが読み手にとっても伏せられているのは、文字どおりそれが伏線だからだけど、whyではなくhowの意味で、いかにして彼女は選ばれたのか。シンデレラなら、条件に合うかどうかは靴をはかせてみれば分かる。神殿では何を基準に判断しているのだろう。夜明けを試演できるようなシステムを持ってるのだろうか。最適な声を聞き分ける判定者も募集してるとか。神殿が本当に夜明けの仕組みを歌だけに頼ってるなら、候補者にはひとりずつ夜更けに歌わせてみるしかないし、その方が手っ取り早そうだけど。

実は歌姫は誰でもよくて、幽閉生活に文句を言わなそうな貧民をターゲットにしてるのではという裏読みが働く。小説もだんだんそこを説明しようとし始めるような。テオだって「>君の祈りの歌が天に届くから~だぞ」と、何より世界観の補強に手を貸す。不幸そうにしてるリディアを気づかう方が先じゃないのか。そのせいで、

>毎日歌を捧げなければ、空から光が失われると伝えられています。

とミステリアスに語られた設定の、禁忌のもやが晴れていってしまう感じ。歌姫自殺のシーンでも、「>歌姫はいったい何をしている!」と人々は歌と夜明けの因果関係を疑いもしないけど、「歌わないと本当に夜って明けないんだ」とまずビックリしないかな。不信心から「祈りは不要」を証明したリディアと違って、歌を歌として、儀式を儀式として信じてる人は「歌なしで夜は明けるのか」を実験できなかったはず。時間になればぴかーっと明けてきちゃうなら神殿の権威は失墜するのだし。就学前夜のテオだって「祈りが要らないんなら、歌わなくたって夜は明けるよね。知らないけど」ぐらいの知識で物が言えそうな気がする。

無知蒙昧の領域が「~と伝えられています」という曖昧風からだんだんズレていく感じ。科学が迷信に勝利するラストが新技術の導入というスケールに小さくまとまる印象なのは、このあたり迷信に関して小説がすっとぼけることをやめ、助走の歩幅が小さくなっていくからかも。

「祈りがなくても夜は明ける」これを証明したのがリディアの功績だとしたら、「歌がないと確かに夜は明けない」これが証明されたいきさつにも、テオには触れておいてほしいような。科学的推論の手順として。それを命がけで証明した歌姫と同じ監獄に、リディアもいたのだという事実にゾッとしつつ。いや、ほんとのとこテオは、衣食足りた歌姫生活をそんなに不幸と思ってないのかな。

なるほど音なのねーと読み終えて、ふとした時によみがえる読後感。音であれ声であれ、地上の呼びかけに応えて空が震え、光をこぼし始めるところを想像すると、そこにはやはり魔法があると感じる。万有引力だって重力の仕組みを説明しきろうとすれば魔法用語が飛び交うことになる。

昨日と同じ朝が来る。この魔法の不思議さは、きっとまだ解明されてない。

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自ブロックを除いての感想は終了です。
心をこめて書かれた作品に、イタい文字数でズケズケした感想を連ねました。
考えるとっかかりをたくさんいただきました作者さまには心より感謝申し上げます。
貴重な読書体験をありがとうございました!
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