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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
勝手な一読者の私と、小説との対話です。
要約するという能がなく、心の針が振れたところとその理由をぜんぶ書くというアホな方法をとっています。
作者さまが「それ違うし」と思えるよう、具体的に書いてみたつもりです。
作中からの引用を「>」としています。

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D05 嘘つきな唇(※注)
街の遠景、路地裏の情事。画角が一気に距離を詰める。

>キリィはただ、黙って男の熱を受け入れる。

女の主観に入りこむのが早すぎる印象。うわ、真っ最中やし……というのぞき根性を、あと一行味わわせてくれないか。

以降もキリィの感覚情報に密着した叙述からは、彼女のいる場所の物理的な広さが見えない。「>必死に」音を求める彼女がどうして必死かというと、音と彼女のあいだの雑多な音が邪魔するからで、「>男の荒い息遣い」がどうなったかなどの説明がないまま、「>やがて暗闇の中から~音が耳に流れこんだ。」となり、音の方からすんなりやってきてくれた感が強い。救いからほど遠い場所の心細さを味わう前に、「少しだけ和らいだ」という彼女の強がりが、陰惨な情景をかき消してしまった。

>しっとりと落ち着いたピアノの旋律と透明感溢れるテノールの歌声
>何よりもいとおしく、とうとい音。

と救いの音を描写したように、汚れた現実もまるごと描き切る一文がほしくなる。「>キリィは喘ぐ息を殺し、」など細切れな付け足しが、シーンの印象をバラけさせてしまった感じ。

>まるで月星の妖精が夜の街に舞い降りたみたいだった。

……とキリィは思った。」であるはずだけど「ときおり一人称がさしはさまれる三人称」として読ませるなら、次の

>落ち着かない気持ちを隠すように、キリィは口早に

は、

落ち着かない気持ちを隠したくて、キリィは口早に

という程度に「個人の感想です」の但し書きを付けとくべきでは。落ち着かない気持ちを隠したがってることが表面に現れているのか、思惑通り隠せているのか、どちらも表現できるのが三人称だから。キリィ視点が「気持ちを隠したかった」ことだけを言うなら、読んでる私もそれを疑ったりしないわけで。そこから「ライにはバレてるのか否か?」という興味につながるわけで。

>一体なにが、ライをそこまで頑なにさせているのだろう。

ライが疑ってるという流れを提示されてる読み手にとって、この独白は困惑。テーブルマジックで「わっ不思議~」を言うタイミングを逃してマジシャンと気まずくなるような。

嘘を吐き通すことにしたキリィだけど、ごまかせたかどうか気にしない様子なのがハテナ。「分かった。信じるよ」ではなく「>残酷な人だ」とほとんど内心のようなセリフが投げられたのに、言われたキリィは打てど響かない。時折はさまれる一人称をどう読めばいいか、ますます分からなくなる。見えるのに見ず、聞こえるのに聞かないキリィがこのあと「何が起こったか分からない」と言っても「だろうな」と思ってしまう。

>喉に張り付く激情が、言葉にならない声をあげている。
>男はライを恨んでいる。憎んでいる。その腹いせを、キリィで満たそうとしている。
>――だったら、これでいいのかもしれない。

肉体の痛みから自分を切り離していく展開が、ぱしっと決まる。一人称ベースの中にこの畳みかけを放り込むか、視点のおぼつかない三人称から視点の影を削るかした方が、「あ、切り離したな」という演出効果がはまる気がするけどどうだろう。ためしに冒頭の「夜の街」「誰もいない路地」から全部をキリィの一人称として読んでみると、不思議に見晴らしが通る気がした。ラスト手前で死んでしまうけど。

>俺のピアノや歌をちゃんと聴きもしていない姉さんに、

そう言えば、私もライの演奏についてあまり知らない。手放しで褒められても「俺なんて大したことないよ」ではなく「>目立つようなことはしたくない」が言える以上、本人も自分が人並み以上って自覚がある。音楽は彼にとって何なのか。ひとときの逃避? 調和への憧れ? 鍵盤を通じての支配感覚?

「>弾き語り」という言い回しについて。ピアノも歌も両方やることを何度も念押しする感じにハテナ。私の語感でしかないけど、いつもやってる人なら「ステージ」「持ち時間」「セット」とかじゃないかな。アマチュアナイトみたいに「>添え物」のピアノ弾きでも舞台に上がれるようなとこじゃなく、客を呼べる専属バンドがいる店でバリバリ弾いた方が、ライの生活力は上がると思う。盲目のままでも。

キリィが突っ走ったのは「盲人は不幸に決まってる」と思ってるからで、それは「>眼が見えねえなら大人しくしてろ」と言った刺殺犯と言ってることが同じではないだろうか。彼女が生きて「アタシなんも見えてなかった!」と世界がひっくり返る小説もあり得たと思う。


D06 佳人薄明
連想したのはホームズとワトソン。才気と存在感で触れれば切れそうな異能の天才と、影薄くとも地に足の着いた記録者。永久不滅の定番カプを、お姉さまと妹、師匠と弟子に翻案するとこんな風かな。とかゆーアホな横道へ転ぶヒマがあるほど、何もしなくてもお話が勝手に流れていく。

漢字ばっかりだ。読めない字は諦める。「読めない」は「音読できない」であって、文字の姿をビジュアルイメージとして読みくだす娯楽に気づくと俄然たのしい。御勝手ルビ遊び。「>歳画」はカレンダーガール。「>螢寮」と短縮するときは「うち」。饕餮って画数いくつだ。

>姉妹になった最初の夜から、流す涙を先取りし、この運命の無残を思って私は泣いたのだった。

出来事は人間の中に乱雑に積み重なっていて、あとからどの組み合わせで把握するかがその人の歴史となる。という過程がほんの一文。ため息。

>偏った分家の流儀を矯めて、円熟で隙のない本家の格を入れ込んでくれた。

姉さまが何をどう教えてくれたか、正統・偏向2つの型があるのヨと示されるだけで、見たこともない儀式風俗がただの書き割りでなくなる不思議。二点からの視差を合わせて3D映像にするような。

>嘆くより惜しむより、これは必ず、何かの運命なのだと思った。

大事な覚書は、残された主人公の唯一の頼りってわけじゃなかった。愛しい姉さまより恩ある本家より、彼女はもっと別次元の価値観に奉仕している。それをこれから説明するね、という助走をチラつかせない語りの、この奥ゆかしさったら。

>そして二十余年の修養のうち、姉に関わる不思議は、ひとつずつ不思議でなくなった。

までの十数行を読みながら、幅の大きな階段をどん、どんと登った。居場所のない不安の中、限界を感じることもあったけど、嘆かず前を見ていると、自分の背丈でやれることが増えていく。身の丈なりの視界からはいつしか、登れそうになかった壁の登攀ルートが見えてくる。桐の木が伸びる方向へ展望が開け、トリハダものの意識転換。ホームズが最後の事件で死んでいたら、ワトソンは後年こんな感じで彼を悼み、彼を理解したんじゃなかろうか。巨人の肩に一度でも乗った小人は、鳥瞰図のスケールで見た眺望を、地上に降りても忘れない。

めちゃくちゃ大事なことだけど、姉さまが仙光を「成して」いない人(←公的に※3/11補足)だったことが、一読目では分からなかった。進行中の儀式で、主人公が初めて成し遂げるってことも。樹上から旅人を導く奇跡超人の歳画が尾を引いたこともあり、何でもできる超人ホームズをイメージしすぎたなあ。

>才は十世もの昔に失われた四仙光をこの地上に蘇らせ、光師の宮中での地位をはるかに押し上げるとも言われていた。

ここを読み流せてしまったことが大きい。よーく読めば確かに「蘇らせる」ことと「押し上げる」ことは並列して未来予測の範疇に収まってるけど、読点の息継ぎに紛れて「才は~蘇らせた」のように記憶してしまった気がする。偉業を成した主人公の「>継代にその水を汲むものは眩げにその碑を仰ぐだろう。」という言葉がどこか含みありげに響くのも、奥ゆかしい彼女が「姉さまいてこその私なのだから、舞い上がるまい」と自制する印象があるからで、誤読を野放しにしてくれる読みしろ大きい文体のエアポケットに落ちた。

紆余曲折して戻ってきた青銅器が淡く光っても、文字通り血を吐くような謝罪が積年の秘密と結びつかず、「思い出?」というほわんとしたラストショットになった。吹雪の日はかっこいい導入部なので何となく再読し「そうか、ただひとたびの、姉さまー!」と叫んだというトンマな読了報告。


D07 Over the Rainbow:いつか輝ける虹の下で
自作小説を自動翻訳にぶちこむ遊びをしていました。ローマ字のままだったり構文が破たんしたりする部分は、てにをはの通りが悪いと診断できるから。本作もまっすぐ英語だから大丈夫、読める読める。ぬあー大分あるな。しばし瞑目。小説だから、書いてある言葉をそのまま受け取りたい……。

がんばった。シスコは世界最大のゲイタウンだとデラックスさんが言ってた!

あの街に行ったからそうなるとかいう短絡じゃなくてだ。英文パートはサンフランシスコ名所案内ぐらいに解釈し、小説のたくらみとして放物線描くフライをすぽんとキャッチしたつもり。お手紙構造にはちゃんと解決が待っていた。彼はまだ母国語でそれを言葉にできないんだろう。レインボーの旗の下、好きな人と幸せにな。目で見た英文から意味を直感する下地がなく、音読した。黙読よりしんどくないねー(強がり)

  • ひとさま感想より発展。性別を隠すのは日本語のままでもお手紙構造自体で可能なのだし、英語とは関係なくないかな。冒頭カタカナで女の子イメージを誘ったジーンに、読後どういう姿を想像するかは各読者におまかせで。「少しナヨッとしててスクールカーストから弾かれ気味のアニオタ君」か「ノンケの元気少年に主人公がホレちゃった」もありそう。Geneの綴りは男性限定になるんですねー。ロシアのフィギュア選手プルシェンコがユージーンと同根ロシア名で愛称ジーニャですね! だから何。レインボーフラッグがタイトルとともに想起され、めでたく「男男交際かい!」となったあとで思い返すと、バレンタインの日本式作法を布教したがったのは「お返しがもらえるんだよね」という食いしん坊動機もしくは「乙女から好きな男子に贈る」をこっそりやりたくて? 動機がどうあれチョコもらって主人公は事故的にキュンとしちゃったとか。これ以上の何かを英文から拾えなくても、私は満足の読了でした。ちなみに「がんばって読めばラストで○○が待ってますよー」とご迷惑ツイートした○○に入るのは、「にじ」「オチ」「ゲイ」などのつもりでした。


D08 R18-G
セリフにも地の文にも「あなた」がズラリと並ぶ導入。マンガの心理ネームと思えばいいのかな。絵なしでマンガを読む目的は分からない。

遺産を相続した人形。時代を超える物語に年表が長くなる。「>リーケが育てた亡兄ラグナの遺児」など描写のシッポも長く、読みながら覚えていなくてもいい感じ。病気の治療法を研究させるつもりだってことが同じ語調で繰り返されていくから、それだけ覚えていればいいのかな。

「あたし」が「私」に切り替わって語調が変化し、おっアルジャーノンかと思ったが、すぐに「あなた」への思いあふれるクライマックスになり、人称代名詞と敬称の海にのまれた。「女王様」「王子様」などの比喩を着せ替えることで何を言いたいのか分からず。「病」という単語まで自殺の意味仮託だった。もう何を信じれば。

>屈折する光のように、本当なんて、ねじ曲げて。

この語り手の言うことは、何も信じなくていいのかもしれない。いわゆる「信用できない語り手」だって、「語っている」という行為だけは偽れないはず。本作は残り数行まで来て「あなた」以外の人物に直接呼びかけた。「レメディオスにはこう告げよう。~とだけ、私を遺せ。」ぐらいに言えば済むことじゃないのかな。(1)あなたへの黙想から覚め、横にいるレメディオスに「ちょっとお願い」と言った(2)あなた宛てのメッセージのようなものの最後にレメディオスへの指示を添えた、などなど憶測を飛ばすも、このラスト滑り込みで語りの土台を切り替える理由に思い当たらず。
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