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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


おこさまは よまないでくださいね。


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大江戸870夜町(2)


「太夫ー!」
 太鼓持ちのハルは、華麗に板戸を開け放ちました。
「布団部屋で昼寝しちゃ駄目っスって何度言や……わわ、男付きだ」
「お座敷ー? いま忙しいから後でね。あら?」
 陽光太夫の目が光ります。
「はるるん、ちょっとジャンプして」
「こうっスか」
 ハルが素直にぴょんぴょんすると、袂がチャッチャと鳴りました。
「いい音させるじゃない。チップ?」
「だから急いでくださいって。もうご一行お座敷にお通ししちゃったんスよー」
「大口なの?」
「豪商のご隠居さんが取り巻き連れた大宴会っス。草履のお世話しただけで、チップも気前よかったっスよー」
「わあ、がんばろっと!」
 跳ね起きた太夫は、ガッツポーズで行ってしまいました。
 

「やれやれ」
 工藤はぐずぐずにされた着物を直して起き上がりました。
「あのー、お武家さま」
 ハルが手鏡を差し出します。
「お顔に紅が」
「? 接吻は全力で拒否したはずですが」
 鏡をのぞくと、死守した唇以外ニアミスの赤い跡だらけです。
「一カ所にされていた方が始末がよかったか」
「こすると余計広がるっスよー。これリムーバーオイル、どぞっス」
「かたじけない」
「遊女タラすならクレンジングぐらい携帯しなきゃっスよ。あーあ大乱闘」
 ハルは布団の山を積み直し始めました。
「今後はこういうのナシに頼むっスよ。指名チャージが入らないと困るんス。同伴デートはチケット制、お馴染みさんには月間パスが」
「いえ私は」
 工藤はクレンジングを塗り込みながら首を振りました。
「廊下で太夫とすれ違っただけなんです。いきなり布団部屋に引っぱり込まれて」
「へへ、気に入られたんスねー」
「あっと言う間に上位を取られました」
「モテ男ヒュウッ」
「いえ、合いの手は結構」
 きれいに顔を拭った工藤は、キラキラのデコ手鏡をハルに返しました。
「体術の心得でもおありなのかと思ったのですが」
「体術ってそりゃあ」
 ハルは鏡をのぞいてニヤけます。
「この鏡プレゼントしてくれた海老ちゃんの海老固めなんて、あっちゅー間に背わた抜かれるスゴ技っスよー」
「そっちの意味の寝技ではなく……遊女らしからぬ身のこなしというか」
 ハルはオーウと天を仰ぎました。
「遊女なんかさせとけないってわけっスね! すでにアツアツだー、モテ男勝負、俺の負けっス!」
「話を聞いてください」
「皆までおっしゃるな。身請けしたいが金がない、せめて客として通う切ないデート。男のロマンっスねえ~」
「もしもし」
「逢瀬のバックアップはお任せっス。一名さまご優待、俺の顔でムリクリ予約入れとくっス。もー特別っスよ~」
「失礼します」
 予約伝票を切ろうとするハルを振り切り、工藤は廊下を駆けました。
 

「戻りました」
「ああ」
 座敷では二人の侍が膳を並べており、主らしいひとりが入室を促しました。
「手間取ったな」
「思わぬ事故で」
 きびきびと下座へ回った工藤は、客分の侍にも一礼しました。
「大変お待たせを。吉澤さま」
「工藤さん、武士の魂が粉まみれだよ」
「あ」
 馬乗りの生足がからんだ脇差です。工藤はあたふたと鞘をぬぐい、吉澤は嬉しそうに盃を掲げました。
「チラ見せ用の肌白粉だ。太ももなんかにはたくやつだよね。どんな衝突事故だったのかなー♪」
「あの、長い話になりまして」
「ほーほー、勤務中に長時間たっぷりコース。樋口家は自由でいいな。僕も仕官の口を願えるかしら、御曹司?」
 水を向けられた樋口桔梗介(ききょうのすけ)は、むっつりと腕組みしています。
「家督を継ぐまで、俺に人事の裁量はない」
「なるほどなるほど」
 吉澤はニコニコと手酌が進んでいます。
「太ももと見りゃ休憩入れちゃうおサボリ近習もご一存では解雇できないと。若さまもご苦労だー」
「そうだな」
 まともに相手をすると疲れるので、桔梗介は投げやりの全肯定です。
「多少浮かれておっても、こういう場所ではかえって目立たんだろう」
「たっぷりコースも経費で落ちるんだ。よかったねえ工藤さん」
「で、手がかりはつかめたのか」
「は」
 工藤は冷や汗を拭き拭き、ひと膝進み出ました。
 

「吉澤さまからの情報どおり、華宮院の用人衆による宴会が、ここ吉原・花札屋で頻繁に行われておりました」
「単なる息抜きの遊興ではないのか」
「必ずこの座敷をという指定があり、必ず隣同士になる宴客と意気投合したあげく、必ず二間つなげて飲み交わすことになるとか」
 桔梗介はフンとうなずきます。
「偶然を装った会合だ。その隣客とは?」
「不明です。予約名は架空で、町人会らしき体裁をとってはおりますが、予約の確認さえできれば、店側は山さまでも川さまでも構わないそうで……」
「手がかりにはなる。予約名を言ってみろ」
「七色カッパの会、です」
「……」
 梅にウグイス、桜に幔幕、不条理には吉澤なので、桔梗介はジロリと説明を求めましたが。
「カッパ……あれだよねえ、頭に皿のある」
 吉澤は一気に飲み干し、朱塗りの盃をぽんと頭に乗せました。

第3話へつづく!)


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