管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。
はなまるファンとふざけたおとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全16話。第1話はこちら
はなまるファンとふざけたおとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全16話。第1話はこちら
冷酷王のスピーチ(7)
その頃、森のきこり小屋では。
「心配で付いてってやるなんてアイツもお人よし、いやエルフよしだなあ」
何も知らないサミーは、倒壊したきこり小屋を飛び回りながら、魔女たちに叩きつける賠償額の見積りを作っていました。
「こっぱみじんにしてくれたもんだぜ。思い切って新築だな。ここが柱で……ここに猫ドアつけてやろっか、船長」
「ニャア」
猫の大フック船長は、そっぽを向いて顔を洗っています。
「何だよ、気乗り薄だな」
「新築ってどうするニャ」
「クドージンたちにやらせりゃいい。AIにログハウスソフト入れりゃ楽勝だろ」
「そういう意味じゃニャいニャ。またきこり小屋を建てるニャか? 人間サイズで?」
「おっさんエルフにゃ必要ねえってか」
サミーはちっちゃいローキックでがれきを蹴りつけます。
「このまま更地にしといたら誰かが入植しちまうだろ。このあたりは手ごわい森で、俺が手塩にかけてここまでにしたんだ。誰にも渡すもんか」
「こんニャいわく付きの土地を欲しがる奴ニャんていねえニャ……悪魔は降臨するし、おっさんはエルフ化するし」
「猫はしゃべるしな」
嫌味を言われても、船長は顔を洗う手を止めません。
「ひと雨来るニャ……ニャわわ、わー!」
言ってる間にどばっと降り出したゲリラ豪雨は雷を伴い、いきなりピシャーッと光って落ちました。
「落ちた! 裏庭か!」
びしょびしょの二人が裏へ回ると一本の木が黒焦げになっており、土盛りがモコモコ動いて……。
「な、手が……?」
「ぬぬ、ぬぐお―――!」
泥まみれの手をジャキーンと伸ばし、土くれを吹っ飛ばしながら身を起こしたのは、額を割られた惨殺死体でした。
「出た、ゾンビニャー!」
「いわく付き決定かよ、くそー!」
「違うニャ。あれっていつだかの等身大人形じゃニャいか?」
「ああ、クドージン・ドールのぶっ壊れた初号機……邪魔で埋めといたやつ」
「のぐあ――、ワシの子猫ちゃんがあ―――、男を連れ込んで――、あうあう」
カチ割れた頭の傷をかきむしりつつ、泣いているのはもちろんベンテーン卿。
カチ割れた頭の傷をかきむしりつつ、泣いているのはもちろんベンテーン卿。
肉食ラブシーンのショックから地中へ放電、熱い涙の上昇気流で雲に乗り、森へと戻ってきたところです。
「ちゅーても逃げ隠れとちゃうで。ゴチャゴチャした都に比べて生体電気の少ない森の方が、ターゲットを狙って落雷を当てやすいねん。ワシってばどんどんレベルアップしとる。苦しい恋は人を成長さすってホンマやなあ、ぐすん」
「た、立って歩き出した……」
「サミー長老、調べてきてニャ」
「猫の得意分野だろ、オカルトなんだから」
「恐怖のおっさんエルフに言われたくニャいニャ」
おっさんと猫の腰が引けているあいだに操縦感覚をつかんだベンテーン卿は、ヨレヨレときこり小屋に向かいます。
がれきをかき分け、サミーのツールボックスからひっぱり出したのは、使い残しの絶縁テープです。
「うっふっふ。これでどこへも放電せえへんで。ほぼほぼ人間や」
長いこと土に埋まっていたドールは、あちこち部品も取れかけていますが、レベルアップした卿はそんなこと気にしません。
「この初期型ドールは低スペック、ただのおしゃべり人形や。ゆえに同期されることはない。ワ、ワシ天才……今度こそ、完全復活や―――!」
バリバリどかーん!
もういっちょ雷が落ちまして。
人々は手近な店で雨宿りしていました。
「ホントだって。赤毛ピアスのおネエが、墓地の階段に吸い込まれて見えなくなったの」
「すげーな。消えるおネエか」
ヒマつぶしならどこかの花子さん的怪談にまさるものはなく、最新の都市伝説に花が咲きます。
「じゃあこれ知ってるか? 陰気な夜に資源ゴミを出す地味な男がいて……」
「しばらくすると向こうから同じ男がやってくるんだろ?」
「ドッペルゲンガー・ジミーズだ」
山のようなガラス片をゴミステーションに出して帰るジミーズ、彼らの行く手には薄着の女の子が待っていて、その三白眼をまともに見た者は呪われるとか呪われないとか、ぐるぐる回るロータリーに迷い込むとか、事実に即しているだけにこれというオチがありません。そこへ。
「その話、詳しく聞かせてもらおうか」
戸口を背に、身なりのいい男が立っています。外は驟雨。
「ここらでは異端が珍しくないようだ。ああいうふざけた布告が通用する土地柄だけのことはある」
「あの布告は、あっしらにも意味不明なんですがね」
「で、あんた誰」
瞬間、男の顔が逆光になり。
「私は、バチカンの異端審問官だ」
バリバリどかーん!
(第8話へつづく!)
PR
この記事にコメントする