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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。(HNじゃいこ)

全26話。第1話はこちら

他のHANA-MARU二次小説はこちらから。

おこさまは よまないでくださいね。

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大江戸870夜町(22)


 話は、花札屋の帳場に戻ります。
 斗貴はシャンと胸を張りました。
「失礼ですけど天音さんより出るとこ出てますし、あれで二十両なら私はその三倍……、いえもっとかしら」
「お嬢さま、買い値はカップ数に比例するわけじゃございませんよ」
「総合点でもそう落ちる方ではないつもりですわ」
「……ええ、ええ。それはもう」
 頭のネジの飛んだ人でも応対はしっかりと。店主はそつなく営業スマイルを作ります。
「見上げたご覚悟でいらっしゃいますねえ。しかし遊女契約はもうちょっとその、頭のしっかりした方と結ぶことにしておりまして。保護者か債権者か」
「身を売ると言っても、お店に売るのじゃありませんわ」
「はいはい……はあ?」
「こういうお店はあれでしょう。お金を稼いでも横からピンハネされるんでしょう」
「必要経費ですよ。衣装代や髪結い代がかかりますんでね。お座敷へ出すにはひととおりの教育も必要ですし」
「私に経費はかかりませんわ。お城に上がれるとまでは申しませんけどそれなりのものを着ていますし、大名のお酌だってしますのよ。叔父ですけど」
「ちょっとお嬢さま。さっきから黙って聞いてりゃさ」
 声を上げたのは、見世格子に座る遊女たちです。
「軽くお酌でもすりゃチップが降ってくるぐらいに思っておいでかい」
 斗貴はすっと頭を下げ、格子の内へ入りました。
「大変なお仕事だと聞いてはいますわ。でも小耳に挟んだ別の話では、キャンペーンでお座敷を間借りし、イベントを打ったりする企業もあるとか」
「おや、詳しいね」
「じゃ、遊女登録なしにお座敷へ上げろって言うんだね?」
「天音さんの年季証文に見合う額を、私がお店に儲けさせればいいのでしょ?」
 おつむが弱いという目で斗貴を見る者はもういません。
 遊女たちはずいと膝から進み出ました。
「ああいうキャンギャルだって、腕一本でお客を楽しませてんだよ。あんたみたいな素人芸で、何年お酌すりゃ二十両になるだろね」
「やってみないと分かりませんわ」
「水揚げ権でも売り込むかい。一回勝負だけどね」
「そうとも限らないよ。コツを飲みこみゃ二度三度」
「あら姉さん、そのコツ教えて~」
 話は下世話な方へ向かいます。
「ああーら」
 斗貴は両手を腰にあてました。
「吉原遊女はそこらのお女郎とは違うと聞きますわ。ヤリたいだけ、コホ、欲望だけなら誰も高いお金を払ってこんなとこまで来やしません。殿方はここで夢を買うんだわ。違います?」
「ああ、そうともさ」
 遊女たちはちょっと小鼻がふくらみます。
「唄・踊りはもとより古典の教養は必須だし、問われれば最新の蘭学からお公家の有職故実まで、すらすら答えて一人前だ。お嬢さまにはできない芸当だろうね」
「私だって、武家の子女として恥ずかしくない教育を受けておりますわ」
「どうせ行儀作法とかお茶お花だろ。そんなもの、ヘソで茶ーわかしながらやったげるよ」
「お茶席でおヘソ出したらつまみ出されますよーだ」
「これこれ、お前たち」
 格子の外では通行人が立ち止まり始め、花札屋店主は店の品位が心配になってきました。
「遊里の教養は何たってお座敷遊びだろう。目隠し鬼に狐釣り、ジャンケンカッパ飲み」
「あら、それこそおヘソでしゃぶしゃぶしながらやって差し上げますわ」
「言ったね。勝負するかい」
「望むところだわ」
「よし」
 古手らしい遊女が立ち、店主から天音の証文を取ると、ぴりっと二つに破りました。
「あっ!」
「こっちが負けたら、二十一両はあたしらで払おう。そっちが負けたら、あんたにゃ見習いかむろから遊女登録してもらうよ。きっちりピンハネされるやつをね」
「いいでしょう」
 売り言葉に買い言葉で、斗貴は花札屋の遊女連とジャンケンカッパ飲みで対決することになったのでした。



「斗貴嬢さ~ん」
 ひと言も言えずにいた大福親方が、すみっこで泣いています。
「嬢さんを遊郭に売っただニャんて、おいら桔梗介さまに殺されるニャ~」
「大丈夫よ親方。とにかく飲めばいいのでしょ? 私、結構イケる口ですわ」
「ほ、ほんとかニャ」
「ええ。お節句の甘酒は好きですし」
「ニャアア、うえ~ん」



 同じ頃、将軍も泣いていました。
「ワシの子猫ちゃん……、今おデコにちゅーしたる……」
 検問からの報告を待ちこがれ、うたた寝の炬燵で悲しい夢を見ています。
「上はん、ここどしたんか」
 十和古がやってきて肩を揺すりました。
「起きやして。もうお昼どすえ」
「う……ん、愛は永遠の花火……」
「ええ加減にしゃっきりしとおくれやす。そうそ、昨日のお土産ありますのんえ」
「お土産? あー、また新しいお小姓かいな」
 将軍はあからさまにウザそうです。
「ワシ調子悪い言うてるやんか」
 十和古は構わずお茶を勧めます。
「そない思てうち、昨日から新人はんのHP下げときましたんえ」
「へー、ずずず」
「体力測定や言うて、腹筋腕立てスパーリング。へとへとなって、今もまだ寝てはるのん」
「ふーん」
「ぐったりしてるとこを襲うのもまた乙なもんどすやろ。いかが、おめざに」
「はふーん。せっかくやからいただくけども」
 将軍はため息ついでに湯呑みをふうふうします。
「やっぱり調子悪いわ。連発六尺玉は無理やなあ。せいぜいロケット花火や。ああ、調子悪いわー」

第23話へつづく!)

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