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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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作品と向き合った一読者の私がなぜそう感じたのかを言葉にしたく、土足感想お許しください。
作者さまが「なるほど的外れだ」と思えるよう具体的に書いたつもりです。
作中からの引用を「>」とします。ネタバレには配慮しておりません。

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01銀の御手のサジタリウス
手の泥と太陽と痛みと。老人の枕辺で交わされる言葉のイメージをつなぎきれないままシーンは変わり、サジははみだし者らしい。狩りをしているらしい。今後を決める重要な試練らしい。異様なものが出現したらしいとそのあたりで矢がびょうと放たれ、矢が当たるまでの時間が細かに分断されて、読んでる私の時間の流れと作中時間がぴたりと合った。いじめっこの影を矢で地面に縫い付ける早撃ちシーンなど、細切れの時間をガッシャとひとつかみに並べる描写が、オウッと声が出るほどかっこいい。「畢竟」がほんとに使われる現場に遭遇したのは数えるほどしかなくて、そこもかっこいーな!

あり得ぬはずの病や至高の毒薬など、荒っぽい詩情とともに放り出される謎は多いがそれよりも、サジがぽつりと漏らす短い言葉に連想が追いつくようでいて確信には至らず、畢竟w煙に巻かれる。と思うと、フラッと現れた回想父との別れがくっきりと像を残したり。「>毒にもがく化生」って何だ「>まぼろしの痛み」って何だとまた置いていかれながら何となく答えを知っているような確信はないような、確信と言えば彼女ほど確かなものはないと思えるプロメに「>弓があるよ」とくり返し言われれば、うん確かにそうなんだと思った。


02五月の庭、蕾の君は目を閉じたまま
カンノー小説にキャッキャせず「>よほどいやらしい話を」と落ち着き払った表現ができる少年。五月病にまったりしながらおじさんちへ避難する。タイトルで「君」と呼ばれる誰かは語り手本人てことでいいのかな。

引きこもりみたいなこうちゃんは庭仕事をしてるから健康、大丈夫。母親とは絶望的にソリが合わないが許してあげる、大丈夫。など、ちょっと強くこぼしては一歩戻り、むくれてみては機嫌を持ち直すような語りは、迎え来てなんて頼んでないしと一旦ガードを上げてから甘える彼のキャラにぴったり合っている感じ。「育てる手」に育てられたい主人公。

彼が甘えることに自覚的になっていく終盤は、照れ隠しのポーズを描写するにあたり一人称の足場がおかしくなっていくような。「>くすくすと笑う底意地悪い大人に、僕は機嫌を損ねながら我侭を言う。」などは、底意地悪いと思ってないし機嫌も損ねてないわけで、腫れ物配慮あふれるこうちゃんがやっと正面から励ましてくれたラストに来て「僕は大丈夫」「トラブルなんて何一つない」と、今さらごまかしを聞かされたような艶消し感。


03機械細工職人と機械義手
業界でそれなりに知られ、天才風の異名まであるのに「技術は優秀じゃない」とか「こんな指先の感覚がない人間が作るもの」とか自分で言う人の、職人としての誇りのありかがよく分からなかった。偏屈じじいなら吐き捨てるように何だって言うだろうけどクリフォードさんは穏やかな人格者とされているのに。作業場汚いでしょ、女の子が来るなら掃除しとくべきだったという話もよく分からなかった。女の子をおだてて上滑るおじさんなのかな。裸電球ゆれる作業場はアメリカの父さんのガレージみたいな工具ズラリ感。細かい部品を収めた引き出しなど、憧れの芸術作品が生み出される現場を目の当たりにして「なんか汚い」と思ってる様子のライザにも、この道でゼロから始めようという人の高揚が見えなかった。登場人物と私の距離が縮まらず、彼らの人柄や過去について書いてあっても知らない人の話みたいだった。天才のそばで過ごし、彼女自身は細工職人としてどういう手ごたえを得たんだろう。

初対面からの「クリフォードさん」という呼び方に違和感があった。さん付けの距離でいたいならファーストネーム呼びはしないのでは。初対面ならスミスさんと呼び、クリフォードでいいよと彼が言うなら初対面でもボスでも呼び捨てするのは英語圏ではありそうな流れか。クリフォードと呼び、くだけすぎない言葉遣いであれば師弟っぽく響くのかな。


04飲み干す残滓
言葉と話の内容が読んでいて一致しない冒頭。強い欲望を隠すために「自分が」飲み込むなら語感として分かるけど、残滓を飲み干すのは相手の方なのかー。

色々気づいていないことになっている姉のモノローグは最初から信用しなくていい感じ。弟は自分の苦悩にかまけ、姉の尊厳を傷つけることについては何も思うところがないようで、姉も「自分なんかどうでもいい」と言い始め、互いにそれほど大事なものを手に入れたようには思えなくなってしまうラスト。


05キズアト
乙女が秘密を囁きかわし、図書室のお嬢さまかと思わせて、「>チクッた」「>死にかけている」など蓮っ葉な単語がギャルっぽいケンカを思わせて、ルビによるディテール付けが監視社会SFっぽさを厚くし、などなど、物語が進むにつれて背景の書き割りがずんずん変わる。ステージ中央の役者の振る舞いは変わらないのに、道具立てや照明によって振る舞いの意味がすり替えられるような。これって小説でしかできない錯視だわーと震える。すげー

制服のリボンをほどく手つきが意味を違えてリフレインされ、雰囲気照明から抜け出した主人公はもう万能。ミリオタ万能。愛を夢見る乙女の「きゃっセンセイ」とか「アッせんせい」などは、サービスシーンじゃなくて全部必要な道筋だったのだ、この小説はこう書かれるより他になかったのだという太い柱が押し立てられ、先生を救いに戻る主人公の行く手に道が開ける。

体術火器何でもござれで読書家の兵士なんて、スパイアクション戦争ものどのジャンルに出てきたって最強のやつ。救出がどんな結果に終わるかは重要じゃない。管理下の平穏になじめなかった彼女は、仲間の救出に最上の価値と名誉をおく戦場の掟もダウンロードされていて、きっとそれが気に入ったんだなと嬉しくなる。「お、お前だけでも逃げろ」「ばか言え、一緒に帰るぞ!」というロマンス。

「>遺伝情報」という語には生まれる前からという意味が強く、生まれたあとの人間関係や読書履歴が含まれるようには思えない。書き換えるのは記憶ではなく元からの異端傾向みたいな「個体のクセ」のようなものだろうか。


06幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手
ここにない実体が目の前にいるかのように仮想しましょうというテクノロジーを用いて、こっちから実体に会いに行く仮想をするものの、そこに実体はない。仮想と実体がぐるぐる回って頭の中でオタ芸を踊った。人は結局イベント会場が好きなのか。握手会を特別なものにする「>等身大の映像」の意味が分からなかった。普段はちびフィギュアみたいなサイズで見えてるってんでもないよなー。

握手会が流行らなくなったのは多分VRの進化のせいで、進化したVRで何がしたいかというとファンミーティングなんだという堂々巡りに、未来のオタたちが翻弄されている様子が面白い。VRだろうが生身だろうが直接愛をぶつけることはかなわないアイドルを愛した以上、愛を実感する手段のひとつが仲間からの承認であり、もうひとつの手段が、目を見れば俺には分かる的な理解者幻想かな。おじさんが充実できてよかった。ズラリ並んだマスク男が会場の一区画で無音のシンクロダンスをしてるイベントって異様に未来っぽいが、馴染みのないジャンルってみんな異様に見えるのかも。


07楽園の手
陽光あふれる果樹園に手がすずなりになっていてギョッとする。「>手、」という器官の外観がなめまわすように描写され、食欲をそそる食べ物として了解される。世界の裂け目から転げ落ちた先の空には怪鳥が飛び回り、天国にも地獄にも行けない人が行く宗教的な空白地のよう。主人公はほったらかされ、誰も世界の仕組みを説明しに来ない。なんと奇妙な、世界から忘れ去られたような自由。

日々の糧以外何も求めないことで人生と折り合いを付けていた主人公は、実はこの楽園へ来る前からずっと自由だったのかもしれない。復讐が叶ったかのように主人公は笑うが、彼を蔑んでいた奴らが目の前にいるわけではなく、義手だからちょうどよかったってわけ!と素晴らしい巡り合わせを聞かせる仲間もなくて、全てが無人島で思いついたジョークのように響いても、それについて虚しくも悲しくもならない主人公。どこまでも広大な、彼のためにあるような楽園で、自分の物語に感動することからも解放されてしまった彼の、自由と孤独たるや。


08それは手記にも似た
自分が誰か分からないと語る誰か。自分がいるという意識だけが明瞭で、触れてくる「何か」や夢の断片を頼りに自分を再定義しようともがく。自分という枠組みを失っている彼の探り探りの言い回しが手がかりの全てで、類推も脱線も許されない絶対服従みたいな読書になった。

完全主観の手記のような体裁になったことの背景が明かされる。茫洋とした意識のかたまりである彼に、理学療法的なマッサージが形を与えた。なでさする手が綴った手記。回復の当てもなく病床の人の手をさするとき、この機械があったら、家族にとって光になるんじゃなかろうか。リアルタイムで「通じてる通じてる!」「喜んでるよ!」と言って見送れるのは嬉しいことじゃないだろうか。慟哭だけで終わるだろうか。ラストで急に出てきた「私」は、女性を描写するためにいる人なんだろうか。女性がただ悼むんじゃだめなんだろうか。


09夜の谷で
回想台詞のすぐ後に森を駆けているし、てっきりトラッドが背後の事情に関わっているんだろうと思ったら、そういうんじゃなかった。彼が自分の足で稼いだり何度も気絶したりする身体描写をフムフム読んでいる私にとって、伝聞として紹介される英雄たちの苦境は説明を聞くことに終始した感じ。通りすがりのトラッドには真相を世間に伝える義務も因縁もなく、遠い噂を伝え聞いて終わる。


10夢の異世界ダンジョンへGO!
自分の太ももだってミニスカ姿にすりかえられるあの念能力をVRが肩代わりする時代が来ても、相変わらず男子は。「>足だけならできると僕は信じる」「>ちょっとだけ生足を触っちゃおう。」など空ぶかしの自家発電が楽しい。空ぶかしのあいだは楽しい。

ゲーム内で受けた架空のダメージをどう現実化するか考えた。やられて痛いのは嫌だし自分が敵を殴ったときの反動だって痛いから、皮膚感覚をオフれるなら私はきっとオフる。すると触られた感触も、触った感触もないだろう。それって普通の視覚ゲームだ。危険を顧みずスキンシップ感覚全開にするべきか。悩ましー。

念願かなった主人公は本当に誰かを触る。その人が嫌がるくらいしっかり触ったはずなのに、シチュに感激するばかりで触った実感は薄いみたい。「>脳に直接刺激を与えるタイプ」という夢の惹句をつい本気にするけど、感覚のほんとらしさは低いのかも?「お触りはどの程度現実感がありますか?気持ちよくなれますか?」と直球の質問をしてもヘルプはきっと答えてくれない。「残念ですが今回の設定では……」とたまたま設定をしくじっただけのように思わせてリピーター心をあおる、悪辣射幸システムかも?
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