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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
作者さまの心情を切り捨てることがあるかもしれません。
でも小説を切り捨てることはしないと誓います。
納得行くまで向き合います。
あくまで私の納得なので、小説のためになるかどうか、誤読がないかどうかは分かりません。

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F01  狭間

「>席は奥がいいかな。窓際で道行く人を眺めるのも楽しいが、今日はゆっくりと話したい気分だからね。」
光景とキャラクターと雰囲気描写が一体になった気持ちいい一文。モノローグよりさらに手がかりが限定された「ひとりダイアローグ」は超・近接のテーブルマジックを見る印象。

語り手の発語のみを記述するという縛りは、「言葉ひとつで小説全体を揺るがしてみせる」という気概のように思ったが、あちこちで日本語がゴタッとしてる。冷めて「しまう」前に飲み干して「しまう」とか。紅茶のコダワリや達観ことわざなど道具立てが面白い。だけどまず、紳士の弁舌にしつこいほどの読ませどころがあるといい。「>やってきた」や「>来た」などは、「おいでのようだ」とかのほうが慇懃無礼で年かさっぽい気がする。

「>困った女性を助けるのはたしなみ。」
紳士のたしなみ、と言うとリズムがぴったりするけど「紳士」は直前に使ってしまったので入れるものがない。この短い作品で二回も使われる「>私も樹影国紳士」という幅の狭いフレーズの方を諦めていいと思う。

「>名前は生まれて初めてもらうギフトの一つだ。」
「生まれて初めて」の一回性と、「の一つ」がケンカして聞こえる。もちろん身体や愛情や生誕ギフトは複数あって全然構わないわけで、「生まれて初めてもらうたくさんのギフトのうちの一つ」くらい離れないと言葉の滑りが悪いという話。

「>瑞々しい女性と好きなお茶を共にするのは」
ぐんとオジサマ度上がるはずが、「共にするの」で失速。「共にする至福」とかオーバーな言い回しが彼の持ち味であり小説の楽しみどころのはず。

「>この店のは、さっくりと焼きあがっていて美味しい。」
美味しいは直前で言った。食べるとよみがえる美しい思い出とか味の豪華比喩とか、うさんくさディテールをもっと食べたい。

「>二つの椅子の間で尻餅をつく」で楽しく喚起された脳内イメージが、「>“狭間”に滑り落ちてきた」「>道を見つけるために、決死のダイブ」など色々な表現に紛れて使われないまま空回りする。彼女がここに来たいきさつを「二つの椅子の狭間で尻餅」という表現一本にまとめれば、閉じられた作中世界における案内「役」という以上に、紳士は読み進む上で安心して頼れる案内役そのものになれると思う。お話と同期しないところで彼自身の見解や要望を持っているらしく見える紳士は、ただの登場人物のひとりとしてセリフを言い終えた。

F02  覆面朗読会を始めましょう

「>かけがい」? 子供が朗読してることを差し引いても字面は「かけがえ」になると思う。若い書き手さんというフェイク?(覆面名物・疑心暗鬼)「>天然パーマ」「>噛む」など現代俗語の混入も気になる。赤毛のアンみたいな文学少女文学なのに。

「であった」という堅い語尾と、口語っぽく端折った言い回しとが釣り合ってない感じ。「>ハロウィンよりも断然楽しみなのであった。」は、「ハロウィンよりも断然楽しみなイベントであった。」とか、「私たちはハロウィンよりも断然楽しみにしていたのであった。」とか。「>あれほど教会通いしていたのが嘘のように行かなくなり、」は、「あれほど熱心に通っていた教会にぱったりと行かなくなり、」とか。おせっかいじゃなく違和感の説明として。

「>同じように親たちに連れられて来たのであろう子どもたち」
近所の子が教会までどうやって来るか、徒歩か車かよそんちとの相乗りかまでお互い知ってるはずの田舎暮らしという絵が、「であろう」のせいで焦点を失う。

「>見知ったおじさんやおばさんばかりで、なんだか面白い。」
まだ覆面は付けてないのかなと思ったが、イザベラはもう覆面をして汗かいてる。どっちだ。田舎の教会仲間なら、持ってるうちで一番上等の服はお互いに見分けが付きそうでもあり、設定自体にハテナ。

「>どこか呆然とした様子で、私は」
ぼんやりしてる自分を「こういう様子」と断定できちゃうのは日本語としてチグハグ。「>音を立てて色づき始める。」は大事な和解の表現なのに「音」と「色」が繋がらない。終盤に「>かけがえ」があり、推敲もれと判明。

ドロシーが命日に償いをしたいと思い立った理由があまり見えず。イヴの声を蘇らせ、イヴの戯曲を涙方面に成功させる意義がある日は、あの朗読会と同じイヴの誕生日なんじゃないかなあ。「葬儀で顔を見られなかった」という名目で命日に集められる幼なじみは、これが償いであることを知らされないのかも。価値あるものを友達に譲るという最上の美徳をなかったことにされるのは、やっぱりモヤモヤする。

F03  モノクロメトロ

「>バカだなぁって思うよ。」以降「>自分」の用法がごっちゃで目が滑った。自分を指す自分だったり、相手を指す自分だったり、相手の立場に立って言う自分だったりと「自分」は色々あるけど、どれも説明抜きでただ乱暴に自分。自分のありかもおぼつかないうちから「>自分以外」と反転したり。

「>使い古された言葉が丁度いい。」などの理性的なモノローグは「私」「彼」「女」をくっきり区別しており、キレ女は主観のフィルターを通して他者を見ている。「あたし / あなた」も対立項だから区別がある。男はモノローグの中に女たちを飲み込んでいて、主観と癒着したままの他者をひとりでいじってる。真相を知る最強の立場であるらしいので、伝える工夫をする気がないことも問題。「(我が身の)危険に気づいて」とか言い回しの変えようはいくらでもあるのになあ。

理解が噛み合ってない三人なのに、「黒い」「白い」の用法が奇跡的にそっくり。という奇跡は小説の巻き返しどころにもなり得るが、今のところは処理不足な印象。

F04  ハートブレイク・ランニング

「>舞は多分、ただ無気力に突っ立ているだけのように見えるだろう。」
言うの忘れてたけど三人称でいきますよと付け足された感じ。ここまでの研ぎ澄まされた描写がぐっと興をそがれる。このあともお構いなしに「>踏み出した場所がスタートラインで、踏み出した瞬間がスタートだった。」が再び光る。人称を脇に置いて疾走するかっこいい叙述になってるのに、なぜ周りを三人称で固めたいのか、そっちの主張が見えない。

「>先輩は陸上部の部長をしているだけあって、とても真面目な人だった。」
「先輩」という敬称、主観による「真面目」という形容。地の文がぴったり舞の皮をかぶって物を言うわけだから、一人称しかありえないはず。

「>先輩は舞の才能を伸ばすのに熱心だったし、舞もそれに応えようとした。色気の欠片もない関係」
男の思惑(あるのかどうか今はさておき)までは見えていない舞主観。舞主観三人称主語で何がいけないかと言うと、「>関係」が客観的事実のような断言になっていて嘘になるから。「色気の欠片もないやり取り」なら舞の受け取った通りのものが表現されると思う。一人称なら舞の主観が何をどう断言してもいいのだけど。

「>その言葉が本気だったとは思いたくない。」や「>そういうの、全部、全部なくなってしまった。」など、感情が盛り上がる場面で一人称が馴染むのは、語りが一人称の地平に立ってるからだと思う。そこへ気ままなタイミングで三人称が現れると、主観語りである文が三人称に飲み込まれて混乱を来たす。
「>結果からすれば、そんな未来など、はじめから存在していなかった。」
直前に「舞は」とあるせいでここは三人称の影響下。未来があったかどうか、本人の判断でしかないことを、三人称でいくら断言しても意味がないと思う。

ランニングスタートのオープニングの翌日とかに、先輩に腕をつかまれて呼び止められたんだと思ってた。「>八時二十二分の電車で着き、」を回想シーンと気づけないのは、「>忘却していた忘れ物を、思いもよらぬ形で、この手に戻された。/ 新しい土産物とともに。」がオープニングの鬱屈の答えのように響くからでは。怪我をして落ち込んだ時期のことであるとはっきり説明しつつ、描写に凝ることもできるはず。「忘却していた忘れ物」はヘンだけど。

「>町は変わらずそこにあるのに、思い出の中には二度と戻れない。」
「>弾むような足取りのかつての舞が、自分を追い抜いて行く。」
走ること移動すること過ぎ去ることの意味が解きほぐされ、シーンの中に散りばめられる。人称のモヤモヤが晴れれば何もしなくても小説が走ると思う。

「>舞の頭をくしゃくしゃと撫でて歩き出した二人を、名を呼んで呼び止める。」
一行で複数人の動作がいくつも起こる忙しさ。セリフがぽんと跳ねるラストへの助走が取れない感じ。

F05  いろはつき

いろはから始まり、過ぎゆく時の途上にあって、その先がどう続くかは知ろうとしない女子モノローグ。クールな級友のクールな態度は「それ大体知ってる」という頭でっかちにすぎないはず。「存在にはすべて理由がある。儚い夢など見ないでおこう、酔っているわけでもないのだから」の謎と、年齢なりの武装で格闘する小説が私は好きだ。彼女らがいろは歌の続きを調べるとか。

F06  太陽と月の王国

「>太陽か月かと見間違うほどに栄えた王国の、未来と希望だ」
竜の語り口が魅力的。

「>こうして人間の王の寝床まで、その宝を取り返しに来た」という竜は、どうして入手次第宝石を持ち帰っていないのか。満腹になるまでいるつもりだったのか。すべてのピースがあるべきところに収まることが昔話の理想だから、ピースの取りこぼしは気になる。 

F07  許し

 

「>登山コースを二人は外れた。」
自分たちのことを「二人」とは呼ばないと思う。呼称は「自分」メインらしいから「俺たち」も使いづらいかな。語り口は読み手にとって大事な入山経路だと思うので。

「>山で降る雪は粒子が細かく、湿り気が少ない。その分、砂のように重く、風によって固められる。」
ずんずん降り積もるイメージがあおられる。その雪に対してどうするのか、「>ビバークすることすらできない状況だった。」ビバークというとあれだっけ穴掘るんだっけ、と薄い知識をかきまわしているうちに、スピードが落ちた。装備を手探りするとかで「ビバークしようとする」焦燥の動作をいっこ挟むと、ドラマが途切れず繋がる気がする。

自責の念と無力感に塗りつぶされている男。彼を描くのに自責と無力感の表現ばかりが使われると、何を読んでも「それはそうだろう」と意識が先回りしてしまう。比喩表現の前に「まるで」が付くと、比喩が来るぞと身構えてしまうように。
「>まるで充電切れを起こしたかのようにぷっつりと途切れた。」
「まるで」の予告編があっても、文章とシーンがパアッと晴れ上がる比喩。

「>常にその存在価値を問いかけるのが山だった。」
登山家はこの一文が表すものに魅入られて登るんだと思う。「許せない」「許されない」「罪は消えない」など否定で埋め尽くされた主人公の雪だまりを吹き払うのが、この「なぜここへ来た」というひたすらな問いなんだと思う。自殺行為と言われるやり方で先輩に会おうとした主人公は、山男が何よりも尊ぶべきこの命がけの対話を冒涜したんだってことに、気づいてくれたりしないだろうか、と思いながら読んだ。山に登るなってことじゃなく、やぶれかぶれで突き進んで来た道をふと振り返るような気づき。小説のあいだずっと「許されない」「分かってる」を言い続けてる主人公は、自分の罪の総量まで分かったつもりでいる。もっと別の禁忌(試練に耐えたら許されたことにならないか、というような賭けをすること)を侵していたと気づいたとき、ラストシーンはずっと広い眺望であたりを見はるかすのでは。

F08  愛情木端微塵斬り、同情十把一絡げ

タイトルのパワー!

要素をどんどん並べる爆走叙述。人の死まで同じテンションで放り込むのが効果的かどうかは疑問。「>たとえば、エリシヤは迷子のままだ。」でクスッとさせられた高揚がしぼみ、私の気持ちは離れた。

「エリシヤに粘着するミロイ」のエピソードが薄いので、楽しい定型が繰り返されるたびアレ?となる。読み手の私にとっては、誰よりミロイに粘着されてるのはジャギだから。

「>私って可哀想だと思わない?」
ミロイは自分への関心がすべて、というより小説を支える屋台骨がそこだから無理ないのかもしれないが、エリシヤの死は誰からも哀悼されない。小説の表面に現れないだけで普通に「可哀想にねえ」と言われてるんだろうけど、「優しい」とされてるはずのジャギさえ、世界から色が失われたことを自分のために悲しんでるように読めた。「ほっとけない」と思ってた男なら、自分が守れなかったとか悔やんだりするんじゃないだろうか。言葉に出さず耐える男に好き好き言い続けた無神経を、ミロイに肩入れしない三人称なら、チクリと回収できるんじゃないだろうか。

「>ジャギの優しさはジャギを傷つけただろう。生まれ持った心の優しさのせいで、最後までミロイのことを無視することができなかったのだから。」
ここは直前のミロイ主観をもっと強く打ち出さないと、三人称のように読める流れが嘘を作ると思う。ジャギはどんな風に優しいのか、果たして本当に優しいのか、しつこい問いかけにようやく返事をすることが、そんなに自分を傷つけることなのか。すべてミロイの思いこみとは違う答えをジャギは持っている。それが終幕の救いにつながるのだから、慎重に扱わなきゃならないはず。

F09  絶筆「明赫」~建館の由来

ふわふわ不安定な女語りのどのへんから「オッ」と思ったかというと、「>馬車の箱は普通でしたけど、お馬と馭者さんが立派」。小さい種明かしが「当事者語る」らしくてどわい好き。アリアの語りを信じたら、あとは脱字もどんと来い。王子様の絵の激烈な色とその種明かし。おっさんの女名前が「一筋縄でいかないアーティストらしさ」であるような種明かし。アリアにとって邪魔者のエウドラが、実は王子様の理解者、一番の崇拝者、でもやっぱり裏切り者という種明かし。すべて現場にいてそこで受け取った彼女の理解が、そのまま加工されずに渡される。ように整理されている。わー面白い!と思っていればよい。期待キラキラで読んだ新聞記事が世界を真っ暗にする。わー!「>フェス様はもう、絵に血も吐けなくなってしまった」わー!「>絵の具も作っていたフェス様」わーわー!

ラスト一文の決まり具合がよく分からなくてムムム。
「>最高傑作であろう」と「>永久」と「>待たれている」が、現在進行未来永劫過去完了、みたいな。

F10  俺 in QQ 24時

一面に不愉快を敷き詰めたチェッカーボード。駒を並べ終えたら「さあ行きますよ」とばかり、凝り固まった定跡に角度を与え、棋譜をバンバン解いていく。救急待合いの夜を、お題「色」であるトリアージを、クソ忙しい医療側と当事者になった自分側とで、丁寧に挟む両面補強。ガラリと性根を入れ替えた主人公に冒頭と同じ経路を歩かせ、小説としても両面補強。愚痴でしかなかった「>今から尊い~ですよ。」に、めいっぱいの希望と照れが乗っかる。わー魔法!「>入院や死亡患者の重たくて面倒な会計は、俺には回ってこない。」を二回繰り返すだけで、暗くて重い心情描写がさっさと終わってしまう。わー魔法!短編小説でしか作り出せない魔法だと思う。

長編小説の勇者でもこんなにきちんと成長しない。思えば、キャラがはじめから終わりまで全く成長しないお話を、それが幸福の表現なんだと思って、いっぱい書いたなあ。深く反省。

F11  『四本の筆』

少女ふたりの台詞がきれい。響きが美しいだけじゃなく、やり取りが流れる時の力点の移動が、言葉つきに出ている。台詞のあいだを埋める地の文が何だか間延び。同じような描写や分かりきったこと、必然のないことがズラズラ書いてあって、台詞でパッと灯ったものを消してしまう気がした。

ためしに「>……あなたがこの温室に来るとは思わなかったわ」以降を台詞だけ抜き取って眺めると大変スムーズ。完全に台詞だけで進めよという意味じゃなく、もっとペラペラの叙述に徹して、地の文の存在を消すような。

「>と、続けられた。思わず彼女の持っていたスケッチブックを覗き込む。すると、すぐさま胸元に寄せて、視線を避けられた。」
受け身「られる」の重なりに意味がない。何かをぐいぐい突き付けられて困ってると言いたいシーンじゃないから。
動作がたくさん書いてある割に、シーンの空気は停滞してる。停滞してていいシーン。特別なことは何も起こってないから。
スケッチブックを隠そうとしてる彼女の描写は、
「>あなたに見せるほどのものではないわ」
という引力ある台詞のあとでいいし、
「>どうして?」
で詰っているのはもう分かるし、
「>あなたは、たくさん良い絵画を見てきているはず。きっと目が肥えているわ」
がキレよく着地すれば、
「>あなたはあなた」や、彼女のスケッチをゆっくり味わえると思う。描く才能と見る才能の出会い。

「>今思えば、それも始まりだったのかもしれない。」
始まりの予感を含ませすぎて、ピントがぼけている感じ。「も」って何だ。昔語りは美術商の役割なので、過去の幻影である彼女まで「今思えば」とか言い出すべきじゃない。ら抜きの許容は読み手にもよるけど、美術史に名を残すお嬢さんにはやっぱりそれなりにしゃべってほしい。

「>美術商が最後まで語り終えると、」
ここまで展開されてきた少女主観を美術商が直接話法でどう語ったのかハテナ。直前のモノローグは「>涙がにじみそうだった。/ ええ必ずと紡いだ言葉が、きちんと言えた自信はない。」と、かなり内心までもぐっているのに。

F12  白蛾降る

明るく茶化されたくるわばなしにビタッと肉薄するとこんな感じになるのかも。雪は「>死んで落ちてくる蛾」。傷つき疲れた女が語る。言葉はぽとぽと降り落ちるばかり。脱力しすぎて歌のよう。

「>こわいこわいと泣きながら部屋を移されてものさびしい暗いところで最期を迎えた」
痛みも恐怖も涙も今となっては回想の中にしかない。一度きりの恋も同じ遠さで語る彼女が哀しすぎる。

「>ひらりひらりと雪は降る。蛾の屍が見る間に積もる。」を歌ってもらっていると、「>落ちれば混じって離れなくなる。そうしてじきにそこに馴染み、いつしか自分もそれになる。」と来てサーと血の気が下がる。「白く塗る」ことの綺麗さと汚さ。

「>どうやらつくづくあの人とは縁が薄いらしい。」
精魂尽きはてた呼吸で、はふと笑う。やぶれかぶれに吐き出すほどの余裕はもうない最後の息で、清澄なものへの憧れを強く歌う。哀切なナレーションやエンディング曲一切なしの語り芝居みたい。彼女が存在ひとつで場を支配する。短い沈黙や静止にもぐっと引き込まれ、身を固くして見守るばかりの幕切れ。
 

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感想ありがとうございました。
こんにちは。
覆面作家企画5でF11を書かせていただきました藤原湾です。
 拙作に感想&推理頂き、ありがとうございました。そして、正解おめでとうございます。
 ご指摘いただいた点は、以前自分が描写が少ないという評価を受けた結果でして、本当に修行が足らないと痛感させられました。過去の幻影という視点は自分になかったので、はっとさせられました。
 またご縁がありましたら、よろしくお願いします。
 それでは短文ですが、失礼します。
藤原湾 URL 2011/10/18(Tue)00:22:15 編集
Re:感想ありがとうございました。
藤原湾さま


作品に向き合っているつもりがズケズケ感想になってしまい、失礼いたしました。F11は異種の才能が出会って花ひらく後半の芸術談義が面白く、それで導入の会話や骨組みが気になったのだと思います。感想書きを通じて、私が読みたい小説について考えることができました。ありがとうございました!
【2011/10/18 23:55】
感想有難うございました!
F04の遍です。またの名を裏乃と言いますw
感想・推理お疲れ様でしたー!

覆面作家企画は歩く猫さんの感想を読むのが楽しみの一つと言っても過言ではないです。
今回も楽しませて頂きました。

歩く猫さんには今回手抜き箇所を全部指摘されて、ひいいってなりました。覆面四回目にして油断しすぎでした。あわあわ。
ええ、すみません、言葉を尽くして頂いたのに、本当に何の理由もない三人称で。どう考えても一人称でした。自分も書く時そう思いました←そしてすぐ忘れた
ラストの文章も完全にやる気を失っている文章を指摘されてお恥ずかしいです……。

>怪我をして落ち込んだ時期のことであるとはっきり説明しつつ、描写に凝ることもできるはず。
うーんなるほど、とちょっと唸ってしまいます。第二シーンはちょっと確かに何かアレですね(どれだよ)
改稿で頑張ってみます。

毎度ありがたい感想を頂いているので、(歩く猫さんの作品決め打ちで)今回感想も頑張ってみたのですが、見事爆砕しました。すみませんでした。生温い気持ちで許していただければと思います。
あとツイッターで勝手にお名前を挙げたりしていてすみませんでした。ひとりごとです。

有難うございました!
遍織 2011/10/13(Thu)21:44:51 編集
Re:感想有難うございました!
遍識さま


企画おつかれさまでした!乱暴な日本語にお付き合いいただきすみませんでした。私の感想は「ココが好き」を基点にしているはずなのに、入れ込みのあまり自分にとっての違和感ばかり説明するような仕上がりが多く、毎度反省点です。胃にもたれる脂身は削り落として、改稿の栄養にできる部分だけを取り出すのも、作者さまの腕の見せどころなのだと思います。わーひどい自己弁護。


というわけで私の方こそ、ご指摘を有り難く活用させていただきます。爆砕どころか丁寧に置かれた小石が列車を転覆させるようで(どんな比喩)、迷いのあった部分について「そういうことだったのか」と目を開かせていただけました。あとがき全般に課題点として練り込ませてしまい、ご無礼ばっかりで申し訳ないです。


ご訪問いただいたレスで感想のお礼を言うのも失礼な話なのですが、全編に渡る混乱を、読み手がどこで解消しようとしたか、ということがとても参考になりました。


(遍さん感想引用)
>……(略)恐れと、安らぎ。」それを孫娘はよくよく見ていたということなのだろう。


というところで「そうか、孫娘の物の感じ方が本筋に重なる瞬間を読者は待っててくれたんだ」とガッテン連打しました。主人公は「たまたまろうだった初対面の人」みたいに降りてきた人で、彼女を小説の枠にはめ直す仕事を、作者の私が時々忘れるのだと思います。終段の解決に役立てます。ありがとうございました。


ツイッター発言はお気づかいなく。企画とツイッターのマッチングは素晴らしかったですね!匿名と違って節度の効いたつぶやきを、さらに覗き見するという遠巻きな距離感に「フヒヒ」となりました。正解発表の正座待ちでは「パンツて!」と噴きまくりました。みんな変態だ(違)
【2011/10/15 00:47】
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