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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。


全20話。第一話はこちら


極楽座の怪人(4)

「フニャハハ、観念するニャよ」
「お父っつぁん、かっこい~」
「あー久しぶり天音さん。まだ未婚の娘髷なんか結って、あのバカは本当に愚図だねえ」
「きゃ、そうなんですー」
「吉澤さまからも言ってやってくれニャ」
「おい、勝手にほのぼのするな」
 親子を押しのけた桔梗介は、日本から携えた召還状を開いてみせました。
「バロン・ヨシザワこと、吉澤悦之丞雪彦(えすのじょうゆきひこ)。内務省の強制執行によりお前を本国へ連行する。手間かけさせやがって」
 後ろ手に手錠をかけられても、吉澤は「ふーん」という感じです。
「もうちょっと悔しがったりしなさいよ。すっごい苦労したんだから」
「渡航禁止命令を無視して国外で悪さを働いているというあなたを誘い出すために、このへんてこ芝居を企画したんですよ」
「あー道理で。街角で見かける公演ポスターもあらすじ紹介も、僕にドンピシャのツボまくりだったわけだ」
 それを聞いた冬成は思わずガッツポーズです。
「嬉しいな! 吉澤さんが好きそうな傾向を劉さんがピックアップして、僕が戯曲化したんですよ!」
「やるねえ、クリクリ坊主くん。ブラボーブラボー」
「ブラボーはまだ早いで」
「弁天さん?」
 舞台袖に立った弁天は、幕の隙間から客席をのぞいています。
 ほったらかしの舞台はお小姓ダンサーズがつないでいるものの、突然の中断に客席はかなりザワついているようです。
「客は、夢の続きを待っとるんとちゃうか」
「もういいんじゃないの。ウケも悪かったし」
「公安としては、あまりモタモタしていたくない。現地警察が首を突っ込んでくるかも」
「お客さまには、イタいファンの乱入につき続行不能とでも言って謝罪しましょう。入場料を払い戻してもいい」
 しかし、着ぐるみ大蛇の弁天はきっぱりと鎌首を振りました。
「金の問題やない。始めた芝居を終わらせるんが、ワシら舞台人のたったひとつの使命やねんで」
「はあ」
「最後のセリフを言うまでは、幕は絶対下ろしたらあかん。諦めたらそこで試合終了や」
「べっ、弁天さん、僕、僕」
「ちょっと冬成、何を感動してるの」
 弁天は冬成の肩を抱き、ダンサーたちにメドレー終了の合図を送りました。
「ショーマストゴーオンや。極楽座の舞台を途中で投げ出すなんて、座長のワシが許さへんで」
「上さま素敵!」
「上さま素敵!」
 お小姓たちがハイタッチしながら戻ってきて、冬成はすっかり巻き込まれます。
「やりましょう劉さん! ショーマストゴーオン!」
「簡単に言うけどねえ」
「おーい、どうすんだ。緞帳下ろすのか」
 技術助手の雅が、スイッチに指をかけて待ちますが。
「続けるに決まっている」
 そう言って、桔梗介は迷わず舞台へ出ていくのでした。




 なぜかと言うと、冬成の言葉は絶対だからです。
 この舞台の作・演出が冬成で、演劇において演出家は神にも等しい存在だから……ではなく、今の日本のトップが彼の兄、仁科春臣だからなのでした。




 急ごしらえの明治新政府は結束が弱く、陰湿に繰り返された陰湿な工作により、簡単に内部分裂を起こしました。
 連鎖的にバランスを失っていった議会で、誰もその存在にピンと来ないうちに第一党に躍り出たのが「はなまる新党」。党首指名を受けたのが「俺っスか? 何で?」という名言とともに政界デビューした、仁科春臣でした。国会法とか全然整備されてない明治初期、もう何でもありなのです。
 さてこの太鼓持ち男の首相就任の裏に、とある実業家の存在がありました。人呼んで、じゃこ屋のジャック。
 この陰のフィクサーの驚異的な国際情勢分析により、欧州で人妻ナンパに明け暮れる吉澤が、人妻すごろくのあがりとして欧州最強の人妻・皇妃エリーザベトに接近し、フランツ=フェルディナンドよりずっと感じがいいわぁとか言わせた挙げ句、なんだかんだでオーストリアハンガリー帝国皇位継承権第一位の座におさまって、紛争続きで未亡人が多いセルビアをヨシザワ直轄領にしてもらっちゃうもんだから、民族感情をえげつなく刺激し、サラエボで暗殺されちゃって、あっと言う間に世界大戦を引き起こすであろうことが判明しました。あくまでもジャックさんの純粋な推論ですが。
 吉澤が勝手に身を滅ぼすのは構わないのですが、まだ国家体制の整わない日本がいきなり世界大戦に直面することは避けたいわけで、「ストップ吉澤」の命令がジャック→ハル→内務省→公安の順に下り、公務員である桔梗介は、使節団長に任命された冬成に従い、パリくんだりまでやってきたのでした。
「くそ。帰国したら辞職する」
 桔梗介は舞台中央に立ち、向こう正面をにらみすえました。


第五話へつづく!)

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