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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。


全20話。第一話はこちら

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極楽座の怪人(3)

「へんてこなお芝居ねえ」
 客席に座った人々は、困惑してひそひそ声を交わし合いました。
「ジャポネの演劇ってこんなシュールでしたっけ?」
「何だか期待と違いますわ」
「万博だからって気負ってしまったのかしら」
 ここは日本パビリオン演舞ホール。
 なぜかパリ万博に参加している桔梗介たちは、お芝居と映像の夢のコラボ、特撮イリュージョン歌劇をひっさげて公演中でありました。
 突然のダンスシーンは衣装チェンジのための目くらましです。お小姓ダンスに飲み込まれた桔梗介は、愛と勇気のドリームパワーでサムライコスチュームに早変わり、サムライスキルの真剣白刃取りでギロチンの刃を受け止めると、怒り狂った弁天が大蛇と化して追いかけます。
「テンポのよさと置いてけぼりをはき違えてる感じねえ」
「作者は中二かしら」
「ねえ、マダム貞奴は出ませんの?」
「川上音二郎一座はすごい人気で、チケットは手に入りませんわよ」
「並ばず座れるからって、ハズレを引きましたわね」
「まあまあ。この極楽座も結構おもしろいですよ。ご覧なさい、あの大蛇」
 着ぐるみ大蛇の弁天は、何度もジャンプしては重い胴体に足を取られ、すっかり息を切らしています。
「あれはねー、本気であのサムライに抱きつきたいんですよ」
「そしてサムライ役の俳優は本気で嫌がっているのね」
「面白いわ、バロン」
「もっと解説してくださいな。バロン」
「ほら、部下Aが盾になってかばうでしょう。あれは主人に懸想しているんです」
「ま、罰当たりな異教徒」
 せっせと十字を切ってはいても、女たちはくすくす笑っています。
「ジャポネでは、男色は武士のレベル上げなんです。忠義プレイでヤり、ターン交代しちゃヤり、同棲コンボでもう大変」
「そのお話、もっとよく聞きたいわ。バロン」
「そんなすみっこにおいでにならずに、近くへいらして。バロン・ヨシザワ」
「おっと、引っ張らないで」
 女たちにきゃあきゃあ囲まれ、金髪吉澤の金髪ヒゲが取れたのを、大蛇の胴体に入っていた劉は見逃しませんでした。
「いたわ、あそこ! 桟敷の端よ!」
「ち、見つかっちゃいましたね」
 吉澤はマントをひるがえして桟敷席を離れます。
「出口を押さえろ!」
 客席エリアはロビーへの出口を封じられれば終わりです。吉澤は迷わずステージに駆けあがり、袖幕のあいだに消えてしまいました。
「くそ、ステージ奥は意外に深いんだ。手こずるぞ」
「親方、任せたわ」
「ニャア!」
 木造の舞台は大福親方の設計で、あらゆる細部にからくりが仕込んであります。
 瞳孔をくわっと縦にした親方が操作ボタンを早弾きすると、テグスで吊られた回転床や落とし扉がごろんごろんと作動して……
「あれー、捕まっちゃった」
 吉澤は楽屋口でさかさに吊られていました。


第四話へつづく!)

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