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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。
おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全20話。第一話はこちら
そして、話は日本に戻ります。
「次男はんは預かりましたえ」との怪文書を受け取った仁科当主は、一も二もなく要求に従い、暴力団お断りヤクザ一掃キャンペーンを遂行、私財を投げうって日本全国のローカルマフィアを叩きつぶしていきました。
暗黒街べったり路線から一転、その道の仁義を裏切ったことになる仁科パパは、報復が怖すぎるためそのまま実業界から退きます。
じゃこ屋ジャックの墓を建て、小さな寺の住職となり、「何か釈然とせんなー」と坊主頭をひねりつつ、謎の凶弾に倒れた盟友の菩提を弔いながら、定期的に冬成の生存報告を寄こす伝書鳩ロボを待ち待ち暮らしていると、黒い交際による非合法パワーでのみ議席を保っていたはなまる新党は選挙でボロ負けに負け、ハルはあっさり無職となりました。
「そうだ、京都へ行くっス……」
どう考えても十和古が怪しいとようやく気づいたハルは、とにかく京都へ乗り込みました。
「あの人、前首相のハルさん違う?」
「姉さん声かけて来とおくれやす」
「いやや恥ずかしー」
舞妓はんのキャピキャピ声に癒されながら、京の五条の橋の上にさしかかると、誰かがポンと肩を叩きます。
「あんた」
「ん、サインっスねー」
「……そいつは俺の名刺だ」
条件反射でサインした紙片をよく見ると、「ハイパーアイドルクリエイター 源本 義経」とあります。住所は「京都五条橋上ル」。
「あんた、なかなかのモテ属性だな。今そういう人間を探してるんだ。芸能界に興味はないか」
「エヘ、スカウトっスかー♪」
ハルは一瞬浮かれましたが、いーやと首を振りました。
「俺も一度は天下を取った男っス。今さらちっちゃい事務所で下積みなんてカッコ悪いことできないっスよ」
「うちはまだ新しいが、資本はでかいぞ。社長はジョニー・ザ・ミリオンってやり手の人で」
「へー、カッコイイっスね。ガイジンさん?」
「いや。色々あって前名はジョン万次ろ……、まあいい。新会社ジョニーズ・エンターテインメントの立ち上げに当たって、俺が企画の全プロデュースを任された。あんたほどの逸材なら下積みなし、いきなり主役デビューでいけるだろう」
「主役って、映画? ドラマ?」
「舞台だ。大陸で大当たりを取ったシルク(丸)・ド・フルール(花)とかいう劇団が来日する。新感覚のトリックミステリー冒険活劇で、怪盗を追う探偵の話だそうだ」
「わ~面白そう、犯人はお前だーってやってみたいっス♪」
「俺のカンだがこいつはイケるぞ。全国の興行権をヤクザが仕切ってた頃は、地方興行と言や、清水の次郎長か極妻シリーズしか上演許可が下りなかった。ヤクザが鳴りを潜めた今こそ、日本の演劇シーンの変革の時だ」
義経は橋の欄干を叩いて熱弁をふるいます。
「とにかくケレン味たっぷりの娯楽作なんだ。ナニワの大怪盗、将軍二十面相は徳川のラストショーグンがまんまモデルだ。探偵との対決シーンでは、精巧な人面マスクをかぶった役者がズラリと並んでどれが本物か分からない」
「そこで探偵が、犯人はお前だーっと」
「いいや。本物はワシやーってもうひとり乱入するんだ」
「くー、裏切るっス~」
「サプライズ演出も突飛で、将軍役のひとりは、次の公演先を知らされないらしい。自力で劇団の行方を探し当ててはお小姓とともに乱入して、そこからはマジの場外乱闘、これが寸止めなしのフルコンタクト・ファイトで」
「ハチャメチャっス~」
「真剣を使うパフォーマンスまであるってのは、ハナシ半分に聞いた方がいいだろうな。ジョニーさんは有名人だから、マブダチみたいな顔で出資を持ちかけて来る輩も多いんだ。ハーワーユーどすえーって声をかけてきたのは女だったそうだが」
「へえ~」
ハルは十和古のことなどきれいに忘れ、義経のあとをホイホイついて行くのでした。
月イチの伝書鳩が冬成の帰国予定を知らせるのも、そう先のことではないでしょう。
めでたしめでたし。
~どうでもいい取りこぼしネタ~
上海大飯店の伝票は、鶴亀がすり替えたニセモノ。お金はご隠居がしっかり隠していると思います♪
お付き合いありがとうございました! 他のHANA-MARU二次小説はこちら。