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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。


全20話。第一話はこちら



極楽座の怪人(18)

「おや、さっきしゃべった分で大方しまいじゃよ」
「ネタは割れている。白状しろ」
「おー鬼公安じゃ、怖い怖い」
 ご隠居がどう茶化そうと、どっぷりラリっている桔梗介には、ぐんぐん伸びるピノキオの鼻が見えます。
「見ているものが全くの錯覚かも知れないことは、今度のことで身に沁みた。だが錯覚にはそれなりの理由がある」
「頑固じゃのう。ドッキリのあとはたいてい人間不信になるもんじゃて」
「こっちのドッキリじゃない。屋形船の方だ」
「んー?」
「ひとつの映像で二人を同時にだますなど、不可能だと言っている」
「ほお?」
「それっぽく撮影された映像を、暗がりの中で投影するとしよう。一人の目線に合わせてスクリーンを設置すれば、もう一人の見た目には必ず角度がついてしまう。十和古に位置を合わせたら、仁科までだますというのは無理な相談だ。奴は阿呆だが、目はいい」
「ハルくんはあれで演技派でのう。実はうっすら分かってて芝居を」
「いい加減にしろ。十和古がグルなんだ」
「……」
「あんたがひっかけたのは、仁科親子だ」




「降参じゃ♪」
 と、木彫りのご隠居がカチャンとお辞儀したところで視界がぐぐっと拡大すると、ピノキオ人形の糸を操っている人がいて、そっちが生身のご隠居でした。
「幻覚うざい……」
 セルアニメ風に踊るコオロギやチョウチョに囲まれながら、ご隠居はにこにこ語り始めるのでした。
「いかにも、仁科パパとは始めの頃こそ共闘したが、だんだんソリが合わんようになってのう。なんせ、仁科酒造には将軍暗殺の実績があるじゃろ。賭場を救われた街道博徒らを筆頭に、ヤクザ関係からの支持がハンパのうて」
「じゃ、仁科の長男があっさり首相になれたのも」
「黒い交際のたまものじゃ」
 ご隠居はやれやれと懐を探り、老酒の瓶をドンと置きました。
「こっちも恩があるから従うが、傘下のように扱われるのは性に合わんでの。そんなとき、奥さまネットワークからバロン・ヨシザワ情報を拾ってきたのが十和古ちゃんじゃ」
「吉澤の動向は公安もつかんでいないネタだった。負け組の十和古がどうやって」
「奥さまの奥は大奥の奥じゃ。元大奥女中は国内外のセレブに嫁いどるから、内うちの噂話にもアクセスしやすいんじゃよー」
「で、かつてのライバルとあっさり手を組んだってわけか」
 桔梗介が頭を抱えると。
「京おんなはフレキシブルどすのんえ♪」
 キャハっと顔を出したのは十和古です。
 桔梗介は、老酒の瓶から飛び出したミニサイズの十和古を目で追いました。
「仁科の長男を鉄壁の目撃証人に仕立て、じゃこ屋死亡説をでっちあげ……、目的は何だ。身辺のリセットか? いや……」
「樋口さん、誰としゃべっとるんかの?」
「どすえ♪どすえ♪」
 ちっちゃい十和古はどんどん増えて、あぐらをかいたご隠居の周りをカニ歩きで行進します。
「次男がこちらの手中、立派な人質だ。脅迫すれば仁科はどんな要求でも飲むだろう。金か、地位か。狙いは日本国丸ごとか」
「何か視線が合わんのじゃけど……続けるがの」
 以下、しゃべっているのはご隠居ですが、桔梗介にはねちっこい京都弁に翻訳されてしまうのでした。
「人質やなんて、人聞き悪いわあ。保険どす。可愛い息子にハクを付けたいお父はんは、第一級のお宝を持たせてくれはるやろ」
「パリ万博参加を吹聴したのはそのためか。いや違う。こうだ。誘拐犯から要求が来て、仁科家がどれほど手を尽くしても、ヨーロッパで使節団の消息はつかめない」
「行ってへんのどすからなあ♪」
 カニ十和古はブイサインのハサミを上げ、一斉にキャキャキャと笑います。
「冬成はんは、まさか自分が人質やとは夢にも思てはらしまへん。こうしてサシでの席を設けてくれはって、樋口はんも優しいとこあるねえ」
「いい加減うんざりしただけだ。聴衆が多いとホラを聞かされるばかりだからな」
「冬成はんには内緒にしたげてほしいのん。人質に人質と気づかれたら最後、人質らしくふんじばっておかんとあかんやろ。可哀想どす」
「やっぱり人質じゃないか」
「ま、そうどす」
「俺が協力するとでも? じゃこ屋を斬って死亡説を本当にすれば、話は終わる。俺は早いとこ帰国したいんだ」
 そう言って刀をつかんだ桔梗介の利き手を、何かがパチッとはさみます。
「はっ、サソリ……」
「そー言うたら樋口はんは、国に大事な人を残していやはったねえ」
 桔梗介が眉をひくつかせ、刀の柄に乗っかったサソリ十和古は、毒尾を揺らしてみせました。
「大福親方のように、家族ぐるみでご招待するべきどしたなあ。うっかりうっかり」
「……斗貴ならあいつが守る。どんな刺客を雇ったか知らんが」
「そういうのんは嫌いどす。ジャックはんに何かあれば、はなまる屋の姉はんたちが大挙して清十郎はんに群がる手はずどすのん。女のトラブル山盛りで新婚家庭は崩壊、斗貴ちゃんは泣いて暮らすことになるやろなあ……」
「…………!」
 思い切った桔梗介は、えいとサソリの尾をつかみ、十和古だって一歩も退く気はありません。
「八千菊政権が崩壊したときは、ようもあっさり見捨ててくれましたな」
「そっちが勝手に失脚したんだ。独裁者め」
「公安は独裁者のイヌどっしゃろ。政権をおびやかす輩は問答無用でツブさんかいな。サムライの忠義はどこへなくさはったん」
「サムライの世は終わった。今の俺は公僕だ」
「しゃあしゃあと。工藤はんとの忠義ごっこは続けてるくせに」
「公安の悪評を流しまくってたのはお前か」
 そのとき、倉庫の扉がごごごと開いて。
「お待たせキョーちゃん!」
 山のような薔薇を背負って、弁天が戻って来ました。
 真紅の花びらがびゅーっと吹き込みます。
「キャーー」
 花びらにまかれたサソリの十和古はバラバラになって散り、ご隠居がホウキとチリトリで片づけました。
「早かったのう」
「ちょびっと手間取ったわ。街じゅうの花屋に空き巣に入っとって」
 ほっぺも薔薇色に染めた弁天は、ハアハア息をしながら花束を下ろしています。
「キョーちゃんたらまだ床に寝そべって、痺れが切れてないんやろ。賭けはワシの勝ちや。武士とホモに二言なし、ここまできてドタキャンなんてないやろな?」
「……ああ。さっさと済ませろ」
「わしゃはずそうかの。酒でも飲んで景気をつけることじゃ」
 気の毒そうに言ったご隠居は酒瓶を残して立ち、瓶に手を伸ばした桔梗介は、スカッと空をつかみました。
「くそ。目測がおかしい」
「あのあのキョーちゃん、ワシが飲ましたろか」
「頼む」
「ダダダイレクトに?」
「何でもいい」
 弁天はひと口ごぶりとあおり、震えながら膝をつきました。
「んーー……」


第十九話へつづく!)

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