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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。


全20話。第一話はこちら


極楽座の怪人(19)

「んっふーー」
 小鼻をふくらませて近づくと、桔梗介もすっかりその気のポジションです。が、
「ぐふ」
 ちょうど半身を起こした桔梗介の膝がみぞおちに入ってしまい、弁天はごくっと飲み込みました。
「あかん飲んでもた。やり直し」
 再び酒を含むと、誘わんばかりに腕を回した桔梗介が、今度は束ねたロン毛を引っ張ります。
「ぐふ、飲んでもた」
 またやり直し。
「ぐふ、飲んでもた」
 またやり直し。
 しているうちに弁天は、瓶の中身をひとりで飲んでおりまして。
「な、何やワシ、あちこちピリピリしてきたでー」
「じゃろうな」
 ご隠居がひょいと顔を出します。
「樋口さんがカニを洗うとった酒じゃ。お前さんの盛ったクスリがどっさりじゃよ。もしものために持って来といてよかったのう。わしエライ~」
「道理で、瓶がカニ臭かった」
「んきゅう」
 どたりと倒れた弁天は、手足を上にしてひくひくしながら、ご隠居と桔梗介を見上げました。
「ちなみに日本パビリオンのお宝は、わしがいただいたんじゃよー」
「そうなのか? 本物はどこに」
「海外コレクターに、ええ値で買うてもろうたわい」
「そんなでかい取引を、仁科家の目を盗んで? 一体いつ」
「東シナ海を周遊したと言うたじゃろ。お前さんらが船酔いしとるあいだに、船内で即売オークションを開催しとったんじゃー♪」
「……もう言い飽きたが、道理でな。同乗客は皆、競りに参加するコレクターだったか。じゃあ上海に着いたときには」
「すっかりイミテーションに入れ替え済みじゃ♪古売屋に行った弁天くんは、オミヤゲ品を売りつけに来た迷惑もんと思われたんじゃろ」
「こいつは存在自体が迷惑だ」
 なんて言われているとも知らず、夢の中にいる弁天は、桔梗介の腹筋に赤い染料で、坊主が上手に屏風にポーズする絵を描きましたとさ。
 めでたしめでたし。




「と、いうわけで」
「何が、というわけですか」
 ヤキモキしながら上海大飯店で待機していた工藤は、全然納得できません。
 桔梗介は痺れの残った腕をさすりつつ、棒読みで続けました。
「諸君らには、じゃこ屋ジャックさんの人生リセットを全力でサポートしてもらう。お年寄りがお困りなんだ。力を貸すのが当然だろう」
「嘘くさいニャア」
「ジャックさんはこのまま身元不詳のいちスタッフとして潜伏、我々は彼の隠れ蓑として、舞台公演のドサ回りを続ける」
「何でまた」
「大衆演劇はいい金になるそうじゃないか。ウケれば現金のおひねりは飛ぶし、設備はなくともアイテムが正しければ演劇の魔法が働くし」
「あー、べそっちょの受け売り」
「弁天さんと何かあったのかなー♪何かを受けたり売ったりするような?」
「……お前にもしてやろうか。打ったり撃ったり」
 そろそろキレそうな桔梗介に代わって、ご隠居が低姿勢に出ます。
「頼むわい、わしゃもうスッカラカンなんじゃー。国宝を山ほど売ってもうけた金も、打ち上げで使い切ってしもうてのう」
「え!」
 バンケットルームを見回せば、嵐のように飲み食いしたあとの祭りです。
「か、帰りの旅費ぐらいあるんでしょ」
「いやー、大飯店ってめし屋のことかと思うたら、ホテルのことなんじゃってのう。わしゃ知らずに貸し切りじゃーと言うてしもうて、ホテル側も律儀に一棟まるまる貸し切ってくれて」
 おそるおそる伝票をめくった工藤は、「ヒッ」と言ってよろめきました。
「て、天文学的なゼロの数です……」
「たっぷりフランスまでの往復分あった使節団資金を全額つっこんで、やっと間に合うたんじゃー」
「ち、父に連絡しましょう、追加の旅費ぐらい送金してもらえます」
「ナイス、冬成!」
「頼れるニャ!」
「あー、ほれ樋口さん。ふ♪」
「おじいちゃん、ふ♪でダブルピース出すのは何でー」
「カニ臭い酒の恩を忘れるなっちゅー意味じゃよ。ふ♪」
「……」
 桔梗介は、冬成の前に立ちはだかりました。
「お前、困ればそうやって父親に泣きつくのか」
「え」
「内実はどうあれ、お前はこの一大国家プロジェクトの全権を任されて来たはずだろう」
「でも、だって……」
「国宝をかすめ取られたうえ、資金管理にも不手際があったとすれば、それは使節団長であるお前の責任じゃないのか」
 冬成はハッと姿勢を正します。
「樋口さん、僕……!」
「諦めたら、そこで試合終了だ」
「僕、国宝と同額を稼ぐまで家には戻りません!」
「ふ」
 桔梗介とご隠居がダブルピースを交わし、使命感みなぎる冬成は、さっそくネタ帳をめくりました。
「何を上演しますか? 今日はたまたまウケましたけど、ドッキリはもう使えませんよ」
「わしに新作のアイデアがあるでの。魔術トリックとミステリー渦巻く冒険活劇じゃ。クレオちゃん製の精巧な人面マスクが不可欠なんじゃが……」
「上演グッズの権利関係くれるなら、考えてもいいネ」
「私もヒマだから付き合うわー。楽屋はくどりんと相部屋ね」
「天音もいいでーす♪家族三人一緒なら、どこにいたってスイートホーム」
「そうだニャア」
「勝手に俺をカウントすんじゃねえ」
「あんたたち、のんきに賛同しすぎよ」
 劉はぎりりと歯ぎしりしますが、ここで食らいついてこそジャーナリストです。
「裏に絶対何かある……必ず真相を探り出すわ」
「劉さんが参加なら僕もいいですよー♪」
「よし」
 工藤の返事は待たず、桔梗介はドンとテーブルを叩きました。
「仁科万博使節団の活動は本日をもって終了、ここに新団体の旗揚げを宣言する。団体名は……」
「劇団はなまるじゃー♪」


第二十話へつづく!)

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