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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。
おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全20話。第一話はこちら
袴がほどけてハラリと落ち、いわゆる着流し状態になりますが、桔梗介にはなすすべもありません。
「え、ええぞ、つつ次は、おおお帯や」
「本来の目的を見失ってるわよ。ここからどうやって人妻スキーを釣り上げるっての」
「ああして人が困ってりゃ、吉澤的にはこの上ない娯楽なんじゃねえか?」
「そんな気はするわ……どうかこらえて、樋口さん」
「こういう展開はどうでしょう、上さま」
すっかり信者な冬成は、キラキラ目で草稿を書きまくっています。
「そしてふんどしいっちょとなった桔梗介は、ふんどしの精霊にヤマトダマシイを認められ、最強の武器エクスカリバーを、ふんどしいっちょで授けられるのであった」
「むっ、ええな!」
「クライマックスはやはり大蛇を本来の姿に戻しましょう。群舞に乗じて工藤さんと真剣をハケさせれば、上さま相手に樋口さんが使える武器は、箱根細工の木工品のみ」
「お前、才能あるやないか」
弁天はわなわなしながら支度を始めました。打ち捨てられている着ぐるみの尻尾を巻けば、プロテクター代わりになりそうです。
「ふっふっふ。木刀やったらワシ、どんだけボコられても平気やで」
「上さま、最後はちゃんと負けてくださいよ」
「分かっとるがな。フィナーレはキョーちゃんに花持たして散ったるわ。それまでは、絡むで~。ネチョンネチョンに」
「ダメよホモホモしい。こっちじゃそーゆーのはNGだって言ってるでしょ」
しかし、弁天はきりりと蛇ふんどしを締め上げます。
「御法度がある言うことは、誰もがやっとる言うこっちゃ。ノンケが味覚えると病みつきになるからな。もとは西洋でも一般的な習慣やったはずやで」
「見てきたように言うわねえ」
「現地の傾向は調査済みや。パリは表の顔こそおシャレやが、路地一本入ればイケナイお店だらけやったで。断言しよう、びーえる臭はパリっ子にウケる!」
弁天がグンと拳を握り、本番のアドレナリンでおかしくなった一同が「上さま素敵」を唱和しそうになったそのとき、舞台で悲鳴が上がりました。
「キャー」
精霊のひとりが、前を押さえてしゃがんでいます。
桔梗介はふわふわと剣先を振りました。
「この辺にも霊気を感じるぞ。目には見えんが」
ずばっ。
「やーん」
ずばっ。
「キャー」
サムライスキルのダウジング剣で、少年たちのふんどしの紐が次々斬り払われていきます。
弁天は袖に駆け寄りました。
「アカン! ポロリは厳禁や」
布を押さえるのに手一杯で、もう精霊はサムライに手が出せません。
「引っ込めガキども。出番は終わりだ」
ダンサーチームを追い立てながら、桔梗介はニヤリと笑いました。
「思ったとおりか。アングラ系の前衛演劇が唯一恐れるもの、それはわいせつ物陳列罪による公演中止だ」
「ちくしょうー!」
弁天は膝から崩れ落ち、悔しげに床を叩きました。
「どれほど際どいパフォーマンスをしようとも、ギリギリでブツを出さんのがワシらの誇りや。舞台人の矜持をようもオモチャにしてくれたな。鬼公安はん……」
「何を二人だけで盛り上がってるの。全然字幕にできないわ」
劉が天を仰いだそのとき。
「はーっはっは! 見事なふんどし武装解除、さてはお前が悪名高きふんどしザムライだな!」
セリフ感いっぱいの倒置法ですが、字幕化の必要はありません。すでにフランス語だからです。
「あーヨッシー」
「さすが、現地で恋愛すると語学身に付くの早いネ」
ぶらぶらとやってきた吉澤は客席通路で立ち止まり、雅が照明を向けるのを待ちました。
「僕はずっと見ていたが、お前は新政府で職を得ながらいまだ旧時代的主従ごっこを忘れられずにいるようだな。革命の志士たちが血と汗と涙で勝ち取ったご一新の成果を、お前はネクタイがめんどいからって台無しにしようというのか。許しがたき不心得」
「ちょっとちょっと、これ以上新しい設定盛らないでちょうだい」
「いいじゃん、僕も仲間に入れてくださいよー♪」
片手でひらりとステージに上がった吉澤は、マントから日本刀をはみ出させています。
「ここで会ったが百年目。ふんどしザムライ、僕と勝負しろよ」
(第九話へつづく!)