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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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感想スタンスは、「私の目にこのお話がどう映ったか」のみをひたすらお届けする、というものです。読み手本位です。辛口まじりですが、「勝手なこと言ってるなあ」で片付けていただけるよう、ちっちゃい自分を腹の底までさらして参ります。ネタバレあり、引き込まれた作品ほどいじり回したいので、何につけしつこいです。

E01  コロンナ33遅き午餐
おーもしろい!と言い間違えて何か別の言葉を言ってしまいそう。おいしいとか、きもちいいとか。読んだものの正体を見極めようと手に取る言葉にいちいちうっとり。よく作りこまれた装飾品をズラリと並べてとっかえひっかえなでまわし、手触りを楽しむ幸福。

始まりは色んな含みのあるやり取り。盛り付けすぎず謎めかしすぎず、二者の立場の色合いだけをそっと提示して済ませる。筆の控え加減に引き込まれる。「>高いハシゴ」「>錐の先ほどの紛れも」など、じいさんの物言いを通したときの印象の深さ。キャラの言葉って大事だなあ。

世界説明が始まっても語りのキャラが立っている。「ダレがナニした」を伝えるだけのヒネリのない報告で終わらず、常に一定の美意識で一枚ベールがかけてある感じ。「>森は、はたして地形峻険」「>切開された森」「>その存亡を賭して一匹の蟲と化し」「>そうして百年四代。」「>これは一代の奇人である。」い、言いてえこんなん。使いつけないまま手を出すとケガしそうだけども。

強烈な気候変動のあまり、舞台から人類がはじき出されてしまった世界。停泊地の数がそのまま時代区分の目盛りであるという設定が好き。「コロンナいくつ」と言って記憶される苦闘の歴史は、人々の日常に確かに根を下ろしている。「覆面企画いくつ」と言えば「ああ、あのお題の」となるように♪

政争とその決着について。木組みの例え。コロンナの性格がそのまま社会通念であること。老人の口による絵解きがまた味わい深いのだけど、何より「>エラスを割る」この表現を何の苦もなく理解している。すげえ!読み手もいつの間にかエラスの一員。

美しいアーチが力を与える。「>誰にも伝えず死ぬことが許されようか。」知識を伝え残す責任を誰より重く背負っている王女の自覚にアッと思う。お面をつけて弱い者をいじめた悪ガキ時代、それを悔いて真っ直ぐに詫びた幼少期を経て、戴冠する彼女の成長がまるで自分の手柄のように誇らしい。次代コロンナの始まり、万感の演説。聞きましょう。

時系列が追いついて、そういえば「久しぶりに」「会いに来た」という導入部の立ち位置を思い出す。ドキドキそわそわ…しつつも、グルヌー語りにまたすっかり魅了され。「>人間て生き物は、自分らのような薄ら汚ねえ野郎だけでねえ、たまにあのひとのような者も生み出すというのに、こんなところで擦り潰されてなくなるのは、さすがに勿体がなさすぎる」ええのう。おずおずと回りくどくてええのう。ええと思うもんに「ええのう」と呟くことにひとつも抵抗なくいられる私たちと違って、あんお人、ええのう。と言いたくても言えなかった鬱屈が、数々の真理の扉を開けさせ、橋を架けさせた。直感がとらえた黄金律の端々は高度に一般化され、エラスに受け渡されていく。グルヌーという個人から切り離されても、もはやびくともしないほど。

隠遁とか蟄居とか生ぬるいことじゃ済まされん世界なんだよな。当代一のツルハシ屋のもとには自然に人が集まってしまう。エラスを割っちゃいけねえだ姫さん。にしても非情だ…非情に徹する生き物は美しい。こんなに非情なのに、「>これから他所もお周りに」「>いえ、こちらだけで」「>有難えだ」、お互いに情にあふれて座っている豊かな静けさ。学者が自分の研究のことを「勉強」と呼ぶのって好きだ。

E02  サクラ散る
「たわいない幸せ」を語る心内語は女子口語だけどキャピつかず、例えば野太い声の男子バンドが歌ってもサマになる歌詞のような感じ。「顔が好き」「いつから好き」「どっちから好き」とかでイチャつく会話もどこか振り返ってる距離感が不思議で読ませる。徹底してひとりが語るお話の性質を余すところなく活用した構造がキレイ。ああ五十日。ああ事故が。ああ犬が。ああ桜も。ああ見付かる。感想書きのための見直しでなく自然にさかのぼる。「>今は同じ塾に通って、いつも一緒にいるけれど。」の「今」「いる」だけ少し還流の邪魔か。「>さっきの私の杞憂は何だったの?」は、言うなら「さっきの私の心配は杞憂だった」では。このセリフで終わるお話って作れるんだなーとしみじみ。

E03  Down Your Way
あれっ、分かんなかった。「>唯一の欠点として乾季がやたら長く」などコノミの糸口だったのだけど、するんと逃げられ、ぽとんと終わった。「処理」「ルーツを濃く証明」「部隊のため」「痴話喧嘩」「誰かがどこかで死ななきゃ終わらん話」このへん全部が雰囲気づくりを済ませたまま終わる。彼ら軍隊が何を目的に編成されたものなのかそれだけでも知りたい。惑星同士で戦闘状態にある?単に治安維持?

E04  地球全周1/40000000と少しの世界 注
メトロノームが刻むような不安を煽る変拍子にいつの間にか体が馴染んでいる。出てくる情景は必ず妄想で、頼れる足場はどこにもないが、そもそも足に頼らなくてもいいように、「これにつかまっていれば大丈夫」というガイドロープが一本たなびいている感じ。踏んで歩いた足場を律儀に壊してから次に進む、精緻なゲーム思考のようなものが常にある。「>まぼろしのスプーン」、投げメモの来るタイミングなど、妄想と現実との間の段差のなさが絶妙。「1メートル」と定義される人生がどんどんスケールダウンしていく。教室で暇を持て余していた自分も妄想の自分、うんざりしていた通学路すらたった一度通っただけ、委員長という存在だけのクラスメイト、妄想の及ぶ範囲が小さく狭く主人公を取り囲み、とうとう寝床から起きられなくなって…二度寝から目覚めたそこは自意識の牢獄。こっ、こわー

章区切りでホッとさせるが、「そうだったらいいのに」というお話をさんざん聞いた後、この楽しげな少女たちという情景の提示は一番怖い。読んでいる私たちお話大好きっ子の背筋をひやっとさせる気配。一歩下がった後ろから、誰か見てる。「それも、私の作ったお話だけどね」と笑って…。きゃー!(ひとりホラーごっこ)

「嫌い」「苦しい」「悲しい」など言葉で言うときも乾いたトーンに悲壮感がなく、感情の置き場が整理されている。淡々と語るモノローグの迫力。「列車の線路」というなぞなぞはそれだけで含蓄に富み文学的。

E05  夏椿の咲く庭で
語り手の正体がゆっくり明かされて、それが人外の何かで…という構造。こういうお話は好きなんだけど、もひとつ乗り切れなかった。「>もそっときちんとご説明するのでしたら、」「>ほら、想像してみてごらんなさい。」など、直接誰かに語りかける体裁を取っているのに、「聞き手である誰か」の存在は特に物語に絡んでいなかった、という肩すかしのせいかもしれない。同じく信心に目覚めた畜生仲間に寺の紹介をしているのか、お坊さま以外に親しくなった別の人間に語る機会を得たのか。「>そのお寺」「>このお寺」「>あのお寺」「>あすこへ行くと」など、彼と聞き手がいる場所から見て寺がどのへんにあるのかさえ、いまいちバラバラ。彼が夏椿の話をしようと思いついた具体的なきっかけはどうもなさそう。大まかにとらえて、昔話フレーズと思えばいいのか。

にしても、語るはずのないものが語るお話で、語り口は工夫の見せどころ。なのに「~じゃありませんか」が続くなど、メイントリック以外の部分に楽しみが薄い感じもある。「>どこぞの花嫁さんみたい」は、あてつける意味合いではないただの例えだから、「どこぞ」はそぐわない気がする。「>苔がむしたみたい」「>からだをいとって」「>辛みに」など、私に馴染みのない言い回しというだけなのかもしれないが、あちこちでうん?と目がひっかかった。

終段、自称お坊さまの追いはぎ稼業を匂わせてニヤリとさせるが、トンと置いて逃げる「因果応報」という一語で、なんだかピントがぼやけた。お坊さまの説諭にあった因縁の話は、「輪廻をはさんで来世に作用する」というところがポイントだったのに、ちょっとくらいは懲らしめがあっていい、という追いはぎオチでは、「因果は今生のうちにすべてリンクし解決する」という扱いになってしまった。ダブルスタンダードってやつだろうか。都合のいい解釈のブレを笑ってみせるシャレっ気のようなものがあと少しあれば、狐(狸?)ふぜいが仏道を語るうそ臭さもひっくるめてお話の味になったりするかもしれない。

E06  ただいまセルフィ
セルフォイド、ツインレベル、メモリアなど、直近未来の新風俗が楽しげ。ストーリーはよく分からなかった。個人情報を盗み見するような自分に恥じ入り、自分を見つめるための鏡像と自分とを混同しかかり、暴力に我を忘れかけ、すんでのところで理性を取り戻し?終幕に近づくほど文意が取れなくなる。「>初めて他人のセルフォイドから情報を抜き出したとき、もしあの後ろめたさを拭え切れないでいたなら、私はこのセルフィのようになっていたのだろう。」うーん、否定と仮定がぐるぐる巻き。抜け駆けしたうえ主人公を笑っているらしい級友についてはもういいのかな。

E07  花想
ええー。ずうっとずうっと彼女を縛っていたはずの「いつか置いていかれる」というルールが、幸せなラストでどこかへ消えてしまった。紫桜は化け物かもしれないが、定良は違う。魂が行くべき場所がそもそも違うという異種族間の葛藤は起こらず、ストレートに終わった。定良は天性の素質をどう使い、誰に要求を飲ませて地縛霊化にこぎつけたんだろう。皮肉じゃなくて。使えば活きる設定だったと思う。

「>「……先ほどから、おまえが答えないのが悪い」/ そういう子供も答えていないのだが、先に答えなかったのはわたしだ。」答える答えないという言葉先にとらわれていて、状況の奥行きが先細っていく感じ。

「>まっすぐにこちらを見つめる子供が、なんだか必死に見えたからだ、と言い訳をする。」何に対しての言い訳か、前後を見回しても分からなかった。「こちらを」は不要かもしれない。

「>知らずため息をつくのも、百年も経てばそのうちしなくなるだろう。」これは「ため息をつくことも、百年も経てばなくなる」かもしれない。

「>気にするな。おまえと違って、わたしは特にすべきこともないんだ」 すらっと通り過ぎるセリフなのに、次で「>知っていたのか」と引っかかる人がいて「何のことだ」と迷う。「すべきこともないんだ。おまえと違って」なら、定良があっと眉をひそめる流れが準備されると思う。

「>だから、だから私の相手をしたのか!?」 ここに定良のプライドがかかっているらしい意味が分からない。周りは媚を売る者ばかりでうわべのお追従にうんざりしている、という背景もなかった。

「>わざわざここまで教える必要があるのか」 この文意に従うと、地の精であるとか何という妖怪であるとか、誰の時代から生きているとか、定良をギョッとさせるような新事実が語られるべき。展開としては、もうはっきり言ってやろうか、みたいにヤケを起こした紫桜が、これまで互いにうっすら了解していたことを口に出した、ということだと思う。「>わかっているだろうに返事をせず」で、もちろん定良はすべて分かってる、それを紫桜も分かってた、という状況がただ繰り返される。紫桜は「>食事をする必要はない」と言ったりしてはじめから人外の正体を隠し立てするつもりもなかったのだから、何を焦る必要があるんだろうと思う。作品を覆う雰囲気として「出会ったときから分かり合っている二人」というロマンチシズムがあり、展開としての「齟齬を少しずつ乗り越える二人」や、一人称を担う紫桜の「この男さっぱり読めん」という立場と、いちいちケンカになっている気がする。

「>定良は目だけで笑った。」子供の笑顔らしくない気がする。緊張している描写か、逆にすごくリラックスしているのか、笑顔の意味合いを受ける文章は特になかった。

「>紫の桜。空の青を溶かした桜の花」 青と赤を混ぜると紫、という現代顔料的発想に少し疑問。設定が何時代か分からないけど、「青」の意味も現代とは違わないかな。紫はなかなか作れないから高貴とされるんじゃなかったっけ。「顔料の合成技術が進んだ異世界」という和風ファンタジーへ軌道修正するにしても「>武家」「>菩提寺」などは普通の歴史ものの光景しか提示しない。あちこちにもっと奇妙な風俗があれば。

「>療養のために城を離れてもなお会いに来る定良に、わたしは何もできなかった。寝込んでいる間、人目につかぬよう城に出向いてやるくらいしか、できることはなかった。何度も城に来いといってくれたが、それはできないと知っていたから。」 定良は城を離れ、私は城に出向き、城に来いと言われ、それはできない?結局城に行くことをどうしたのか、文意を汲むのに時間がかかる。文末に連続で顔を出す「できるできない」がややこしい。

「>帰らぬ人となった。」死んだという意味の慣用句だけど、迎える側である紫桜の一人称には馴染まない気がする。しれっと隣に立っている急展開がコノミ。達観していた超越者がゆっくり揺らいでいくという流れも好き。ただ定良もともに変わっていったのか、変わらずにいたのか、描写の立場がはっきりしない感じ。ラストシーンの「>照れもせず、恥じることもなく、臆面もなくそんな台詞を告げて笑う男」はえらく自信たっぷりで、もう真っ赤になってふくれたりしないのに「>あの日のまま」と言い張る描写には違和感がある。

E08  人生に乾杯!
正調にハッピーなトーンですごい警戒して読んだ^^。花言葉に託して告白した、ということだと思うけど、「>君が好きな花をぼくが選ぶ。」の「好きな」の意味がどこにもないと思う。「赤いリボン」というだけで分かり合う二人は和歌の知識を前提に連絡しあう平安貴族のよう。お題は改めて探さないと気がつかない。弾むような色のタイル、というのはすでに「色」と「動き」をまたいだ越境比喩表現(わたし造語)なので、シメの一文で人物の「動き」を重ねても、例えが弾みきらないと思う。「タイルに弾むボール」でもあれば。でもお話にボール関係ないしなあ。

E09  回収者 注
ぎっしり詰まった近未来ガジェットがかっこいい。「>暗視装置の緑のかった視界」に計測表示がズラズラ並ぶような士郎正宗ビュー。機械生物か生物機械か、悪夢系モンスターがのたうつ荒唐無稽な世界設定に、「ユビキタス社会の暴走」というたどりやすい橋が架けてある。「>新たに加わった気象というか、ともかく天候みたいなもんだ」「>目薬でもいい。孫まで一生食える。」などは真実味ある肉声。キャラと彼の住む世界に血が通う。

「>肉体労働もいいところ」とあるが、状況が本当に肉体労働だ。キツイときこそふざけた軽口で物事をナナメにとらえ、しんどさをやりすごすというのが独白クサし芸の効能だと思うので、しんどいときに口を極めてしんどさを語ってしまうこの主人公は、とてもしんどそうだなあと思っていたら、「>それに俺のこの無駄な一人語りも腑に落ちない、なんだっておれは一人で考えごとをしなけりゃいられない性質になっちまったのか?」 これで一人称の足場がドンと据えられた。憑かれたような半泣きテンションの「チキショウくそったれ」は、化け物除けの呪文なんだ。

「>ちょいとボルトを放ってやる。俺はボルトを放る。」どっちか削り忘れかな。改行の少ないみっちりした眺めで推敲も大変そう。

レスキンのストーリーが理解しづらかった。「>あのでかい<肉挽き箱>を何とかしてでも通過しなきゃならん。……レスキンは」と近い場所に名前があるので、「死に場所は<肉挽き箱>」と印象づけられる。そのあと<床屋>があり<再生ロッカー>にも攻撃され、しかし<不死身>と呼ばれるようになったからには死んでいないしと、ウロウロ。「><再生ロッカー>のせいだ……レスキンの下半身がフラフラさまよっていったのは。」とはっきり言ってあるが、タイミングが早すぎるのか印象に残らず、下半身だけで歩いて行ったのがロッカー効果だと伏線をつなげるには初読の不良視界ではムリでした。

「>俺はフクダをちらりと見送って、」フクダと道が分かれることは了解できるが、ここの光景が「自分から立ち去っていくフクダ」なのか「移動により視野からはずれていくフクダ」なのかがスムーズに浮かばない。重要な違いだと思う。

「>執念深く道を這いずる。這いずっていく……。」のために、数コマ前から主人公の体勢を印象づけておいた方がいい気がする。姿勢についての直前の言及は「>それから俺はよろよろと立ちあがり、」なので、何となくずっと立ったままだった。望みの場所へ続くエレベーターの扉を閉め、降下が始まって、ぐっしゃりと倒れ込んだのだと思う。降下とまり、腕だけ膝だけで光を目指す、凄みのあるラスト。「>執念深く」などわずかな様態描写もストイックに排してあった方がコノミ。

E10  見返り坂道具店 注
突き放した三人称のはずだけど、表現されるものと地の文との距離感が何だか定まらない。てにをはや構文のギクシャクぶりも気になる。小説と思わず、サブカル雑誌の怪談特集か事件ルポの再現ドラマととらえれば、味わいの薄いナレーション口調に身を任せられるのかもしれない。

「>だが部活によっては、結構遅くまで」 何を否定するための「だが」なのか分からなかった。

「>夜闇に透明のビニール傘が一つ、街灯に照らされて浮かび上がる。」 すでにノゾミは「>やってき」ているので、新たに遠景から登場をとらえるのはおかしいと思う。

「>そして、視界の悪い中――暗闇に紛れて(ノゾミが見たものは)、一軒の建物」 (カッコ)内のワンクッションがないと、地の文がすぐにノゾミの主観に張り付いてしまうと思う。いや、ノゾミ主観に擦り寄っていく展開だっていいのだけど、「>ノゾミが困ったように問いかける」「>少女が明るさに慣れる頃、」「>ノゾミが激昂する。」と気まぐれに三人称が顔を出し、読んでいて落ち着かなかった。

「>声のした方を見ると、そこには」と言った後で、「>カウンターの向こう側に」と居場所の説明が追加される。リズムが途切れ、盛り上がりかけた雰囲気がしゅんとしぼむ。

白雪姫のうがった解釈は面白いが、その前段の「>え……だって、このリンゴで白雪姫は死んだんでしょ?」が微妙に的をはずしているので着地が決まらない。白雪姫は死ななかった、それはかじったリンゴを飲み込まなかったからだ、というのが指摘の順序では。「>君はあからさまに怪しい人から貰ったもの、口にできるかい?」を言うためには、「>白雪姫が毒リンゴを食べたのは、馬鹿な王子をひっかけるためなのさ。」で「食べた」と言っちゃいけない。にしてもいつ通りがかるか分からない王子のために仮死状態になるというのは計画として遠大だな。

憧れの先輩と自分の釣り合わなさに悩む女子が、「受験を勝ち抜く」という武張った発想をすることに違和感。シンプルな上昇志向がいっそ爽やかだ。それだけサバサバしていたら、気のなさそうな相手への片思いなんてすぱっと捨てて他にやりたいことを見つけていそうな気がする。「アタシだって捨てたもんじゃないんだ」と思う自負(思い込み含む)がありゃこそ「センパイ振り向いて」と思うんじゃないだろうか。後段の狂気のもととなるべき、ジトッとした肉付けに成功することなく終わる。この後ショッカー映画的展開が待っているのだけど、「まさかそんな!」「いや、さもありなん!」と思うためにはキャラの姿が見えている必要がある。書き割りのように厚みのないペラペラの彼女にこの先何が起こっても特にびっくりしない。

「>君がよく読む雑誌に出てくる恋コスメ、なんてものじゃない」 そんな雑誌知ってるんだ、という突っ込みがあると好き。

「>あたかもそこにずっと存在しているかのような、そんな雰囲気すら受ける。」これを言葉で言っちゃうから再現ドラマっぽくなってしまうんじゃないかなあ。

店主人形を操っていたのは犬だった、という仕掛けが好き。と思ったらすぐさま犬の背後に焦点が移ってしまった。正体の正体、のようで手続きがダブつく。犬の姿がそのままへんげする、とかじゃ駄目なのかな。

E11  幸せの道
序章も三人称でおかしくないと思う。通して読んで、どうしても一人称で物語をサンドイッチしなければならない必要は感じなかった。もしくはおなじみの失恋話を語り聞かせた続きとして二章を始めるか。

終始隊長の気づかいに助けられる。セロンが可愛がられる理由が具体的なエピソードで何かあれば。カタル攻めの情報提供に役立ったとか。隊長との結びつきが「>隊長の命令は絶対なんです。」という可愛い忠誠の言葉しかなくて頼りない。捜索が失敗に終わり、雇い主からの報酬もなく、部隊内のカタル人が行方をくらませている。隊長は兵たちの信頼を失わないだろうか。えこひいきと隊長の人徳とがいまひとつ馴染まない。

「>目標の名はリゼロ・テッサ。」とわざわざ言って「黙っててやったよ」を伝えるより、もっと粋なトボけ方があると思う。

E12  世界ノ果テノソノ向コウ 注
「>瞬きを一つ」という操作で一気に世界が幕開ける。09で「士郎正宗ビュー」と思ったのは、オフライン設定のときにチラ読みした本作冒頭の印象が混ざってたようで^^;。09がアップルシードならこちらは攻殻機動隊♪いやごっそり積み上がるメカと哲学まみれのそのいわくはやっぱりアップルシード、とにかくわくわく。

「>要するに、夜明けまで意識を保つ自信がないのだろう。」「>何時間も放っておける状態じゃないことが認識できてないとしたら問題だ。」など、背景説明と語り手の立場に過不足がない。この分析を呟くために彼はいる。

「>秘密のかわりに胃の中身を吐く」とはいい。「>知識はそこに存在するだけ」この何でもない教訓にストーリーが転がされていく筆致がコノミ。

「>そのかわり、何があったのかはきっちり聞くからねー?」 緊張をほぐすティタニアの登場で、アウトローたちの一行に不思議な夏休み感が生まれる。正規の仕事じゃないオフェーリア、儲けは脇に置いてと成り行きを見守る構えの博士、初めて保護下から飛び出したジャラン、機械オタク同士ハンググライダーで意気投合して、二台のタンデムバイクで出発すると、これはもう夏休みの輝き。この幸福感はどうしたことだ。軽度汚染地帯だというのに、フリーウェイをすっ飛ばす爽快感。追っ手が迫ってきても、どうしようもなくすがすがしい。「>気づかれたと判ったらしい、空気抵抗の大きいコートを脱ぎ捨てた。衣服がバサリと後ろに飛ばされ、ドォルの赤い装甲が露になる。」 なんかなんか、敵なのにすごくいいんだ。宮崎アニメの戦闘シーンみたい。襲い来る敵兵にも、彼らなりの理屈があり、哲学があって動いてる。

風が吹き、走れサイボーグ。ええなあ。体が先に動いてから、哲学が追いつく。テクノロイの業。でも「>ここよりは、どこだってマシです」と笑ったジャランの望みを理解してもいたからこそ、彼のために飛べたんだろう。別の世界を「見せてやりたい」と「見たい」が博士の中で限りなく同義。輝く永遠の夏休み、一瞬だけ彼らは同化した。

夏休みだから。少年を迎え抱く風景は、緑の草地に決まってる。小鳥さえずる歓喜の朝に決まってる。少年はみずみずしいまま、生き延びてしまったおじさんが、今となっては届かない大人のマナーを伝授して終幕。泣くなちきしょう。ええなあ。

元の世界に帰ったら、ドォルたちともどもお尋ね者になってそうだ。次元移行が双方向で、起動装置ごと移動するのはデフォルトだろうか。戦時に使われたクラッカーを、あっち世界の誰かが拾って使ったら…遺跡に埋まるほどぱったり使われなくなったのはそれ絡み?妄想はつきない。次元を超えて邪魔物を放り出すDクラッカー、はた迷惑いや次元迷惑な装置だな。と博士なら言いそう。

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