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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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感想スタンスは、「私の目にこのお話がどう映ったか」のみをひたすらお届けする、というものです。読み手本位です。辛口まじりですが、「勝手なこと言ってるなあ」で片付けていただけるよう、ちっちゃい自分を腹の底までさらして参ります。ネタバレあり、引き込まれた作品ほどいじり回したいので、何につけしつこいです。

D01  帰らずの坂
安倍晴明もの。官位名付きの読みに送り仮名のように「の」を入れるかな?フルネーム+官位の例がぱっと出ないけど、深草少将に「の」が入るとやっぱり据わりが悪い…。

「>ああ安倍晴明殿のことか。(中略)馬鹿らしくてやってられんのじゃないか」 「>けっきょく傑物も、出世してしまえばただの俗物よ。(中略)ことごとく依頼を断っているのだろうよ」この一連の長い会話は平安絵巻風情としてちっともおかしくないのだけれど、前後の地の文がそれぞれ、「>惟尹がため息をもらすと、心中を察したかのように宗敬が言った。」 「>ここまで話した惟尹はやりきれなくなり、地面の小石を蹴った。」と、あまりに近代小説らしい客観三人称。「心中を察したかのように」「やりきれなくなり」というベタな心理の提示が、長いセリフ割りの呼吸をうそ臭くしてしまってる。「二人揃って世情をクサし、さて」とかトボけてくれると長広舌も楽しいはず。

「>それだけ晴明の術が長けていたのである。」この「長けている」は、「ある方面にすぐれている・熟達している(大辞泉)」であって「競い合った結果、優劣において勝った」ではないと思う。あと言い回しとして「術が」ではなく「清明が、術に長けていた」というほうがしっくりくる。ではこの文脈に沿ってどう言い替えるべきか。「長ける」という単語を諦めると話が早い。

「>そして大路のすみで惟尹は従兄に耳打ちされる。/闇の陰陽師の存在を。」は印象的な段落シメ。陰陽師モノはこうでなくっちゃ。

「>わが陰陽師の仕事」「>あっけないほどに鬼を調伏した」など、ところどころ語彙の時代加工が追いついていない感じ。「>おかしい。手ごたえがあったはずだが。まるで煙に矢を射ったようだ。まさかこれも呪術か。」これは改行するとかえって間延びして聞こえる気がする。

「>おれが成敗にきたのは、鬼だ。従兄でも童子でもない」に好感。呪法合戦を目の当たりにしながら自分の足場はしっかりしている惟尹と、フリーダムなじいさんとの会話をもう少し聞いていたい気になったところで、式神による水入り。

鬼の正体は子供のイタズラのような仕掛けで、膨らんだ尾ひれは噂だのみ、という解決でがっかり。夜なら闇にまぎれてごまかせそうだけど、本当に鬼は出るという前提のこの時代、夜歩いてくれる旅人はなさそうだ。昼間だけとはいえ、噂が広まるまで来る人来る人に漏れなくイタズラを仕掛けるというのはかなり疲れる仕事だな。売名目的の狂言怪異で最初は証人として陰陽師の同行を求めていたというが、本当に本物の陰陽師に吊り人形を見せて見破られないと思っていたのだろうか。鬼の実在も陰陽術の実効も信じているはずの平安人の心情としては、破綻がある気がする。

かつてのライバルの消息を気にする清明で楽しく終幕。「悪漢」よりもうちょっと愛着ありげな呼び方があれば。

D02  サヌザと共に ~草原の道~ 注
道に迷った旅人が、いつの間にか足を踏み入れていた夢幻能的幽玄世界。一夜の宿を提供してくれた女は死霊で、悲しい身の上が語られ、楽の音によって残した思いをほぐしてやると、「ありがとう」と言って魂魄は消える。夢から覚めると旅人の手の中には邂逅の証が…。びゅ~んと読んで、賑わう市の口上が始まり、お話はまだ終わらないんだ♪と大満足、砂鳥の首をぽんぽんしながら聞きたい。ミラバケッソ!それはアルパカ。

物売りモードの彼も大変コノミ。きっと生来のおしゃべりで、話し相手は砂鳥しかいない旅の道中、色んな物語を妄想して楽しんでいるんだろうな。人里に来て一気に爆発したっぽいおしゃべりテンションは、市に集まった人たちにとっても嬉しい非日常だろうと思う。オマケの物語目当てに私も何か買いたい。調子がいい日は上手な殺し文句もついてくるぞ。同じネタは二度使わないとか、意味のない確固たるポリシーがありそうだ。手持ちの額に釣り合ったものを見繕ってちょうだいな。

ちっちゃなラサは、怪鳥にまたがって旅する楽師の姿と、舞姫が語った古都の宴と、母親が語るイケメン物売りの話、何重ものお話を聞きながら成長するんだろう。いくつもの逸話をまとった螺鈿の髪挿しは大切に伝えられ、物語のバームクーヘンを太らせながら手から手へ…たとえベタご容赦。

文章の緩急が好き。旅道中編の幕開け、可愛い砂鳥の特性が講談みたいな息の長い間合いで語られて、「>が、夜目が利かないのだけは、鳥であるからにはしかたがない。」でチョンと区切る。

「>なんと都合の良いことに、それは井戸だった。」作り話であることのたくらみが薬味のように。ピリリ。

「>間近に見下ろすと、老婆の被いている布は、古びて色褪せ擦り切れてはいるが良く見ればずっしりと凝った織り目の、金糸銀糸を精緻に織り込んだ豪奢な衣の成れの果てであるらしいと知れた。」ここは「良く見れば」という文節が強く響いて支配すると思うので、文末は「成れの果てであるらしい。」で終わってみてもいいかも。

「>長い首を一飲みごとに反らしては」ミラバケッソ!(砂鳥かわいい!という意味の感嘆詞)

「>遠い昔、この道の向こうから、騎馬の軍勢がやってきたのだよ――」どどどど…。荒野、古道、遺跡、これまでに出たイメージが総動員される。最後の宴の篝火と野営の焚火、「>いつしか、金砂のように闇を彩る火の粉に混ざって、白い花びらが降ってい」て、もうこれはあの世の光景、忘れじの散華、気が遠くなる…そっと握らされる髪挿しの感触は、映画「羅生門」でそっと抜き取られる短刀のような…夢幻のうちにも微かな現実の手がかり。しゅてき。

夢覚めて、「>あたりは朝で、」「>そこにはもう、古井戸の影も形も見えなかったのだった――。」までが一文ひとつづきである間に、砂鳥の大きな歩幅がたったと駆けて、幻の一夜はすでにあとかたもなし。ミラバケッソ…(首に抱きつきました)

D03  ナキオニ
現実と不思議、自己と他者、具象と心象のあいだがついっと地続きになる。見ていたものが丸ごと心象だったような、世界全体が自分だったような。いや世界の意味がそのまま自分の生きる意味でよかったこれまでを乱暴に否定され、ますます物事の意味づけにとらわれてしまったような。すごく範囲が広すぎて「ここ」「ここがおかしいねん」と指させないでいるときの違和感が、肉親の死という大きなものの受け入れがたさとキレイに重なっていく。謎解きのようなものが提示されたあと、もう一度思い返して味わえる作品。実際に読み返さなくても、印象が整理されているので反芻した気分になっている。雨の「>生きている匂い」すら脅威だったんだなあとか。何に泣くかの基準が少しずつ動いていくのを、じっと観察していた主人公。そのヒトゴト距離感を思い返し、終幕でまた切ない。

「>きっと、そんなこと言うなんて酷い奴だといって泣くのだろう。」気になる。自分ならどんな段落シメにするだろうと思って気になる。鬼との対面がひたひたと近づく中、鬼の正体から気をそらすようなコミカルコメントがいいだろうか、日常が和解したがっているという含みが直球で見えてもいいかも、など、私のあざとい計算をさらりと受け流して、鬼は「澄ました様子で面をずらす」。騒ぎ立てない書きっぷりにいちいち好感。

「>泣き腫らして左右非対称になった私の顔がある。」この文末が「あった。」だったらどうだろう。現在形でスッと通り過ぎず「ほらヤマ場だよ」という間合いになって…それはそれで押し付けがましいだろうか。自分のあざとさについてばかり考える。

重箱というより好みの発表ですが、冒頭の「>夜の道は昼間よりも草の香が強く感じる。」は「草の香を」のほうが好き。「草の香が」なら「強く匂う」かな。一文おいて「生きている匂い」があるので単語のダブりを回避するか、あえてなぞるか…他人の土俵で遊ぶのは楽しい。

D04  黄昏ストーキング!
ひとりよがりの独白が、中盤でぐるんとひっくり返されて安堵。「オカンとまーくん」…「ごっつええ感じ」世代?「ファジー」等昭和の香りはブラフか。急展開ポイント以外の部分では、ところどころ推敲不足か勢い頼みの感あり。「>忘れる前に調べようと机に向かおうと」は妙なリズム。「>考える由もない。」は「考えるまでもない」の使い間違い?「>托卵反対。」は好きだけど「>生んでいきなり」は動詞の方向がズレている。「>摂取するには優れたものと早変わりする」「>いつもと違う自分が見られたということからか」など、日本語が何だか未整理。「>新しいお父さん」だけで「>円満家庭」に短絡しようとする展開は読み手を取り残すほったらかし感。

冒頭のコミュニケーション不全・不要論を引っぱって終わってもよかった。ホラな、プリンひとつについてすら自分の気持ちが伝わってない!とふてくされさせ、強引にほのぼのと終われたかも。

D05  払暁 注
人格ありげな地の文に違和感。「>男の面に一切感情は現れぬのだ。」「>であるからこそ、青年はよほど辛かったのであろう。」「>まずこの男の身元を明らかにせねばならない。」など、現代人としての筆者の視線が小説世界に入り混じる司馬遼太郎的作風と言ってみるにしても、「>主体性を持ち」など言葉つきがこなれいていない感じ。ツカミの戦乱シーンが終わると一本調子のあらすじ口調が平気で続き、読み手を楽しませようという意識が感じられない。導入部にたっぷり使った間合いを少し第二段に回して、手短な転換か印象的なセリフを挟んでほしい。

ページのほとんどを割いて、王ばかりが責められる。「こうあるべき」という理想論がくだくだしい。「>重責を前にした苦しみ」というとちょっと大げさにかばった感じで、前の文節で「>王の心労を和らげようと言葉を尽くし」ている江朴青の目線を引きずってしまってる。「>気弱な人物は、一度乱れれば己を正す事が出来ない。」~「>その道の先になにが在るかを考えもせず、そのまま進んで行く。」は、プロットというかキャラ設定の叩き台でしかないと思う。そこから物語を作ってほしい。

こんなに操りやすい王なのに、誰も宮廷を牛耳ったり権力を握ったりしない。苦言を言うと飛ばされるらしいが、腹芸のひとつもできない不器用者揃いなのか。王におもねる者はイコール奸臣、という直情的な書きぶりにどうも馴染めない。

「>他人が肩代わりしていた現実」などが曖昧で、庚未の統治の実体がつかみづらい。宮廷が無能な奸臣揃いだったとして、失政であったにしても具体的に何をしたのか。窮乏に耐えかねた農民の蜂起を、武力で抑えつけたりしてそうだ。鎮圧には江朴青もひと役買ったかもしれない。滅ぼされても仕方ないとされている暗愚な王の、具体的な失策の例がひとつもない。

「>政は乱れ、官の心も民の心も王から離れた。」と簡単に済ましていいものか。「離れた」と言っても宮廷から人がいなくなったという意味ではないはず。まだ数多かったという「>忠義な臣」たちと「奸臣」のあいだの摩擦は、何より宮廷闘争として騒ぎを起こしそうなものだ。引退した老臣たちには世襲の跡継ぎがいる(科挙制度とかはなさそう。江朴青の息子も宮廷に出入りしていた。)はずで、蜂起や叛乱など、国土は端から乱れるよりまず中枢のゴタゴタがあるべきだ。東の地での叛乱のタイミングは戦略としてそこにつけこんだものであるべきだ。「>義のある篤実な人物」東齋候は中央とのしがらみ一切ありませんという顔で現れるが、同時代人への政治的プロパガンダでそう語られることはあっても、物語の読み手はそれじゃ納得できない。

「>その胸中には、余人には計り知れない思いがあった。」とわざわざ言ってほしくない。「>無理に言葉で現せば、」という切り口は面白いので、「>死を前にして満足とは、まったくおかしな事」だという思いを、キャラの肉声として読み手に伝えるだけでよくないか。人物の心情を紹介するためにいちいち筆者が出張ってくる。物語にとって少し邪魔。「>漬け込み」は誤変換かな。

「>ここで東齋候が江朴青を討てば、逆臣を誅した人物として名が残る。」でようやく硬直が解け、叙述が自由になったように見えた。すべてはここに至るための長い前フリだったのだろうと思う。

「>幽閉の憂き目に遭う事は火を見るより明らか」でまたちょっとギクシャクがぶり返す。殺すしかなかった、と江朴青を弁護するために慌てて補強しているように見える。

「>江朴青は言葉に出来ぬ感慨に目を閉ざした。」いや結構いっぱい喋ってくれた。ドラマのシメとして、「これ以上何も言うことはない」という程度の意味だと思う。

D06  だから私は解放を願う。
立ち聞きして、オンナノコ情報網から噂話を集めただけの思い込みから始まれば、そりゃ全く別の事情にぶつかるだろう。えらく不健康なプレイに淫している老けた高校生カップルを見て何を感じればいいのか、もひとつ分からない。

一大決心してぶつかり、相手の反応も真剣で真面目な言い合いになっているときに、人は「へ?」と言うだろうか。

そして結局大詰めの事情が分からない。「>偶然、に?」これだけで何かが暴露されたらしいのだけど全くハテナ。「>そっか」と納得しているのは主人公だけのような。いや、ここは主人公にだけピコンとひらめく伏線がつながった、というタイミングのはずなのよ。あれだけ立ち聞きしている彼女だから、うわべの付き合いだけの周囲の人は知らない何かを目撃しているはず。そのために前段の観察はあったはず。でも見る限り「主人公だけが知りえた秘密のキーワード」なんてなかった。

「>冷たいふりをしながら、けして嘘をつかなかった」というのは、どの時点のどの行動について?私には思い当たらなかった。奴隷男の方は書き込みも足りず、ただの笑顔モンスターにしか見えないので、よくよく考えてみると、「いばらの道」や「優しい」は、火傷の彼女の方にかかるのか…。「>自分が思うとおりの道を、思いきり」走っている「あの人」と、「>冷たいふりをしながら、けして嘘をつかなかったあの人」は、こんなに近接して使われる同じ単語なのにそれぞれ別人を指していた。とってもとっても舌足らずですよ!と叫んで終わる。奴隷男が嫉妬のあまり放○した、とかにした方がどんでん返しであることが分かりやすいかも。(犯罪美化の年齢制限つくか)

D07  坂道の効果に関する最新知見 ~女性研究者を対象として~
冒頭「>普段とそう変わらぬ彼女の姿のように感じる。」の段階で彼女の異変を見てとれていなきゃおかしいと思う。「>幼なじみに対する挨拶にしてはあまりにひどい。扱いの悪さを抗議しようかと顔をしかめたおれは、ベルルックの姿を見て出かかった言葉を飲み込んだ。」と今さら言うのがモタモタして聞こえる。後になって「>だって見るからに辛そう」と言うのにオープニングの挨拶は「>あいかわらずだね」。語り口に首尾一貫したものがなく、オンナの後をフワフワと追うだけの一人称にはあまり魅力を感じない。「>我が所」に違和感。

「>今度は、もう少し早く気付いてよ」と急に会話が再開するが、直前のやり取りが印象に残っていない。「気付く」の意味に気付くのにしばらーくかかった。

スロープという概念が生まれない都市工学って想像できなかった。自然の景観が平地オンリーでも、高層ビルを建てれば高さも出れば傾斜もあるはず。四角いヨウカンのような構造物しか作らない文明、というものについてもっと知りたい。重力制御のテクノロジーがハンパなく発達して、垂直上下の移動は牽引ビームでしゅっと済むようになってる、とか。旧式だという「おれ」の研究棟に比べて豪華らしい彼女の周囲は未来成分の見せ場なのだけど、「>音もなく壁に収納されていく」が単なる自動ドアのようにも見える。もっと突飛なテクノロジー披露があれば。

一人称として「おれ」の語り口に魅力を感じていないだけに、「彼女は鈍感」という前提についていきにくい。ソレもしかしたら君の思い込みかもよ、と常に半身。

「>吐き捨てるように、ベルルックは言った。おれは、穏やかならぬ発言を慌てて返す。」この一文は必要だろうか?「吐き捨てるように」「穏やかならぬ」はセリフから感じ取れるし、主人公が慌てたかどうかがそんなに重要だと思えない。他にも、セリフが続きすぎたのでワンクッション、という間合いで挟まる地の文に描写のダブりがある気がした。

アスファルトとはまた限定的なとこへ狙いを定めたもんだ。地球人のファッションサンプルを抽出するのに、ブルージーンズを選択するようなものじゃないかな。坂道調査にウロウロする未来人の姿はユーモラス。タモリ倶楽部のロケに見切れてたりして。(よく道がらみの特集やってますよね)

人物の容貌が断片的にしか描写されないので、もしかしたら人類とは違った形状の生物で、「>走ったとき足が押し返される」といっても「走る」の意味が違うとか、世界観がタテヨコしかないのはそのせいかなとか、あれこれ夢広がったけど違った。

「>これほど精密な復元」と判断する根拠を彼女は持たないはず。見たことないんだし。

「走って来い」「できない」というやり取りが、段落替えまで挟んでしばらく続く。架空のスポーツを適当にでっちあげ、まさに今盛り上がってる!ここで反則攻撃!ああー必殺技決まった!というフリだけしてみせるコント、みたいなのを思った。「>力強さがにじむ鋭い視線が、おれを真っ直ぐに捉えてい」るのに、「>おれと目が合った瞬間」があるのはおかしい。

「>今度は受け止める準備、万端にしとくから」は、あまり満を持しての殺し文句と思えない。好きな女が転んでズタボロのときに口説き計画を練ってる身勝手さの方が気になる。坂道に引っ掛けた言いなしもカユイところに手が届かない感じ。「>おれと彼女の間にある坂」を「>二人で駆け抜け」るために登ってしまったら、ついさっき「受け止める」と言った約束が早くも果たされないけどいいのか。

D08  御堂関白の御犬を可愛がる事
主語の少ない地の文と、迷い込んだ男と、彼の見聞きする情景が、モヤモヤと霧の中にある。「>だからといって、なぜ我が屋敷に」を誰が言ったのかしばらく分からないので、何かしゃべったとは思えない清明の「>穏やかな言い回しで」という形容が宙ぶらりんになる。「>主に言われた通り、屋敷の護りを怠りなどしてはいませぬ」はモヤモヤする日本語。主は「護りを怠るな」と言ったのか、「怠っていないようだな、いい子だ」と言ったのか。以降の文脈で推測はできるけども。何より「主に言われた」が目下(めした)の者の言葉として不自然。道長のこともときどき「彼」と呼ぶ地の文に「>御仁」は合わないと思う。

人とは違う栄耀栄華には人とは違う後ろ盾があった、という構造。ほほう清明。ほほう道長。だけでも楽しめはするけど、もちょっと何かほしい。そもそも陰陽道について何の知識もなかった凡人が、「>稀代の陰陽師」が式とミーティングしてる場にフラフラと迷い込めた。このことの特別さについて何も触れないのは怠慢では。ツボ突くいわくをでっちあげ放題、清明ものの見せ場だと思う。「>保憲様」の肝煎りだから?ご招待ルートがつながってた?感想書きのための読み返しでうっすら思い当たるのは、あて先間違いだった落雷の縁とか?犬は自分にとって命の恩人だ、と言ったときにその話も絡めてあるとキレイかも。「>今際の際の約束を違えんがため」に何か仕掛けがあったのかな。詳しくないしググってもいないので分からず。「白い和犬」は個人的にどぅわい好き。

「>解っている。お主が来るまで手は出さぬ」「>楽しいか? 晴明」「>私は、楽しいぞ」が雰囲気たっぷりなのはすごく伝わる。小説として膨らましてあったらもっとよかった。

D09  道案内
ハッピーエンドなんだけど。だけど。願いがすべて意味のある形を取り、届くべき場所へ届く、という優しいルールは、現実の世界でこそ大切にしたい。フィクションによってこういうものを補ってやらなきゃならないほど世界は壊れていないのだと、思っていたいじゃない。

D10  その道の先にある
うずくまってる人を抱き上げるには、ちょっと腰を浮かしてもらうなり膝裏に手を入れさせてもらうなり、相手の協力が必要だと思うので、抱き上げられてから「>突然のことに驚」く、とはなりにくいと思う。

自己紹介から病院でのお礼はセリフとして一連なので、「>自分とは畑違いの科の教員が何の用だと考えていたところに、まったく別方向から話が飛んできて凪埜は意表をつかれる。」がもたついている。「意表をつかれる」というと瞬間の動きなのに。建築科が凪埜と縁遠いことはあとから説明してもいい。

うわごとの予言を「面白そうだ」で受け入れるのはいいけど、うわごとの内容が向けられていたのが確かに凪埜だと、凪埜も久我父も頭から疑わずにいるのはなぜだろう。本当に混乱して誰かの幻影に向かって言ったのかもしれないのに。

「>微妙に疑問になる」は女子高生なのでおかしくないけど、その父親が「>微妙に複雑な気持ち」と言うのはちょっと…。若者コトバがうつっちゃったお父さん、というキャラでもないし。

女子高生と叔父さんコンビの違法捜査という楽しいシーンなのに、「>細くあけられたドア」「>閉められようとしたドア」など、日本語が楽しくない。「>警察の方から来ました」でもっとププッと笑いたい。

段落おわり以外すべての文末を現在形で押すのは個性と言ってもいいのかもしれないけど、「>ぐったりと倒れているこどもを見つける。」ここだけは「こどもがいた」でないと落ち着かない気がする。にしてもひき逃げ犯はこどもを連れてく必要があったのか。ベビーカーに乗った子が車種やナンバーを言ったりするとは思えない。

久我母の予言をうわごとだと思っていた凪埜は、謎の言葉について特に誰にもしゃべっていないということだよね。奥さんが道の先について決定的な何かを言ったと、久我父はどうやって知ったのだろう。亡くなるまでにしばらくあったようなので、奥さん本人が伝えることはできそうだ。なら予言の内容もついでに教えてもらえばいいのに。ダンナの次の嫁に関ることだから教えなかった?じゃあどうして娘の相手には簡単にゴールを教えてくれるんだろう。母親と同じ力を持っているとされる理世が、凪埜との運命を見ている気配がないのはなぜだろう。クラスメイトの生徒会が長引きそうなことも予言したらいいのにと思うのは意地悪だろうか。

D11  夏の夕凪、丘の上に寝転びて星を待つこと
「>小さな集落のような町」って何のたとえだろうか。田舎の上映会で、フィルム買わなくても!借りたりできないのかな。うちも田舎だけど、上映会のたびにフィルム買ってたとは思えない。

あーこれこれ。蠍を恐れて夏のあいだ地平線に隠れているオリオン。これを思い出したかった。Cブロック06参照^^

動作の要素や人物の形容を一文の中に詰め込みすぎていると思う。「>田畑を一直線に突き抜ける農道をひぐらしの声を聞きながら歩いていると」「>僕の背から期待に満ちた声を発した風見を」「>栄子より大きなおにやんまを結んだ糸を握る少女に」「>背中から風見がしおからとんぼをわざとらしく振り回しながら無邪気に尋ね」「>釘を刺されてふてくされる栄子たちの頭上」など、意味が分からないことはないのだけど、暗号を解くような作業になって、情景を楽しんだりドラマの呼吸を感じたりできない。セリフとの噛み合わせもズレがち。「>拳を握って小さな声で思いつめた叫びを吐き出した。」など緊迫シーンも間延びする。

結晶が四方を取り巻く洞窟ってすごい。話に聞いただけで辿り着ける場所のようだし、町の名所になっていそうだけど。「>天上天下」は「空間のぐるりを埋め尽くす」という描写に使うには大きすぎると思う。

いちどきに色んなことが解決し、色んなことが揺さぶられたのに、主人公はやけに落ち着いて恋の予感を育てている。心中まで考えたという告白があり、大好きだった先生の想像を超える一面を聞かされてすぐ、「>許されたかったからじゃないかな」なんて理性的な事を言えるものだろうか。

D12  ハイカラ娘と銀座百鬼夜行
単に言い方の問題という重箱。百鬼夜行は個体の妖怪のように「出た」りするものではなく、遭遇したり、目撃したりするものだと思う。百鬼夜行が「あった」とか。

「必要があって手をつなぐんだよね」とか、「狐がいてくれて助かった」とかを言うためには、「百鬼夜行を見ると死ぬ」に実効ありということになってないといけない。じゃあお守りのなかった文士崩れたちはみんな死んじゃうのかな。逃げれば何とかなるのかな。

真っ直ぐ終わるお話だけど、「>女学生たちは物語が好きだし、女の子は秘密が好きなものだ」など、お嬢さまの生態は楽しい。

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