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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージは記事付属コメントかページ最下段のフォームどちらでもどうぞ
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感想スタンスは、「私の目にこのお話がどう映ったか」のみをひたすらお届けする、というものです。読み手本位です。辛口まじりですが、「勝手なこと言ってるなあ」で片付けていただけるよう、ちっちゃい自分を腹の底までさらして参ります。ネタバレあり、引き込まれた作品ほどいじり回したいので、何につけしつこいです。

C01  迷い人の道標
真っ直ぐ、真っ白、真っ黒、はっきり、など、二項並び立たないはずの事象がズラズラ並ぶ導入部。真っ黒なのにはっきり見え、真っ白なのに真っ黒で、先が見えないのに真っ直ぐだ。

人物が登場すると動作描写に次ぐ動作描写。目線ひとつ、呼吸ひとつまで追う叙述というのはもっと決定的な場面でだけ使うべきだと思う。頭からずっとやられると疲れる。

転生したのに顔かたちは変わらず、髪と目の色だけチェンジ、というのはゲームのキャラ替えみたいであまり趣味じゃなかった。

「>彼女は二つの世界と干渉し、二つの世界は重なった。」そのイメージは長いことかけて読み手の中に作られた。雰囲気をなぞってくれるのは親切だが、そこからポンとどこかへ弾む一手を用意するのが、書き手の役割だと思う。

C02  峠越え
現代ちっくな文体に肩肘張った語彙が収まり悪く、リズムの細切れな地の文に面白味はないものの、小国なりの戦争観が魅力的。敢えて敵将を討たせなかった軍師の深謀遠慮が明かされ、交渉の場でも胸をすく賢者っぷり。捕虜の不良在庫を片付け、望みの賠償を引き出して…そこからがちょっとグラついてくる。

「>そう、すぐに戦場に出れるような服装ではないのだ。」「>悲惨な殺され方をする可能性が十分にある。」「>しかし、これは危険性を伴う。」「>帝國兵が餓えるのが確実だ。」「>山間の地でハシュドゥール将軍がストンデンに勝てる保障がない。」「>それこそ帝國はその全ての威信をかけて、ガーゴルに攻め込んでくる。」など、性急に選択肢をつぶす断定口調が続き、書き手の焦りを感じる。とうとう「帝国は書面契約を反故にしない」と言ってしまった。だったら捕虜と引き換えにいただく戦利品は小麦云々でなく、国境の不可侵を約束した書面に決まってる。軍師の老獪キャラが台無しだ。

「>つまり、断りようがないのだ。」でシメてあるが、すでに帝国は敗戦側として交渉のテーブルにいる。下級兵士の即時解放は軍師の「お早くお帰りください」というメッセージで、双方「これ以上の山岳戦はヤだ」という判断において合意しているはず。わざわざおさらいして補強する必要を感じないのだけどどうだろう。

ところで「帝国」と言うからには、兵士は何を置いても安全を優先するべき自国民ばかりとは限らない。「英国軍」と言ってもイングランド人もインド人もいた。賃金先払いの傭兵もいるだろうし、属州からの徴兵もあるだろう。ローマ軍が属州兵捕虜の飢餓を心配して不利な条約に屈したりするだろうか。ハシュドゥールがのらりくらりと国境に居座り、ガーゴルの包囲を続けながら援軍を待つ可能性は、策として本当に消えたのだろうか。

そういえばハシュドゥールもすでに敗軍の将だ。兄王の信頼どころか民衆の人気も、まさに今失っているかもしれない。失点回復とばかり、誇りも何もかなぐり捨てて向かってくるかもしれない。軍師が頼りにしている情勢のひとつひとつは、まだちょっとずつ流動的なのだ。地の文が一点だけを指さし、大声になればなるほど、読み手は「そうかな」と思う。もう少しテンションを抑えた方が、角度や時機によって見え方の変わるパワーバランスの妙が際立ち、そこをするりと泳ぎ渡る知略に、読み手が自分のタイミングで喝采できるのだと思う。

「戦勝側なのに謝罪」というのが効いている。が、即位したばかりの新王が「気に入らない」を動機に動くためには、それを後押しする別の勢力が必要だと思う。軍師の投獄は「不要になった猟犬」「リグレス勘違い」で処理するよりも、ストンデンに取って代わりたい誰かがいる、という方が展開として馴染みがいい。少なくないはずのストンデン派が軍師救出に動き出すだろう。ベルクラムがその筆頭に立つべきだ。あら、二十枚じゃ収まらない。

「>脱走させる余裕があることを見せつけるため、」は言い回しがゴタゴタしていて少し邪魔。なくていい説明だと思う。当局があからさまに脱走を勧めていることはすでに述べられた。状況にいちいち解釈が乗っかっているとクドく感じる。

冒頭の山中行は復讐を誓っての脱出だったと分かる幕切れ。獣道を駆ける一歩一歩を支えてくれた師の教えのあれこれが空しく残響する。ベルクラムに、愛国や和平カンケーねえと切り捨てさせるのは感心しない。戦争によって何を勝ち取るかが重要だと教えたはずのストンデンは、結局ただの戦略計算マシーンを作ったってことになるもの。軍師的思考がいくらかっこよくても感心しない。

「>地図を回収したリグレスを安心させるため。ベルクラムが攻め込むまで、道を変えさせ(な)いため。」とあるが、「地図を落としてったぞ。道はこのままで安泰だ」となるだろうか。敵の詰めの甘さを自分に都合よく考えちゃならんと、お師匠なら言うのじゃないかしら。

C03  来客御礼
異世界に召喚されて、というオープニング。たたみかける独白は調子がいいが、時々つまづく。「>そうでなければ、信じられるはずもない。」はまだ一生懸命信じようとしている段階なので、「~はずもない」という否定のニュアンスは使わない方が、次段でばっさり否定できる気がする。

ざざっと並べた現実要素、「>品川さんの念仏授業」「>ネコ型ロボットのアニメ」「>見崎に借りてた漫画」「>ガム」などが現実に戻ったときにもう一度活かしてあったら、お話として印象が深まるように思う。家外安全のお守りも特に幕切れに関って来ず、寂しい。

ご迷惑召喚モノの定石どおり「厄介ばらいだ、せいせいした」とプリプリし続ける客くんだけど、危険はなさそうな召喚だと納得してもいることだし、思春期男子としては可愛いチャイナ娘とのご縁をガツガツと繋ぐ欲望にかられてほしい。ロッカーに入る芸を磨いたり。

C04  選ぶべき道
三人称描写の足場が時々分からなくなって困る。「>年齢ははっきりとは分からないものの、」は何歳であると言わないことにする選択は構わないが、「よほど老けてるor幼い見た目ゆえ作中世界の人は皆彼の年齢をはかりかねる」というのでない限り、人格を持たない地の文が「分からない」と言うのはおかしい気がする。

寂しい道には盗人もいない、という理屈が楽しい。ふわふわと穏やかな問答なのに文体に力みを感じるのは、「>一切ない」「>到底見えない」「>何一つ情報など」あたりの強調のせいかも。まだ舞台がそれほどあったまってないのに言葉だけ先走ると本当に盛り上がるべきシーンで息切れしてしまう。「>半人半妖精(ハーフエルフ)は、性質よりも性格が悪い。」でストンとシメる快感のために、思い切って枝葉を刈り込んでみては。

セリフや動作にそれぞれの個性がつけてあるのに、イディスとフィーの区別がつけにくい。地の文がフィーのことすら「分からない」と突き放した前段と違って、二段目ではほぼフィー主観が語る。謎の手がかりをすべて持っているイディスがちょっとずつ真相を開陳するのだから、フィー主観はもっと驚いて揺れると思うのに、いつのまにか陰謀の見当をつけ、いつのまにか決断していた。ヤマ場が分かりにくい。

儀式と地震の関係が分かりにくかった。地震でメアリ姉さんの街が滅ぶんだと思っていたので、ウロウロしてばかりで避難を手伝わないのが不思議だった。イディスが「>意味無いのにね。」と言うと地震が起きるのは止められないのにね、という意味にも取れる。言葉足らずかも。怪しげな儀式と同じく、地震が来るぞという予知も、力にこだわる領主の当てにならない脅しだとはっきり書いた方がいい。

領主は、現地住民の親族と分かってる人間に重要文書を託すだろうか?それを奪いに来る追っ手というと、儀式を止めたがってる善意の勢力では?殺しちゃったよね。破壊しようとしている街に届けられる文書は、どういう意味合いで誰あて?「君んちを破壊しますよ」というお知らせが来たらどういう手続きが始まるんだろう。それより文書の性格がある程度外部に漏れてしまってる。道草してる間に反対派も動き出していそうだ。最強のハーフエルフの使いどころがはっきりしないまま終わる。

C05  sai-ai
大正ロマンフェイクは置いて。こっちがシモンシモン、こっちがヨハンヨハン、と唱えながら読んだ。「>ヨハンの目が車窓からシモンへと移る。琥珀の中に自分を見つけて」と、ちゃんと名前が振ってあるのに情景がスッと浮かんで来ない。導入部なのに描写がクローズアップすぎるからだろうか。

車内マイクでアナウンス、というのは唐突に近代的で、シベリア鉄道みたいな古めかしい舞台装置にそぐわない気がした。にしても旅情を楽しむ類の事件じゃなかった。動機が語られればスッキリするというものでもないけど、囮捜査という転換があった後は小説として一本道すぎて、読み手にとっては歩き通した余韻に乏しい。一件落着後に探偵役がいきさつを全部語るのはサスペンスの王道だけど、囮捜査の協力者に今さら説明することだろうかとも思う。

C06  ワン・ラスト・キス
導入部から前髪に「シャン」、引力のある擬音づかいなのに、髪色が最後まで判らないストーリー上、前髪はまだ見えていないはずなので惜しい。

少女の足でたどりつく距離に国境があるのに、近辺がさほど緊迫していないのが疑問。一方向から来る追っ手だけを撃退すればオッケーというのは脱出行モノの展開としてはのんきすぎる気がする。

とはいえタイトルからして物語の中心は青年と魂が通じ合った一瞬についてだ。少女はのんびり彼との思い出に浸っている。天体崇拝らしき宗教の堅苦しさがチラリと語られる。蠍は追われて逃げているのじゃなく、蠍を恐れて逃げる別の星座がいなかったっけか。

「自由になりたい」という少女の動機に具体的な切実さが欲しい。「あの人に命を賭けさせたと分かっています」と言うこととの釣り合いが取れないと思う。青年の方の動機にも「好意」「忠義」しか見えず物足りない。「死んだら許さない」と脅したり「あいつは死なないよ」と請合ったり、御者の言葉の足場が分からない。

髪がうち捨てられるラストの情景が印象的。いくら変装をこらしても、それらしき年恰好の少女というだけでしょっぴかれそうだ。宗教団体そのものが少し後ろ暗い性質を持っていて、おおっぴらな手配書を回せないだとか、ほんの少しの理屈の地固めで、詩情あふれる文体がもっと生きると思う。せっかくのキスシーンに「頭突き」はないけど。

C07  おばけの道案内
口語で綴られる日記風。「なの」という語尾が入り混じる必然が分からない。日付が「四年前」となるが、「こんなことがあったの」と語る主人公が「四年後に振り返っている手記のタイトル」としてそう書いたのか、筆者によるサブタイトルなのか、シナリオのシーンナンバーのようなものなのか、書かれている言葉の性質が分からないまま人が死んでしまい、取り残された。古地図も駆使する心霊インフォメ嬢は地域密着でほのぼの。

C08  変化妖怪花火道
妖怪たちは身近な存在として、人間界の財政難や不況やバブルにキッチリ振り回されている。ルポ口調の説明文が妖怪たちの接写に移り、同質のルポ口調で妖怪世界のあれこれが語られるかと思いきや、「いろんな形のがいる」「昔見た漁火」などさわりだけで姿を消した。

C09  この道の終わり 注
すべてお見通しということになっているキャラは物語になりにくい。私たちとは違う高い視座に身を置くはずのその人が、私たちと同じ罪悪感や小さい身勝手や生々しい恋情を持つとは想像しにくいからかも。特にこの主人公は大抵の千里眼キャラに封印されている「自分の命の危険」も予知している。命を救われ、自責の念にかられるばかりの主人公に、「百年経てば誰でも死ぬし」とかいう諦観があればスゴ味になったかも。

C10  ラブストーリー
はい、わんこでしたー。花嫁が登場し、読み手を結婚式シーンに集中させる大事なシーンだと思うので重箱ですが、「>バージンロードを歩いて行く。」は「来る」だと思う。

C11  ある冒険者夫婦の帰郷
はい、魔王でしたー。軽やかに始まる導入部。「>勝つのはどっちだ、世界の運命やいかに!? 的な戦いがあったなんて」「>本当に世界は大ピンチ」「お約束」「さくっと」など、人を食った語り口に比べて、新妻が涙ながらに語る打ち明け話にパンチがない。ありがちな気持ちのすれ違いでしかない話に「>この夫婦の経験値は、自分のそれを軽く越えている。」とまで感じ入る農夫の反応は、少しうわすべって見える。すべてはオチのためなので仕方ないっちゃ仕方ないけど。農夫のお決まりの訓示に、敵同士だった二人の正体が偶然重なるような言い回しがあったりすると、思い返してニヤニヤできると思う。

C12  八月の空蝉 注
どんでん返しがふたつ?みっつ?幕切れが軽やかで救い。思えば「不思議な居候キャラ」というのはこういういきさつで探偵のもとに転がり込んだりするのだろうか。時代背景がリアルな告白小説調から夢あるフィクションへ、ラスト数行での華麗なる転身。探偵助手志望の少年目線で「いつも先生のそばにいる秘書のミチコさんには戸籍がないらしい」とかモノローグする続編を妄想♪かか、勝手にすいやせん…

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