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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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またまた「870R」(サイトは18歳以上推奨)にてお祭に投稿しました。(HN:じゃいこ) テキスト作品です。こういうのを二次っていうんでしょうか♪お祭中の掲示板コメントをお題として拝借しました。


他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


HANA-MARU世界をお好きなかたと、無礼講のお祭テンションを共有できれば幸いです。お好きな世界を壊してしまったらごめんなさい!描写はわたし基準での全年齢向けです。

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「乾物屋の女将」


 むかしむかしあるところに、働き者の乾物屋の女将がおりました。
 先代亡きあとひとりで店を切り盛りしていた女将は、かつおだしパウダーの粒子よりも細かく身を粉にして働いたので、過労で倒れてしまいました。


 町医者が呼ばれましたが、病状は思わしくありません。
「ダメもとで蘭方医にでも頼むかのう」
「蘭方医?」
「こないだ碁会所で知り合うたんじゃが、長崎帰りのえろう博学な若者がおっての」
 吉澤というその蘭方医はすぐにやって来ました。吉澤は女将を見ると、脈も取らずにこう言いました。
「これはいけない。ランゲルハンス島がゲシュタルト崩壊している。平たく言うとローレンツ変換です。早急に山奥で湯治をなさい。私も同行して最新の科学治療にあたりましょう」
 長旅を勧められてめんどくせーと思った女将は、診察代だけ渡して吉澤には帰ってもらいました。

 あくる日、乾物屋の門口にひとりの虚無僧が立ちました。「ぴるー」とリボンの飛び出す尺八がうるさいので、女中が追い払いに行きますと、僧は編笠の奥からこう言いました。
「お女中さん、この家には病人がいるでしょう。拙僧は雪庵と申す旅の僧、特技は千里眼です。あー見える見える」
 口元にホクロのある女中はダルそうに答えました。
「うちの女将さんが寝込んでることくらい、町じゃ誰でも知ってるけど」
「そ、そうとも。だが病を治す方法を知るは拙僧のみ。日常からできるだけ遠い場所で静養なさい。そうだ拙僧行きつけの山寺がある。仕事も家庭も忘れてともに法悦の境地へ」
「だから遠出がムリだっての。それよりあなたのアゴのライン、ちょっと見覚えあるのよねえ」
 異常な記憶力を誇る女中が考え込んでいるスキに、虚無僧はダッシュで逃げました。

 そのまたあくる日。お使いに出た丁稚が、えらく興奮して戻って来ました。町でロシア正教の神父に声をかけられたというのです。
「付けヒゲかーってくらいモッサモサで怪しい人なんスけど、うちの店のことなら女中さんのホクロの位置まで何でも当てちゃうんスよ! すごかったっス~!」
 丁稚は皆に可愛がられてはいますが天然なので、ヨシザバロフと名乗るその神父が勧めたというメッカ巡礼祈願の旅は、「はいはい」って流されてしまいました。

「ここんとこおかしなことが続くわねえ」
 おネエ言葉で言ったのは、支邦人の番頭、劉です。
「女将を店から遠ざけようって意志を感じるわ」
 劉は用心棒の松永を呼びました。
「周辺で何か変わったことは?」
「そうだな」
 松永は無精ヒゲをボリボリかきながら帳面をめくりました。
「ここ数日で目についたのは、弁当の包みを持ったピンク頭と、傘さして迎えに来たピンク頭、それからお泊まりセット抱えたピンク頭……」
「それ全部アンタのオンナでしょ」
「だっ、そういうんじゃねえよ!!」
 キョドった用心棒が使いものにならないので、劉は臥せっている女将の寝室へ向かいました。
「込み入った陰謀かもしれないって気がするの。心当たりある?」
「知らん。それよりタバコ寄こせ」
 女将はここずっと眠りが浅く、不機嫌でした。
「もう女将ったら。男言葉はよしなさいっていつも言ってるでしょ。オンナは清楚が一番よ」
「るさい」
「起きてらっしゃるようですね」
 ふすまの外から声がかかり、料理番の工藤が入ってきました。盆に小鍋を載せています。
「卵粥にトリュフを刻んでみました。食べられそうですか?」
 女将は素直に半身を起こしましたが、フラついた拍子に小鉢を払い落としてしまいました。
「大変!ヤケドしなかった?」
「んー」
「だいぶ冷ましてありますから」
 工藤はてきぱきとこぼれた粥を片づけましたが、女将の寝間着がべっとりシミになってしまいました。
「いい絞り地なのよ、すぐ洗わなきゃ。ついでだから着替えなさいな」
 劉は手早く女将を着替えさせ、汚れた寝間着を持って出て行きました。
 工藤はあらためて粥を小鉢によそいました。
「はい、あーん」
 目の前に匙が突き出され、女将はむっつりと口を開けました。
「ぱく……」
「少しお酒も入れましたから、汗を出してくださいね」
「いっそ瓶で飲ませろ」
「いけません。だから越智先生の薬も効かないんですよ。はい、あーん」
 そこへ風が通り、灯明がゆらりとそよいだのを、工藤は見逃しませんでした。
「伏せてください」
 工藤は鉄鍋をつかみ、真上に投げつけました。天井板がパカーンと割れ、落ちてきた忍者は、くるりとトンボを切って着地しました。
「ああ驚いた! やりますねえ」
 忍者の吉澤は満面の笑みで立ち上がりました。工藤が女将をかばいながら身構えます。
「その黒装束、ご公儀の忍び衆か」
「嫌だなあ。僕は女将をつけ回すちょっぴりお茶目な美青年ですよ。ご禁制のハバネロパウダーのことなんて知りません」
 身をこわばらせた工藤の背後で、女将は布団をギリリと握りしめました。
「うちは真っ当なかつおだしパウダー以外扱わない」
 低く言った女将に、吉澤は上機嫌で目を細めました。
「知ってますよ。ハバネロパウダーの闇流通は、ある時を境にぱったりと途絶えてますからね。抜け荷を一手に仕切っていた組織内部の、クーデター的抗争が原因だって噂があるんですけど、それがこちらの先代さんの亡くなった時期と妙に一致してるってのが、まあ気になる人には気になるらしくて」
「何が言いたい」
「僕が言いたいこと? 死んだ人の悪口を言うもんじゃないってことかな」
 ペラペラとよくしゃべる吉澤は、工藤の間合いを計りかねて動けずにいるのでした。低く身構えた工藤は、手近にあるどんな物でも武器にしそうです。
「鰹節船が抜け荷に使われてることまでは調べがついたんですけどね、そこで抗争が起きた。組織に潜入して情報を流してた岡っ引と、連絡がつかなくなってしまったんです。潜入捜査を指揮してた与力がついでに不審死しちゃったもんで、その潜入岡っ引の存在は、謎のままなんですよ。名前も顔も分からない。片目のあたりに、目立つ刀傷があるとしかね……」
 工藤は傷のある片頬をぴくりとさせたようです。吉澤はチラと女将の表情を窺いました。
「ふーん、女将さんも動じてない。正体知っててそばに置いてるってわけですね。泣かせるなあ。もしかしてもう深い仲? 何回したの? 体位は? あっ町娘の太もも! ……陽動の隙がない人たちだなあ」
 吉澤は両足でにじりながら、忙しなく目で退路を探します。そこへ。
 ドゴーン、ガラガラー!
「ユキ、助けにきたヨー」
 轟音が響いた一瞬をついて、吉澤は工藤の間合いを振り切りました。障子を破って飛び出した吉澤を待っていたのは、金ピカの巨大ロボでした。
「エジプトのからくり秘法ネー」
「レオさん、ナイス陽動!」
 凹凸著しい女型のロボは、白壁をまたいで腰を振り、金粉をまき散らしながらポールダンスをしていましたが、ステップを誤って庭の池に片足がハマると、ガショーンと油圧が落ち、しゃがみこんでしまいました。
「あー! 機能停止してシマタ」
 浅黒い顔の女が壁を飛び越えて現れました。手に持ったコントローラーをカチャカチャさせています。
「レオさん、とりあえず逃げますよ!」
「大事なネフェルティティ置いていけないヨ! すぐに基盤を乾燥させればだいじょぶ。スイマセン、ドライヤー貸してクダサルカー」
「今さら迷子の外国人ぶっても! レオさん!」
「あれ、誰もいないヨ。勝手にオジャマー」
 クレオは寝室に上がりこみ、鏡台からドライヤーを探し出しました。引き出しには薬袋の束があります。
「ふーん、こちら病人ネ。処方から察するに、慢性痛と睡眠障害、でもこれは……?」
 廊下からバタバタと足音が聞こえ、クレオは素早く身をひるがえしました。
「一体何の騒ぎ! ものすごい音がしたと思ったらジンは女将抱えて逃げてくるし、そこらじゅう金粉は飛んでるし!」
 部屋に飛び込んだ劉は、庭を眺めて立ち尽くしました。
「何あれ。女が金色ロボットのくるぶしにドライヤーかけてる。あ、ロボ立った。そんでロボ歩いた歩いた」
 呆然と実況する劉に見送られ、ロボは去って行きました。
「なんなの……あら」
 庭木の枝に、紙が止めつけてあります。劉は穴だらけにされた庭を横切って行き、紙をはずしました。
「きったない字ねえ。何々、 <<素敵な生着替えのお礼に情報進呈♪ オランダの貿易商ベンテニーが、エゲレス人の殺し屋を雇った模様。ややこしくなる前にターゲットをラチって保護っていう僕らの親切のつもりだったんだけど、下僕な護衛がいるようだし大丈夫だよね! ちなみに外交問題がデリケートなので、ご公儀は一切関知しません。殺し屋を撃退したら後始末はきちんと。死体を処理するまでが遠足です♪>> アイツ、女将の着替えを覗いてたの! ヘンタイ!」
 劉はエンガチョして紙を投げ出し、あとから来た丁稚が慌てて拾いました。
「そ、それより殺し屋って。オランダのベンテニーって、うちの女将さんに言い寄ってる人ッスよね?」
「そうよ。ゴリゴリのホモやのにこのトキメキどないしょう、好っきゃー! みたいなことをオランダ語で言ってたわ。商人だから翻訳もナニワ調よ」
「好きなのにどうして殺し屋なんか」
「発情したヘンタイの思考回路なんて、どうねじれるか分かったもんじゃないわ」

 そのころ。
「ふっふっふ。ねじねじや。ねじねじやでー」
 派手な内装の船室で、貿易商ベンテニーはねじりん棒パンをぱくついていました。
 丸窓の外には暗い海が広がっており、船は波を蹴たてて進んでいます。
「ねじくれすぎて逆に純愛や! ワシの一途な愛を見せたる! 黒光りっぷりに腰抜かすんやないでえー!」
 ベンテニーは壁の伝声管をつかみました。
「極楽丸メタモルフォーズ! ステルスモード、潜水艦!」

後半へつづく!

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