管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。
はなまるファンとふざけたおとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全16話。第1話はこちら
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冷酷王のスピーチ(5)
リュー渾身の「なんでやねん」が地下いっぱいにエコーしている頃。
「違う。これも違う。これもハズレ。これはカス」
ひとり書類仕事に追われているのは、ヨシザワス王です。
リューの魔法支援を失った王は、専制君主とは名ばかりの、無力な裸の王さまでした。
とは言えまだぎりパンいちの王さまなので、民衆の支持が頼りです。
パンいちで人気取りに走った王は、ハコモノ事業やバラまき還元でコビまくり、減税したり団体交渉権を認めたりと民意に答えまくっているうちに「アイツ言えば何でもやるぜ」とヤリ○ンのように言われ始め、ナメられた挙句に宮廷スタッフまでがストを決行してあらゆる実務がとどこおり、魔女狩り令でドールの回収を図ったものの、山のように上がってくる魔女密告のタレコミは自分でチェックするほかなく、「ひとりでできるもん」と意地になった王は、果ての見えないデスマーチを泣きながら片づけているのでした。
そこへ。
「ただいま~。あー疲れた」
外回りから帰ったヨーコリーナが、荷物をドサドサ積んでいます。
「おい、仕事はしてるんだろうな」
「ちゃんとやってるわよ~。ポルターガイストの噂が立ってるとこ行ってー、聞き込みしてー」
「その買い物の山は?」
「これは、行きたいお店が近かったからちょっと寄っただけ♪」
「その買い物の山は?」
「これは、行きたいお店が近かったからちょっと寄っただけ♪」
スト破りの見返りは給料倍額です。労組を裏切って出勤したヨーコリーナは、雇い主からせびった金で買い物し放題なのでした。
「うふ、スト大好き~」
「ギャラ分の働きはしろよ。人間ばなれしたあんたなら、3Pチームぐらいあっさり見つけられると思ったんだが」
あっさり見つけた隠れ家で任務を忘れて遊んでしまったことは、神とヨーコリーナだけの秘密です。
「貸し店舗のワイン倉にいたとこまではつかんだ~。今はもぬけのカラね」
「じゃ、そこからの足取りだな。―――たくペーパーワークくそたりー」
時系列もバラバラの目撃証言は、まずキーワードを相互参照抽出にする作業が地獄でした。
「ファイリングくらい手伝えよ」
「ごめんネイル始めちゃったー」
お抱え間者であるヨーコリーナは誇り高き現場主義。こまい書類仕事なんかしません。
「お茶だって入れないわよ。ちょっと、誰もいないの~」
「侍従組合もストに入った」
「いいかげん労組の要求飲めば? 事務スタッフだけでも戻ってきてもらってさ~」
「んーっん」
「んーっん」
王はかたくなに1.5リットルのお茶をラッパ飲みしています。
「絶対服従の奴隷以外、使いたくない」
「じゃ何でストの権利とか与えちゃったのー」
「ノリだ」
「コビコビ政策で人気取りしなきゃもたないくらい、人心が離れてるんでしょー」
「うるさいな」
「何回暗殺されかけたのー」
「その数を把握してないお前が僕のお抱え間者だって事実に背筋がぞわっとするぐらい、何回もだよ」
ヨーコリーナはあさっての方へ微笑みます。
「てへぺろ、じゃねえ! っつ、いちいち突っ込むと体力が……」
王が目を細めると、感情自制の省エネモードです。
ヨーコリーナはつまらなそうにマニキュアをぷらぷらさせました。
「王さま人望なさすぎるんだもん。近衛も番兵もストに入っちゃって、もう間者のシフトだけじゃカバーできないの~」
「いっそスッキリしていいさ。低レベルの警護をウロウロさせてたって、暗殺者の接近を許すだけだ。セキュリティのことなら、超ウィザード級門番が門前で番張ってるってウワサ流しといた」
「何それ」
「意味不明すなわち脅威。近づこうって気にさせないのがミソだよ。手が足りないなら脳ミソ使え」
「結局人を信用できないんでしょ。カワイソウ~」
「信用できないんじゃない。しないの。人事がユルユルなせいで兵士の前歴チェックもままならず、テロリストにも潜入されほーだいなんだから」
「そーいうの全部くどりんがやってたのね。有能なんだ~」
「けっ。AI一台ありゃ済む話だ」
「普通にドール返してって言ってみたらー」
「言ったさ。木こり小屋に憲兵差し向けてやったさ」
「ボコボコにされたわね~。くどりんてば普通の戦闘能力も高いから」
「魔女め、そのあとドヤ顔で夢枕に立って、“所有権を主張する以上、自分のものの見分けはつくんだろうな”とか抜かしやがった。あの量産型フェイスが二つ並んだら、区別なんかつくかっての」
「ボコボコにされたわね~。くどりんてば普通の戦闘能力も高いから」
「魔女め、そのあとドヤ顔で夢枕に立って、“所有権を主張する以上、自分のものの見分けはつくんだろうな”とか抜かしやがった。あの量産型フェイスが二つ並んだら、区別なんかつくかっての」
「区別できたら返してもらえるの~? じゃあえっと、温泉に沈めてみて機能停止した方がドール」
「壊してどうする」
「機械なんだから修理すりゃいいじゃんー」
「水没故障はユーザー責任で保証対象外なの。女神(メーカー)に莫大な修理費取られるの」
「ぶー。ならムリね。匂いまでおんなじだったしー」
「だった?」
「あー、あはは? そうだ一杯やろ~。もらったワインあるの」
「うるさい。てか職場に酒置くな」
「ねーまた飲み会しようよー。どうしてさいきん働いてばっかなの~」
お前が働かないからだよ! と突っ込んで体力を消耗しないよう、王が紙めくりの指サックに力を込めたとき。
「どなたか! お取次ぎ願いたい! どなたかー!」
「客だ。出ろ」
「受付嬢じゃないのよ~」
ぶーたれて出て行ったヨーコリーナは、満面の笑みで戻ってきました。
「何でか現金くれた~。こちら、謁見希望のサイヤ人さんです♪」
「衛兵にワイロ渡すしかないと思ってたら、王宮ってこんなあっさり入れるんだ……」
猿シッポの勝負服でキョロキョロしているのは、ナンバーワン聴罪僧のナイトです。
「何だお前。ひとりぼっちハロウィンか。殺すぞ」
「すすいません」
「すすいません」
寝てない王のストレートな殺気に、ナイトはすちゃっと片膝を付きました。
「お初にお目にかかります。ヤガミ・ナイトと申します。魔女関連の目撃情報を多数ご報告した者ですが」
「お前か。おかげでペーパーワークが地獄だよ。殺すぞ」
「すいません……」
「いーじゃん。王さまのスットコ布告に反応してくれたことにまずありがとうは~」
お金をくれた人に優しくするのはヨーコリーナのモットーです。
「ワインどお~。今日は僧服じゃないんだ。それ普段着ー?」
「知り合いか?」
「教会の入り口で呼び込みやってた人ー」
「あっGカップの、いやゴホ、もちろん覚えてますよ」
めぐり合う運命にカンパイ☆と営業用に切り替えたナイトは、すぐさまお酌に回りました。
「イエァ、なみなみと~☆オーラッオーラッ」
「その献杯コールは聖ヨシザワス教会だな。僕のハコモノ事業でも連続黒字の優良施設じゃないか。あそこで働いてんだ。ご苦労~♪」
暴君と悪女とホストは、あっという間に意気投合するのでした。
「ちなみに僕が免罪符の売り上げナンバーワンです。お見知りおきを」
「見知りおいたおいた~。やっぱ宗教はもうかるなあ」
「上げました報告書はすべて信徒から得た情報です。何せナンバーワンですので、ソースが多いこと」
「ってナイトっち、告解内容を漏らしてんの。守秘義務どうしたー」
「んなものくそくらえでございます☆オーラッ」
「よし。引き立ててやるゆえ、近うよれー」
(第6話へつづく!)
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