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これはK96さんのwebマンガ+イラストサイト「870R」(サイトは18歳以上推奨)「HANA-MARU」からの二次創作であり、「大江戸870夜町(はなまるやちょう)」の続編です。他のHANA-MARU二次小説はこちらから。
おとなむけ。おこさまは よまないでくださいね。
全20話。第一話はこちら
「そもそも我々がはるばるやって来たのは、吉澤さんが世界大戦の引き金になるのを防ぐためですが」
「アイツが急にオーストリアハンガリー帝国の皇位継承権を得るなんて、てんでリアリティに欠けた夢物語らしいの」
「それこそ天地がひっくり返る大革命で、大富豪が大貧民になってもあり得ない……」
舞台裏とステージ上で、それぞれに日本語訳が始まりますが。
「おーい、客ほったらかしかー♪」
フランスパンマンがフランス語で野次ります。
「恥ずかしいから隠れて密談しようたって無駄ですよ。僕がセキララに訳しますからねー♪」
「うるさいわね」
劉はプリプリと舞台へ出ました。
「こうなったら全部さらすわよ! スタッフ全員出てらっしゃい! とことん話し合おうじゃないの!」
裏方がゾロゾロと登場する光景はイレギュラーな見モノではあるらしく、観客は拍手で迎えます。
「照れるニャア」
「ど、どうも、僕がホン書きました」
「雅ちゃん、衿曲がってる」
「あ、ああ」
「いいからさっさと並べ」
桔梗介は自分の愛刀も床にぶっ刺しました。
「で、俺たちは何を笑われたんだ」
「欧州の君主制は血統重視で、養子縁組してでも家門を続かせる日本とは、世襲の定義が違うようなのです。血を引いていれば、どんなボンクラも血の濃い順に継承権を持っている。逆に、血を引いていなければ」
「いくら有力者をタラしこんでも、ポッと出の東洋人に出番はない……」
「思えば当然ですよ。王権の継承システムが頑として揺るがないからこそ、欧州では革命が起きたんでした」
「ねー、カッコ悪いよねー♪誇らしげに革命ネタを取り込んだだけに、一層ねー♪」
「しかも舞台上で間違いを指摘されて……」
「理性が自慢の鬼公安にとっては、人前でふんどし脱ぐより恥ずかしいんじゃないかなー♪」
「くそ、今フランス語で爆笑された……」
上機嫌の吉澤は、マントの裏からパンをちぎってはむしゃむしゃ食べています。
「フランスパン柄は本当のパンでしたか……」
「プロテクターも無しで真剣勝負をやるなんて、バカかサムライか、バカだけですよー♪」
「おい、ケータリング一人占めしたのお前か。全部マントにくっつけやがって」
「接着剤はレオ丸さん特製速乾パテですよ♪」
「食べても安心なオーガニックネ」
「パン飽きたからヨッシーにあげたのー。おじさん、中華か何か買ってきて」
「オーガニックパテでも食べてなさい。みんなちょっと黙って」
劉はこめかみをグリグリともみました。
「ああーつまりこのエスっ子は、くのいちとダベっただけで話の矛盾に気づいたくせに、樋口さんの屈辱フェイスを最大限引き出すために、飛び入りチャンバラまでしたってわけ? 前からヘンタイだヘンタイだ思っちゃいたけど、アンタの趣味にはほとほと」
「見損なわないでくださいよー。みんなを夢から覚ましてあげるって言ったでしょう。どこから話がひっくり返るか、分かってます?」
「待ってよ。ええと」
「何か頭ごちゃごちゃ。いっぺん寝るわー。ホテルでくどりんに夜這い、ホテルでくどりんに夜這い……」
脳機能を使いすぎたヨコ丸は、フランスパンのマントにくるまって寝てしまいました。
「堂々と夢に逃避したニャア」
「かしこいネ。じゃこ屋のジャック略してJAJAの奇妙な冒険は、全何巻続くか分からんヨ」
「この使節団自体、ジャックさんの脳内で生まれた夢みたいなものだったんですねえ」
「でも、世界中でトモダチ作ってきたあのじいさんが、欧州の王権システムなんて基本的なことを知らないはずがあるかしら……」
首をかしげる劉の隣で、桔梗介も宙をにらんでいます。
「ずっと頭のどこかで分かっていた……何かがおかしいと……」
「裏でもっと大きな仕掛けが動いてるはずよ……」
「あれ、何かめまいする……」
周りの風景が奇妙に揺れ始め、光がビカビカとまたたき、一同は思わず手で顔を覆いました……。
(第十二話へつづく!)