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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
勝手な一読者の私と、小説との対話です。
要約するという能がなく、心の針が振れたところとその理由をぜんぶ書くというアホな方法をとっています。
作者さまが「それ違うし」と思えるよう、具体的に書いてみたつもりです。
作中からの引用を「>」としています。

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B08 メガネ男子と虹の空
>「必死なのな」
>樽見さんの完璧なまでに澄ました顔がほどけるように

イケメンようこそ。対する主人公はモテなのそうじゃないの、とじりじり読ませる。女子アナ風で「アリ候補」としてチェックされがち。それがただの思い込みか確認してみたことはない。脈ありと思ってた人に全然違いますよと言われたとか、そういう傷もない。だから「ちょっといいな」と思った相手に「いいな」と独白するぐらいのこと、清楚設定には何の影響もないのに、主人公はイケメン描写を済ませると慌てた感じでガードを上げる。

>でもどうせこれっきり連絡を取ることはないだろう。

これは「>イケメンとアドレス交換」という棚ぼたイベントを、誰かに「違うの違うの」と言い訳するときの口調だと思う。この小説は誰も聞いてない彼女の内心なのに。

>なおも状況の飲みこみに時間がかかっている私

このへんからモノローグが嘘っぽくなる感じ。「>お見合いでもなければデートでもない。虹の空の対価」ですよ! と他人には超音速で言い訳するとしても、本心ではない。指輪なしのイケメンに誘われちゃった週末を「デートみたい」と形容するのが怖いだけだ。「>改めてそう思ったら肩の力が抜けた」は「人」という字を書いて飲んだ、くらいのおまじないだと思う。「>無理に話題を探す気も失せ」で本当にきれいサッパリみたいなフリをさせるのは、インナーボイスの捏造になってしまう。彼女の語りを信用できなくなった。

「>虹の日」がすでに記念日というハッピーなカップルフラグ。もー、二人付き合っちゃえばー(煎餅バリバリ)

>「そのネガティブは慰めてもらおうと思ってわざとやってんの?」

ここがちょっと分からなかった。後段からすると関係が深まるきっかけ台詞のようだけどハテナ。行儀よく謙遜と失敗談を披露してたつもりの主人公にしたら、普通にひどいこと言われてないか。「>おいしいものを食べているときに雰囲気を台無し」にしたのは彼の方では。

>「慰めてくれるんですか? 樽見さんなら」

殺し文句が発動し、彼が投げた「わざとかどうか」問題は強制終了。普段の会話で細かい言葉じりを気にする必要ないとは思うけど、小説で言葉を置き去りにするのはもったいない。

「>まるで次の約束みたいだとぼんやりしていたら」←左フックをボカッと食らって時が止まったステキ表現に、「>事もなげに言った横顔が」←いらない尻尾がくっついてる。彼が「感想訊きたい」を言った瞬間と、言われた主人公がハッと横顔を見た瞬間はもう過ぎ去ったはず。「>言い方」は何を「>ごめんなさい」だっけ。

「>樽見さんが声を発するまで気が気ではなかった。」「>かわいく思われたいって感情が猛烈に」など、心の揺れが少しずつモノローグ中に解放されていく後半なのに、主人公が疑心暗鬼すぎる。

>ただそれを確かめることはできなかった。

の責任が大きい。「確かめた」かどうかで言えば、彼女はすでに確信した。なのに「客観的な証拠が必要」と言わんばかりのこの文が小説の目的をすり替え、さーどっちが先に腹を割るかの探り合いだ、と宣言したようになってしまう。証拠固めなんかしなくてもその直前、

>もしかしたら照れているのかもしれない。

という呟きを「もしかしたら照れているのかもしれない!」とテンション高く読めるよう補強するだけで「ハイ決定、この人私に気があるー」という浮つきになるはず。反射的に出た言葉を慌てて取り繕うようなモノローグと、信頼関係を築けないまま終段、仲良さげなカップルをはたから見たスケッチのような距離感で終わる。

>敢えてなんでもないふうを装う

何のために。彼への優位を保つために? モノローグへの信頼がないからどうとでも読めてしまった。


B09 秋風渡り、金木犀を濡らす(※注)
>青年も乙女に合わせて歩き出す。

キャラ二人の名乗りが済んだタイミングで再び「青年」でなくてもいいような。この一文自体いらないような。乙女が動けばついて歩く行儀のよい人だろうというのはナレーションからも想像できる。このあとも「青年」「乙女」と「金風」「桂花」が交互に使われ、文の焦点があちこちする。「彼」「彼女」と言いたくないのかな。

>「いただいてもよろしいのですか?」
>「貰ってもらわなければこちらが困る」
>「では、ありがたく受け取らせていただきます」
>「このような物をいただいて、本当によろしいのですか?」

捗らないやり取り。透明な会話を律儀に追いかけなくてもナレーション処理でよくないか。と思わせるくらい、地の文いっぽんになってからの躍動華麗っぷり(造語)。血みどろだけど葡萄酒の薫り。暦に沿って戦いが始まったり終わったりする世界観。おもしろーい。桂花のすそチラにズキュン。

>七夕の月明かりは頼りなく、乙女の儚げさを強調していた。

夢みたいな舞台の後、スターさんと楽屋通路でお話できるチャンス来たーというシーンだと思う。「>儚げ」と言ってしまわないでくれたら嬉しい。事実だけ並べるかっこいい叙述のあと「ようやく」という間合いで人物描写になったのだし、ズキュンなサービスを希望。

>心地よい声が金風の耳朶を打つ。突然、もたらされた告白に青年の心臓が

セリフと「突然」と心拍にタイムラグがあり、読み手としてはあんまりびっくりしなかった。好きな人に好きと伝える展開でめでたしめでたしだけど、やり取りがタラタラッと続いて切りがない。物語のシッポをつかまえそこなうラスト。


B10 龍呼舞
思惑ありげな語り手。男か女か分からない容貌が、会話によって明かされる間合いがすき。「>少しも悪びれることのない私」や「>男は眉を顰めて、短く問う」など他人ごとのような一人称は「知ってる」「分かってる」「お見通し」ばかりで、読む楽しみは薄い。

「>血に濡れながら来るだろう」

この一文の個性が小説全体に行き渡っていたら、思惑不明のまま読み手を引き込む糸口になると思う。「謎いっぱいだけどあとで説明しますよ」という小説の態度が語り全般に漏れ出ているので、効果が目減りする感じ。あとで説明するんだなあと思ってしまう。

>「うそつき」
>「嘘をついた覚えはありませんが?」
>唇を尖らせる彼に、私は首を傾げる。

会話を一行またぐ人物描写でテンポを失い、進行方向に読めなくなった。読み手の私は「え、彼? 龍が、求愛? 踊り子は、そういう?」と待ちかねた絵解きをガツガツいただいている真っ最中、見た目と本質において男でも女でもあるという誰かが、同じシーンに二人いる。このストレスに邪魔されたくない。読むためのガイドがもう少しあれば。

>ケロリと答える。それも嘘にはならないだろう。きっと彼も分かっている。分かっていて、文句を言わずにはいられないのかもしれない。

性を定めても、未分化だった頃と同じ「知ってる」「分かってる」口調のままの語り手。一大場面転換、「>体を作り変えるほどに焦がれてしまった。」の、後戻りできない大事件の余韻が、何だかかき消えてしまう。

あれ? 後戻り、できるのだろうか。ちょっと裏山へ飛んだりしてる。そして儀式で舞を見ているときは龍の姿だったのか、一級神官かっこ仮の姿だったのか。「>後ろ足に力を入れる」とはあるが、変身展開に気づいたときには「人化」の段階に入っていて龍っぽい四つ足をイメージしているヒマはなく、「>己を守る鱗が風に溶けていくような」も「ような」で比喩かなと思うし、「>この感覚には慣れ親しんでいる」となると儀式で変身する特別感が損なわれ、リアルタイムで映像が立ち上がらないはがゆさがあった。

>そうだ、彼は嘘をつかない。龍の前で自分を偽らなかった。男の姿で、女の舞を。だから私は彼を選んだ。

一世一代のこの吐露を、回想シーンの答え合わせをするような小さいステージじゃないとこで聞けたら、ラストへ向けて「>幸福」が花開く気がする。伴侶と出会えなかった場合にも同じ言葉を使い「>それはそれで幸福」なんて言ってしまってるので、ラストシーンをぴかっと照らす言葉が見当たらない感じ。


B11 祈跡満つ
>問いには一切答えず、口上を終えるや右の掌を広げ、購入を迫った。

口上が終わる前にちょうだいポーズが決まっているときれい。「購入を迫る」のが「口上」だと思うので。

>「長旅で、二千ヂリーが全財産なんだ。それで手を打ってくれないか」
>「打てません」
>泣きの一言にも、娘は即刻首を横に振る。

楽しいやり取りに地の文が同じ内容を重ね、速度が落ちる。

>指に掛けていた紐を乱雑に解いて手首に巻き直したサラァに、青いタバヌを

指に掛かって、乱雑に解かれ、手首に巻いて。紐の形状3つを頭でっかちにくっつける必要あるのかな。

>だれよりも奇蹟陣を、神を軽んじ弄んでいたのは、己ではないか。
>きみのいう通りだよ。絵に祈って奇蹟が起こるなら、いま頃ここは吹雪舞う極寒の凍土だ

既出の情報をキャラの歴史ごと分厚くなぞり、物語の水勢が上がる。なんかはじまるぞ……

あやとりがテキパキとお花を作る。ぽわんと空へ。またひとつ、空へ。「>ただの紐の輪が路となり、路に囲まれた場に力が漲る。」あたりから、読む速度と作中時間がリンクする。

>【環の縁は循環、神の路。環の内は源、神の壇】

一行ぽんとあるだけで、独唱パートが響き渡る。この臨場感はどうしたことだ。書かれた文と、受けるイメージと、呼びおこされる感情が、一致協力して歌い始める。紐の取り手が二人になって、さらに混声大合唱。

>天を見れば天に、地を見れば地に、光で描かれた文様が幾つも連なり、繋がり、無窮に開展する「奇蹟陣」

短い文節が連なり、繋がり、世界を回す奇蹟陣。あまりにも壮大なものはちっぽけな人の身をかえりみないスケールであるのが世の常で、たとえば森で見ちゃいけないものを見た人が神秘にあてられて果てたりさ、気まぐれな天変地異になすすべなく呑まれたりさ、そういう圧倒的に偉大なるものの強すぎる光を、サラァが遮ってくれてる。あやとりという無邪気バリアに守られて、ひとときの幻視、「>届いている」という福音が小説の空いっぱい輝いて、あーーー、もってかれた。

信じますと言葉で誓っても誓わなくても、神は神としてそこにいた。そう理解した旅人が安らかに信仰を得て、祈りが満ちる。合掌。ごちそうさまでした。


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次はEブロックを予定。
もう賑わってるしどうすべと思ったけど、
この鉛筆サイコロあとBとCしか出なくて。←やり直した!
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