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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
勝手な一読者の私と、小説との対話です。
要約するという能がなく、心の針が振れたところとその理由をぜんぶ書くというアホな方法をとっています。
作者さまが「それ違うし」と思えるよう、具体的に書いてみたつもりです。
作中からの引用を「>」としています。

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B01 君は光
「大丈夫」という本人の主張を信じちゃいけないのが、DVと依存症だと思う。取り返しがつかなくなるまで本人にとっては「大丈夫」だから。「>気持ち悪い」としか言えなかった小学生に責任はないけど、色々分かる年齢になっても主人公は「状況をコントロールできてるの」と青あざ作って言い張る彼女を、ポジティブな光としてしかとらえていないようで、読んでる私の気持ちは離れた。どんな顔してあんなこと言ったんだろう、気にかかってしょうがないから彼女の顔を手探りで作る、という心情なら分かる気がする。


B02 百八代魔王と勇者の関係性
制度化された和平協定。「魔王と勇者」というからには代表者同士の一騎打ちだろうか。数段あとでは「>戦争」という言い方もしてる。「定期的に戦争しましょう」という和平案ってハテナ。協定の中に具体的なバトルの作法がないので、この手稿が語る「戦い」をイメージできなかった。増えすぎて土地がないという普通な理由に、何かファンタジーの味付けがあれば。

>定期的に訪れる魔王と勇者の戦いごとに共有地の所有権を人族と魔族の勝利した方が得ること。

言い漏らしがないようフクザツカイキになっちゃった法律の文章。法律には単語ひとつにもそこに置かれた理由があるけど、「定期的」と「訪れる」に意思をもって立案された条文らしさはなく、ブラリやってくる神さまを迎えるお祭りのような。「>それが勝利条件となった」が分からず。言葉が届ききっていないのに、「>もちろん」「>当然」「>嘘みたいな話だが」など「書いてあることを額面通り信じてね」という押し付けの強い語りが続く。たとえば実際に起こってるのは無法な報復戦の応酬で、裁定者を気取った記述家が、しゃあしゃあと自分の見解を書いてるんでもおかしくない。

>蹂躙を覚悟したものの魔の者たちは礼儀を具えた紳士であったことを人間は恥じることとなった。

このあたり。「初代」というからには記述者の知らない遠い過去なのに、「覚悟したものの」や「恥じることとなった」など性急に片づける言い方が「よく知らないことなのに適当言ってる人」という印象になり、読みながら身を委ねられない感じ。

>共有地には勝利した方の者が基本住んでいるが、急な立ち退きを命ずるわけにはいかないため、古くからの住人には居住を許可して

住んでいいのか悪いのか、何のために戦いがあったのか、そんなことどうでもいいのか。

サングラス着用の光魔法にぷぷっと笑う。「>聞くところによると~ようだ」という分厚い伝聞体裁が勢いを殺す。初代のことを断言するならここだって「グラサン着用であった」と言えそうなのに。

>だからといってすべてを否定してしまうには惜しいことだ。現在も険悪な関係に陥っているわけではない。けれどいつまでも

せわしなく文章がハンドルを切る。総括に入ったのにまだ叙述の足場があちこちするのは、書き手にとっても魔族と人族の抗争が実はどうでもいいことだからじゃないのか。彼の一番の要望は、中間の存在である獣人にもっと光を! ということだ。「>親戚」という地に足の着いた表現が出てきて、ようやく私も息をつく。アンタこれ言うのにどんだけ分厚いレポート書いたの、とクスクス笑ってしまう幕切れ。


B03 あたしは太陽
距離が近すぎる二人。芸人がコンビ同士いっぺん何もかも嫌になるような。年の近い姉妹が思春期をぶつけ合うような。

>奈央はあたしを見ているだけ。自分の気持ちは口にしない。
>「黙ってないで。言ってくれなきゃわかんないから」

しゃべらない方は誰だっけと目が迷う。よーく読んで情報を振り分ければ理解は作れるけど、言葉の流れでそれをささっと終わらせてくれる小説がコノミ。ここではすぐにセリフがくっつくので「>見ているだけ」の奈央に向かって「>黙ってないで」を「あたし」が言ったように読めてしまった。そして「わからないから言ってほしい」と口に出して言うのは、立派に「気持ちを言う」だ。「気持ちを言わない者が悪」という理屈を軸にしたやり取りなのに、ルールが徹底されてない感じ。

>奈央もわかってるんだろう。あたしが奈央の気持ちを知りながら言ってる

「知ってる」と「わかってる」がダンゴになったところへ「いいから洗濯物畳んで」なんて割って入る誰かがいれば、小説は狭い自意識の部屋から外へ出られるかもしれない。受験校を選んだ動機も「奈央から離れたい」がメインで、主人公は奈央がらみの自己表現しかしてくれない印象。


B04 ダンジョンマスター
「>さて、私は鬼なのだが」がちょうコノミ。え、魔王? かつ、次期? 種族、人? 謎はひとまず置いておける楽しいお仕事描写。「こういうものです」が命にかかわる魔法世界にぷぷぷ。

ダンジョンが本当にダンジョンだという説明でエイラさんが忙しくなり、私の好きな掛け合いが減ってさみしー。代わりにビー君のキャラが立ってくる。

>ビーはにこやかに彼らを見上げながら優しく言うと、彼らは手で指し示した。

丸ごとカットしても意味は通じると思う。『こっち』と素直に答えるモンスターが、ビーの優しい態度を映し出すから。

>ビーの質問に、私は簡潔に答えた。詳しいことは後で話せばいいだろう。

簡潔かどうかは読めば分かるし、「後で話そう」を今言うことで得られる効果は、読み手に「なんかあるんだ」と思わせることだけど、魔王様のことは本当に後で話せばよくないか。エイラが表だって魔王様のことを気にかけていてもいなくても、モノローグに影響ない。ビーは「魔王候補」だというし、どこまで事情に通じてることになってるのか、後で説明があるだろうなくらいで、読んでる私は気にしてないもの。

>そして、魔王様の前で、魔族には毒になる聖なる呪文を詠唱する魔術師。
>「やめろ!」
>魔術師に殴りかかろうとした私

急展開するシーンで読み手の私は「魔族には毒になる」を流し読んでいる。魔王様の危機! という効果が薄く、エイラが「殴りかかる」ところでやっと「ピンチか」と気づき、読み戻った。「魔術師に」がないだけでピンチと動作がひとつづきになると思うけどどうだろう。

「人間に戻る」「人間はいいかなって」「魔族の瞳」え、え、人間なのそうじゃないのどっち、とソワソワした。どばっといきさつが語られると、よしよしビー君のペースと思いきや、

>殺す殺されるっていうの、やめません?

というひっくり返しゼリフが、しばらく読んでもなかなか着地を決めない。命の危険がないことを売りにした大盛況には食糧問題がつきまとい、やめたいと思った「殺す殺される」をやっていくほかなく、「>お手元の資料をご覧下さい」と営業スマイルのビー君は言うけど、目の覚めるような妙案がトンボを切って着地したようには思えなかった。


B05 聖女とロザリオ
日誌が書かれて、発見されて、紹介文がついた。ところから小説は始まるのだけど、「>与えることとなる」「>その後忽然と」「>後に知るのは」と時間軸がいくつも現れる。日誌本文が始まるとますます時間が一段飛ばしに。読んでいて頼れるものがない感じ。

少女の言葉を小説のセリフ体裁で書き綴る「へいたいさん」は、もう大分こころが壊れてる。世界を震撼させた日誌は何を伝え、世界がどう終わることを、どう証だてたのか、消えた学者を彼女と呼ぶ「私」はどこにいて、「>船の進路」をいつ知ったのか、もうエンディングなのに、振り切られて終わる。


B06 クビをキレ
いろんな~~メタファー! これでもかとメタファーだったことに長いこと気づかなくても、テンポよい一人称で楽しめる。メタファーとあとアネクドート。こっそり政治批判をするための風刺小噺。立ち上がれ労働者。「>ルイ~」「>早くクビに」「>ガチャン」薔薇薬はベルばらだからかな。ワクワクしてググるとサンタさ、ファンタサンもいたーわはは。歩兵30箱。出入りかしら。

道でフル装備のゴスロリ嬢に出くわしたらそれだけで怖い。喉の付け根がおかしいマリーさん。うっすらホラー色が滑稽味もろとも走り出す。「喉」に憑りつかれる主人公。電話の相手についての妄想だけど、小説として特に制限を設けない書きぶりがおしゃれ。「>どんな人なのか想像もつかない」「>私のイメージする魔女工房は音で構成されていた」から膨らむのは、非日常のような日常のような地続きの世界。そんなに設定満載ではないフシギ加減で、自由自在な雰囲気を作るというのは発明だなあ。開かれた世界に歩いてブラブラ入っていって、歩いてブラブラ出て来れる。手足が伸ばせる読後感。


B07 Luz del amor
>ソファの肘かけに靴を履いたままの足を放り出して寝転がっているおれは

どんな姿勢か説明がなくても「ルスが言ったまんまの姿勢をしてる」という表現になると思う。ここに登場人物が二人しかいないことを最初にドンと発表すれば、削れる言葉が他にもある気がする。「その女」とか「そんな○○」とか「そう言いながら」とか。

>飄々としたおれの態度に

そういう態度のおれを別視点から見てるみたいな距離感。主人公の主観は、少し距離のある場所から自分たち二人を見てる。この距離が邪魔してラブシーンに乗れない。ぴたっと自分視点による五感描写があっても、

>おれは眉根を寄せた。
>おれはやれやれと大仰に溜め息をついた。

などが流れを寸断した。

家事すべてまかせきりな上、スリッパ履かせてくれたりする人に対して「母親ってこんな感じ」と思うのは、先生を「おかあさん」って呼んじゃうアレみたいで、私はなじめなかった。英国ドラマで貴族のご当主が女中頭を「ママ」って呼んだら空気が凍る。主人公は母親の記憶そのものにウェッてなってるけど、「おかあさんをダブらせて恥ずかしい耐えられない」という一般的な感覚をすっ飛ばしてる気がする。主人公は一般じゃなく吸血鬼だけど。小説の前半、彼の正体を隠しておくあいだは普通の男の言いぐさをさせてもいいのでは。

働き者のメイドさん。お仕着せがあって住み込みで、主人がこぼした飲み物は拭き、カバーはかけ直し、主人が一日中寝転がっていられるように、黙って努めるのが仕事だと思う。「>面倒見」がいいかどうかじゃなく。「たまには自分で掃除すれば」と言ったりする人には「お前ってメイドらしくないよな」というツッコミが私にとっては座りがよい。彼らのやり取りの中で前提とされているものが、読んでる私にはしっくりこなかった。
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