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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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ネタバレ・辛口ご注意ください。
作者さまの心情を切り捨てることがあるかもしれません。
でも小説を切り捨てることはしないと誓います。
納得行くまで向き合います。
あくまで私の納得なので、小説のためになるかどうか、誤読がないかどうかは分かりません。

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G01  黒と白の世界

語りも場面もひとつづき。どれが誰の内心なのか、私は考えて読む必要があった。人が大切な出来事を語る時や死ぬ時に「これ誰だっけ」と考えるのは、フィクションを読む楽しみがそがれるなあと思った。

G02  モノクローム・ガーデン

やり取りの一往復ごとに「この状況に何も不思議はない」とドライなくすぐりがある感じ。ドライ指摘が連続するとくすぐりをくすぐったく感じなくなり、小説ぜんぶが「何も不思議はない」ことのように思えてきた。予言通りの救いが待ってる結末まで「不思議はない」と感じてしまったら、小説のどこに不思議を見たらいいのか。

G03  feel×color×disteny

赤い彼女と青い彼に、等分に幸運が訪れる。特殊能力のバランスも等分なら語りも等分でサクサク読んだ。「カップルはふたりでひとり」という主題がどこを切っても現れる金太郎飴のような。能力を失って人づきあいの弱さも等分な彼らがちょうど中間地点で助け合う、みたいな展望をラストシーンで思い描けたら素敵。

G04  色づく君の居場所

「>悪いがお前の気持ちに応えてはやれ「ちげー!」
ゲームも教室も喧噪描写が楽しげ。

「>彼女達が配慮に欠けるやり取りを続ける間、戸川は押し黙ってただ下を向いている。」
先生に存在を気づかれなかったことや、ハプニング笑いのタネにされたことが重大なんじゃないと思う。誰にだって起こるちょっとしたことを、戸川さんという女の子は器用にかわせず重大に受け止めてる、という順番で戸川さんをかばわないと、ただ地の文のシリアス度合いが過ぎるだけのように映る気がする。「購買で、可哀想だった」以上の言い方ができてこそ、主人公はストーカー以上の存在になれるんじゃないかなあ。

G05  君に捧ぐ青き花

いいお天気の散策が、死者との対話に変わる。「この後くるっと転換しますよ」という情報出しがもっと少ないとコノミ。「>線の細さは相変わらず」や「>あの頃の華奢な少年」などは、日本語として「読み手もご存知の彼」を紹介するみたいに響いた。

たったひとつの嘆きにとらわれている男。病気とか戦争とか、男の側からはどうしようもなかった事情が語りの骨組みになっていて、先がふくらまない感じ。

「>夢でも幻でもないと、どうか信じさせてほしい。」
「>これからの道を歩ませてほしかった。」
終幕で出てくる希望にもまだ、誰かの許可を得るような語調が残る。こう自分がない状態で、男に主体的な明日が開けるようには思えなかった。

「胸は張り裂けそう」「生きていけない」などの苦悩が瑞々しいまま描かれていて、「酒に溺れる」などの回り道を経ていることが、言葉以上には響かなかった。人の心の内側が描かれるとき、彼が外の世界とどうやり取りしたかを私は聞きたいと思った。

G06  奏でる音色

音楽の街。音楽で生活が回っている。
「>音を知らない彼はミアの舞を通して音楽と触れ合っていた。」
ここがすき。そして胸のドキドキが奏でるミアの歌。芸術への愛を介して「奏でられない者」たちも輪に連なることができる。終幕はそこを回収するのだから、
「>誰しもが音楽を愛し、愛されていた。/ 一部の者をのぞいては、そう思っていた。」
という不穏な前フリが宙ぶらりんで残る。歌えないミアも聞こえないリアムも、音楽浸りの街の空気を呼吸して生きてきた。それを分かってないのは読者なのであって、ミアが「そうだったのか」と気づくような語りはチグハグに思えた。「出会った時から分かってた」というフレーズとも馴染まない印象。

G07  HINAKO

愛情の定義がすれ違う男女。「>彼のこうした動作」など、女の使う表現が評論文のように堅い。続いて同様に堅い三人称が男の背景を解剖する。「今はまだ隠されていて、いずれ明かされるはずの真実」という風には読めず、ずっと同じ女が男の分析を語っているように感じた。

G09  君ありて幸福

「>その時は注文する」でクスリとし、「>あの時、注文する、と父に答えたことを後悔したことは一度もない。」という真面目な着地であれっとなった。洒落のマジメ処理より、父の質問がドンピシャで現実になったことの不思議には触れてくれないのかな。

テンポよい「>それでもアンナは諦めない。」や、「切ってみるまでわからない。中身には色が付いてるかもしれないではないか」などを、洒落をきかせた語り口の範疇と思っていたら、本当に果物を割って色を探していた。真面目と洒落が癒着していて、面白がるためのタイミングをはずしてしまう感じ。

人が二人しかいないシーンで読む方向に迷うことがあった。「>口いっぱいに頬張ったアルノーが祖母を見上げるとアンナはにやりと笑って」とか。

「色」に文学的解釈を乗っけるというブレイクスルーが感動的。カラフルなモノクロ絵画。

G10  闇夜に輝く七色の光

「>弟の顔も肌の色もわからないこと……いくらさわっても弟の色はわからない」
さわっている、ということがすなわちその人にとって「顔をわかっている」ということじゃないのかな。生まれつき見えない人ならなおさら、見えない不安は「手に触れていない不安」なのであって、触ることは情報を制御下に置いておける一番安心な手段なのでは。私たちが「見える」状態を確保して安心できるように。色がわからないことを嘆くという前提もおかしい気がする。知らないんだし。

臨月の妊婦さんならいつでも病院に行けるよう交通手段の確認や荷物の段取りしてないかな。ひとりで過ごすことが多い人ならなおさら。

絵が好きなのに視覚を「>他人の目」としか思ってなかったり、泣きながら乗り切った大事件を「>なんでもない出来事」と言ったり、主人公の語りに共感できなかった。

G11  the day before you came

ちゃちゃちゃーと出来上がるおつまみ。「>盗みの疑いをかけられかねない。」という庶民感覚が、下町料理屋風の店内をどんどん視覚化する。楽しー。

「>葡萄酒と肴の代価を俺は払わねばならぬ」
コレ言うことがそのまま呪法の入り口なんだ。人を契約で縛る悪魔の口上が始まったんだ。楽しー。

「>望みを叶える代わりに恐ろしく高い対価を払わせる魔人の伝説。」
魔人巨大化。望みを言ったらいけない、という警戒がシーンの興味の中心だからここは盛り上がるんだけど、「対価」は口上に含まれてたっけ、とも思う。飲み食いの借りができる。貨幣の代わりに望みで支払い。その対価を要求される。っておかしくないだろうか。「>酒と肴の分だけは叶えてやろう。」と魔人も言っている。釣り銭が出ないちょうどの望みを上手に言えたら合格だったのが、マノアが勝手に非日常願望ふくらまし、付き合いよく魔人もオプションごと巨大化。みたいな順番を妄想。

「>仮にマノアが望みを言ったとして、魔人の求める対価に果たしてそれが見合うだろうか。」
日本語としても文脈としてもハテナ。魔人のとんでもない要求に釣り合うような望みを、マノアが言えるかどうか、ということ?とんでもない要求を避けようという話をしてるのに。

「>魔人に望みを叶えてもらった者は、望み以外のすべてを失う。」
生きてく上で確保したい幸せを、どれほど具体的に数え上げたところで、すべてを言い尽くすことはできない。「家族仲良く暮らしたい」と願ったら疫病で自分ち以外死に絶えたり、「ハンサム貴族に惚れられたい」と願ったら性格最悪の男をあてがわれたりするんだ^^。「望み以外」という言葉の罠がすき。「対価」を言わなくても十分怖がらせの伝承になると思う。全体を総合して「幸せの意味を見失うとき、人は高い対価を支払うことになる」という表現になるのだと思う。

G12  星降る夜と僕ら

台詞を読み終えた時点で過ぎ去ったはずの瞬間が、遅れて地の文に現れる感じ。「>マチルダの叱責を片手で払ったリオルは、続いた言葉に」とか。読んでいてやり取りがつっかえた。

放逐のような形で自由になる魔法使いが「>浮かれている」。旅立ちの夜、絵になる情景。「>魔法なんて忘れて生きていける」年季の明けた一文無しの潔さ。

「>叔父夫婦の思惑通りに動く小娘でいるつもりは、彼女にはない。」
それが家出って、子供そのもののような。居場所のなさは同じでも、遺恨を残すことなく出発するラクシュとは、旅立ちの爽やかさが違って見えた。何もかも捨てる気でいるなら、信託財産を放棄するとかしていかないと、探しに来られたりして厄介な気がする。ラクシュは真っ当な根無し草としてリオルと行くことを迷う。それを打ち消すリオルの方に決定打がない感じ。彼女の一番の目的は多分自由に生きることだから、前半で話題の中心だった「遺産目当ての叔父夫婦」問題にはもうこだわらないんだよね。でも家を出た理由にはまだ叔父夫婦との因縁が強く関わっている感じで、そこにモヤモヤが残ったまま小説が終わる印象。

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