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掲示板に報告した後の追記は色替えにて。 8/3 B01に追記。
B01 夢追い人の系譜
やり取りにスッと入っていけない印象。セリフとその後に続く地の文が勝手勝手に状況を説明しているので、だぶった情報が読む間をもたつかせる。「>バンリ、これはなんだ?」があってすぐ「問う声に振り返る」べきかも。そのあとで「アリアは祖父のおもちゃ箱をひっくり返して」が説明されても読み手は平気だと思う。
「>横からひょいと」覗き込んだり「>眼差しに穏やかに微笑みかけ」たりする動作が、魅力的なセリフのタイミングにもっと馴染んでほしくてジレてしまう。「>いいか、わたしを海に放り込むと、バンリ、おまえが怖い夢を見るぞ!」が文句なく可愛く動揺しているので、「>明らかに動揺を隠し切れていない声」は言ってくれなくていい。
話題の地図は島が陸続きだった時代のものである、ということがすぐには伝わって来なかった。「>うんと昔は、シャリオン島とユグ・オール大陸は(こんな風に)陸続きだったんだよ。」とするか、「これこのように」と地図を指さしてくれるだけで、読み手の脳裏にガイドランプがピンと点くと思う。
祖父の存在感がもやっとしている。「>石ころの雨が降る」ほど孫には淡白、でもバンリの世界観のほとんどは祖父から受け継いだものっぽい。せがんで昔話を聞いた感じもある。「>祖父は偉大な旅人だった。」~「>それを証明していると言っても過言ではない。」あたりがモヤモヤのピーク。祖父の偉大さを「>少なくとも」バンリだけが分かっているという自負を軸にするなら、「過言ではない」という文末は余計かも。素直に「~それを証明している。」と言い切るほうがバンリらしいような。
祖父の事績を追うことに確信があるようなないような幕切れ。バンリが「>問いかけずにはいられ」ない強い動機が何かひとつあれば。
にしてもアリア可愛いぞ!こんなキュート精霊と出会った奇跡にもうちょっと自覚的にならなきゃバチあたると思う~。作中世界で精霊がどの程度貴重なのか、(出会えたところで人生変わったと言い切るほどでもなくそこらにゴロゴロしてるのか、8/3追記)召喚して契約できる人は他にわりといるものなのか、明らかにしてあったら安心して読める。
B02 a Fairy tale, a Fair liar 注
クセのある語り口。気づけばずるるんと引き込まれている。「>あれはきっとレンガ職人になりたかったんじゃないかな。」「>弟王子が見ていてね、寂しそうに見ていてね」あたりですっかり好き。気さくで非凡で民衆に好かれる少年王子の姿が「>雨の王様」というひと言に集約されている。おとぎ話を地で行く結婚のあとの「>夜離れ」、雨の王様もそれなりに平凡な男だったという切り替えに、何かもうひと理屈あれば素敵。
「>何、道をまだ教えてもらっていない?」が唐突で少し迷う。娘の用事は道を教えてもらうことだったっけか…。
語り手の正体を提示する間合いが好き。「まあ本人かなあ」とぼんやり見当をつけて読めるものだけに、大詰めの一文だけでびしっと引きしめるセンスが読後感に効く。これがさらに「読み手にだけ分かり、聞き手の娘には伝わらないヒント」だったら、実人生を他人ごとらしく語りおおせた「fair liar」がタイトルでますますビカビカに輝くと思う。
花の形に焼き付けられた恋♪やったことないけど生花はそう景気よく燃えるだろうか。
B03 地に降る
情報が飲み込みづらいのは、「>度重なる他国との戦、」から始まる箇条書きの国情ルポに、具体的な手ざわりがないからかも。ざあっと目が流れてしまう。
王宮を探しまわりようやく見つけたヒロインが、「>数名の兵士に護られ」しかし安全な場所に隠れていたわけではないと、数行あとで分かる。姫の容貌を描写するより交戦中であることを知らせてほしい。「>古い武具で武装した異質な男達は、王女を護るべく奮戦していた兵士と、駆けつけた玲明との間に挟まれる格好になって明らかに狼狽した。」で初めて敵兵の姿が見えるのは唐突だし遅くないか。
独白でつながる断章が印象的。でも飛び加減が不親切。「>梨凛ははっと顔を上げる。玲明を間近で見上げ、彼女の瞳が大きくなった。」では「見上げた」のに、次章で「>傷つき、床に伏した男」がいてそれが玲明だという。むむむ。
「>あのとき、梨凛は差し伸べられた全ての手を拒否した。」あのとき、と言って振り返っている現在はいつか。「>そして胸に抱いた息子と共に、滅びかけていた国家に手を伸ばす。」現在形終わりだけど、いつの現在か。「>私に、亡命しろと」と言ったときか。整理しながら読む作業。もしかして、「>傷つき、床に伏した男」がいるのはずうっと後段、処刑場になだれこんだシーン?ちょっと飛びすぎている。
「逃げましょう」と言われても玉座に執着し、戦乱を選んだのは梨凛。「私はもう、逃げはしない」という宣言で武器を取るのでは、言葉の上であまり状況をひっくり返せていない気がする。愛した男にきちんと向き合い、意地を捨てる、という意味で「逃げない」ことであるのなら、「政争からはケツまくって逃げる」こととの対比が欲しい。
「>優しい彼女が、本心から争いなど望むはずがない。」で片付けるにはあまりに重い責任を梨凛は背負っていないか。女主人のために国民を屠り続ける忠臣から目を耳を塞いでいたことは、約束の牡丹園に来なかった男の裏切りをチャラにするとして、救出劇に尽力した三十騎については、どんな報奨で報いてやればいいんだろう。
B04 坂を下る
丁寧語で引越しを語ると、すごくすごくすごく告白ホラーな導入部になるんだな、と思ってはいました…案の定、いや~ん!夜読んじゃった!あとまわし。
翌日。息子の口から聞こえる声に、オカルト的な解はなかった。しかし「後ろから声」というだけで怖い。「>それ以上どこにも行けない行き止まりの家に。」がホラー要素のクライマックス。以降は「外で息子をなじる」「近所の目」「無言電話」「家を空けてるダンナ」「人影は女」と、超自然でない説明のための手がかりが出始めたように見えたが…。「>主人の嘘。私の嘘。」の一点に「浮気夫と感づいた妻が演じた別のナニカだった」的な現実解を求めたけどモヤモヤ。
B05 暗い道を照らすのは……
星の童話。地図もコンパスもある時代に、人が北極星の特性を知らないってことがあっていいかな。童話だからいいのだ。
B06 in ruins
人間を創ったのは神で、神を造ったのは人間。因果応報がくるりと巡る。望む通りの機械の体がもらえる代わり、惑星メーテルを支えるネジにされちゃう、ような(懐アニすいません)因果を断ち切り、大崩壊の幕切れを予想していたら、「>人間は、どうすればいい」と訊ねて「生きろ殖えよ」と逆に励まされた。いいひとだなベティーシャ。(神だ)
声だけで登場するベティーシャが、本当に声だけの道案内であることを読み進むにつれ忘れがちになるので、血の池からどっこいしょとあがってきた女神がベティーシャとしてしゃべり続けることに、あまりびっくりできなかった。「>答えたのは、ケディッドをここまで連れてきたあの女。」に「の声。」とつけ加えると親切かも。
古詩を読み替えてみせる絵解きが好き。「白金を飲み込む」成り行きは予言されていたとして、そのために戦士の剣が必要とされているのか、いないのか。何でもできる創世の神は、いつでも思いつけばシミュラクラを池に引き込んで人工女神の治世を終わりにできたようにも思うが、展開としては、ケディッドの剣により呪縛を解かれた古代の魔物が「ようやく体を取り戻せたわい、ありがとう」という種類のお話にも見えてしまう。
「>真実とは、永き時にあればあるほど自然と歪曲されていくもの」が好き。神話には誰も知らない前段があった。本当に、「>みなになんと説明」するべきか。不具合を起こした暴走邪神を除いたことはひとまず確か。「>結局なにを成すこともなく、荒んだ世界は変わらずそこに」というが、もう聖女を立てなくてもよくなったわけで、オフィリアの死を繰り返さずにすむことは、彼にとって大きな成果と言えないか。
B07 俺は不良
「>俺は不良。」の三段活用。いや四段か。うふふふ。うふふが一段ごとにクレッシェンドしていく楽しさ。「>母は涙を流して、腹を抱えて笑っている。」むふふふ。「>たまにうっかりして、ですます調になるが。」どぅふふふ。「>そんな俺だが今、困っている。」うははは。「>本気と書いてマジと読むぐらいにびびった。」あははは!もー、夕暮れ番長!河原でおしゃべり!絶滅危惧種!猫キューピッドではふっとひと息、「理系男子」は癒される着地点。リコーダーの「ぱぽー」が好き。周りが見えてない人、という思い込み一人称に、ほんのり練りこんである客観の微妙な匙かげんが居心地よい。
B08 分岐エゴイズム
三角関係が行き詰ったあと、バタバタっと終わってしまう。ページを費やしてある初恋部分の描写は「誰も悪くなかった」というフォローが主で、タイトルにあるほどにはエゴイズムの発露を感じない。
「>まるで何かを惜しむ気持ちで」「>俺は激しく狼狽した。」「>ただひとつ頼まれてくれないか」など、地の文であれセリフであれキャラの口調が初恋以前のオトコノコの様子に馴染まない気がする。
「>どうもこの感情が何かの間違いでないらしい。」そう判断しているのは本人で、恋愛中の自己分析はあまり当てにならないと思う。これ以降「リョウの恋情は本物」という前提で話が進むが、すぐ隣で起こった恋愛感情につられてフワーっとなっただけかもしれない。タカシが八田ちゃんを意識するようになり、相乗効果でリョウもドキドキし始め、「好きなやついるの?」なんて訊かれた八田ちゃんも女子スイッチが入り、なんて。芽生えのきっかけはどうあれ恋はそのあとどう育てるか、なのに、ちょっと手を出して「理想と違う」と手を引っ込める三人は、話し合っても自分の混乱を持て余すばかり。「>言ったら何か変わったのか!?」という切り替えしだけが唐突に理性的だけど、論点は本当にそこか。彼らは恋愛にはランクがあると思い込んでいる。「誰より以前から内に秘めていた恋」が最上級、リョウに必要なのは「そうだよタカシが言い出して急に意識し出したんだよ」というカッコ悪い動機を認めることだと思うがどうだろう。
分岐、というからには「あの分岐より前に戻りたい、戻れたら」という願望がある。「戻ったってしょうがないんだ」と主人公が思える目的地が用意されていてほしかった。
B09 我往此道
魁!武士道男塾!お題「道」は求道、でも種目はエクストリームアイロニング。わはは。「>一拍後、誰かが呼んでいたのかサイレンの音が聞こえてきて、」がずいぶんあとまで分からず。救急車が来たのね。「>貴様にはアイロンを掛けた服に袖を通す資格すらない!」江田島平八であーーる!
ココロのシワを伸ばし、アイロンのつけた一本道を行く。野球部時代から野球にちなんだ名言の吐き合いっこをしていそう。「バットは心の芯で打て!」とか^^
B10 夢の中、水の彼方、道の果て
水に包まれてキラキラ光る神殿が映像で浮かぶ。状況説明が慌てず、人物のやり取りに合わせてゆっくり繰り出されるのがいい。「門番」といっても貴族っぽいしゃべり方。(=平民の番兵じゃなくて術者だった。)主人公の職種。長命種という設定。自分を「俺」と呼ぶ主人公は別に青年ではなく老人だった。開示のペース配分が好き。
「>そうだったな。で、それが何だ? まさか、天国の入り口だとでも?」だけ、直前のセリフとの有機的なつながりが見えず、読み迷った。
それぞれの容貌は局所的なものだけ取り上げられる。クローズアップのように、涙や、笑顔や、つないだ手が立ち現れて、「それ以外の部分」が読み手の脳裏に広がるのだと思う。
「>なんでも、天国への行き方までも知っているとか。」が「大きく出た!」「風呂敷広げたな!」と笑うようなツッコミになっていたら、言葉の伏線としてはオモロくなったかもしれない。でも言葉の工夫をちまちまやる作品ではないとも思う。言葉が「オレがオレが」と主張せず、芝居の黒子のように控えて映像を喚起させる。言葉を意識させない素直な言葉。これやるの結構難しいと思う。
B11 本とキム子とスイカバー
面白かった!面白かった!面白かった!とばかのように繰り返したい。ので繰り返しました。面白かった!ポンポン飛び出す微妙な超能力。「それ、要らねえなあ。わはは」とその場が面白いのに加えて、あとからあとからお話の中で意味をつなぐ。ジャンケンキム子。カンケリカッちゃん。「>間の悪い」オーナーのアイス的前フリったらシットコムのCM前、CM後みたい。「アサガ何とか」は初読で「アガサ」と読み間違えていたので、もー「いけ!タカやんいけ!」と心の声援。期待が裏切られない快感にプラス、忘れてたカンケリカッちゃんが粋に登場。「>本を浮かせるぐらい余裕だって」のひと言は、スパイ映画でひと盛り上がりあった後「実は味方のダレダレがここに…」と敵陣でニヤリとするキーパーソン的見せ場。セリフは要らない顔アップのあれですよ。娯楽のツボがふんだんで、いや面白かった!また言った。
関係ないですが、「オリエント急行」は私も同級生にやられました~。言った子も「あれっそうか、言ったらイケナイ」と推理小説のルールに初めて気づいた感じ。小説読み始めの子供に言いたくさせる犯人なのかなあ。
B12 光の道標
「>光しか映さない」というのは生き物の目はみんなそうだと思うのだけど。「>光は微かに感じる」のなら、何もせずそのままの状態で、硝子の目は万華鏡のような情景を「見て」いるはず。硝子と同じものを見るために青年が万華鏡を使う、というのが正しい。私が言うのはお話としての正しさではなく理屈の通り方として。「>待ちきれないんだもん」とセリフで言った後、動作の描写も「>待ちきれないというように」であるのは工夫が足りない。「>彼女は今、道を歩いているのだ。己が与えた光だけを頼りに、」ここで青年を己とは思いにくい。持ち物を取り上げたりちゅーしたりと、目の悪い人に警告なしで行動を仕掛けるのはやめたほうがいいが、二人はそれぐらい気心がしれている、というエピソードを仕立てるチャンスでもあった。
ようこそ盲管さん!わざわざご挨拶いたみいります~。
今回は別ブロックなのでしっかり探させていただきます。
こちらこそよろしくお願いします!