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  管理人・歩く猫 これっぱかしの宝物について。真田丸とネット小説など。ご感想・メッセージなどは拍手のメッセージ欄でも各記事コメントでもお気軽にどうぞ
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870R」(サイトは18歳以上推奨)でのお祭に、HN「じゃいこ」にて投稿したテキスト作品です。


他のHANA-MARU二次小説はこちらから。


描写の基準はもう分かりません(笑)。18歳以上推奨サイトにびっくりしたことがおありの方は不用意にお読みになられませぬよう!

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ハルの惑星(改)



(日誌:Day 1)
 ハル-247は外宇宙航行船のオペレーションAIである。ヒューマノイド仕様の気のいいヤツだが、突然「自分探しするッス」と言って全コマンドを拒否。「エコっス」と言って生命維持システムまで切ったので、私は命からがら脱出ポッドで逃げ出した。
 引力圏に捕まって不時着したのは、幸いにも地球型の有大気惑星だった。早急に救難信号を打たねばならないが、座標計算デバイス「ヨーコ」の調子がおかしい。
「えー、なにココ。ジャングル? 変なニオイ。気が乗らなーい」
 どいつもこいつもヒューマノイド仕様だ。トロピカル演出ってことで押し切れないかと、私はウッドデッキや椰子の実カクテルボウルを作り始めた。だがいかんせん工具も動力も足りない。そこへ原住民の女が現れた。
「足りないの工具違ウ。センスネ」
 女はそう言って、あっという間に半壊ポッドをリゾート空間に改装してくれた。ヨーコは大喜びで高級スパっぽくなったバスタブに浸かり、さっそく座標計算にかかった。しかしなぜ言葉が通じるのだ。
「近くの洞窟に、ソックリの殻が落ちてるヨ」
 クレオと名乗った女の案内で洞窟に行くと、なるほど私のと同タイプの脱出ポッドが、無残な廃墟となっていた。
「音声ガイドだけ生きてたネ。それで言葉覚えたヨ」
 苔むした機体からは、途切れ途切れに機体番号が読み取れた。ヨーコが数百年単位でさかのぼったが、似た状況の事故の記録はない。
 音声ガイドは、探究心旺盛なクレオによってすでに分解されていた。「お前のような豚は、こうしてあげるよ」と、妙なキャラボイスに改造されている。手がかりなしだ。
 そんなことよりずっと私を意気消沈させたのは、洞窟の壁いっぱいに描かれた壁画だった。遭難機クルーの、追い詰められた精神状態が手に取るように分かる。こうなる前に脱出したいものだ。
 



(日誌:Day 2)
 壁画に添えられた反復パターンは、作者の署名であると分かった。「ヨシザワ」と判読できるまで、てっきりファックユー的な呪いのシンボルとばかり思っていた。動物の生首が添えられているし。
 壁画はほぼ人物像で、ジャングルの原住民を観察したものらしい。各個体について特徴を整理してみよう。
 「ヒグチ」は小集団の頭目である。口腔付近に燃焼する火種を近づけてみせ、蛮勇を誇示している。火種が尽きると落ち着きを失う。
 「クドウ」は繁殖用の種オスである。交合時期には「フトモモ」を要求して暴れる。「クドウ」「ヒグチ」「フトモモ」で三すくみを形成する。「フトモモはクドウに乗っかり、クドウはヒグチに乗っかり、ヒグチはフトモモが邪魔で蹴る」の順である。
 「リュウ」は際立って大型のキメラ生物である。「トリ」「サル」「オネエ」の融合要素が確認できる。補食スキルが高く、口唇部を狙って食いつくと離れない。下っ腹に大型のロケット弾を装備している。連射式と思われる。
 「マツナガ」は肩に乗るほど小型の下等種である。ピンク色を見ると興奮し、夜12時以降に水を与えると「マサミラス」に変身する。
 「オチーサン」はおじいさんである。若いメスを侍らせて不老長寿を得ている。
 何とも不気味な文明だ。このような集団はクレオも聞いたことがないという。遙か昔に滅亡したのだろうか。不老長寿の爺さんも、さすがに天寿を全うしたというわけだ。
 ヨーコはクレオと遊んでばかりでちっとも仕事をしない。私が見回ったときだけ、イヤそうに紙と鉛筆で筆算を始める。つるかめ算が座標を特定し終わる前に、私だって天寿を全うしてしまうかもしれない。
 



(日誌:Day 3)
「じゃ、友だち紹介するネ」
 クレオが言った。私は、原住民との接触は最低限に抑えたいと断った。これ以上ヨーコの遊び相手が増えては困る。
「違うネ、お前の友だちヨ」
 カタコトの説明が要領を得ないので、私は仕方なく案内に従った。ところがクレオは例の壁画洞窟に私を連れて来た。誰かいる。葉っぱ一枚身につけたきりの、裸の男。
 ビクリと振り返ったその顔に、私は息を飲んだ。
「ユキくんやないか! ワシやワシ!」
 感極まって駆け寄る私に、ユキヒコはまぶたをひきつらせた。
「キャプテン西九条。あなたもここに」
「覚えててくれたんか~、嬉しいなあ♪出航前にちょこっと顔会わせしただけやのに」
 クレオがにっこり笑ってうなずいている。
「やっぱり知り合いだたカ。にしてもお前、日誌と大分キャラ違うネ」
「男の手記はカッコつけるもんや」
 私は改めて自己紹介した。
「ワシは西九条弁天。探査ミッションの交代要員を冬眠状態で運ぶ、スペーストラッカーや。このユキくんが冬眠チューブの保護液にプラ~ン浮いとった姿は、長い船旅の慰めでなあ」
「あんたか。シールドにベタベタ手形付けたのは」
 ユキヒコは懐かしい「来んなカス」の視線で私を貫いた。
「葉っぱなんかで隠しても、もうワシは君のすべてを知ってるでぇ♪ほなこの壁画を描いたんは、ユキくんやったんかいな」
 そういえば彼の名字は吉澤だった。妄想の中で彼は従順なスイートハニー、フルネームなど必要ない。そこへゾロゾロと男たちがやってきて、私は目もくらむ光景を見た。
「キョーちゃん! ワシのスリーピングビューティ!」
 飛びかかりざまに足蹴を食らって思い出したが、彼の名字は樋口だった。他に工藤以下デカブツ赤頭の劉、あとおっさんと爺さんはネームプレートすら見ていないので定かでないが、ここに壁画キャラが揃っているのだ。全員裸に葉っぱ一枚で。
「い、痛い、夢やない。人が悪いわクレオちゃん。こんな奴ら知らんなんて嘘言うて」
「あーこれ、この人たちを描いてたカ。廃墟ダンジョンのモンスター案かと思てたヨ」
 私と同じ日に不時着した彼らのポッドは、クレオによってソッコー廃墟加工が施されたのだそうだ。
 蘇生したばかりでクルーのこともよく思い出せなかったユキヒコは、頭を整理するため一人一人を絵にしたのだという。どのへんで「そうそう、思い出した」となったのかは不明だ。
「もう二度と会えんもんやと思とったで。貨物からチョロまかしてあったキョーちゃんのパンツだけが心の支えやったわあ。そや、再会を祝して持ち主に返そ。この三日着たきりやけどごめんやで」
 次はインパクトの瞬間も目を開けているぞと固く心に決め、私は顔面蹴りを待った。工藤が割り込んで邪魔をする。
「パンツは一旦はいてください。一体何があったんです。私たちは船を離れてから蘇生したんで、状況が全く分からないんですよ」
「AIが狂ってしもたんや。えらい目に会うたで。ハルの野郎、ご丁寧にあんたらまでまとめて射出したんやなあ」
 六基の冬眠チューブはひとまずクレオにメンテを頼み、葉っぱのジャングルコスプレにふさわしいツリーハウスを作ってもらって、彼らはそこで暮らしているのだとか。
「眼鏡まで作ってもろたんか。あのクレオちゃんって、服を作ってくれる気はないんやな」
 工藤は「はあ」と言って、制服女子のミニフィギュア付きフレームを押し上げた。
「それにしてもキャプテン西九条。ハルの思考原則を狂わせるような、異常な事態に心当たりはないですか」
「さてなあ」
「テンテンはねー、冬眠中のクルーを襲って、勝手に子孫を作ろうとしてたのよ~」
 振り向くと、ヨーコがこっそりついてきていた。葉っぱ男の集団に目を輝かせている。
「ちゃうちゃう。髪の毛からDNAもらうだけや。チューブ開錠の権限はハルにしかないさかい、ちょっと頼んだんや」
「どこの毛かまで指定したくせに~」
「人工卵の元になる毛がほんのり縮れとるいうだけで、種の採取がえらい早いこと済むねんもん……あかん、また採取できそうや。頼むユキくん、ワシと大阪城公園三世を作ったってくれ」
「死ねクズ」
「環状線だからって何周するつもり~、テンテン」
「ちょっともう! やめてくれない? ただでさえ異常な状況なのに、環状ホモだの、公園で3(ピィ~)だの」
 劉が頭を抱えた。爺さんが等身大フィギュアをさすりながらふぉっふぉっと笑う。
「疲れとるのう。クレオちゃんに好みの子猫ちゃんを作ってもらうとええ。寿命が延びまくりじゃ」
「フィギュアねえ……。それより、あんたいいプロポーションしてるわねクレオ……」
 劉の目つきが鋭い。
「ダメよ~、カマゴリラさん。パトラは男に興味ないって」
「誰がカマゴリラよ! いいの言ってみただけ。あーもう、作ってくれるんならいっそ宇宙船作ってよ!」
「そこまで言ってやるなよ。よくしてもらってるのに」
「葉っぱいっちょでなに常識人ぶってんの、マサミ! 彼女あたしたちの言葉を習得したんじゃなくて、音声ガイドから抽出した基本単語をマイク付き対訳ツールに落として、それで会話を成立させてんのよ! 天才でしょ」
 そうだったのか。ときどき口パクがずれるような気はしていた。
「ねーお願い天才! 宇宙船作って!!」
「落ち着くヨ、フィギュアと宇宙工学はおカマとおネエぐらい違うネ」
「もうそのへん一緒でいいわよ! ってかあんたの抽出した基本単語どんだけマニアック!」
「クレオちゃん、ワシもワシも! DNA抽出設備と人工卵合成ラボと人工子宮作ってんか!」
「ホモは黙ってて! ああ~!!」
 劉は図体に似合わず繊細らしい。
「しっかり、劉さん。助けはきっと来ますよ。ヨーコがあれば救難信号を打てますから」
「キャー、くどりんに呼び捨てされた~」
「お前かヨーコ。キョーちゃんの隣の冬眠チューブに手形付けとったんは……」
 私は工藤の肩をがっしとつかんだ。
「クドジン、あんただけが頼りや。何とかヨーコをその気にさせたってくれ。ヘソ曲げて座標計算しよらんのやコイツ」
「ぜ、善処します。ですから葉っぱを取らないで」
「それぐらい取ってやればいいだろう」
「探査隊長のお墨付きや。ほらヨーコ、羽交い締めしといたるからヒモ引っ張ってええねんで!」
「どうしよっかなー。くどりんとずうっとこの星にいるほうがいいかなー」
「そ、それは困ります。どうか計算を」
「ヨーコ、ワシかてキョーちゃんとのラブラブ遭難生活を諦めるんやで! そら救難信号打ったかて、救助が来るまでには何年もかかるんやし、そのあいだ葉っぱの横から下から、たっぷり拝ましてもらうつもりではおるけどな! ガッ、ボグッ」
「そのことだケド、副長サン」
 クレオが言った。私は地べたでガスガス蹴られていたので、工藤は自由の身だ。
「冬眠チューブの強化メンテ頼まれたガ、あれ何年耐久にすればいいカ」
「ああ、はい」
 工藤は葉っぱを直しながら答えた。
「もうそんなに長くしなくていいですよ。次の船が通りかかるのを当てもなく待つなら数百年単位の話になるでしょうが、正確な座標を算出して信号を打てば、一番近いコロニーから捜索隊が出されるでしょうし」
「それワタシも一緒に待つヨ。そして救助が来たら、ワタシも連れてって欲シイ」
「あら」
「そりゃナイスアイデアじゃ!」
 爺さんの抱えたデカ胸フィギュアを、クレオはするりとなでた。
「ワタシずっと、愛するフィギュアに人間性与えたい思てたヨ。ヨーコのヒューマノイド補正素晴らしいネ。分解せずにちゃんと勉強したいヨ」
「ですが、冬眠チューブが……。あなた自身の寿命を割いてお待ちいただくしかありませんが」
「西九条だけでも定員オーバーだがな」
「キョーちゃん、そら殺生や!」
「殺生はこっちのセリフよ。何もかもあんたの妄執のせいなんですからね」
「だが、コイツ残して冬眠もできないぜ。恨みで何されるか」
「手っとり早く殺しときますか~アハハ」
「なっ、何や何や。ワシは座標計算デバイスを提供するんやでえ」
「人間性あふれるヨーコは別段あんたに忠実ってわけでもないんでしょ。取引は不成立よね」
 緊張が走り、我々はジリジリとにらみ合った。
 クレオがポンと手を叩いた。
「ハイ喧嘩しないヨ。冬眠チューブは六基、何とか二基だけ容量上げてカップル使用にしたネ。二組には仲良く添い寝してもらうヨ」
「な、何……?」
「ひとつは越智サン。ひとつはワタシ。残りの四つを、男六人で使うネ」
「何でー!!」
「高齢者は保護液の組成が違うヨ。ワタシは男と瓶詰め嫌ネ」
「クレオちゃんと入りたかったのう」
「はいはい、ワシキョーちゃんと!」
 私は背後から蹴り倒された。
「うぐぐっ、やっぱユキくんを一人寝もさせられん。クレオちゃん、それ三人用キングサイズに拡張でけんか!」
 私は首を踏まれた。
「埋めるぞタコ。あ、僕は劉くんとでいいですよ」
「何でよユキ! 体格の順にシングル使用でしょ! あたしは一人で入るわよ!」
「俺だって一人だ! みんなとは保護液の組成が違う! おっさんおっさん馬鹿にされてきたが、年食っててよかった!」
「ならおじいちゃんとでも大丈夫じゃないの~」
「そこまでじじいじゃねえ!」
「みなさん、ここはまず隊長に譲っては」
「チョット待つネ。みんなが冬眠してるあいだ、ヨーコひとりに環境管理してもらうことになるヨ。ヨーコが楽しく番できるカップリングを最優先すべき違うカ」
「やだ、パトラ天才!」
 ヨーコはウキウキと歩き回った。
「どうしよっかな~。くどりんと絡んで楽しいのは~、カマゴリラさん? 三白眼隊長? 細目坊や?」
「私の位置は不動なんですね……」
「そこ、おじさん! 萌え対象じゃないからってホッとしない!」
「ビクッ」
「邪魔だからおじさんはテンテンと片づいといて」
「そんなあ!」
「さーあとは、どうしよっかなー♪」
 



(日誌:Day 10912)
 今日もくどりんは可愛い。
 空からゴーって音がした。
 迎えにしては早いなーって思ったら、懐かしの極楽オデュッセイア号だった。
「ハルの惑星到着ー!」
 はるるんが降りてきてハッチを開けた。冬眠チューブがいっぱい並んでる。
「男ばっかだからおかしくなるッス。可愛いコいっぱいナンパしてきたッスよー!」
「あんた……それ合意でしょうね」
「もちろんッスよ! うえ、何かそっちの頭数増えてる?」
「色々あってね」
 あたしはパトラ特製チェアに寝たまま、爪先でチューブを揺すった。
 保護液の中で、くどりんとひぐっちょがゴロゴロ絡んだ。
「ひえー、冬眠チューブ足りなかったッスか」
「記念日ごとにみんなを一日だけ起こして、添い寝シャッフルしたの。男ばっかも結構楽しかったわよ♪」


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~どうでもいい改稿版あとがき~
旧版(※削除しました)のラストで勢いのまま「星間ジャンプ」しまして、これじゃウラシマ効果起きちゃう→そういやせっかくのコールドスリープ意味なし→寝て待とう。という経緯にて改稿。AIとかコールドスリープとか、どうやっても哀しさ漂うんだなー、ということが身に沁みた日誌形式でした。達観のAIのごとく添い寝を見守ろっと^^。
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